あなたの人生をきっと豊かにする手紙社リスト。今月の映画部門のテーマは、「山と森」です。その“観るべき10本”を選ぶのは、マニアじゃなくても「映画ってなんて素晴らしいんだ!」な世界に導いてくれるキノ・イグルーの有坂塁さん(以下・有坂)と渡辺順也さん(以下・渡辺)。今月も、お互い何を選んだか内緒にしたまま、5本ずつ交互に発表しました! 相手がどんな作品を選んでくるのかお互いに予想しつつ、それぞれテーマを持って作品を選んでくれたり、相手の選んだ映画を受けて紹介する作品を変えたりと、ライブ感も見どころのひとつです。


──


お時間の許す方は、ぜひ、このYouTubeから今回の10選を発表したキノ・イグルーのライブ「ニューシネマ・ワンダーランド」をご視聴ください! このページは本編の内容から書き起こしています。




──


−−−乾杯のあと、恒例のジャンケンで先攻・後攻が決定。今月も渡辺さんが勝利し、先攻を選択。それでは、クラフトビールを片手に、大好きな映画について語り合う、幸せな1時間のスタートです。


──


渡辺セレクト1.『イントゥ・ザ・ワイルド』
監督/ショーン・ペン,2007年,アメリカ,148分

有坂:うんうんうんうん。
渡辺:監督と脚本が、実はショーン・ペンです。俳優のショーン・ペンが監督した作品で、監督としても才能を発揮した、めちゃくちゃいい映画です。評価もすごく高くて、アカデミー賞とかでもノミネートされたりとかですね、していたと思います。はい、で、どんな内容かというと、アメリカの話なんですけど、裕福な家に生まれた青年が主人公で、成績もいいし、人当たりも良くてクラスの人気者だしっていう、もう非の打ちどころのないようなタイプの好青年なんですね。そのまま就職すれば、いいところに勤められてっていうところなんですけど、彼が思ったのは、なんて言うんでしょう……資本主義社会というか、経済社会とちょっと一線引きたいということで、バックパックでですね、アラスカに旅に出るという話になります。それで、旅先でいろんな人と出会ってですね、心の交流をしながら、自給自足をやり始めたりっていうところで、山に入っていくっていうお話です。結果、その先、彼が見たものとは何だったのかという話なんですけど、なかなかこれ、ラストもパンチがあって……
有坂:うんうん。
渡辺:すごくインパクトのある作品なので、結構考えさせられるところも多いんですけど、でも、大自然のすごい青空の綺麗な風景と一緒に、自然の厳しさみたいなところも感じさせてくれて、あと、ちょっと人生を迷ってるみたいなときに観ると、かなり影響を受けてしまうかもしれない。
有坂:これ10代で観たら、危険だよね。
渡辺:ね! でもね、だいぶ前だったから僕らも若いときに観ましたけど、なんか映画としてもすごい素晴らしいので。これをまず1本目に挙げてみました。
有坂:コメントで、「ラスト、あれじゃなくちゃダメだったんでしょうか」って。ね、そうつぶやきたくなるようなラストが待ってます。
渡辺:これはもうラストを絶対覚えているタイプの映画だよね。
有坂:忘れようがないよね。
渡辺:うん。
有坂:骨太といえばショーン・ペン。最近ショーン・ペンね、話題になっていましたけど。
渡辺:ウクライナで。
有坂:そうそう、この状況下でウクライナにショーン・ペンが入ってね、ドキュメンタリーを撮っていたというのもニュースになってましたが、まあそんな彼が作った、これはね『イントゥ・ザ・ワイルド』はフィクションですけども、これは超おすすめだね。
渡辺:おすすめです!
有坂:はい、わかりました。



有坂セレクト1.『サウンド・オブ・ミュージック』
監督/ロバート・ワイズ,1964年,アメリカ,174分

渡辺:うーん、なるほどね! はいはいはい。
有坂:もうそのね、『イントゥ・ザ・ワイルド』とか、いかにもっていうものも考えつつ、でもね、「山と森」って聞いて、山の映画っていったら、映像的にぱっと思い浮かんだのはやっぱり『サウンド・オブ・ミュージック』。それぐらいこの映画はね、山がずっと舞台の作品ではもちろんないんですけど、オープニングシーンのね、オープニングから30分にかけてがね。これはオーストリアのザルツブルクが舞台のミュージカルで、もうミュージカルの大名作ですが、家庭教師のね、修道女マリアと子どもたちの交流の物語というのが、この映画の第一部で描かれてます。で、この映画のファーストシーンで、映画会社のタイトルロゴが出た後、しばらくずっとね、そのオーストリアの山の風景が続くんだよね。結構続く。2、3分、もっとかな? 空撮で、今だったらドローンで簡単に撮れちゃうんですけど、当時というのは空撮っていうのはすごいお金がかかるっていわれてたんですけど、その空撮であのオーストリアの山の風景とか、大自然の風景を、結構ね、なんか自分も空を飛んでいるかのような、鳥の視点で楽しませてくれる。この後、物語がどういうふうに始まるのかなと思ったら、こう、山をバックにした草原に、金髪の女性が1人立っているのが遠くから見える。だんだんカメラが近づいていくと、この映画の主人公であるマリアで、そのマリアがオープニングで「サウンド・オブ・ミュージック」という曲をね、歌っているという。もう1度観たらこれも忘れられないような名シーンなんですけども、この映画がそこから始まって、そのあとトラップ家の家庭教師になって、子どもたちと彼女は出会って、「ドレミの歌」をね、1番最初に教えてあげるっていうシーン。で、このドレミの歌の前半も山をバックにしたところから始まるということで、やっぱり、この映画が好きな人にとっては、ポスタービジュアルもね、そこのシーンが使われてるので、やっぱり「イコール“山”」って連想する方も多いかなと思うんですが、まあ、僕もぱっと思いかんだので、これを入れなければと思いました。で、ちょっと調べたら、今はやっぱりこうなんていうんだろう……聖地巡礼?
渡辺:はいはいはい。
有坂:やっぱり同じコースを自分も歩きたい。あそこの場で「ドレミの歌」を歌いたいという人がいるみたいで、なんか「サウンド・オブ・ミュージックトレイル」っていうハイキングコースになってるらしい。1時間で、マリアたちが「ドレミの歌」を歌ったところまで行けるらしいんですけど、途中も「ドレミの歌」が流れるオルゴールがあったりとか、休憩用のベンチとかも全部そのサウンド・オブ・ミュージック仕様になってて。それも結構ね、ちゃんと天然の木を使った、すごくいい感じに仕上がっていたので、いずれ僕も聖地巡礼したいなって。
渡辺:でも、俺の知り合いもね、新婚旅行で行ってた。
有坂:ほんとに!
渡辺:巡ってた。で、建物とかそのまま残っているんだよね。
有坂:オーストリアのね。そう、このすごい大自然を舞台にした本当にこの美しい映像を、これ公開当時って、70ミリフィルムで撮っているんです。普通の映画館のスクリーンよりも大きい。ちょっと湾曲したような巨大スクリーン。当時「シネラマ」っていうシステムだったんですけど、そのシネラマで上映されているんだよね。
渡辺:うんうん。
有坂:だから、あのスクリーンであの映像を観てしまったら、やっぱりね、『サウンド・オブ・ミュージック』が特別な1本になるのは、やっぱり想像できるね。はい、ということで1本目は「サウンド・オブ・ミュージック」でした。
渡辺:なるほどですね! はい、じゃあ続けていきたいと思います。
有坂:あの映画は言わないでください(笑)。
渡辺:えっと、あの映画から行こうかな(笑)。……多分、これはちょっと違う感じだと思うんですけど、ヨーロッパのから行きたいと思います。



