あなたの人生をきっと豊かにする手紙社リスト。今月の映画部門のテーマは、先月のロックな映画に引き続き、「もっとクラシックが好きになってしまう映画」です。その“観るべき10本”を選ぶのは、マニアじゃなくても「映画ってなんて素晴らしいんだ!」な世界に導いてくれるキノ・イグルーの有坂塁さん(以下・有坂)と渡辺順也さん(以下・渡辺)。今月も、お互い何を選んだか内緒にしたまま、5本ずつ交互に発表しました! 相手がどんな作品を選んでくるのかお互いに予想しつつ、相手の選んだ映画を受けて紹介する作品を変えたりと、ライブ感も見どころのひとつです。
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お時間の許す方は、ぜひ、このYouTubeから今回の10選を発表したキノ・イグルーのライブ「ニューシネマ・ワンダーランド」をご視聴ください! このページは本編の内容から書き起こしています。
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−−−乾杯のあと、恒例のジャンケンで先攻・後攻が決定。今月は渡辺さんが勝利し、先攻を選択。それでは、クラフトビールを片手に、大好きな映画について語り合う、幸せな1時間のスタートです。
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渡辺セレクト1.『シャイン』
監督/スコット・ヒックス,1996年,オーストラリア,105分
有坂:世代だよね!
渡辺:そうですね。これは、実在のピアニストをモデルにした作品なんですけど、もう天才ピアニストといわれた少年なんですけど、けっこうお父さんが厳しくてね、名門大学に受かっているのに、自分の支配下から出さないというところで、なかなか音楽の道に進ませてもらえないと、それで、そのうち精神を病んでしまうという実在のピアニストを描いた作品になるんですけど。これの主演を演じたジェフリー・ラッシュが、本当にこれで見事な演技をして、アカデミー賞の主演男優賞をその年に取ったという形になるんですけど。僕はこれを観て、はじめてラフマニノフっていう作曲家を知りました。で、ラフマニノフの曲が、とにかく難しい。それを、神がかり的な指さばきで、すごい速い楽曲なんですけど、それを弾き切ってバタンって倒れるシーンが、けっこう名シーンなんですけど、なんかそのぐらい難易度の高いラフマニノフっていう曲を、この映画で知ったっていうのがあったりするので。そういうなんか知らなかった作曲家とか、なんかそういう天才にしても難易度が高いんだみたいな。そういう曲があるんだとか、そういうことに気づかせてくれた作品だったので、しかも、けっこう若いときに観たから、クラシックとかあまり馴染みがない。
有坂:97年公開。
渡辺:そうだね。で、こういうので、サントラとかを聴いて、ちょっとそこでクラシックを身近に感じるようになるみたいなのがあるので、まあ、映画好きにとっては、こういう作品があるとすごくクラシックを身近にさせてくれるという感じで、思い出に残る作品となっています。でもこれ、観られないのかな? 配信がないんだね。
有坂:本当だ、意外。まあでもすぐね、どこかで観られそうだね。
渡辺:TSUTAYAとかにはあると思うので。
有坂:ねえ、『シャイン』。本当に、僕は94年に映画に目覚めたので、目覚めて間もない、まだそんなに映画のことを知らないなかで観たヒューマンドラマでは、やっぱりけっこう衝撃的な部類に入る。けっこうヘビーじゃん。
渡辺:そうだね。
有坂:やっぱりそのジェフリー・ラッシュの演技も鬼気迫るものがあるし、やっぱりその音楽を通して、本当に表現と狂気って紙一重で、それをここまで観せてくれるんだっていう意味でも、なんか自分の中では特別な一本。もう一回観たいかっていうと、なかなか体力のいる映画ではあるかなと思うんですけど、やっぱり、それぐらい何か心の深いところに影響を与えてくれる一本ではあるよね。
渡辺:そうですね。でも、こう自分で道を開いていくことを決めていくような、ポジティブなメッセージはあったりするので、感動もするし、いい作品です。
有坂:それ来ましたよね。はい、じゃあ、僕はちょっと視点を変えていきます。1968年のあの名作。
有坂セレクト1.『2001年宇宙の旅』
渡辺:おー! はいはい。
