これは、「手紙社の部員」のみなさんから寄せていただいた“お悩み”に、文筆家の甲斐みのりさんが一緒になって考えながらポジティブな種を蒔きつつ、ひとつの入り口(出口ではなく!)を作ってみるという連載です。お悩みの角度は実にさまざま。今日はどんな悩みごとが待っているのでしょうか?



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第15回「特別編・人見知りな自分にどう向き合う?」

 

月刊手紙舎読者のみなさん、こんにちは。東京は9月が近づくにつれ、少しずつ朝晩の風が心地いい過ごしやすい気候になってきました。私は9月が誕生日月ということもあり、秋は一年中で一番好きな季節。みのりという名前も、“実りの秋”に由来しています。身近な友達にも、9月~10月生まれの友人がたくさんいるので、みんなでドレスアップをしてちょっと贅沢な誕生会を兼ねた食事に出かけたり、プレゼント交換する恒例の行事を楽しみにしています。




今月の「悩みは“すき”の種」は、ちょっと趣向を変えた回に。8月下旬に、手紙社メンバーが日替わりでMCをつとめる、手紙社の部員さんたちに向けた「夜ラジオ」にゲスト出演いたしました。そこでは、毎月の「悩みは“すき”の種」の役割をチェンジして、私の悩みを部員のみなさんにお答えいただいたので、今回はみなさんの回答をご紹介できればと思います。



【今月のお悩み相談】

甲斐みのりからの相談

手紙社部員のみなさまへ。今回は私のお悩み相談を。

私は子どもの頃から極度の人見知りでした。慣れてしまえば普通にふるまうことができるのですが、慣れるまでにとてつもなく時間がかかる。親戚の集まりも、子ども会のキャンプも、4つ上の姉の背中に隠れて参加し結局、姉以外に誰とも話せず終わりを迎えるということもよくありました。仕事を始めてからの一時期、人見知りを克服するぞとがんばった時期もありました。それによって以前よりは社交的になれたように思うのですが、頑張れば頑張るほどとてもつらい。コロナ禍により人付き合いが限られたとき、本当の気持ちを打ち明けると、人間関係においては楽だなと思うところもありました。そうしてもうこれからは、もうそんなに無理をしなくてもいいんじゃないか? と感じるようになってきました。

部員のみなさまの中にも、人見知りな方がいらっしゃるのではと思うのですが、どんなふうに克服してきたか、これからどうしていこうと考えているか、参考までにお聞きしたいです。40もなかばにさしかかった今、これからは無理せず生きていった方がいいでしょうか。

また、「自分は人見知りじゃないよ」という方、人見知りだなあと思う人に出会った時はどうされていますか?

人見知り談義、よろしくお願いします!


夜ラジオがはじまる前に、こんな相談を手紙社の部員のみなさんにお送りしたところ、たくさんのアドバイスや共感の声が集まりました。手紙社の部員のみなさんの中にも、各地の人見知り代表がいましたか! と、ほっとしました。そうして、みなさんからのお言葉は、心強く頼もしいものばかりでした。

ジャスコさんの


“人見知り=短所と捉えられがちですが、私は人見知りの人は長所の塊だと思っています”


には、とても救われました。子どもの頃から私は自分で、何よりの短所を人見知りであることと考えてきたので、気軽に人になじめない罪悪感を捨てていいのだと、心が軽くなりました。

また、夜ラジオの放送中は、みなさんがチャットにメッセージを書き込んでくださるのですが、

“職業柄人と関わっていますが、人見知りと感じる方は、超感度良好のアンテナを持ってるなって思ってます。 よく人のことを見ていてくれてるし、場所の変化にもよく気づいてくれます。 先程のお話にもありましたが、それはとても素晴らしい長所なのではないかと思っています。そのアンテナを大切にしてもらいたいです。(宮村さん)”

“あのー 人見知りです。と思ったり。宣言しようと思う方々は、そもそも「人の思いを大切にしなくちゃっていう意識をしっかりともちあわせてる。」ということなのではないでしょうか。「大切にしなきゃと思うけど思うようにできなくて」しょんぼりしちゃうんじゃないでしょうか。つまり人見知りの方は、人を大切に思う感性が豊かだと言えるんじゃないでしょうか。(弥生さん)”


おふたりが書き込んでくださったことも、胸に響いた言葉です。


他にも提案していただいたように、「うまく話ができないときには人間観察をしながらその場を乗り越える」「女優になったつもりで話してみる」も、楽しみながら実践ができそうです。“人間観察”というのも、決してマイナスな捉え方でなく、周囲の方々がどんなふうに人と交流しているのか参考にするための、プラスの見方ができればと思います。


レイコさんが話題にあげていたジム・ジャームッシュ監督の映画『ストレンジャー・ザン・パラダイス』も観なければ。そうして、同じくレイコさんの「ところで甲斐さんはもうお答えを分かってらっしゃると思ったのが私の第一印象でした」というメッセージ。

そう、そうなのです。長年人見知りだと自覚して生きてきたけれど、そんな自分に頭を抱えて悩んだり、初めての方との食事会や大勢の集まりがある何日も前から緊張したり……。無理をしながらその場に身を置き、うまく話せなかったと落ち込みながら帰るのはもうやめようという答えは出ていました。


それでも今回こうしてみなさんに、長年の悩みを打ち明けたことで、あらためて自己分析ができてすっきりとしています。

人を楽しませる話題を提供できるか。その話に満足してもらえたか。悪気はなくてもなにか失言してしまったのではないか。誰かと会話が始まる前から頭の中をグルグルと駆け巡り、どっと疲れてしまっていました。これからは、自分が話をしなければ、楽しませなければと、気構えすぎていたのをやめて、おおらかに人の話を聞いてみようと思います。そうして、人見知りという性格を欠点だと思いすぎす、これも私の性格なんだと割り切って、楽な形をとっていきます。最初に「なかなかうまくお話できませんが」と打ち明けてもいいだろうと感じる場ではそのように。そこにいるみなさんの話を聞くことを楽しめる場では自分が頑張ろうと気負わずに耳を傾ける。40年以上積み重ねてきた性格は簡単に変えることはできないけれど、「人見知りは短所ではない」という気持ちの切り替えはできるはず。ここでまた、またみなさんに報告しようと思うことで、楽しみながら気持ちの切り替えができるような気がします。

ありがとうございました!


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甲斐みのり(かい・みのり)
文筆家。静岡県生まれ。大阪芸術大学文芸学科卒業。旅、散歩、お菓子、地元パン、手みやげ、クラシックホテルや建築、雑貨や暮らしなどを主な題材に、書籍や雑誌に執筆。食・店・風景・人、その土地ならではの魅力を再発見するのが得意。地方自治体の観光案内パンフレットの制作や、講演活動もおこなう。『アイスの旅』(グラフィック社)、『歩いて、食べる 東京のおいしい名建築さんぽ』(エクスナレッジ)、『地元パン手帖』(グラフィック社)など、著書多数。2021年4月には『たべるたのしみ』に続く随筆集『くらすたのしみ』(ミルブックス)が刊行。