tegamisha

様々なジャンルのクリエーターの方々が欲しい
「あんな古本」や「こんな古本」を
"古本探偵"古書モダン・クラシックの古賀夫妻が探していきます。

今回の依頼

読んだ後、少しだけ背筋がぞくっとする、タイムスリップ、タイムトラベル、もしくはパラレルワールドもののSF小説を探して下さい。

影山敏彦

影山敏彦(kageyama toshihiko)

ハープとギターのユニット、tico moonのギタリストであり作曲家。その手から生み出されるメロディーは聴く者の心を震わせ、いつしか涙を誘う。ライブでの、独特の語り口のMCにもファン多し。2月は各地でライブが行われる。詳しくはこちら
http://www.ticomoon.jp/

古本探偵

モダン・クラシックの回答

時果つるところ
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時果つるところ
『世界SF全集』11巻

  • 著者:エドモンド・ハミルトン
  • 訳者:南山 宏
  • 出版社:早川書房
  • 発行年:1969年初版
  • 単行本、箱入り、古本
  • モダン・クラシック価格:2,000円
【 この本の調書 】

アメリカ中西部の小さな町で、突如、超原子爆弾が炸裂した。天が真っ二つに裂けるような巨大な閃光のあと、人々が辺りを見渡すと、田舎ののどかな町は、まったくいつも通りの景色であった!

本書は、超原子爆弾の凄まじいエネルギーの放出により、ひとつの町が、そっくり未来にタイムスリップしてしまうというお話です。一人の人間が過去や未来を旅する、というSF小説はよくあります。でも一つの町が、何万年も後の、人間がもはや住めなくなった地球にタイムスリップするというのは、設定から度肝を抜かされます。

突然核爆弾が使用された不可解さ、しかもその後も死なずに生きているという不条理、さらには町そのものがタイムスリップして、地球上で孤立してしまうという状況…。

のどかな田舎の生活が、少しずつ未来に呑みこまれていくさまは、読んでいてぞっとさせられます。突然未来に放り出されてしまった町の人々の運命やいかに!

【 この本を選んだ理由 】

アメリカSF界の最古参でありながら、勧善懲悪のスペースオペラ作家ということで、長く評価の低かったハミルトン。その彼が戦後に発表し、本格SF作家として復活するきっかけになったのが本書です。原題は『CITY AT WORLD'S END』。

迫力あるタイムスリップ小説として、本書の評価は高いですが、有名な彼の『キャプテン・フューチャー』シリーズの影に隠れて、単独での翻訳はされていません。本書は、早川の『世界SF全集』に収められたその貴重な翻訳本。

手紙社の北島さんに、影山さんが相当SFを読みこんでいると伺ったので、ちょっと隠れた名著を選びました。

同時に収められている、ラインスターの『オペレーション外宇宙』も、なかなかの名作です。

古本探偵

モダン・クラシックの回答

第四間氷期
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第四間氷期

  • 著者:安部公房
  • 出版社:新潮社
  • 発行年:平成17年37刷
  • 文庫、新刊
  • モダン・クラシック価格:540円

国立のとある研究所で、未来を予測する「予言機械」が完成する。バラ色の未来を予言するはずの夢の機械。しかし予言機械が正確に描き出す未来の姿は、現在の人間にとって、到底受け入れられるものではなかった。この恐るべき機械によって、少しずつ明らかになっていく未来の姿。そして遂には、”現在から未来を守る”ため、謎の組織が動き出す!