有坂:順也が紹介した『シャイン』というのは、まさにクラシックの世界を生きている人の物語ですけど、僕の映画は、劇中使われているクラシック曲が、すごく印象的なものとして、まずは『2001年宇宙の旅』を紹介したいと思います。言わずと知れたスタンリー・キューブリックのね、映画史に残る不朽の名作です。本当にこの映画は、物語はもちろんあります。ただ、そのすごく抽象的な表現なので、内容が理解できない、難解すぎるとか、もうそういう形容詞がついて回る映画の代表作と言ってもいいかなと思います。この映画のやっぱりこう宇宙が生まれて、人類が生まれて、そして進化していくみたいな、それぐらいのスケールで物語が始まって、これ1968年の映画なんですけど、その当時から見た2001年を舞台にしたSF映画です。だから、もう今2023年なので、2001年って過ぎてしまいました。だから、その2001年のときに、スタンリー・キューブリックが思い描いていたその2001年と、実際のリアルの2001年をくらべる面白さも当時はありましたし、逆に今観ると、まだ時代が追いついていないんじゃないかなって思うところもありながら、でも、この映画って、物語の後半がこのAI、HALっていうAIが暴走して、人類を破滅させるようなほうに物語が転がっていくんですけど、それって今見ると、今が一番リアル。まさになんか、AIの話が当たり前のように日々ニュースで流れていて、いよいよ、そういう時代が来るかっていうのが、肌感覚で迫ってきたときに、『2001年宇宙の旅』を観ると、ちょっとね、ホラーテイストが強くなっているなっていう。それぐらいなんか、こう生々しい恐怖みたいなものが、今、多分一番そういう目線で楽しめる映画でもあるのかなと思います。
渡辺:そうだね。
有坂:この映画が、なんで今回紹介したかというと、これは、もうオープニングから、映画史に残るオープニングって言われているんですけど、そこでかかる曲が、「ツァラトゥストラはかく語りき」っていう名曲が、すごく壮大な宇宙の風景とともに流れるっていうオープニングから始まるんですけど、その曲が劇中3回使われる。あとは「美しく青きドナウ」とか、もう本当にクラシック曲のオンパレード。僕が、これ最初観たときって、SF映画って例えば、『スター・ウォーズ』とか、わかりやすいエンターテインメント映画のほうが、まず先に観ていて、ハラハラドキドキするような物語の展開に合わせた音楽が多かったけど、まったくこの『2001年宇宙の旅』ってベクトルが違って、もうスタンリー・キューブリックっていう人のつくる世界観の中で、宇宙を表現する。彼の表現の中では、それはクラシック曲と宇宙を掛け合わせるっていう、本当に彼の才能が生み出した世界観で、かっこいいんだよね。それがめちゃくちゃかっこいいので、この映画を通してクラシックを聴いてみたいなって思うきっかけになりました。なので、誰もがイメージできる、例えば、風景にクラシックを合わせるんじゃなくて、もうこの人にしか思いつかないようなアイデアでクラシックを合わせてくれたから、普段興味のない人にも響いたのかなっていう、そういう意味でも記念碑的な一作なのかなと個人的には思いました。もう55年前の映画なんですけど。
渡辺:それで、AIを描いているのはすごいよね。
有坂:すごいよね。いよいよ、キューブリックの世界に近づいてきたっていう、そのタイミングで観てもらいたいなということで、1本目は『2001年宇宙の旅』でした。
渡辺:けっこういろんな映画でオマージュを捧げられていて、最近だと『バービー』とか、オープニング、同じように使われていたりするので、そういうとこもチェックすると面白いかなと思います。なるほどそっちで、そうか、どうしようかな。ちょっと引っ張られそうになったけど、違うのにします。僕の2本目は、またガラリと変えて、日本映画、2019年の日本映画です。
渡辺セレクト2.『蜜蜂と遠雷』
監督/石川慶,2019年,日本,118分
有坂:うんうん。
渡辺:これも、クラシック音楽を真正面から描いた作品で、今度は邦画になります。原作は恩田陸の作品で、その年の直木賞と本屋大賞のダブル受賞という原作になります。それが、本だから、映像化すると音もつけなきゃいけないっていうので、けっこう大変だろうと言われてたものを、石川慶監督が見事に映画化したという作品になります。これは、この4人の主人公がいるんですけど、それぞれに背景に事情があって、いろいろ背負うものがあって、その負けられない事情のある彼らが、天才ピアニストたちがコンクールに集まってしのぎを削るという、そういう話になっています。映画の半分ぐらいが演奏シーンといわれていて、本当にずっと演奏をしているんですけど、結構、役者たちがやっぱりみんな上手で、見事に天才ピアニストたちを演じている。実際に、弾いているのも、その時代の若き天才ピアニストと言われている人たちが、ちゃんと弾いているというのがあるので、クラシック音楽を、スポーツの試合みたいな、そういう形で天才ピアニストたちのバチバチのバトルを観せてくれるっていうですね、そういうところでも面白い作品です。なので、クラシックピアノとか、そういう上品なイメージがあるんだけど、割とこういう大会とかは、本当にスポーツと一緒で、バチバチにしのぎを削っているっていう。そういうところが、ちょっと面白い切り口だなと思った作品です。作品的にもすごく面白いので、これは多分結構配信やってると思うんですよね。この辺も観られると思いますので、ぜひ、いい音響で観ていただければと思います。
有坂:日本にも意外とあるんだよね。クラシックを扱ってる作品。そっか、そっち来たか。じゃあ、僕の2本目は、アメリカ映画でいきます。1979年の僕の大好きなウディ・アレンの監督作品です。
有坂セレクト2.『マンハッタン』
監督/ウディ・アレン,1979年,アメリカ,96分
渡辺:うんうん!
