工芸、民藝、クラフト
作家、職人……
私たちも日々よく使うこれらの言葉。
でもそもそも「クラフト」って? 「作家」って……?
手紙社が主催するイベント・東京蚤の市に、長きに渡り出店くださっている中津箒 さん。明治ごろ神奈川県愛甲郡愛川町中津で生まれた「中津箒」は、昭和後期に一度衰退したものの、その後増えた新たなつくり手が多くのクリエイティブな箒を作り出したことにより注目され、今では10人近いつくり手が全国各地で活躍されています。
そのうちの1人であり、現在は北海道・小樽市で活動されている吉田慎司さんが、4月末に『手仕事というもくろみ 暮らしを編み直す』(ブルーブラックカンパニー)を出版されました。
美大生だった吉田さんがなぜ民俗学に興味を持ったのか、そしてなぜ箒を作り始めたのか、そして箒を作りながらなぜ詩歌を中心に扱う書店・がたんごとんを運営しているのか。
その一つ一つについて真っ直ぐに書かれたこの本を読み終えた頃には、それらはまるで必然だったかのように、美しい一つの線となって現れるのです。
そこで手紙社の書店・TEGAMISHA BOOKSTOREでは、5月28日よりこの本の出版記念展を開催させていただくことになりました。店内では「中津箒」を通し、吉田さんのつくり手としての生き方・手仕事をご覧いただけるほか、小樽で営む、箒と詩集・歌集・句集を扱うお店・がたんごとんでも(吉田さん曰く)“スタメン”として常に並んでいる、お勧めの詩歌本が並びます。さらには吉田さんと長年のお付き合いがあり、今回の本の表紙・カバーの装画を手がけられたイラストレーター・jun Sasakiさんによる原画作品と雑貨も取り扱いいたします。
ところで今、私(書店スタッフ)の手元にあるノートには、こんな言葉が並んでいます。
“目新しいことをするのは簡単だけれど、そのことが、歴史に、先人にどれだけ誠実であるかということは、ずっと考えていかなければいけない”
“若い人で賑わうクラフトフェアは華やかだったけれど、売っていて「これはブームである」と体感で分かった”
“肩書は作家でも職人でも宇宙人でも構わない。(中略)どこまでも道具でありたい、という思いから来ているので、僕がどう呼ばれるかは構わなくても、作ったものが「作家物」として珍重され、飾られてしまうようなことがあるとしたらまた問題である。”
“直下に見よ(柳宗悦の言葉)”
“生き延びる”と“生きる”
“技術とは、素材を熟知すること”
これらは全て『手仕事というもくろみ』の中で、ハッとさせられた言葉の一部です(まだまだあります)。読み終えた後も、このメモを見返しながら、その一つ一つに立ち止まり、自分に重ねながら考えてみることで、これから生きていくうえでの「ヒント」が浮かび上がってくるような、そんな気がしています。
本を読んでいて「今、この本を読んでよかった」「特別な本に出会えた」と思うことがあるのですが、まさにこれはその一冊。本展をきっかけに皆さんがこの本と出会えたなら、書店員としても、手紙社スタッフとしても、とても嬉しく思います。
※展示期間中に書籍『手仕事というもくろみ 暮らしを編み直す』をお買い上げいただいた方には、吉田さんのお店「がたんごとん」のみででお渡ししている特典(書き下ろし小説『ふつうのキャンプ』)をお渡しいたします。

2025年4月25日発売
『手仕事というもくろみ 暮らしを編み直す』
(吉田慎司/ブルーブラックカンパニー)
吉田慎司 – PROFILE –
1984年生まれ。東京・練馬にて育つ。2007年より株式会社まちづくり山上にて、神奈川県で明治から伝わる中津箒づくりを開始。制作、展示会、ワークショップ、講演、執筆などマルチに行う。現在、北海道小樽市を拠点に活動。株式会社まちづくり山上 中津箒 つくり手主任。
武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒業。主な受賞に、第51回ちばてつや賞佳作、9th SICF 準グランプリ、2011年より日本民藝館入選など。LEXUS NEW TAKUMI PROJECT 2017年度匠神奈川代表。2021年度日本民藝館展協会賞受賞。
Instagram)https://www.instagram.com/yoshida_shinji_/
【 吉田慎司『手仕事というもくろみ 暮らしを編み直す』出版記念展】
会期:2025年5月28日(水)〜6月23日(月)
会場:TEGAMISHA BOOKSTORE
住所:東京都調布市下石原2-6-14ラ・メゾン2階(TEGAMISHA BREWERY 2階)
アクセス:京王線「西調布駅」より徒歩5分
定休日:火 /祝日は営業、翌日休
営業時間:平日)14:00~20:00
土・日・祝)12:00〜20:00
電話:042-440-3477