tegamisha

そのカレンダーに出合ったのは今から4年前。
独特の細長い紙片の中に、「この場所しかない」
というような具合で、静かに佇んでいる写真。
その美しい写真からは、それを撮影した人の美学や、
暮らしの匂いのようなものが漂ってきました。
「花と果実」「器と骨董」というカレンダー作りを続けて
今年で9年目。2009年のカレンダーの制作が
追い込み時期に入っていた2008年9月上旬、
椿野恵里子さんの“言葉”を聞くために、
大阪市にある、古い集合住宅の一室を訪ねました。

|第5回|変化してきている写真の中の“色”|

お手紙 最初はどんなものを撮っていたんですか?

椿野 最初はお花とかを記録するために撮り始めたんです。お花を習い始めて、記録するのに「今日はこれを生けました」というのを写真で残してください、って先生に言われたんです。そのときは簡単なコンパクトカメラみたいなもので撮っていたんですけど、全然きれいに写らなくて。そしたら、実家に一眼レフがあったんです。それは父がお花を撮るために買っていたもので。父は撮っていたんですよね、自分が育てたお花を。そのカメラを結局…借りたまま返していないという(笑)。でもそのカメラはこわれてしまって、今は自分が選んだものを使っています。

お手紙 そんなもんですよね(笑)。

椿野 はい、そうなんです(笑)。それで撮ったらやっぱり、一眼レフのほうが全然良くて。断然撮れるじゃないですか。それでもう、自分がいいって思う色が出るまで追求していったらここまで来たっていう…。自分で撮ってみると、自分が見ていた色が、出来上がった写真と全然違うんですよね。だから、そこをどうやったら縮められるかっていうのをやっていました。最初は真似ですよね。どうしたらこの色になるんだろうっていう。それで、その色が出せるようになったら今度は自分の好みを入れていくっていう段階になって。最初はすごく明るい色が多かったんです。自然光の色でも、もっと透明感のある色でずっと撮っていて、そしたら途中で「もうちょっと暗めが自分は好きだな」という風になって。

お手紙 先ほど、堀井和子さんの写真にも影響されたって言われてましたよね。

上/椿野さんが現在使っている「CONTAX 167MT」

椿野 はい。まだ写真を撮り始めてすぐの頃、堀井さんの本の中に、自然光で撮られているっていうことがどこかに書いてあったのを読んで、「ということは家で撮られているんだな。もしかしたら自分にもできるのかな」って思ったんです。堀井さんご本人が出版記念か何かでキャトルセゾンにいらっしゃったことがあって、多分私、19歳くらいだったと思うんですけど、そのとき質問コーナーがあったんですね。ちょっとしたトークショーみたいな中に。そのときに私、堀井さんに質問したんですよ(笑)。「自然光で撮られているということですけど、お天気の日なのか曇りの日なのかどちらで撮られているんですか?」って。その頃、どうやったらあの色で撮れるのかって、天気とか時間とか窓からの距離とか変えたりして、すごくいろいろ試していたんです。でも、なかなか思う色にならなくて、今思うと、多分あの頃に、一気にいろいろなことを吸収したんだと思います。

お手紙 椿野さんの写真って、どこで見てもなんとなく「あ、これ椿野さんの写真だな」ってわかるんです。多分それは椿野さんの写真の、色合いとか空間の取り方や光の捉え方とかが、こう…世界を持っているからだと思うんですけど、その世界は最初の頃とは変わってきていますか?

椿野 変わってますよ。昔のカレンダーを見ていても、変わってきてるなって思います。著書にも書いたんですが、昔から落ち着いた色が好きで、あんまりぱっとした明るい色というか、派手な色を使うのが下手でなかなか写真にも取り入れることが少なかったんですね。その後は、その反動なのかこう…色色色みたいな多色使いの鮮やかな色同士を組み合わせたりするのに凝っていた時期があって(笑)。その後に「色は入ってるんだけど周りはそんなに…」みたいな今の感じになったんです。お花の色とかははっきりしたものを取り入れるんですけど、その周りは結構静かな感じで、「色は効いているんだけど、静かな光の中でそれがぱっと浮いている」みたいな感じの写真が今は好きなんです。

続きは次回をお楽しみに。

椿野恵里子さんからのお知らせ

風景のあとに-カレンダーのくれたもの

椿野恵里子さん初めての著書。椿野さんがカレンダーを制作する上で大切にしていること、ご家族とのエピソードなど、椿野さんの表現のルーツが見えてくるような一冊。写真はもちろん、文章の一文一文が、詩を読んでいるようで美しい。

種まきノート-ちくちく、畑、ごはんの暮らし

椿野さんが撮影を担当した、高知県の山間に暮らす布作家・早川ユミさんの初エッセイ。何ともいえない“暮らしのコク”が漂ってきそうな写真は椿野さんならでは。この本の撮影中に出合ったスイカが2009年のカレンダーに使われた。

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