有坂:この映画は、クラシックの世界を描いた作品ではなく、舞台はニューヨークで、主演は、監督も兼任するウディ・アレンです。彼は、作家志望の42歳を演じていて、テレビ番組の台本を書いているものの、そんな仕事は自分の本位じゃないっていう、だいぶこじらせている42歳が主人公なんですね。クライアントと喧嘩はするし、当時の妻は、……妻と離婚することになるんだけど、実は、妻は女性が好きだったっていう、もう何から何まで信じられないみたいな、そんな42歳のウディ・アレンが主人公です。そこから、いろんな人との出会いがあってというような恋愛群像劇なんですね。このビジュアルが、もう象徴していますけど、本当にこの映画は、ニューヨーク・マンハッタンへのラブレターとして、ウディ・アレンがつくった作品です。全編モノクロで、わりとこの画像のとおり、コントラストの強いモノクロでニューヨークを描いているんですよ。でも、そのニューヨークの風景に、どんな曲を合わせるかで映画の世界観というのが決まってくるんですけど、それがこのジョージ・ガーシュウィンの名曲、「ラプソディ・イン・ブルー」が、この映画の冒頭にダダーンと使われます。これはもうね、さっきの『2001年宇宙の旅』も映画史に残るオープニングって言ったけど、本当にそれと匹敵するぐらいのオープニングで、この映画の最初は、ニューヨークのいろんな風景をパッパッパッパッと見せていくんですよ。そこに、作家志望のウディ・アレンが、小説の書き出しみたいなのを悩んでるっていうナレーションがかぶさるんですよ。で、なんとかかんとか、いや違う、なんとかかんとか、って迷いながら書いているウディ・アレンのナレーションがかぶさるんですけど、そのバックでジョージ・ガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」がずっと流れているんですよ。で、その最後、ある程度、フルだと結構あの曲は10何分あるので8分ぐらいかな縮めたバージョンがたっぷり使われて、最後、ニューヨークのビル街の風景に花火が打ち上がるっていうところから物語が始まるんですね。で、あの冒頭を観るだけで、このウディ・アレンっていう監督のニューヨーク愛が凝縮されていて、そこで起こる物語が楽しみで仕方がなくなるみたいな、本当に秀逸なオープニングとなっています。この音楽もそうなんですけど、モノクロの綺麗な映像を誰が撮ったか、撮影監督に注目するとまた映画って面白いんですけど、この『マンハッタン』の場合はゴードン・ウィリスっていう撮影監督が撮っています。で、この人は順也が大好きな、あの映画の撮影監督。どの映画が好き? パッと思いつく大好きな映画。
渡辺:『ゴッドファーザー』?
有坂:そう、『ゴッドファーザー』の撮影監督なんです。なので、本当にウディ・アレンもその腕を見込んで、ぜひ彼に自分の愛するニューヨークを撮ってほしい。で、自分の大好きなジョージ・ガーシュウィンの曲を使う。だから、もう彼にとっては、本当にもうつくるべくして、もう本当にベストなメンバー、曲でつくったはずなんですけど、でも、実はこの映画って、ウディ・アレンが唯一、失敗作って言っている。
渡辺:そうなんですか?
有坂:そう、作品なんですよ。だけど、僕もだからウディ・アレン好きすぎて、本人が失敗作って言っているんだから、ダメな映画なんだなって思いながら観ようとしていたんだけど、当時、何度観てもいい映画。
渡辺:大好きだもんね。
有坂:なんなら、観れば観るほどよさがどんどん滲み出てくるみたいな作品なので、ぜひ観てほしいですし、この映画観て気に入った方は、「ラプソディ・イン・ブルー」を中心にジョージ・ガーシュウィンの曲も聴いてもらえるとね、また、広がりがあって面白いかなと思うので。
渡辺:なるほど。ウディ・アレンは、曲選びのセンスがすごくよくて、ウディ・アレンのサントラだけがCDになっているのとか。
有坂:そうだね、作品集。
渡辺:けっこうジャズが多いんだけど、クラシックもやっぱりセンスがいいというか、なかなか、ウディ・アレンは曲選び、かなりセンスがいいんで、そういう視点で観ても。
有坂:本人もジャズプレイヤーだもんね。耳のいい監督だと思います。
渡辺:なるほど。
有坂:これは取られないか心配だった。
渡辺:これは挙げてくると思った!(笑) なるほど、これもねU-NEXTとかで観られるんで。まあ、映画も名作だし、了解しました。
じゃあ、またちょっと僕は違うところで、3本目いきたいと思います。僕の3本目はですね、もう最近の作品。
有坂:あれだな!
渡辺:わかるかな? 2023年公開のアメリカ映画です。
有坂:あれだよね! せーので言う?
渡辺:いいよ、せーの!
二人:『TAR/ター』(笑)。
渡辺セレクト3.『TAR/ター』
監督/トッド・フィールド,2022年,アメリカ,158分
渡辺:かぶった?
有坂:いや、出るだろうなと思ったから。
渡辺:そうですか。これはですね、今年のアカデミー賞にも絡んだ作品で、ケイト・ブランシェットが、世界最高峰のオーケストラですね、ベルリン・フィルの初の女性指揮者になっているという設定の作品です。で、もう世界最高峰のオーケストラを指揮する立場っていうのは、ものすごい権力者なんですね。その彼女が、権力に溺れていってしまうというようなところで、そこにちょっとその権力を揺るがすような事件が起こっていくというサスペンスでもある、という作品なんですけど。このですね、指揮者を演じるケイト・ブランシェットが、とにかく素晴らしいです。本当、実力だけで言ったら、この年のアカデミー賞の主演女優は、ケイトだったんじゃないかっていうぐらい、やっぱり圧巻の演技なんですよね。で、そのクラシック音楽の最高峰にいる人たちの、このピリピリした感じとかね。あそこの位置にいる人が、演奏する人の一番なんだとか、なんか、そこの順位とか序列みたいのがけっこう決まっていたりとか、そういうトップの中の組織の在り方みたいなものとか、トップの位置を争う、なんて言うんだろうな、そういう中の争いがあったりとかですね。そういった内面をかなり描いたりするので、一見、上品で豪華で美しいオーケストラの中の、この熾烈な争いだったりとか、そういったところをスリリングに観せてくれる作品で、やっぱりとにかく本当にケイト・ブランシェットが指揮者としても美しいし、とにかく鬼気迫る名演技を繰り広げているので、そういう意味でも見どころがある作品です。
有坂:ヤバいよね、このケイトは。オスカーは獲ってない?
