tegamisha

そのカレンダーに出合ったのは今から4年前。
独特の細長い紙片の中に、「この場所しかない」
というような具合で、静かに佇んでいる写真。
その美しい写真からは、それを撮影した人の美学や、
暮らしの匂いのようなものが漂ってきました。
「花と果実」「器と骨董」というカレンダー作りを続けて
今年で9年目。2009年のカレンダーの制作が
追い込み時期に入っていた2008年9月上旬、
椿野恵里子さんの“言葉”を聞くために、
大阪市にある、古い集合住宅の一室を訪ねました。

|第4回|“スクラップ”と“見る”を繰り返す|

お手紙 前から伺いたいと思っていたことがありまして、椿野さんの『感性』はどのように養われたのでしょうか? 感性とかセンスって、育った環境だけじゃないですよね。「生まれ持ったもの」と言えばそれまでになってしまいますが…、表現者としての椿野さんの感性はどのように養われたんだと思いますか?

椿野 そうですね。私もすべて生まれつき持っていたとは思っていません。本(自著『風景のあとに-カレンダーのくれたもの』)の中にも少し書いたんですけど、20歳くらいの頃、お花を習い始めたときに、洋書とかをすごいたくさん見ていた時期があったんですよ。洋雑誌もたくさん買っていました。ずっと見ていて。その中に「いい」って思うページがありますよね。それを、「何故なのか?」って考えるのが好きだったんです。「これは何故きれいに見えるのか?」って。分析っていうか。色の組み合わせできれいに見せているのか、並べ方なのか、素材感の合わせ方なのかって。それで、「自分が何に対していいと思うのか」っていうのを、そのときにいつも考えていたんですね。そしてそれらをスクラップ的に整理して、いいと思うものを集めていって、何かものを作る前にそれを見る、ということを繰り返していました。

お手紙 なるほど。スクラップですか。

椿野 はい。そういうことを客観的に考えたことがあるんですが、たとえば何かを考えていて、ぱっと思い付くことってあるじゃないですか。でもそれって、自然にぱっと、ひらめきが降りてくるように思っているけど、結局はどこかで見て自分の中に残っているものを引き出すだけだと思うんです。だから、そういう作業をしてるんです。「いいと思っているものを集めて整理してストックして、引き出しから出して見て、また集める」みたいなことを繰り返しているんですよ。だから普段から気になるものは、スクラップしたりして、残しています。

お手紙 今でも?

椿野 はい。印刷物は結構。チラシとかも好きなものは残しておいて。「いいなと思うものは残しておこう」という行為をしています。

お手紙 確かにそうやっていると、自分がいいと思うものの傾向がわかりますね。

椿野 はい。傾向も分かりますし、今の自分に気付けたりします。何か組み立てる作業に入るときに、たまに煮つまってくることがあって、そんなときにそれを見るといいんです。

お手紙 全部ひとつのスクラップに?

椿野 はい。雑誌の切り抜きだったり包装紙だったりいろいろ…。共通性無かったりするんですけど。でも、何かに惹かれて集めているんですよね。何か…。以前読んだ本に、感性の鍛え方についての段階について、こんな感じのことが書いてあったんですよ。 第一段階は自分がいいと思ったものを集めてスクラップするって。私は自然にその通りにしていたんですよね。

お手紙 なんかわかります! 確かにそうかも。

椿野 そうなんです。「あぁ、そうなんだ。よかった。あってる!」って思って(笑)。「そういうことだったんだ」って納得したんですよね。本を見て、合点が行ったというか。いつも撮っている写真は、日々自分が気になったり、きれいだなと思ったものを撮りためていて、その作業はスクラップすることに似ていると思うんです。カレンダーづくりは、それをまたばーっと出して、選んで、印刷物として組み立てる作業でしょう? 写真を撮って毎年カレンダーを作りながら、私は集めたり、出したりを繰り返して、今の自分を確認しているんです。

お手紙 今の自分を確認……、うーん、とっても素敵ですね。洋書を見ていた頃っていうのは、お仕事は何をされていたときなんですか?

椿野 その頃はお花屋さんで働いていました。その前から本にはすごく興味がありました。実は、高校生のときに家庭科室に、雑誌の『装苑』が教材で置いてあって、その頃、堀井和子さんがそこで連載をされていたんですよ。そのページがすごく欲しくて、こっそり装苑を持って帰ったことがあったんです、私(笑)。

お手紙 こっそりと(笑)。

椿野 田舎の本屋さんって装苑とか売ってないんですよ。全然いい本とか置いてなくて。「こんな本見たことない!」って思って、本屋さんで売っている本だと思わなくて持って帰っちゃったんです(笑)。その頃から気になっていたんですけど、堀井さんが実際に本を出されていることを知ったのは、実家を出てからですね。それから、堀井さんはご自身の本の中でご自分でも撮影されていますよね。

お手紙 あ、そうですよね。

椿野 まず、透明感のある光の色にひかれました。どう撮ればこんな色で撮れるのだろう、こういう色の写真を自分でも撮れるのだろうか、ということにすごく興味がわきました。それと、写真の色が本という表現にはとても重要なんだなと感じました。写真の色がその人そのものを表現するものだと、すごく思ったんです。

続きは次回をお楽しみに。

椿野恵里子さんからのお知らせ

風景のあとに-カレンダーのくれたもの

椿野恵里子さん初めての著書。椿野さんがカレンダーを制作する上で大切にしていること、ご家族とのエピソードなど、椿野さんの表現のルーツが見えてくるような一冊。写真はもちろん、文章の一文一文が、詩を読んでいるようで美しい。

種まきノート-ちくちく、畑、ごはんの暮らし

椿野さんが撮影を担当した、高知県の山間に暮らす布作家・早川ユミさんの初エッセイ。何ともいえない“暮らしのコク”が漂ってきそうな写真は椿野さんならでは。この本の撮影中に出合ったスイカが2009年のカレンダーに使われた。

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