渡辺セレクト2.『フレンチアルプスで起きたこと』
監督/リューベン・オストルンド,2014年,スウェーデン,118分

有坂:うんうん。
渡辺:これはですね。2014年のスウェーデンの映画です。で、舞台となるのは雪山なんですけども、雪山といってもリゾートの雪山で、スキーのメッカ、アルプスのリゾート地が舞台となっています。話としては、スウェーデンから来たある家族が、このフレンチアルプスでバカンスを過ごすんですけど、それでまあ、スキーをしに行ったところ、とある事件が起こります。事件といっても、何かこう殺人事件とかそういうのではなくてですね……。この今ちょうどジャケット写真が映っているような、雪山の目の前のテラスがレストランになっていて、そこでみんなでご飯食べるんですけど、目の前の山で雪崩が起きるんですね。「雪崩が起きてるね」みたいに言っていたら、思いのほか大きくて、だんだん近づいてくる。で、「ぶわっ!」と近づいてきたので、みんな「うわー」って逃げるんですけど、まあでも別に何事もない。ただびっくりしたというところではあったんですけど、そこで主人公の一家のお父さんが、とある残念な行動をとってしまったが故に、奥さんから不審がられてというかですね、そこから家族の関係性が変わっていくというお話になっています。
有坂:うんうん。
渡辺:なので、この映画は結構なんていうんでしょう、人間の闇の部分というか、ちょっと心理的なところをついたドラマになっています。なので、まあリゾート地が舞台ではあるんですけど、内容としてはもう人間ドラマで、人間の心理、「こういうときにこういう行動しちゃダメなんだ」みたいな、そういうところを描いた作品になります。このお父さんがね、ちょっと残念な行動をとっちゃって……。
有坂:ね(笑)
渡辺:それで挽回しようとして、また空回るっていうね。だから、話を聞いているとコメディっぽくて、あのルックとしてはもうシリアスなドラマとして描いていくんですけど、もう観てれば観てるほどおかしくなってくるんですね。そういうちょっとブラックコメディっていうのかな、そういうテイストの話になっています。なんで、これちょっと、そういうのに興味ある人は、ぜひ刺さると思いますので、観てみてください。これは多分、配信とかでも結構やってると思うので。
有坂:これね、最高の1本ですよ。候補に入ってた。
渡辺:結構好きなんでこれは。
有坂:はい、じゃあ、続けて僕の2本目の作品は、フランス映画です。



有坂セレクト2.『ユキとニナ』
監督/諏訪敦彦, イポリット・ジラルド,2009年,フランス・日本,93分

渡辺:うーん!
有坂:フランス映画と言いましたけど、フランスと日本の合作映画になっていて、2009年の作品です。これは、ユキという女の子、9歳の女の子が主人公なんですけど、その母と父と住んでいたものの、どうやら両親が不仲だということが分かり、それで、母から「実はお母さん、お父さんと離婚しようと思ってるんだ」ってことを告げられるんですね。で「あなたはどう思う?」と。まあ、これを聞くあたりがフランス人だなと思うんですけど。でも彼女はやっぱり、その自分の大好きなお父さんとお母さんが別れてほしくないから、なんとかして、お父さんとお母さんの仲をもう1回修復させようとして、お友達の女の子と一緒に、このニナと一緒に、なんかね手紙を書いたりするんですよ。なんか、その行動がすごく子どもらしくて可愛らしいんです。なんか愛の妖精からお母さんに手紙を書いたりとか。で、その自分たちの素直な思いを、でもその愛の妖精という名を使って手紙にしたためたりとか、そういうほんとに子どもピュアな部分が描かれているのがまず面白いところで。
渡辺:うんうん。
有坂:それともう一つ、まあ、なんでこの映画が山と森なのかというと、この映画は森の使い方がね、びっくりするような使い方です。で、これどこまで言っていいのかな。言わないとちょっとね。
渡辺:(笑)。でも、森のところは言わないとダメなんじゃない?
有坂:そうだよね。で、これはまあちょっと言いますけど、えっとねフランスのリヨンの森に、この色々悩んでるユキが入っていくんですけど、その森を抜けたら、昔の日本の風景にたどり着くんですよ。ちょっとなんかね国も時代も飛び越えて、なぜかワープしてしまう。そのワープする過程に森っていうものがあるんですね。で、これ言葉で説明してもいまいち面白さは伝わらないと思うので、やっぱりこの映像的な面白さがあるなと思うので、ぜひちょっと観ていただきたいなと思うんですけど。なんかその森をさまよってるシーン、すごくリアリティのある話だったのに、途中からちょっと幻想的な話になっていくんですね。その辺のなんか不思議なバランスもこの映画の魅力かなと思いますし、この今映っているジャケットのこの右の子が、日本とフランスのハーフのノエ・サンピっていう女の子なんですけど、彼女がね。やっぱり不思議な魅力? これ、監督も言ってましたけど、やっぱりその、彼女はすごく我が強くて、キャスティングする上で、もしかしたらリスクもあるかもしれないけど、カメラを通して見たときに、圧倒的になんかこうスクリーンの収まりがいいと。やっぱり女優の資質を持っているっていうことで、キャスティングされたみたいです。
渡辺:うんうん。
有坂:ちなみに、この監督、この映画をつくったのは諏訪敦彦監督とフランス人の監督の共同監督なんですけど、諏訪監督はなんかこんな面白いこと言ってました。「実は、森で撮影なんてしたくなかった。森は手強い。森を撮っても森なんか映らない。木が映っているだけだ。それを森にしなくちゃいけないんだから大変です」と。
渡辺:へぇー。
有坂:これはやっぱり映画監督ならではの視点で、僕らはやっぱり映ってるものにカメラを向ければ、それがそのままきちんと記録されると思ってるんですけど、やっぱりカメラに写したからって、森を再現できるわけではない。それをどういうふうに撮るか、それは光だったりとかアングルだったりとか、いろんな多分こう、要素があると思うんですけど、それを考えた上でも、森を森のまま写すのは大変らしいんです。
渡辺:うんうんうん。
有坂:だけど、これ観てもらえればわかりますけど、きちんと森に写っているので、その監督の苦労もね、ぜひ本編で確認していただきたいなと思います。最後に、この映画のラストに流れるのは、UAが歌う沖縄民謡です。なので、フランス映画だけど、日本映画でもあるという、ちょっと一言では定義できない魅力を持った作品が、「ユキとニナ」になります。ぜひ観てみてください。 渡辺:なるほどね。なかなか説明の難しい。
有坂:そうだね。
渡辺:じゃあ、ちょっとそういうなんか幻想的というか、象徴的な森というところから、一転しまして、僕の3本目ですね。