渡辺:オスカーは獲ってない。ミシェル・ヨーだった。
有坂:これは多分ね、いつか歴史が、「なぜこのケイト・ブランシェットが獲れなかったんだ」っていって、じゃあ一体誰が獲ったっていったときに、「エブエブ(『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』)」のミシェル・ヨーが獲ったってなったときに、いやー、これはさすがに違うんじゃないかっていわれてしまうぐらい、もうぶっちぎりの演技力。ただまあ、ミシェル・ヨーはね、またちょっといろんな要素も含めて獲ったかなっていうところもあるので、時代とともにそこが削ぎ落とされていくと、やっぱり実力でいったら、この『TAR/ター』のケイト・ブランシェットは、間違いないよねっていうぐらいのやっぱりもう名演、怪演だと思います。
渡辺:これは本当にすごいんで。
有坂:しかも作品的にも、やっぱり1回観たら、もう1回、もう2、3回観たくなるような伏線だったりとか、色々こうなんか調べたくなるんだよね。余白が色々あるタイプの映画なので。
渡辺:そう、これはね、まだやったばかりだから、観てない人も多いと思うので、ちょっと機会があれば。まだ見放題とかには入ってない。
有坂:そうだね。わかりました。では、僕の3本目は、さっき僕、ウディ・アレンの『マンハッタン』を紹介したんですけど、そことのつながりでいきたいと思います。1945年の作品です。
有坂セレクト3.『アメリカ交響楽』
渡辺:ほう! ほほう。
有坂:これは、まあそうそう観たことがないであろう、かなりマニアックな映画なんですけど、なんでこの映画を紹介したかというと、さっき紹介した『マンハッタン』の曲、「ラプソディ・イン・ブルー」で、その曲を作ったジョージ・ガーシュウィンという人の伝記映画が、この『アメリカ交響楽』なんです。なので、『マンハッタン』で、この曲、素晴らしい! このガーシュウィンという人はどんな人なんだろう? って気になったら、もう立て続けにこれを観てもらえれば、もうガーシュウィンという人の人となりもわかりますし、その超名曲と言ってもいい、その「ラプソディ・イン・ブルー」が、どういうプロセスで生まれてきたかっていうところが描かれている作品です。だから、もうあれかな『マンハッタン』と二本立てで観てください。自分が、名画座のオーナーだったら、ぜひいつかやってみたい二本立てなんです。それぐらい、このガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」という曲が、本当に影響も与えてるし、実際、でも名曲の裏側って、やっぱり映画とかを通してしかなかなか知れないので、そういう点でも、こういう自伝映画をつくってくれたことは、とっても大事なことかなと思います。この映画ってまだ無名だったジョージ・ガーシュウィンという若者が、最初はピアノ弾きとして雇われてってところから物語が始まって、途中、ブロードウェイの当時人気者だったアル・ジョンソンという人に認められて、そこからどんどんあれよ、あれよという間に名を上げていって、いよいよ、ついに音楽史に残るあの名曲が生まれる日に向かっていくっていう、映画の後半が、その「ラプソディ・イン・ブルー」の演奏シーンなんですよ。なので、これはやっぱり『マンハッタン』と一緒に観てほしいなと思いますし、なんだったらこれは『アメリカ交響楽』っていう邦題ついてるけど、観てください、原題は「ラプソディ・イン・ブルー」なんですよ。
渡辺:そうなんだ(笑)。
有坂:なので、これは強制的に、『マンハッタン』と二本立てで観ることにしましょう。あと、「ラプソディ・イン・ブルー」つながりで、もう一個だけ最後に紹介するとレオナルド・ディカプリオの『華麗なるギャツビー』って映画がありますよね。あの映画でも「ラプソディ・イン・ブルー」、めちゃくちゃ印象的な使われ方をしています。
渡辺:あー、してた!
有坂:これは、どんな場面かというと、あの映画、ディカプリオが主演じゃないですか。でもね、本編スタートしてなかなかディカプリオって出てこないんですよ。トビー・マグワイアが語って、「なんかギャツビーっていう、すごい伝説の男がいるらしい」みたいなことが延々続いて、早く出せよ、出せよって観客が思っていたら、ついに出てきたのが、本編が始まってから30分後で、そこでディカプリオが、もうなんかお城の出窓みたいな、テラスみたいなところから
渡辺:花火が上がって、キラッキラのね。
有坂:そう、ついに出てきたディカプリオが、なんかこうグラスを持って、乾杯みたいなのをなんかスローモーションで撮って、花火が打ち上がるところに、その「ラプソディ・イン・ブルー」の一番いい場面、いいタイミングの曲がそこでかかるっていう、そう名場面があるんですけど、それもぜひね、合わせて観てもらいたいなと思いました。
渡辺:なるほど、好きだね。「ラプソディ・イン・ブルー」が(笑)。
有坂:「ラプソディ・イン・ブルー」が、実際、『マンハッタン』を観てサントラ買ったんだよね。『マンハッタン』単体の。で、「ラプソディ・イン・ブルー」以外のガーシュウィンの曲も入っていて。そう、だから初めてなんかああいうタイプのクラシック。まあ、ジャズ寄りのクラシックとかを聴いたきっかけになったから、多分思い入れが強い。
渡辺:なるほど。
有坂:これは、順也には語らせちゃいけない。
渡辺:大丈夫です(笑)。まあ、そこには触れていなかったんで。じゃあ、僕の4本目。これはまた全然違う感じで、1996年のですね、イギリス映画です。わかる?
有坂:わかる。もう一回せーの言う?
