tegamisha


近頃、長い年月を経た暮らし道具に心ひかれます。
そんな「古いもの」への憧れから一歩踏みだし、
アンティークのお店を開くべく、階段を登り始めた女性がいます。
彼女の最初のチャレンジは、骨董市への出店。
そして突きつけられたのは、
仕入れや値付けの難しさ、自分は本当に何を扱いのかという疑問。
そんな、苦悩や試行錯誤、さまざまな出会いと喜びを
「みずたま雑貨店」の店主、ミヤタチエコさんが綴ります。

|第4回|初めての骨董市。初めてのお客様|

初めて骨董市に出店する朝、アンティークがぎっしり入ったトランクと共に、JR中央線に乗り込みました。いつも乗りなれている中央線ですが、今日の私はいつもの私じゃない。「骨董市でデビューします!」って、周りの人に言いたい気分でした。

会場に到着すると、他のお店はもう準備を始めていました。そわそわしながら自分のスペースを探すと、そこはなんにもない四角いアスファルト。1時間後、ここに自分のお店が完成するんだ! と想像しながら、商品を並べました。

ところが、たくさんの商品を詰め込んで重い荷物を運んできたはずなのに、実際に広げてみるとお店のスペースはスカスカ…。そのギャップに、テンションは一気にダウンしました。車を使わず、手持ちで搬入するには限界があるのかもしれない…。でも、今は自分のできる範囲でやらなくては! 「まずは、この布1枚のスペースから頑張ろう!」と、すぐに思い直しました。

みずたま雑貨店」の商品の中でもっとも古いものは、明治時代の印判(印刷で柄を絵付けする技法)のお皿。私は、同世代の人が気に入ってくれそうなシンプルな柄にこだわりました。その他に、ベルリンで買ってきた食器や文房具、のみの市でダンボールの底から見つけたかわいいカップも持っていきました。骨董市の出店が決まった後に、旅行先の金沢で買ったお皿もあります。他には古い薬瓶、昭和のなつかしい水玉のお茶碗。この水玉茶碗は昔、一般家庭や公民館でよく使われていたものらしいのですが、それを知らない私にはとても新鮮に見えました。なにより「みずたま雑貨店」の目印のようで嬉しかったのです。

さあ、ついにオープンの時間がきました。お客さんが続々とやってきます。私の店をチラチラと遠目で見ながら通り過ぎる方、商品を手に取ったかと思うとすぐに戻す方…。その様子に、私はいちいち反応してドキドキしてしまいました。自分が選んだものを見られるのは、心の中を覗かれているようでとても恥ずかしい気持ちになりました。

時間は刻々と過ぎていきますが、全く売れる気配がありません。このままひとつも売れなかったらどうしよう…。そんな不安にかられながらディスプレイを直していると、突然、ご年配の女性から声をかけられました。「いくらですか?」。その方が手に持っていたのは、金沢で買ってきた青磁のお皿です。あたふたしながら「2千円です」と答える私。するとその女性は、何も言わずにお皿を置いて去って行ってしまいました。

その後も、何度か同じようなやりとりを交わしました。そのたびにドキドキしたり、がっかりしたり。私もお客さんの立場だったら同じことをしているので、悪気がないのはわかっています。でも、お店側の立場になると…。あまりにもドキドキが続いて、これはとても心臓に悪いな、とまで思いました。

しばらくして、先ほどの青磁のお皿を、今度は男性が手にとりました。値段をきかれたので、また「2千円です」と答えました。その瞬間、「少し値段を下げようか。このお客さんを逃すともう売れないかも…」。そんな考えが頭をよぎった頃、「これください」とその男性が一言。びっくりしました! 慣れない手つきで、そのお皿を梱包材で包み、オープン記念として用意したお菓子をお渡ししました。しばらく頭が真っ白なままで、後からじわじわと喜びがこみ上げてきました。

次回は、初の骨董市を終えて、のお話。


ミヤタチエコさんからのお知らせ

[骨董市に出店します]

日時:8月17日(日) 9:00〜16:00
場所:東京JR有楽町駅 東京国際フォーラム前 「大江戸骨董市
※以降、毎月第3日曜日に出店。
※出店日が変更になる場合があります。お出かけ前に、みずたま雑貨店ブログにてご確認ください。


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