渡辺セレクト3.『フリーソロ』
監督/エリザベス・チャイ・バサヒリイー、ジミー・チン,2018年,アメリカ,100分

有坂:はははは、一転したね(笑)
渡辺:一転しました。
渡辺:『フリーソロ』っていうのはドキュメンタリー映画です。で、山と対峙し続ける男を追ったドキュメンタリーなんですけど、“フリーソロ”って何かというと、命綱とか道具とか一切使わずに、断崖絶壁を登ることを言うんですね。なので、もうなんていうんだろう、“究極の山登り”っていうかね。オリンピックでもボルダリングがあって、結構失敗して落っこったりしてますけど、もうこのフリーソロっていうのは、1回の失敗がイコール死に直結するっていう、めちゃくちゃ危険なスタイルなんですね。これをずっとやり続けてる男の人がいて、その人を追ったドキュメンタリーなんですけど、この人の目標っていうのが、970メートルもある断崖絶壁を踏破するっていうので。そのためにストイックな準備をして、それをカメラは追い続けるんですけど、もう一瞬のミスがイコール死になるっていう、めちゃくちゃ緊迫感のある映像になっています。で、「これほんとにどうやって撮影したんだろう?」っていうぐらい、結構息づかいが聞こえるぐらいまでの映像を撮っています。多分、ドローンとかを駆使してやっているんですけど、あんまりその撮っている側のことを意識させないぐらい自然で、上手な撮影になってるんで、この緊迫感ってのすごい盛り上げていたりするんです。あと、この映画で面白いのが、この主人公の男の人が、「なんでこんな危険なことやってるの?」っていう、ちょっと人間性のところにまでインタビューしたりとかして迫っているというところも面白かったなと思います。
有坂:そうね。
渡辺:なので、こう、自然、特にこの山とすごい向き合い続けている男。しかも、超危険なことをやっている。まあ、これはほんとにすごい映像なので、もう、ちょっと観ているだけで怖いぐらいドキドキする作品なんですけど。これも結構配信とかでやってると思うので、ぜひ興味ある方は、観ていただきたいと思います。
有坂:これはあれだね。できれば、プロジェクターとかレンタルしちゃって。
渡辺:そうね。
有坂:壁に大きく映して観た方が、臨場感があって面白いかなと。
渡辺:インスタで挙げてたでしょう?
有坂:最近ね、「ねおきシネマ」で僕も挙げていて。いや、高所恐怖症の人にとっては、もう地獄の時間です。でもそれぐらい迫力があるし、これをね、作品にまとめてくれたっていうことは、ものすごく大きな意味がある。アカデミー賞を取ったんだよね。長編ドキュメンタリー賞とか。
渡辺:そうですね。だから、作品としてもすごい評価されています。
有坂:そうそうそうそう。……はい、わかりました。じゃあ、次僕はですね、ちょっと、これは「山と森」っていうテーマからずれちゃうかもしれない(笑)。
渡辺:ええ!!
有坂:いや、森か山かっていわれたら……川なんだよね。
渡辺:(笑)