渡辺:もういいよ(笑)。
渡辺セレクト4.『ブラス!』
監督/マーク・ハーマン,1996年,イギリス,107分
有坂:(笑)
渡辺:わからなかったでしょ?
有坂:全然わかんなかった(笑)。
渡辺:これはですね、いい映画なんですよ。すごく大好きで、めちゃくちゃいい映画なんですけど、これは『ブラス!』って、ブラスバンドのお話です。舞台はイギリスの炭鉱の街なんですけど、閉鎖が決まってしまった炭鉱の街なので、もうみんな失業しちゃっていて、めちゃくちゃもう暗い雰囲気の時代を描いた作品なんですけど。そこで、ブラスバンドをやってみんなで大会に出ようと言って、もう最初は誰にも相手にされないんですけど、徐々に1人増え2人仲間が増えという感じで、ブラスバンドにみんなが加わっていって、やがてみんなで大会に出るぞっていって、だんだん一つになっていって、暗い雰囲気だった街が上を向いて、前に歩み出すようになっていくと、そういう感動作。
有坂:今泣きそうになってる? 大丈夫?
渡辺:もう思い出しただけで(笑)。っていうのでね、本当にわかりやすい展開ではあるんですけど、しっかり泣けるっていうですね、これは本当に大号泣した覚えのある作品です。これは、あまり有名じゃないんだけど、結構この時代ではすごい好きな作品で、本当に音楽の力みたいなものを、すごくポジティブに捉えて、生きる力に変えていくというような作品なので、なんだろうな、プロのまたオーケストラと違ってね、素人なんだけど、それを練習して音を合わせていくみたいな。そういうところの格好よさとか、合ったときの気持ちよさとか、そういったものがすごく描かれていてですね、むちゃくちゃいい映画なので、感動したい人はぜひ、ちょっと観てもらいたい。
有坂:ハードル上げるね(笑)。
渡辺:いやいや、ハードル超えてくると思いますよ。
有坂:これあれだよね、音を合わせることが、結局なんかそのみんなの心を合わせるってところにつながってくる。だから、そのバラバラだったみんなの気持ちが、やっぱりオーケストラっていうチームで、一つのものをつくっていくっていうプロセスを重ねていくっていう上手さがね、あるんだよね。これ96年で、たぶんイギリス映画って、それまで、ピーター・グリーナウェイとか、わりとアーティスティックな映画だったり、あとケン・ローチみたいなゴリゴリの社会派みたいな映画がわりと強い中で、社会派の要素もありながらエンタメじゃんっていうバランスの映画が誕生したきっかけが、『ブラス!』だと思っていて、このあと、例えば『リトル・ダンサー』とか『フル・モンティ』とか、あと『パレードへようこそ』とか、『トレインスポッティング』とか、割とイギリス映画が変わるきっかけの一本でもあるなっていう、それをリアルタイムでうちらも劇場で観ていて。
渡辺:そう、ユアン・マクレーガーだし。
有坂:そう、ユアン・マクレーガーだよね。
渡辺:このピート・ポスルスウェイトさ。
有坂:それそれ。
渡辺:“ミスターコバヤシ”だったからね。
有坂:そう。ミスターコバヤシだよ。『ユージュアル・サスペクツ』ね。
渡辺:あれが衝撃だったもんね。
有坂:そっちが先だったもんね。
渡辺:「コバヤシ、出てるじゃん」っていう。
有坂:なので、『ユージュアル・サスペクツ』を観てから『ブラス!』を観ると、またちょっと違った深みが、直接何にもつながらないんですけど(笑)
渡辺:でも、ユアン・マクレーガーもそうだし、本当、このとき旬の人が出ていた作品っていう感じですね。 有坂:『ブラス!』は、いわれるだろうなと思ったから外しておきました。じゃあ、僕の4本目、いきたいと思います。僕の4本目は、2016年の日本のアニメーション。知っているかな?
有坂セレクト4.『サティの「パラード」』
監督/山村浩二,2016年,日本,14分
渡辺:??