『箱男』『砂の女』で有名な、安部公房が描く長編SF推理小説。SFといっても、最初から最後まで舞台は現代です。ですが読み進んでいけば、本書が真の意味での”タイムスリップ小説”であることが分かると思います。

未来が現代の人間にとって、バラ色である保証はどこにもない。というよりも、果たして僕らに、未来を判断する権利があるのでしょうか? 未来は言うまでもなく未来の人々のもの。もし僕らが、未来の受け入れを拒否した場合、僕らは”未来の敵”になってしまう…。

今回選んだなかで、もっともぞっとするSF小説です。

【 この本を選んだ理由 】

日本のSF小説の御三家といえば、星新一、小松左京、筒井康隆が挙げられます。でも世界的に有名で、日本を代表する作家である安部公房が、わが国のSF小説の草分け的存在であることを、知ってる人は少ないのではないでしょうか。SFは、科学の世界観を文学と融合させるところに、特色を持つ小説です。そして安部公房は、作家でありながら、医師免許を持つ理数系の人。日本の文学者で最初にコンピューターを使い始めたと言われる彼が、SF小説を書くことは、むしろ自然な流れだったと言えます。

本書は彼のSF的作品のなかで、もっとも完成度の高い作品です。安部公房を読み出すと、中毒のようになる人が多いのですが、そんなコアなファンのなかにも、本書を最高傑作に挙げる人は少なくありません。前衛作家・安部公房が描く、異色のSF推理小説です。

古本探偵

モダン・クラッシクの回答

時間衝突
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時間衝突

  • 著者:バリントン・J・ベイリー
  • 訳者:大森 望
  • 出版社:創元SF文庫
  • 発行年:2005年11刷
  • 文庫、新刊
  • モダン・クラシック価格:819円

舞台は遠い未来の地球。人類は一度、異星人の侵略によって、絶滅の危機に瀕したことがあった。そして今、地球人は地球の支配をふたたび確立した。二度の侵略を防ぐために、地球人は未知の異星人の考古学的調査に乗り出す。しかし異星人遺跡で発見された一枚の写真には、現在のそれより、はるかに古びた建物の姿が写っていた・・・。次第に判明していく逆行する二つの時間の存在。タイムマシンを使った時間外空間での、地球人と異星人との壮絶なバトルが始まった! いったい異星人は何者なのか? そして二つの異なる時間が正面衝突をしたとき、地球は一体どうなるのか?

人間はなぜ、過去の記憶を持つように、未来の記憶を持たないのでしょうか? 実は理論物理の世界では、”時間の向き”にたいした意味はありません。そこで二つの逆行する時間を、正反対の歴史時間を持つ地球人と異星人との戦いに当てはめたのが本書。次々と繰り出される、著者の奇想天外な発想に、脳みそを揺さぶられます(笑)。時間ってほんとうに不思議ですね…。

【 この本を選んだ理由 】

本書はぞっとする度はやや落ちますが、時間をあつかうSF小説としての完成度は随一です。とにかく、「二つの時間が正面衝突する」というアイデアがすごい。この一言に尽きます。SF小説と一口に言っても、科学的な厳密性を重視したハードSFや、コンピューター・ネットワークを題材にしたサイバー・パンク小説など様々です。著者のベイリーはワイドスクリーン・バロックの旗手とされ、科学的なリアリズムよりは、サイエンス・フィクション(空想科学)としての面白さを重視した作家です。科学とSFは、似ているようで、実は別物。科学的にはやや荒唐無稽でも、物語としてのリアリズムはいささかも失われていません。テーマの独創性、ストーリーの面白さ、そしてたたみかける様な奇抜なSF的ギミックに、SF本来の面白さを見出せるはずです。

古本探偵

モダン・クラッシクの回答【番外編】

多世界宇宙の探検
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多世界宇宙の探検

  • 著者:アレックス・ビレンケン
  • 訳者:林田陽子
  • 出版社:日経BP社
  • 発行年:2007年初版
  • 単行本、新刊
  • モダン・クラシック価格:2,000円
【 この本の調書 】

「世界の新しい見方の衝撃的な帰結は、私たちの歴史とまったく同じ歴史を持つ領域が無限にたくさんあるにちがいないということです。そうなのです。読者のみなさん、あなたの複製がたくさんいて、いまこの本を手にとっているのです」(本文より)

宇宙の誕生は単なる偶然。ビッグバンは一回だけじゃない!? 宇宙は無から始まった。空間は3次元ではなく実は9次元。宇宙の境界線は光速より早く進む。宇宙はユニ・ヴァース(ひとつ)ではなくマルチ・ヴァース(多元宇宙)!?

