今日のお手紙

     

就職活動をしている学生の方々へ、参考になるような、ならないようなお話。

2012年4月25日のお手紙

昨年の末当たりから、就職活動をされている学生の方々から、新卒採用の問い合わせをいただくことが多くなりました。手紙社、新卒採用を行えるほどの集団ではないので、お断り、というか「新卒採用を行う予定はありません」とお答えするしかないのですが、学生たちから送られてくるメールを読むたびに、現在(いま)の就職活動の厳しさを感じざるを得ません。

僕の就職活動の時は、バブルの最後の時代だったので(当時はもちろん、今年がバブルの最後、なんていうことはみんな思っていなかったので、つまりバブルのまっただ中だったのです)、いまの学生たちから見たら想像できないかもしれませんが、企業の就職説明会に行っただけで内定をもらえる、というようなことが珍しくありませんでした(シンジラレナイでしょう?)。いわゆる「売り手市場」だったわけで、多くの会社が、人を必要としていたのです。

余談になってしまいますが、あのときは企業側がどれだけ内定者を確保できるか、ということが課題だったので、内定解禁日(当時は、それが国によって定められていました。確か8月1日だったような)に、内定が出た学生たちを軟禁する、ということが公然と行われていました。「軟禁」といっても部屋に閉じ込めておくわけではなくて、内定記念パーティを盛大にやったり、内定者を全員ハワイ旅行に連れて行く企業もありました。なぜこんなことをやっていたかたというと、当時は、学生が2つ、3つの企業から同時に内定をもらうなんてことが当たり前だったのですね。ですので、一斉解禁日に、企業側は「踏み絵」をやるわけです。学生たちから見れば、かなり豪華な踏み絵ですよね(もっとも、その後すぐにバブルははじけてしまったわけで、一転、リストラが必要になった企業側から、僕たちの世代は「バブルの遺物」とか揶揄されることになるのですが)。

就職活動そのものだけを取ってみれば、あの頃に比べれば天と地ほどの差があると思います。何十社とまわってみても、内定の通知をもらえない辛さ。僕も経験がありますが、採用をしてもらえないということは、自分自身を否定されたような気持ちになるので、そういうことが何回も続くと、ちょっとやりきれなくなって来ますよね。自分の“力”には自信があるのに、そして、やりたいことはマグマのように体の中で燃えたぎっているのに、そのエネルギーを拾い上げてもらえない切なさ。一方で、周りには少しずつ内定が決まりだした同級生が増えて来て、次第に、自分に自信がなくなって来てしまう。これはかなりきつい。

もし、そういう状況に陥っている学生たちがいたら、僕は「就職活動なんてやめちまえ」と言ってしまいたい。就職をやめちまえ、と言っているわけではありません。そんな不憫な就職活動はやめても良いんじゃないかと(こういうことを書くと誤解を受けることがあるので申し上げておきますが、就職活動そのものを否定しているわけではありません)。

受けて落ちて、受けて落ちて、という繰り返しに快感を覚える人ならばどんどんやって良いと思うのですが、もしそうでないならば、そういう世界(やり方)だけにこだわる必要はないのではないかと思うのです。「真っ当に就職活動をして内定をもらいたい」というのは、言い換えれば「他の人と同じ集団にいることで安心したい」ということに他なりません。手紙社のWEBサイトをご覧になっている方は、ただお金を稼ぐために働きたい、ということではなく、「自らを表現することを飯の種にしたい」という人がほとんどだと思うので、他の人と同じやり方でやるのは、クリエイティブとは言えません(誤解のないように繰り返し言いますが、真っ当に就職活動をして内定をもらった人は、それはそれで素敵なことだと思います。そのやり方で、自分が働きたい会社に入れた人は素晴らしい)。

では、真っ当な就職活動以外にどういう方法があるかと言えば、もし、あなたが働きたい業種や、なりたい職業が決まっているなら、「なんとかしてその業界に潜り込む」という方法があります。

大切なのは人のつながりです。意中の業種や会社があれば、あらゆる方法を使い(いまは、facebookなどもあるので)、なんとかその会社のスタッフ(できれば社長)へのつながりをたどっていく。そして、例えば、目的の会社の社長を紹介してくれそうな人と知り合いになり、その人から、社長を紹介してもらう。人は、知っている人から誰かを紹介される際、まず断れないのでそういう方法をとる。

社長に会えたらどうするか? こう言うのです。
「インターンで良いので(つまり、給料はいらないので)働かせて下さい!」

手紙社のように、採用を行っていない会社はゴマンとありますが、では、それらの会社が、「人を欲しくないのか」と言えば、そうではありません。「企業は人なり」とはよく言ったもので、人材を採用する余裕がない会社でも、ほんの何パーセントかは、「優秀な人材がいたら採用したいかも」程度の気持ちは持っているものです。

「しばらく給料はいらないから働きたい」という優秀な人材が目の前に現れたら、きっと、基本的に採用活動をしていない企業の社長も、心が揺れます。実際、その人が3カ月インターンで働いて、一所懸命働いてくれて、優秀な人材だとわかれば、「正式に採用しよう」と思うのが、人の心です。

間違えては行けないのは、いきなり「給料はいらないので働かせて下さい!」と言っても、働かせてくれるわけはなく、あなたがその会社のどんなところを好きか、興味を持っているか、というのを、真摯にアピールする必要があります。

ちょっと話がそれます。よく、面接の際に、自分がどれだけ優秀か、というアピールに終始する人がいますが、よろしくない。特に就職経験がない人たちは、採用する側にとっては、ぶっちゃけ「一緒に働いてみないとわからない」というところが多分にありますので、どれだけあなたが自己をアピールしても、「なるほど、この人は仕事ができるだろうな」と納得することはあまりありません。

アピールするならば、その会社への知識、愛。おおよそ採用の面接は恋愛と同じようなところがあって、たとえばあなたが告白されたとして、相手が自分の自慢ばかりするような人だったら嫌でしょう? それよりも「あなたのこう言うところが好き」と言われた方が、人の心は動くものです。そしてそれは、より具体的で、(ストーカーにならない程度に)ありきたりでない方が良い。例えば、「あなたの目が好きです」と言われるよりも、「あなたの声、とてもきれいで好きです」と言われたほうが、ぐっと来ませんか(来ない?)。

例えば、手紙社が採用の面接をしているとして、面接に来た人が、「『かわいい印刷』の第●章の構成が好きなんです」とか、「『今日のお手紙』の2011年10月●日のお手紙に感動しました」とか言われたら、かなり悪い気はしないですし、「この人、よく見てくれているな」と好印象を持つと思います。

閑話休題。
もし、自分が働きたい業種や職業が決まっていて、それでも就職活動がうまく行かず、心を擦り切らしているようだったら、方法はひとつではないよ、と言ってあげたい。「内定」をとることがゴールではないよ、と言ってあげたい。

先にも書いたように、手紙社は採用活動は行っていないのですが、昨年から今年にかけて、3度くらい、僕に直接「手紙社で働きたいんです」と言ってくれた、就職経験がない若者がいました。その度に「今は無理だから」と断って来たのですが、ちょっと仕事を手伝ってもらう機会があったり、接しているうちに彼の真摯さに心打たれるようになりました。その彼が、明日手紙社に入社します。これは、本当に特異な例かもしれませんが、こういうこともあるので。

これまでで最長くらいのお手紙になってしまいました。お付き合いありがとうございました。また明日。

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