有坂:これは、山村浩二っていう『頭山』っていうアニメーションで、アカデミー賞にノミネートされた、日本を代表するアニメ監督がいるんですよ。その人の作品なんですけど、これね、調べたら配信で観られない。DVDも廃盤になって、中古も今買えないっていう状況なんで、紹介しときながら、現状、観られる条件はないんですけど、でもこの『月刊手紙舎』では、だから、じゃあ『のだめカンタービレ』にしようとは思えないんだよね。これはもう、今回で「ニューシネマワンダーランド」って31回目で、何百本もの映画を紹介している中で、これはたぶん、ずっと歴史に残っていくと思ったときに、『サティの「パラード」』っていう素晴らしい短編アニメは、紹介しなきゃ後悔すると思って、ちょっと心を鬼にして、今回選んでみました。エリック・サティが、ここにも書いていますけど、50歳のときに作曲に着手した「パラード」っていう曲をアニメーション化したもので、14分なので、物語は一応あるんですけど、物語というか話の筋はあるんですけど、それよりもこの細い線で描かれた、ちょっと可愛らしい絵。色もカラフルなんですけど、可愛いんだけど、ちょっと不気味なキャラクターが、面白おかしく動いていくっていうアニメならではの表現力っていうのが、まず圧倒的なの。で、これを観るまで知らなかったんだけど、この「パラード」っていう曲は、もともとバレエがベースになっているんだけど、その初演のバレエ、バレエの脚本を書いたのが詩人のジャン・コクトーで、音楽はエリック・サティ。しかも、そのバレエの美術を担当したのは、なんとピカソなんです! そんなものすごいトリオ。歴史に残る芸術家トリオが、その初演のバレエを作ったんです、1917年に。それをベースにしたアニメーションなんですね。なので、なかなか今観る機会もなかったりするんですけど、いつかどこかで観られると思うので、ぜひちょっと『サティの「パラード」』っていうタイトルを頭に入れて、アンテナを張っていれば、いつか出会えるはずです。そういうアニメを通して、こう芸術の世界の歴史に、こういう奇跡的な3人が、バレエを一緒につくっていたというものに出会えるっていうのは、なんか知っていただきたいなということで、今回選んでみました。実際、山村浩二っていうのは、なんか一コマ一コマ、手描きで絵を描いて、その積み重ねでアニメじゃないと表現できない世界をつくっていくっていう、もう日本レベルを超えたワールドクラスのアートアニメーション監督なので、山村浩二っていう芸術家が、過去の芸術家へのオマージュとしてつくった作品なので、いつか、いつか観てください。出会えると思いますので、4本目に紹介しました。
渡辺:観られないんだね。これね。なるほど。
有坂:DVD、持っているんだよね。
渡辺:お願いします(笑)。
有坂:でも、本当に素晴らしいので、ぜひ気にとめておいていただけたらと思います。
渡辺:ベル・エポックだよね。
有坂:そう、ベル・エポック。
渡辺:この時代の芸術家は、芸術の都のパリに世界中から集まっていたっていう時代なので、世界中のアーティストとか、芸術家がコラボしたりしてるんだよね。
有坂:そう、だから、横のつながりがあるのがいいんだよね。カテゴライズされて、そこの世界にこだわらないというか、才能でつながっていくっていうかね。
渡辺:そうそう。ウディ・アレンの『ミッドナイト・イン・パリ』とか、あと、ミシェル・オスロの『ディリリとパリの時間旅行』とか、このベル・エポックの時代を描いていたりするので、バンバン超有名な芸術家が出てくるんだよね。日本人も、実は行っていたんですよね、このとき。藤田嗣治っていう、レオナール・フジタかな? っていう画家が日本代表として。
有坂:日本代表?
渡辺:日本代表ですよ(笑)。だって、この人たちと絡んでたわけだからね。一緒に飲んいでたわけでしょ。超絶、羨ましいよね。っていうね。日本からもちゃんと芸術家が行っていたということで、なるほど、そうきましたか。じゃあ僕の5本目、いきたいと思います。僕の5本目はですね、またちょっと違う切り口で、2016年の作品で、ドキュメンタリーです。
渡辺セレクト5.『すばらしき映画音楽たち』
監督/マット・シュレイダー,2016年,アメリカ,93分
有坂:ああ!
渡辺:これは、映画音楽、映画のためにつくられた音楽ですね。オーケストラを使ったような音楽の作曲家たちを、特集したドキュメンタリーです。一番有名なのは、やっぱりジョン・ウィリアムズといって、スピルバーグの作品なんかをずっとつくっていた人で、『E.T.』とか、『スター・ウォーズ』とか、『インディ・ジョーンズ』とかですね、『ジョーズ』とか、もう誰もが知っているような、名曲の数々をつくったジョン・ウィリアムズとか。あとは、ハンス・ジマーですね。最近だと、ノーランとかそういうやつかな。あと、『007』とかもやっていたかな、そのハンス・ジマーですね。あと、ディズニーですね。『美女と野獣』とか、もう数々の名曲をやったアラン・メンケンとかですね。そういう裏方なんですけど、その曲、あれもこれも全部知っているっていうような、すごい人たちを特集したドキュメンタリー映画なんですよね。なので、けっこう今、シネマコンサートとかもやっていたりするので、ジョン・ウィリアムズとか有名だとは思うんですけど、ちょっと作曲家までは知らなかったっていう場合は、ここに注目するとめちゃくちゃ面白いです。スピルバーグとか、そういうなんだろう、コッポラとか、巨匠が、映画の巨匠っていいますけど、音楽家にも巨匠っているんだっていう、ひょっとしたら映画以上に巨匠かもしれないですね。あの名作この名作の、あの名曲この名曲、全部この人だったんだ、みたいなのがあったりするので、この切り口で観るのも、すごい面白いです。で、なんかね、エピソードですごい面白いのが、もともと映画音楽っていうのは、すごい昔の時代ですね、映写機の騒音をごまかすために生まれたっていうっていうふうに言われている。「マジで!?」っていうですね、そういう生まれらしいんですよね。だけど、もう映画にとっては、今となっては欠かせない、本当に一つの要素であると思うんですけど。その映画音楽を作ってる音楽家たちに焦点を当てたドキュメンタリーなので、この切り口、ありそうでなかったやつで、作品としてもめちゃくちゃ面白いので、これアマプラでやっているね。これ、観やすい感じで観られるので、ちょっと気になる方は、ぜひこの切り口でもチェックしてもらえると面白いかなと思います。
有坂:この全貌が見えるよね。
渡辺:うん、そうね。
有坂:今のトップランナーたちが、一人とかではなくて、何人も紹介されるから、もちろんその一人に対してね、そこまで深く掘り下げるのは、尺的に難しいんだけど、わりとこんな人もいて、あんな人もいて、それぞれ個性がこう違ってっていうのが見えると、もっと調べたくなる。すばらしい、なんかショーケース的な意味もある。
渡辺:そうだよね、ディズニー好きの人なんて、『アラジン』も『美女と野獣』も、全部この人なんだ! みたいな、そういうことも知れるので、すごい面白いと思います。
有坂:これ観たあとさ、映画観るときすごい耳の方に意識いくよね。
渡辺:そうね。
有坂:やっぱり今まで以上に、音楽っていうものに意識を持って作品を観られると思うので。
渡辺:そうなんですよ。モリコーネとかはね、一人で特集されたドキュメンタリーも、去年やったりしてたので、この辺もけっこう、これから注目されるかもしれないですね。
有坂:まとめてきたね。
渡辺:まとめてきましたよ(笑)。
有坂:なんか収まりのいい感じの5本目。くそー、そうきたか(笑)。
じゃあ、僕の最後5本目。まったく、そんな順也みたいな収まりのよさがないんだけど、最後に紹介するのは映画じゃありません!