有坂セレクト3.『リバー・ランズ・スルー・イット』
監督/ロバート・レッドフォード,1992年,アメリカ,124分

渡辺:ふんふんふん。
有坂:1992年のアメリカ映画です。まあこれはですね、もう言わずもがな、ブラッド・ピットの大出世作として名高い1本ですが、これどういう話かっていうと、ある厳格な牧師の家庭で育った兄弟の話になります。で、真面目なお兄さんと自由奔放な弟。その2人は、父に習ったフライフィッシングで結ばれている2人。ただ、成長していくに従って、だんだん2人は違う道を歩んでいくという物語になっています。で、多分これ兄弟だからっていうのはあるけど、もし、例えば学校で知り合った友達だったら、絶対仲良くなってないだろうなっていうぐらい対照的な兄弟なんですね。兄と弟。それで、なかなかうまくいかないこともあるんだけど、やっぱり小さい頃から父に教えてもらったフライフィッシングが、2人の心をつないでくれている。フライフィッシングっていうのは、すごくこのビジュアルを見てのとおり、絵になるんですよ。やっぱり、これがこの映画のキーポイントなので、いかにこの大自然の中で、人間がフライフィッシングしてるのを美しく撮るかっていうのを、監督のロバート・レッドフォードは徹底的にこだわって。
渡辺:めちゃくちゃ綺麗だもんね。
有坂:すごい綺麗! そんな1本になってます。ほんとに、もう芸術的なフライフィッシングのシーン、もうブラピの顔もあんな美しかったのに終わって思い出そうと思うと、このジャケットのイメージみたいな、引きのシーンが浮かぶ。やっぱりそれぐらいこの映画は、この大自然、モンタナの大自然っていうのも映画の主人公といってもいいぐらいの存在感を放っています。まあ、川が舞台でありながらね、山でもあり、森でもある。
渡辺:そうね。森の中の川だからね。……なんだ、“ミシシッピー川”とかが出てきちゃうのかと思った(笑)。
有坂:そうそう(笑)。そういうところで入れました。ブラピは、この『リバー・ランズ・スルー・イット』までは、割とちょい役が多かったんですけど、この映画でもう若手のスター俳優としての地位を確立して、翌年、『カリフォルニア』という映画で主演し、そのあと『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』でトム・クルーズと対等に戦い、そのあと『セブン』です。 渡辺:そうですね、スター街道に。
有坂:そう、だから、もう彼がスター街道まっしぐらになる直前の作品で、これ、監督のロバート・レッドフォードも、彼も俳優ですけど、若い頃のレッドフォードってブラピそっくりなんだよね。そっくりだなって思ったのが、まさにこの『リバー・ランズ・スルー・イット』だったので、ぜひ観たあと、監督のロバート・レッドフォードの昔の顔もググっていただけると面白いかなと思いますので、ぜひ観てみてください。
渡辺:なるほどね。
有坂:これ言われるかなと思った。
渡辺:川っていうから何かと思った(笑)。そう来ましたね。じゃあ、次これいこうかな。僕の4本目は北欧に行きたいと思います。



渡辺セレクト4.『ミッドサマー』
監督/アリ・アスター,2019年,アメリカ,147分

有坂:ああ! 渡辺:まあ、これは北欧といってもホラーです。
有坂:「北欧といっても」って(笑)。
渡辺:北欧の美しい森の美しい話を想像されてしまうかもしれないんですけど、どういう映画かというとホラーで(笑)。でも、ほんとに北欧の美しい森が舞台になります。主人公はアメリカ人なんですけど、スウェーデンから来た留学生に、「夏休み、僕の実家に来なよ」っていわれて、「じゃみんなで行こうぜ」って行くという話なんですけど、それがちょうど夏至祭をやっている、夏のお祭りの時期に行くことになります。それで、すごく緑豊かで、青空で、小さい村なんですけど、みんな白い服を、綺麗な服を着ていて、本当にそのコントラストがめちゃくちゃ綺麗で美しい村になります。ただ、そこで、ある日殺人が起こるという形のホラーになってくんですね。1人また1人と次々と殺されていくんですけど、それがどういうことなのかとか、何か最初はわからない。いろんな謎が散りばめられていたりして、そういうちょっと謎解きみたいな要素もあるところが、この映画が人気があるところなんですけど。あと、ほんとにホラーなんですけど、真昼に起こるんですよね。
有坂:うんうん。
渡辺:普通、ホラーっていうと、廃虚とかもうシチュエーション的に怖い、で、真っ暗な中から急に「ドン! 」って出てくるっていう脅かし方をするホラーが多いんですけど、これはもうそういうことではなくて、なんて言ったらいいのかな、怖さでいうと、すごい田舎の昔からある奇妙なお祭りのしきたりが、実はホラーだったみたいな。そういうタイプの怖さなんですよね。なので、そこに巻き込まれていくアメリカ人学生たちみたいなところのハラハラドキドキと、あとはちょっとそういう、田舎の伝統というかそういうところと結びつけた怖さのある作品です。まあ、これは映画としてもすごく面白いので、まあちょっとホラーなので苦手な人はいるとは思うんですけど、なかなか面白い作品。機会があればぜひ観てほしいなと思います。
有坂:「なかなか面白い作品で」とか言ってますけど……、鬼怖いです。
渡辺:(笑)
有坂:とことん行きますよ。だけど、やっぱりその美術。このね主人公がつけているものだったりとか、まあファッションだったり、あと自然光の美しさとか、ビジュアル面を徹底的に美しくしている。それ故の怖さは間違いなくあるし、これチラシとかパンフレットとかがすごい人気で、それを見た人は「もうぜひ絶対観たい!」っていうぐらい、ビジュアルはオシャレなんですよ。で、本編を観ても間違いなくビジュアルはオシャレなんですけど、でも、その反対側まで内容の方で振り切ってくれるっていう、あんまり今までにないようなタイプの作品になっています。
渡辺:そうだね、これつくっているのが、「A24(エー・トゥエンティーフォー)」っていう、今アメリカで一番イケてるといわれている映画会社なので、若者にはすごい大人気みたいなところの作品ではあるんですけど。
有坂:今、フィルマークスの評価3.4だった。低いよね。
渡辺:ね、だんだん下がってきている(笑)。でも、やっぱりホラーとかは下がりがちだと。
有坂:まあ、あと「イメージと違った」っていうね。
渡辺:ああ、それはあるかも。「なんてものを見せてくれるんだ!」みたいな。
有坂:そうだね。そういう評価の人は、いるかもしれないね。作品としてはほんとに力強い。ぜひ観るべき一作かなと思います。はい、じゃあ、そんなハードな作品の後に、僕はですね。古い日本映画を1本紹介します。



