今日のお手紙

     

ポートランド旅行記その4

2014年5月30日のお手紙:ポートランド旅行記その4

【4日目:5月23日(金)】
前日までの3日間は、ワタナベとふたりでいろんなお店をまわったのだが、この日から旅の様相が変わって来る。出会いの街、ポートランド!

この日まわったのは以下。

・Coffeehouse Northwest(コーヒーショップ)
本日のスタートは、ホテルから歩いて10分ほどのCoffeehouse Northwest。こちらもいわゆる自家焙煎のお店。後日Courier Coffee Roastersのジョエルに聞いたところによると、オランダのメーカー・ギーセンの焙煎機を使う、ポートランド唯一のお店とのこと。Burnside STをはさんで、この店のお向かいさんはスターバックス。スタバと、こういった独立系のコーヒーショップが町の中で普通に同居しているところに、ポートランドのカフェ文化の深さを見るような気がする。

ちなみにこちらで「コーヒーショップ」と呼ばれるお店には、コーヒーとパンくらいしか置いていない。つまり、みなさん本当にコーヒーを飲みにくるのですね(ちなみにスタバにはランチプレートみたいなのがあったりする)。

・McMenamins Kennedy School(カフェ、ホテル、ビール醸造所等)
一度ホテルに戻り、まきちゃんの旦那さんであるマットさんと待ち合わせ。マットさんの同僚の日本人トシさんの車で、迎えに来てくれた。マットさんが連れて行ってくれたのは、昔の小学校をリノベーションした複合施設。カフェ、ホテル、ビール醸造所、ジャクジープール、映画館等が元小学校の古き良き建物の中に収まっている。日本の古き良き木造校舎も良いものだが、アメリカのそれもとってもいなぁ。

トシさんがいてくれたおかげて、マットさんとの会話も通訳してくれて、とっても楽しかった。自分が逆の立場だったら、初めて会う自分の妻の友達をお昼に誘うことはなかなか出来ないと思う。素敵。

マットさんとまきちゃん夫妻は、これまで、ニューヨーク、マイアミ、ハワイと、人もうらやむようなアメリカの街で暮らして来たけれど、3年前から住んでいるポートランドが、これまで住んだ土地の中でいちばん気に入っているとのこと。マットさん、目が美しいナイスガイでした(写真がなくてごめんなさい)。

・Ampersand Gallery & Fine Books(アートブックストア)
アート関係のお店が多いAlberta通りで降ろしてもらい、マットさんとトシさんと別れた。こちらのお店は、イノセンスな空間に美術書や写真集等が並んでいる。アラーキーの写真集もあり。

・Monograph Bookwerks(アートブックストア)
Alberta通りでもっとも行ってみたかったお店。どのガイドブックを見ても、このお店のことが書いてあった。中に入ると、アート関係の書籍やステーショナリーが並んでいる。オーナーのブレアさんが「どこから来たの?」と聞いてくれたので、「日本から」と答え、勢いに任せて手紙社の書籍(印刷3部作)と、手紙社のオリジナル商品、作家さんの作品を彼女に見せてみた(この日、後から説明する理由で持ち歩いていた)。

ブレアさんは目を輝かせて食いついてくれ、「私も見せたいものがある」と、彼女が作ったリトルプレスや、地元ポートランドのアーティストの作品集などたくさん見せてくれ、言葉は完璧には通じないけれど、ものすごくわかり合える時間だった。彼女が、先のポートランドのアーティストのポスター展をいつか日本でしたい、というので、「手紙舎でやってください」と伝えると、「Oh, big offer!」と眼を丸くした。名刺の交換をし、いつか必ず何かを一緒にしようと握手をして、店を出た。

・Salt & Straw(2度目/アイスクリーム)
前々日に訪れたアイスクリーム屋さん2回目。またもやアイスの写真がない!

・Stumptown Printers(2度目/活版印刷工房)
前々日に訪れた活版工房に、手紙社の著作とオリジナル商品を持って再び訪れる。エリックさんはもちろん覚えてくれていて、歓迎してくれた。まずお見せしたのは、拙著「活版印刷の本」。エリックさんは夢中になってみてくれて「ワーオ!」を連発してくれた。その姿に嬉しくなって、手紙社オリジナルの活版のカードを見せると、さらに「ワーオ!」を連発。柴田ケイコさんの作品を特に気に入ってくれた。

興奮冷めないエリックさんはこう言った。「良かったらこれからビールを飲みに行かないかい? ぼくの奥さんも呼ぶからさ」。時間はちょうど18時になろうとするところ。突然のお誘いにびっくりしたけれど、断る理由はない。「I love beer!」と返事をし、急遽、4人でビールを飲みに行くことになった。

「ポートランドでいちばんビールが美味しい店に連れて行くよ」というエリックさんの後を追い(自転車の荷台には、犬印鞄製作所のバッグ!)、入ったのはローカルの人ばかりが集うお店。こういうお店に来たかったんだよなぁ。この店でエリックさんの奥さんリネアさんも合流。「Nice to meet you」と右手を差し出した。

その後、ミシシッピアベニューのメキシカン料理のお店に場所を移し、一緒に食事をした。昨年、日本にご夫婦で旅をしたと言うエリックさんとリネアさん。東京、京都、高野山とまわったそうで、日本の旅の話、ポートランドのものづくりの話、活版印刷の話など、たくさん話をした。大学で英語の先生をしているリネアさんは、とても聞きやすい英語で(そしてきっと簡単な単語をなるべく使うようにして)話してくれるので、英語が苦手なぼくたちにも、とてもわかりやすかった。

食事をしている途中、店のスピーカーからモンキーズのデイドリームビリーバーが流れた。ぼくが中学生の時、モンキーズが大好きだったと言うと、エリックさんが「リネアは昔芝居をしていて、デビッド・ジョーンズ(モンキーズのリードボーカル)と舞台に立ったことがあるんだよ」と言った。ぼくはびっくりして「本当に?」と言うと、リネアさんはちょっと鼻を高くして「本当よ」と言った。ぼくはもう一度右手をリネアさんに差し出して、「Nice to meet you」と言った。みんなが大声で笑った。

店を出たら、ぼくたちはもう帰らなければいけない時間だった。マックスライトレールの駅まで、エリックさんとリネアさんが送ってくれると言うので、お言葉に甘えることにした。ミシシッピアベニューの坂道を4人で歩いた。歩いている間もいろんな話をした。ふと、前から知っている友達と一緒に歩いているような錯覚に陥った。その短い時間だけは、言葉の壁をまるで感じなかった。ポートランドの夜の風は心地良かった。まるで自分が映画の中の登場人物のように思えた。アルビナ駅まで続く坂道を4人で歩いたことを、ぼくは一生忘れないだろうな、と思った。

<5日目につづく>

(C)tegamisha since2008