渡辺:おお?
有坂:いいですか? 最後は音楽映画というか、コンサート映画になります。
有坂セレクト5.『ヴァルトビューネ2003 ガーシュウイン・ナイト 小澤征爾』
映像監督/アンドレアス・モレル,2003年,110分
渡辺:なるほど。
有坂:これは、ドイツのベルリン・フィル恒例の夏の野外コンサートがあって、その2003年に行われた、これ毎回、海外からビッグなゲストを呼んで行われる夏の野外コンサートなんですね。2003年は、ついに世界の小澤が、10年ぶりの舞台に立つっていうことで、ものすごい注目を浴びた、ヴァルトビューネの野外コンサートの、これは記録映像というか、コンサート映像になっています。やっぱり森の中にある音楽堂で行われる野外コンサート。しかも、観客2万人。で、もう後半なんですよ。クラシックのコンサートって長いんですよ。基本、そこで演奏される曲は、これガーシュイン・ナイトなので、散々、僕が今日語ってきたジョージ・ガーシュウィンの曲が、ほぼずーっと演奏されて、あんなに明るかったのに、だんだん日が暮れて、夜になって、いよいよ最後の曲っていうところが、この映画のハイライトになっていて。最後は、途中もガーシュウィンじゃない曲もやるんですけど、最後はリンケ「ベルリンの風」っていう曲をやるんですけど、どうやらこれは定番らしくて、最後、演奏に合わせて観客が指笛でピュッ、ピュッ、ピュッと参加する。だからもう観客からしたら、もう待ってましたっていう熱量で、最後の曲をみんなでその空間でつくり上げるっていうのがね、たまらないんですよ。何度観てもなんだろう、みんな幸せそうで、演奏してる人もいつもよりもテンポを落として、指笛で参加しやすいように演奏しているんだけど、笑顔で演奏して、観客が指笛で参加しながら、娘さんがいるパパは、娘を肩車しながら、花火を持ちながら曲に乗ったりとか、なんかね、その風景だけ切り取ると、フジロックのワンシーンなんですよ。
渡辺:そうなんだよね。クラシックのコンサートなんですけど、野外会場でフェスみたいなんだよね。
有坂:完全にもうね、フェスの雰囲気なんですよ。
渡辺:参加してるお客さんたちの格好も、かしこまっていなくて、普通にフェスに来るようなアウトドアな格好してきていて。
有坂:そこが、やっぱり羨ましくて、こんな幸せな世界あるんだなと思って、映像も、つくり方も上手くて、小澤征爾の表情をけっこう切り取るんですよ。小澤さんって、すごく人間味のある人だから、感情が映像で切り取られていることで、観ている側の心がものすごい動く。しかも、みんな楽しんでいるっていうのが、このコンサートのフィナーレに来るので、ぜひ、ビールとか飲みながら、窓を開け放って、休みの日、何時間もかけて観てほしいなって思う作品です。
渡辺:小澤征爾って楽しそうに指揮するよね。
有坂:本当に、そうなんだよ。
渡辺:あれがね、『TAR/ター』と全然違うなと思った(笑)。
有坂:真逆だね。本当に真逆!
渡辺:『TAR/ター』は、ピリピリしてますからね。
有坂:これは、ベルリン・フィルの定番の野外コンサートで、みんながあれだけ楽しんで、本当に誰が見たって、理想的な空間があって、でも、その中心に日本人がいるんですよ。小澤征爾っていう人がどれだけ偉大かっていうことは、この映画の映像を通して感じられることもいっぱいあるので、今ね、もう一回、Amazonのページで出せるかな? フィルマークスには、これはない?
渡辺:ないね(笑)。
有坂:今ね出してもらった。
渡辺:映画作品じゃないからね。
有坂:そうそう、出た。もう通常版は廃盤で、中古とかしか今買えないんですけど、これはね、買ったほうがいい。中古でなくなる前に、本当に買っておいたほうがいいっていうぐらい、個人的には超おすすめの音楽DVDになっています。僕も全然クラシックとか、詳しくもなんともないんですけど、これぐらいなんか熱く語ってしまうぐらい感動したので、ちょっとでも気になった方は、なくなる前に買ったほうがいいかなと思います。ああ、よかった、これが言えて。
渡辺:そこは被らないでしょ(笑)。
有坂:そうそう、このコンサートのいいところは、基本、そのベルリン・フィルのクラシックのコンサートなんですけど、盲目のピアニストが、マーカス・ロバーツっていう人が参加して、トリオでこのコンサートに参加しているんですよ。曲によっては、マーカス・ロバーツのトリオが、「アイ・ガット・リズム」っていうジャズの有名な曲をやりながら、そこにクラシックの人たちが、ちょっと乗っていっていう曲もあったり、そのクラシックのコンサートなんだけど、そういうクラシックの世界のルールとかに縛られないで、ジャズのいいところも取り入れようよっていう、その小澤さんの意志がまずそこにあったり、本当に、多様性を認めようと思うんだったら、本当にこういう、例えばクラシックの世界なら、こういうやり方があるよねっていう。本当に理想的な風景が観られるので、と、また語っちゃう。キリないから終わろう(笑)
渡辺:はい(笑)
有坂:はい、ということで、僕と順也と、けっこう色が分かれたね。
渡辺:そうだね。
有坂:という10本の作品を、今回はご紹介しました。
──
有坂:はい、じゃあ、最後に何かお知らせがあれば。
渡辺:僕が、普段フィルマークスでリバイバル上映企画をやっているんですけど、90年代の作品を改めてまた映画館でやるシリーズをやってたりしてですね。ちょうど昨日から、『レオン 完全版』の上映が始まりまして、11月の10日から『バッファロー’66』。
有坂:でた!