有坂セレクト4.『按摩と女』
監督/清水宏,1938年,日本,66分

渡辺:ええ! へへへ。
有坂:これを手紙社のイベントで紹介する日が来るとは(笑)。この『按摩と女』というのは、清水宏という監督がつくった作品になってます。彼の代表作と言われている1本なんですけど、舞台は山奥にある温泉地です。主人公は盲目のあん摩、​マッサージ師ですね。それで、流しであん摩をしている人で、「この時期はいつもここに来ます」みたいな人で、その人が盲目であるという設定の映画になっています。で、その彼が、あん摩稼業をしながら地元の温泉場で出会った人たちとの交流なりがあった中で、東京からやってきたという謎の女に恋をするっていう物語になってます。これね、上映時間66分なので、ほんとにさくっと観られる……、「さくっと観られる」っていうと、ちょっと語弊があるか……。さくっと観られるんですけど、ただ途中なんかこうすごくユーモアもあって、笑えるシーンもあって楽しめつつ、でもラストにね、ちょっと切なさが残るのが、すごく僕は個人的には大ヒットした作品です。
渡辺:うんうん。
有坂:で、この時代、1938年のころの映画っていうのは、まだカメラ、映画を撮るカメラが、こんな巨大な35mm用のカメラなので、そんなカメラを持ってスタジオを出て、要はロケで映画を撮るっていうのは難しい時代なんですね。なので、昔の映画を観ると、大体セットで撮られているっていうのはそういう理由なんです。なのに、この映画はほんとにリアルな温泉地を舞台に撮っています。さらに、この清水宏って人は、すごく映像の、なんていうのかな、アングルだったりとか、その画にこだわる人なので、なんか画がかっこいいんだよね。映っている風景はのどかなんですけど、なんかそのコントラストがすごく面白いし、なかなかこの時代の日本映画としては観られないような質感の作品になっています。まあ、なんか、こうすごく澄んだ空気が映像から伝わってきたりとか、山の静けさ、そういったものが理屈抜きで、ちゃんと映像とか音から感じられるような作品になってます。で、この映画って、実は後にリメイクされていて。知ってる?
渡辺:なんだっけ?
有坂:これね、草彅(剛)君が主演したね。『山のあなた 徳市の恋』っていう映画で。
渡辺:あったね! 全然リメイクだって思ってなかった。
有坂:そう、これ監督がね、『茶の味』の石井克人。だからリメイクしたくなるぐらいの名作で、僕もオリジナルの『按摩と女』が好きすぎて、リメイクを観るのが怖くて、ちょっとまだ観られてないんです。まあでも、いずれ観たいなと思います。
渡辺:(笑)
有坂:ちなみに、最後にこの清水宏監督なんですけど、当時は日本を代表する溝口健二、あと小津安二郎と並ぶ、三大巨匠っていわれていたらしい。それは僕も最近知ったんですけど、ただ、だんだん清水宏の評価だけが下がってきて、その溝口、小津と彼が並ぶことはなくなってしまったんですね。で、それが果たしてなんでそうなったかっていうのを調べると、どうやら彼がつくる作品数の多さが、理由なんじゃないかなと。巨匠、だいたい巨匠って言われる人って作品数が少ないじゃん。もう何年に1本撮るみたいな。そんな中、例えば具体的にいうと、小津安二郎が、ある年……ちょっと何年かわかんないんですけど、54本つくっていた、溝口は90本、でも清水宏は164本。
渡辺:ははは。小津だってまあまあ多いよね(笑)。
有坂:そう多いよね。だからもうね、こういうジャンルのものだけを撮るっていう監督ではなくて、いろんなタイプのことにチャレンジしたくなる人なんですね。で、当然、その中で失敗とかもあるんだけど、やっぱり失敗も全部チャレンジしながら、自分の表現を追求していった人なので、今改めて再評価されてるような監督になってます。なので、その彼の代表作が「按摩と女」なので……。
渡辺:なるほどね。すごいとこ持ってきたね(笑)
有坂:これほんとすごい好きな1本なので、ぜひシェアしたいなと。
渡辺:この時代の作品って、けっこうあん摩が出てくるよね。
有坂:そうだね。そうそう。
渡辺:今ってないけど。
有坂:で、なんか盲目でって、「座頭市」もね、そうだよね。そういう設定のものも多かったのかな。めちゃくちゃ渋いですけど、66分なので、何かの合間の時間に観て衝撃を受けてみてください。
渡辺:割とさくさくときてるね、今日は。もう5本目だもんね。しかも被らず!
有坂:次が被りそうなんだよな。どうか被らないようにお願いします!
渡辺:はい(笑)。じゃあれにしたいと思います。……どうしよう、あまりにも被らなかったから迷っちゃうな(笑)。
有坂:そんなパターン(笑)。
渡辺:まあでも、こっちにするか。
有坂:え! お願い!
渡辺:じゃあ、僕の5本目はアメリカ映画で……。
有坂:なんだろう!



渡辺セレクト5.『ブロークバック・マウンテン』
監督/アン・リー,2005年,アメリカ,134分

有坂:ああ! 忘れてた。
渡辺:これは、監督はアン・リーという中国の監督です。で、作品としてもアカデミー賞の監督賞を獲ってます、その年。あと脚色賞かな、何部門か獲っていて、その年、本当に評価をされた作品となってます。で、どういう話かというとカウボーイの話です。季節労働をしているカウボーイで、ある時季、山小屋にこもって家畜の放牧の世話を見ていないといけないみたいなところを担当したカウボーイ二人の話です。で、山小屋で二人で、何にもないところで過ごしているんで、だんだん仲良くなっていくんですけど、あるとき、友情を超えてですね、愛情になっていくという話になってます。でも、季節労働なので、その季節が終わると、またバラバラになるみたいな。翌年、片方は同じブロークバック・マウンテンに戻ってくるんですね。で、また同じ季節労働の仕事をしに来るんですけど、その仕事にはありつけず、残念なんですけど、ただ、もう一方の相手の彼が、ブロークバック・マウンテンには来てないということを知ってですね、ちょっとショックを受けるんです。それでまた何年か経って、お互い結婚をして、片方は子どももできてみたいな形で、それぞれ家庭を築いて別々に暮らしてたんですけど、ある日ある時、再開してしまうというところから、また話が転がっていくというストーリーになってます。これは、やっぱりこういうジャンルの作品としては、このときは結構斬新な感じだった。こういう男性2人のラブストーリーというか、そういうタイプの作品というのはこのときは珍しかったんですけど、でも評価もめちゃくちゃ高くて、割とこういうタイプの作品が、この後、すごい増えてきて、それでもやっぱり『ブロークバック・マウンテン』を超える作品はないんじゃないかなって思うぐらい傑作です。
有坂:うんうん。
渡辺:とにかく役者が、すごくいいんですよ。ジェイク・ギレンホールと……
有坂:ヒースね。
渡辺:そうヒース・レジャーですね。この二人が、もうめちゃくちゃいいんですよね。なんか、口数の少ない寡黙なカウボーイなんですよね。端から見たらもうほんとに「ザ・カウボーイ」みたいな、南部の男みたいな感じなんですけど、そこのなんかセリフとか、表情の少なさの中で表現するみたいなところがいいんですよね。で、やっぱりその関係性として、時代設定もちょっと前なので、やっぱりゲイとかが許されない時代なので、その中で会うとか、関係を保つとかっていうのはすごい危険でもあるんですね。なので、そういうところの微妙な表現みたいなところとか。あとですね、そのそれぞれの奥さん役も、ミシェル・ウィリアムズとアン・ハサウェイかな、ここもいいんですよ、すごい。「ちょっと、あれ? うちの旦那、もしかして……」みたいなところの表現も、すごくセリフで表現するとか、ナレーションで流すとかじゃなくて、微妙な表現でそれを演技するので、ほんとにね、役者の演技っていうのがもう全員いいんですよね。なので、そういうところも、すごく評価の高い作品かなと思います。
有坂:この映画さ、アカデミー賞の作品賞獲れなかったじゃん。この年って『クラッシュ』だよね。
渡辺:そうだっけ。
有坂:確か『クラッシュ』って映画が獲って、「絶対作品賞は『ブロークバック・マウンテン』だろう」と思った記憶がある。もう比べなきゃいけないとこが、ああいう賞レースの難しいところですけど、自分がどっちか選べって言われたら、断然『ブロークバック・マウンテン』。作品としての完成度がほんとに群を抜いてるし、ただ、ああいう賞レースはね、時代の流れとかも影響してくるので、まあそれもあって、あの年は『クラッシュ』だったとう記憶がある。
渡辺:これね、めちゃくちゃ好きな作品なんですよね。
有坂:忘れてたわ……。よかった、忘れてて。
渡辺:被らなかった?
有坂:被らなかった。……ん、ん、喉がつぶれてきちゃった(笑)5本目を前に。
渡辺:(笑)
有坂:じゃあ、僕の最後5本目は、アメリカ映画です。