本書を読み進めば、僕らが生きているこの世界が、SF小説顔負けの奇妙な世界であることに驚くはずです。SF小説を読んで科学者を志す人は多く、また科学者で同時にSF作家でもある、アシモフやセーガンのような人もいます。SFとは、空想科学小説のこと。でも最先端の科学が描き出す世界も、人間の知識の境界線という意味では、空想と紙一重の世界だと言えます。

「現実こそ究極のSFだ」という意味で、本書を番外編に選ばさせていただきました。

【 この本を選んだ理由 】

私もSF小説が大好きで、好きが高じて、相対性理論や量子力学などの本を読むようになりました。科学とSFは、互いに影響し合いながら進化してきた、いわば兄弟のようなもの。タイムマシンやパラレルワールドといったSF的ギミック(ガジェット)は、ほとんど科学の世界の発見が、アイデアの元になっています。

また音楽家と科学者は、実はとても近い関係にあります。ギリシャの科学者のピュタゴラスは、音階理論の創始者であるし、アインシュタインがバイオリンの名手であったりと、音楽を愛好する科学者は非常に多いのです。「この世界を音楽に例えれば、物理法則はいわば楽譜だ」という言葉もあるように、現実から数式を紡ぎだし、数字や記号から未知の世界を想像する科学者は、意外に音楽家と近いメンタリティーを持っているのかもしれません。

本書と似たような本で、リチャード・ゴットの『時間旅行者のための基礎知識』(草思社)もお勧めです。

【 依頼者の感想 】

初めてSF小説に興味を持って読み始めたのは、中学に入学した頃からでした。当時のご多分に漏れず、星新一、筒井康隆から始まって、豊田有恒、横田順彌、かんべむさし、広瀬正など、日本のSF作品が好きで、『SFマガジン』『ショートショートの広場』などもよく読んでいました。その頃は『日本沈没』のテレビドラマが話題を集めたり、『ノストラダムスの大予言』が本気で信じられていたり、SF的な空気が社会に満ちあふれていた様な気がします。

ただ、今回のお題がこの様になったのは、それ以前に体験した楳図かずおさんの『漂流教室』、そして映画『猿の惑星』の存在が大きいです。どちらの作品も、ラストシーンの衝撃が未だに忘れられない傑作で、今でも本を探す時にはどうしてもそんな作品に目がいってしまいます。

そんな訳なので、今回モダン・クラシックさんに選んでいただいた本のタイトルを見ているだけで、わくわくぞくぞくしてしまいました! 本の調書まで読み進むと、さらに背中から冷汗まで出て来そうです。見知らぬレコード店に入ったら、聴いたことの無い素敵な音楽がかかっていた! そんな時と同じ様な気持ちです。

『古本探偵』のこのコーナーは、毎回各本に対する古賀さんの推薦文の語り口もとても巧妙で、その文章を読むだけでもとても楽しいのですが、やはり今回はどうしても手に取ってみたくなる本が目白押しです。という訳で、『時果つるところ』、『第四間氷期』、『時間衝突』の3冊を購入しようと思います。モダン・クラシックさん、ありがとうございます!

  • 『時果つるところ』
  • 『第四間氷期』
  • 『時間衝突』

次回の依頼

造園家と雇い主の夫人の、不倫の物語を探して下さい。

依頼者:山田茂雄

|第1回|かわいい写真絵本を探して下さい|

|第2回|“読む”料理の本を探して下さい|

|第3回|昔のロシアの本を探して下さい|

|第4回|読んだ後、少しだけ背筋がぞくっとする、タイムスリップ、タイムトラベル、もしくはパラレルワールドもののSF小説を探して下さい|

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