渡辺:も、やることになったので、その辺の90年代作品を映画館でまたやるので、この機会にぜひ、まだスクリーンでは観ていないという方は、ぜひ観ていただきたいなと思います
有坂:けっこうニュースになっている企画をやってるプロデューサーさんですか!
渡辺:そうなんですよ(笑)。サイン書いてあげようか?
有坂:けっこうです(笑)。本当に、これはいい企画。僕もインスタでつい紹介しちゃいましたけど、本当にいい企画だと思うんで、なかなか観られるときに、やっぱり映画館で観てもらわないとね。
渡辺:そうだね。
有坂:こういうものは。
渡辺:1週間とか、2週間限定なんで、ぜひ観られるうちに観ていただきたいと思います。
有坂:じゃあ、僕からは、キノ・イグルーのイベントを2つ。1個は急遽、先月ぐらいに決まったイベントで、11月5日(日)に池袋でやります。「secret of cinema」という、僕たちとIDEEのね。「Life in Art」というプロジェクトで共同でやっている「secret of cinema」の第3回目をやります。これはね、今って観る映画をみなさん決めるときに、いろんな情報を入れますよね。誰が出ている、どんな監督、どんな物語、予告も観て、人によっては映画観て気分落ち込みたくないから、ネタバレサイトを観て、ラストまで観るっていう人、多いと思います。ただ、やっぱりそうやって情報を入れてからアクションを起こすっていう時代だと思うんですね。食べログを見てからレストラン選ぶみたいな。でも、それと真逆の行為を楽しみませんか? っていうことが、「secret of cinema」なので、行ってみないと何が観られるかわかりません。今回は、池袋にあるビルの名前が「パピヨンビル」っていう小さなビル1棟を使って、映画のいろんな楽しみが体験できるという特別な夕方の時間をつくります。サントラのみのDJが入ったりとか、「secret of cinema」として2本、映画を上映するとか、あと僕と順也のトークショーがあるとか、ちょっと1日限りなんですけども、ワクワクするような映画体験をつくるのが一つ。
渡辺:はい。
有坂:もう一個のイベントは、前回も紹介したかな、11月11日(土)に鎌田でやるイベントで、「いつも映画館のことばかり考えている人のために。」という、映画館大好きって人たちに向けて、朝10時半から夜の8時まで、9時間半にわたる超ロング企画。映画2本立て、さらにトークショーも2本立て、お弁当付きで、みんなで映画館でお弁当を食べて、イベントの最後はそのまま会場で、観客、出演者みんなで打ち上げをやるっていう、もう一生に1回の体験をつくろうと思って、かなり振り切った内容で準備しました。トークショーは、第1部のトークのほうは、藤沢の「シネコヤ」という映画館のオーナーが来てくれます。あと、 須藤蓮くんという、映画監督であり映画俳優。おそらく、今、日本で一番面白い動きで映画を届けている、20代の人がいます、が第1部で来てくれる。第2部は、みなさんご存知の女優の片桐はいりさんをお迎えして、僕と順也で質問責めにしようと思っています。基本的には映画館体験とか、映画館も、今後どうあるべきかみたいなことを、いろんな人から聞いていきたいなと思っています。もう、こんな9時間半のイベント、僕、昔体験したんだ! って自慢できちゃうような、そんな1日をつくったつもりなので、ぜひご参加いただけるとうれしいです。よろしくお願いします。
──
ということで、クラシック映画、他にも紹介、『アマデウス』とか出なかったよね。
渡辺:そうそう、ちょっとベタすぎるかなと。
有坂:そうだね。検索して出てくるようなものは、ちょっと避けつつ。みなさんもぜひ、そのクラシック音楽、注目しながら映画を観てみてはいかがでしょうか。では、今月のキノ・イグルーの「ニューシネマワンダーランド」はこれをもって終了です! みなさん、ありがとうございました!
渡辺:ありがとうございました! おやすみなさい!!
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選者:キノ・イグルー(Kino Iglu)
体験としての映画の楽しさを伝え続けている、有坂塁さんと渡辺順也さんによるユニット。東京を拠点に、もみじ市での「テントえいがかん」をはじめ全国各地のカフェ、雑貨屋、書店、パン屋、美術館など様々な空間で、世界各国の映画を上映。その活動で、新しい“映画”と“人”との出会いを量産中。
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キノ・イグルーイベント(@kinoiglu2003)
有坂 塁(@kinoiglu)/渡辺順也(@kinoiglu_junyawatanabe)