有坂セレクト5.『はじまりへの旅』
監督/マット・ロス,2016年,アメリカ,119分

渡辺:ああー! はいはいはい。
有坂:これ、候補に入っていた?
渡辺:うん、入ってた。
有坂:だよね。はい、これは家族の話です。森で暮らす、あの一応時代設定は現代なんですけど、もうそういう現代社会に背を向けて、森の中で自給自足で暮らす家族の話。これ、お父さんがヴィゴ・モーテンセン。一番有名なのは、あの『ロード・オブ・ザ・リング』のアラルゴン役かなと思うんですが、そのヴィゴが父親で、もう絶対的な権威的な父親で、そのお父さんにえっと6人かな、子どもがいて……。
渡辺:むちゃくちゃ子沢山なんだよね。
有坂:そうそう、それでもう自給自足だし、もうサバイバル。
渡辺:学校行ってないんだよね。
有坂:そう、学校も行かず、もうそのお父さんなりの教育論があって、結構難しい本とかもみんな読んでたりして、「この教育、この生活を送ってれば幸せになれる」っていう、お父さんの中では確固たる信念がある。そういう家族の話。それで、その家族の中のお母さんが物語の途中で亡くなってしまって、で、その葬儀に向かうためについに森を出るというところから、ロードムービーが始まります。その子どもたちにとっては、初めて触れる現代社会。コーラっていう飲み物があって、「これ何?」って言ったら、「こんなの毒だ」みたいなことをお父さが言っちゃったりとか、だんだんですね、子どもの欲求と、お父さんの理想にずれが生じて、というところにいろんな物語が生まれてくる作品になってます。まあ1台のバスで森を出て都心の方に向かっていく、その途中、道中いろんなちょっと笑えるようなエピソードもあったり、ちょっ​​とこう音楽もいろいろ印象的な曲が使われたりっていうところでいうと、『リトル・ミス・サンシャイン』にちょっと重なるところもあるような映画です。
渡辺:うんうんうん。
有坂:予告編見るとね。まさに『リトル・ミス・サンシャイン』っぽいんですけど、ただあっちの映画よりも、もうちょっとリアリティがあるというか、後半はちょっとシリアスな話になってくるね。なんか、メッセージ性が強いっていうのかな。その、学校教育とか消費社会とはなんぞやとか、割とそういうメッセージ性が前に来るような内容です。しっかり見応えのある作品に仕上がっているので、まあ、そういうちょっとシリアス要素とか社会派なものも含めて、好きな人にはもう絶対もうドンズバな一作。
渡辺:そうだね。音楽もいいしね。
有坂:いいよね。途中けっこう泣けるシーンもあります。これはカンヌ国際映画祭の「ある視点」部門という部門で監督賞を取ってますね。で、お父さん。僕も去年、父親になって、父親目線で考えると、まあ自分の信念を貫いて、家族のこともすごい愛してるじゃない? で、まっすぐ生きてるのに、「なんでうまくいかないんだろう?」って。
渡辺:うーん(笑)
有坂:お父さんのこのヴィゴの悩みは、めちゃくちゃ深いと思うんだよね。ただ、それはもう端から見ていれば、「うまくいかないよね」って思うこともあるんですけど、もう、その家族のど真ん中にいるお父さんからしたら、「もうやる手は全部打った。けれど、どんどん家族が崩壊してく」っていうのは、まあ、それはでもね、同じ設定じゃないにしても、自分に置き換えて考えられることもたくさんあるんじゃないかなと思います。家族っていう単位もそうだし、学校とか会社とか、そういう組織の中での自分のあり方、理想の持ち方とか、なんか色々ね、学べることもある作品かなと思うので、ぜひ観てください。で、このお父さん役のヴィゴ・モーテンセンは、ほんとにもう彼のキャリア史上の中でもベストといってもいいぐらいの演技を見せて、アカデミー賞にもノミネートされたんですよ。だけど、結局取れなかった。なんで、このヴィゴで取れないんだよと思って、そういえば、誰とったんだっけと思って調べたの。
渡辺:うんうん。
有坂:そうしたら、『マンチェスター・バイ・ザ・シー』のケイシー・アフレック。
渡辺:ああ、なるほど。あの年だ!
有坂:納得だよね。これはもうしょうがない。あとねこの年は『ラ・ラ・ランド』のライアン・コズリングもノミネートされたから、かなりハイレベルな戦いだったんですね。
渡辺:そっかそっか。
有坂:ぜひ、これはロードムービーが好きな人にも観てほしいし、森で暮らす、現代人がほんとに、もう森でサバイバル生活を送っているっていうレア映像も観られますので、ぜひ観てほしいなと、森ガールにはぜひ観てほしいなと(笑)。違うか。でも、ほんとにおすすめの1本です。ぜひ観てみてください。


──


渡辺:それにしても被らなかったね。
有坂:すんなりいったね。
渡辺:『はじまりの旅』は、でも候補には入っていたけど。
有坂:あと、何があった?
渡辺:あとは『もののけ姫』とかもあって。
有坂:絶対出てくるかなと思った。俺は、ジブリを語る資格がないから、そこは任せようと思ってたんだけどね(笑)。
渡辺:(笑)、あとなんだろう。『ブンミおじさんの森』(笑)
有坂:ああ! あっ、俺はねトルコ映画の『蜂蜜』。
渡辺:ああ、なるほどね。
有坂:ただ、ちょっとこれも配信とかで観られないから、予備にしとこうと思って紹介しませんでした。
渡辺:あと、『ヘイトフル・エイト』とかね。雪の山小屋。密室の。
有坂:ああ、なるほど、なるほど。そっかそうね、確かにそう考えると結構あるかもね。
渡辺:うん割とでもね、怖いのが多いイメージだよね。
有坂:そうそう、山はそうだよ。だから『サウンド・オブ・ミュージック』は入れようと思った。
渡辺:あとね、ディズニーとかも多かった。
有坂:森、そうだよね。
渡辺:「アナ雪」とか、そっちにいくと結構ベタになりすぎちゃうかなと思って。怖すぎずのところで、でも、そうすると被るかなと思ったんだけど、意外と被らずに。
有坂:そうだね、良かった良かった。


──


有坂:今回からね、お題が。先月までは国・地域縛りがあったところから、ちょっと今年はですね、お題が変わってきました。あの最初に喋ってた手紙社の小池Pが、1年間テーマをもう出してくれている。これも、ちょっと僕らもワクワクするようなお題ばっかりなので、ぜひ来月以降も楽しみにしていてください。最後にお知らせ。
渡辺:あっ、そうですね。僕らのゴールデンウィークのイベントがあります。ゴールデンウィーク最後の土曜日、日曜日に、代々木上原にある「hako」というギャラリーで、“映画のタイトルデザイン”についてのイベント(タイトルデザインの世界)になります。
有坂:「タイトルデザイン」ってわかりますか? みなさん。
渡辺:ね、聞いたことない人もいるかもしれない。タイトルデザインって、映画のオープニングに、いろんなアニメーションを使ったね。
有坂:そう、スタッフのクレジットが出るところとか。
渡辺:ちょっと趣向を凝らして、映画監督とは別にね、デザイナーを入れたりして、オープニングを表現するっていうのがあるんですけど、それが結構いろんな映画でね。
有坂:まあ、メジャーなところでいうと、あの「007」の始まり方とか、あのスタッフの名前が出てるところが、すごい妙におしゃれで、かっこいいなって思った方もいると思うんですけど、あそこにわざわざデザイナーを入れて、1個の短編映画みたいにつくっている作品ってのが結構あって、で、それはね、辿っていくと1950年ぐらいからそのカルチャーは始まっているんですね。それで、まあ50年代から今に至るまでの本当に分かりやすい、なんていうか、話を映像を交えながら学べるような、そんなイベントを代々木上原の「hako」というギャラリーでやります。
渡辺:で、1階と2階とね、2階建てなんですね。で、1階ではイラストレーターの「norahi」っていうアーティストのですね。映画のポスター展をやったりとか、2階で上映スペースがあるんですけど、2階には実はバーカウンターもあって、そこでですね。僕がお酒を作ります!
有坂:順也BARが。
渡辺:順也BARっていう(笑)。
有坂:映画のお酒をね。
渡辺:はい、2日間限定で開催しますので、お酒だけでも飲みに来るのもオッケーなので。
有坂:上映のほうは2,000円ワンドリンクで、ワンドリンクはお酒ももちろん飲めますし、キャッシュオンで2杯目、3杯目も飲めるということで、なんかこうお酒とかを飲みながら、そういう映画の新しい楽しみ方を学んでほしいなと思って、そういう場を用意しましたので、ぜひ観にきてほしいね。


──


−−−ここでちょっとキノ・イグルーのお二人とお話ししたい方がいらっしゃってます。
有坂:あの方じゃないですか? Sさん?
−−−はい、シンガーソングライターの笹倉慎介さんです!
笹倉:はい、こんばんはご無沙汰しております。
二人:笹倉さん、お久しぶりです! 見てましたよライブ。
笹倉:会いたかった!
有坂:ねえ、会えるかなと思ってたら。
笹倉:いや、今日ほんと行きたかったんですけど、昼間のライブと、あとですね、あの今日、さっきちょっと情報公開されたことがありまして。
有坂:教えてください。
笹倉:お知らせしたいなと思っていて。あの5月27日(金)にライブ&トークイベントをするんですよ。それで、あっ、こんな自分の話をする前に、お二人、お疲れ様でした!
有坂:いえいえ、どうぞどうぞ。
笹倉:でも、僕、お二人が喋っているのすげえ好きっす。
有坂:いや、もう優しいんだから。
笹倉:飲みに行きたいですね。
有坂:行きましょう。
渡辺:もう落ち着いてきたからね。
笹倉:今、ここ杉並区の善福寺っていうところで、吉祥寺とかめっちゃ近いので、歩きで行くので。
有坂:浴びるほど飲みましょう。
笹倉:観たい映画もたくさんある。
有坂:あ、画面に出ましたね、これかな?
笹倉:えっとライブ&トーク、そうですね。この「FIELDS」っていうやつですね。ライブ&トークで、今回、異分野の方とのトークセッションとバンドのライブをちょっと組み合わせたものにしようかなと思っていて、今回、「音楽と文学」っていうテーマで、又吉直樹さんをゲストに。又吉さんにその小説とか短編を2タイトル選んでいただいて、それに対して僕が曲を作り、当日お披露目してっていうライブイベントなんですよね。ちょっと僕、ほんとにライブハウスでやるのめちゃくちゃ久しぶりなんですけど、ちょっと面白いイベントにしたいなと思っていて、こういう感じのイベントがありますので、もうチケットがさっき発売開始になって、情報公開と一緒に発売になったので、実は昨日、又吉さんとPodcastを撮っていて、作品も2つ決まって、あのこれから制作しようかなと思っていて。
渡辺:すごい!
有坂:笹倉さん、聞き上手だからいいと思いますよ。こういうイベント。僕、だって笹倉さんに前に取材してもらったことあったじゃないですか。やっぱりそのインタビュアーの人の引き出し方というか、人柄って、やっぱすごい聞かれる側ってね、重要だと思うんですけど、あの時、ほんとにもうなんか取材だってことを忘れるぐらい、引き出し方がうまいなと思った記憶があります。
笹倉:ありがとうございます。
笹倉:僕、有坂さんと飲んでいたときに、こんなに気持ちよく話を、酔っ払いの話を聞いてくれて。帰り道、こんな気分がいいことはあんまりないなと思った記憶があります。
有坂:ありがとうございます。
笹倉:頑張りたいと思います。
有坂:すごいよさそう! 5月27日、金曜日ですね。
笹倉:金曜の夜で、まあ夜7時からって結構早いんですけど、まあ東京の表参道なんで、いろんなところから来やすいかなと思って。
有坂:すごいビッグニュースだね! 乱入してもらってよかった。じゃあ、せっかく乱入してもらったんで、笹倉さん、「山と森な映画」って言われたら1本どんな映画を思い浮かべます?
渡辺:急に振られて困ると思いますけど(笑)。
笹倉:『イントゥ・ザ・ワイルド』とか。
渡辺:おお! 僕と被りましたね。
笹倉:『イントゥ・ザ・ワイルド』か、『WOOD JOB!(ウッジョブ)』。
二人:ああ!(笑)
有坂:その手があった。出てこなかったな。
渡辺:そうだね、邦画のコメディ。
有坂:意外な1本が出てきましたね。
笹倉:でも、「トトロ」とかもそうですよね。
有坂:そうそう、ジブリはそうですよね。
渡辺:まあ、でもぱっと出るもんですね。
有坂:さすが! またぜひ、映画の話も改めて、聞かせてください。
笹倉:映画も最近、そう最近、ちょっとなんか告知になっちゃうんですけど、5月にドキュメンタリーで、「ロックフィールド」、あと、もう1本、ちょっとど忘れしちゃった……もう頭が混乱している、なんだっけ。まず1本、その『ロックフィールド 伝説の音楽スタジオ』っていうイギリスの郊外の音楽もののやつと、あとハリウッドの北の『ローレル・キャニオン 夢のウェストコースト・ロック』をオンライン視聴させてもらったんですよ。「ローレルキャニオン」がめちゃくちゃ良かった。なんか、ウエストコースト・ロックの発祥の、要するにハリウッドの北の山の中に、その昔ミュージシャンたちがいっぱい住んでいて、そこでの事件だったりとか、ちょっとあんまり話すとネタバレになっちゃうんですけど。感動しました。
渡辺:そうなんですね。楽しみだね。
有坂:もうすぐだよね。
笹倉:5月とかですかね。
渡辺:でも最近、音楽もののドキュメンタリー、いいやつ、めちゃくちゃ増えましたからね。
笹倉:なんかバンバン出てきてます。多分、伝説の人たちがもう棺桶に半分足突っ込んでる(笑)。
有坂・渡辺:(笑)
笹倉:そろそろ、撮っておかないと、話を聞いとかないとやばいぞっていう。
有坂:確かにそうですよね。
笹倉:ひしひしと感じますね。でも、多分、思い出して話しているんで、多分、本当とちょっと違うことがあるんだろうなって。僕も自分でなんか昔のこと書いていると、書きながら「違う」って思うことがあって。
渡辺:どういうことですか美化しちゃう?笑
笹倉:だから美化しちゃうし、で、まあそういうこともあるんでしょうが、でも、そういうことも含め、なんかあの楽しめるかなと。
渡辺:この前ね、ドキュメンタリー映画について二人で語る場があったんですけど、もうそんときなんか、もう音楽ものだけでも、1時間話せそうだなって思ったぐらいだったので、ちょっとね、今度そういう話とかしたいよね。
有坂:そうだね。プロの視点で。
渡辺:音楽もののいい作品、ドキュメンタリーとかいっぱいありますからね。
笹倉:いや、ちょっと僕の知らないものも多分知ってるんじゃないかなと思うんで。
渡辺:ね、でも、そういうのも含めて。
笹倉:あとあれ、面白かったです。ヴィム・ヴェンダースの監修した『ブルーノート・ストーリー』。あれも最高でしたね。 有坂:音楽ものは、結構観るんですか?
笹倉:なんか観に行きますね。ちょうど、アップリンクさんが吉祥寺にできてくれたんで、あそこに。それも何も決めないで行くんですよ。行ったときにやっているのを観るっていうのが、最近の僕の楽しみで。
有坂:ああ、素晴らしい! それは素晴らしい。
渡辺:結構やってるもんね。
笹倉:ちょうど、大体そのちょうどいいのが何かしらあるんですよ。
有坂:いや、そこでなんかね、『少林寺』とか観てほしいね。
渡辺:やってるからね、今ね。
有坂:ありがとうございます! 乱入してくれてありがとうございます。
渡辺:また改めて飲みましょう。
笹倉:すみません、手紙社のみなさん、乱入させてくださって、ありがとうございます。今日はほんとお疲れ様でした!
二人:ありがとうございます! また会いましょう!
有坂:じゃ、これでこのまま終わりかな。はい、ということで、今回はね、2人目のスペシャルゲストを迎えてね。前は緒方伶香さんが出てくれましたが。ということで、笹倉さんのイベントもぜひ皆さんチェックしてみてください! では、今月のキノ・イグルーの「ニューシネマ・ワンダーランド」はこれで終わりたいと思います。今日はどうもありがとうございました!
渡辺:ありがとうございました! おやすみなさい!


──



選者:キノ・イグルー(Kino Iglu)
体験としての映画の楽しさを伝え続けている、有坂塁さんと渡辺順也さんによるユニット。東京を拠点に、もみじ市での「テントえいがかん」をはじめ全国各地のカフェ、雑貨屋、書店、パン屋、美術館など様々な空間で、世界各国の映画を上映。その活動で、新しい“映画”と“人”との出会いを量産中。

Instagram
キノ・イグルーイベント(@kinoiglu2003
有坂 塁(@kinoiglu)/渡辺順也(@kinoiglu_junyawatanabe