あなたの人生をきっと豊かにする手紙社リスト。今月の映画部門のテーマは、「郊外な映画」です。ちょっと都市部から離れた郊外を舞台にした映画、その“観るべき10本”を選ぶのは、マニアじゃなくても「映画ってなんて素晴らしいんだ!」な世界に導いてくれるキノ・イグルーの有坂塁さん(以下・有坂)と渡辺順也さん(以下・渡辺)。今月も、お互い何を選んだか内緒にしたまま、5本ずつ交互に発表しました! 相手がどんな作品を選んでくるのかお互いに予想しつつ、それぞれテーマを持って作品を選んでくれたり、相手の選んだ映画を受けて紹介する作品を変えたりと、ライブ感も見どころのひとつです。
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お時間の許す方は、ぜひ、このYouTubeから今回の10選を発表したキノ・イグルーのライブ「ニューシネマ・ワンダーランド」をご視聴ください! このページは本編の内容から書き起こしています。
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−−−乾杯のあと、恒例のジャンケンで先攻・後攻が決定。今月は渡辺さんが勝利し、先攻を選択。それでは、クラフトビールを片手に、大好きな映画について語り合う、幸せな1時間のスタートです。
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渡辺セレクト1.『グーニーズ』
監督/リチャード・ドナー,1985年,アメリカ,114分
有坂:……うんうん、はい。
渡辺:郊外と聞いて、まずイメージしたのが、やっぱりこの辺の80年代の郊外を少年たちが冒険する映画みたいな。
有坂:だよね!
渡辺:クロスバイクでね、住宅街を疾走するっていうですね。アメリカのやっぱり郊外っていうと結構どこも同じつくりで、道路があって、その両脇に住宅があって、こう家の前に芝生がある。
有坂:芝刈り機があってね。
渡辺:そうそう、ひたすらそういう家が並ぶみたいな。その辺がやっぱりあって、その頃の80年代っていうと『グニーズ』以外にもね。『E.T.』とか、『スタンド・バイ・ミー』とか、やっぱりその辺、王道のやつがもう“ザ・郊外”みたいな感じで。で、80年代のこの辺のテイストの映画で、今、Netflixでドラマやっているのが、えーと、なんだっけ、名前(笑)
有坂:(笑)
渡辺:『ストレンジャー・シングス』! そう、まさにこのときのテイストなんですよね。それで、『ストレンジャー・シングス』に、この『グーニーズ』で、主人公のマイキー役の、あのショーン・アスティンが出ているんですね。だから、そういうのもちょっと制作側の目配せが感じられたりしてですね、すごいいいのが印象的で、まずは『グーニーズ』を挙げられればと思いました。
有坂:どんな内容の映画ですか?
渡辺:もう内容、みなさん、知っている前提で話してしまっていましたけど……、えっと少年……なんて言うんだろう、少年団5人組みたいな彼らが、宝の地図を屋根裏から発見してですね、それで宝探しに行こうって言って、宝探しに行くんですけど、悪者たちもそれを狙ってみたいなところでね、ドタバタな冒険活劇みたいな感じなんですけど、本当に子ども心にこんな少年が冒険するなんて見せられたら、ハマらないわけないよね。
有坂:本当だよね。リアルタイムだよね、うちらは。
渡辺:そう、完全に! なんで、まあ僕ら世代はね、みんなもう男子は夢中になっていた作品だと思います。
有坂:これ、僕の人生初映画。
渡辺:そうだよね。
有坂:それが『グーニーズ』で、もうめちゃくちゃ楽しすぎて、親にもう1回連れてってと言ったら、『E.T.』に連れていかれて、映画が嫌いになったっていう過去があるんですけど、なんかやっぱりグニーズって当時ね、もうシンディ・ローパーの主題歌も大ヒットして、日本だとファミコンのゲームにもなって。
渡辺:そうだよね、すぐ死んじゃうやつ。
有坂:(笑)。なんか、そういった意味ではね、あの時代を過ごしたキッズたちにとっては、もうなんか映画の枠を飛び越えて、もう、ちょっとユースカルチャーを代表するような一本のような気がしています。……ってことでいいですか?
渡辺:はい。ああ、すっきりした(笑)。
有坂:それはね、早い者勝ちだよね。はい、じゃあ、僕の1本目は、順也のが80年代でね、郊外といえば80年代といっていたけど、僕の中では「いやいや、これでしょ。これしかないでしょ!」っていう作品からいきたいと思います。
有坂セレクト1.『ヴァージン・スーサイズ』
監督/ソフィア・コッポラ,1999年,アメリカ,98分
渡辺:うーん! そうだよね。
有坂:はい、これは言わずと知れたソフィア・コッポラの、まあ、フランシス・フォード・コッポラの愛娘である彼女の映画監督デビュー作です。で、これ99年の映画なんですけど、映画の設定自体は1970年代になります。舞台がアメリカの静かな郊外の住宅地で、リスボン家のこの5人姉妹、ほんとみんなそれぞれ美しくて、もう周りに住んでる少年たちにとっては憧れである5人姉妹が主人公の映画なんですけど、結構ね、ダークな話。ちょっとシリアスな内容で、この姉妹が不可解な自殺を遂げてしまうっていうことが、一応物語の大筋としてあるんですけど、なんでそうなってしまったのかっていうのを明快に答えを与えてくれるような映画ではなくて、やっぱりそのちょっとこう10代とか、モヤモヤしてるような時期のティーンたちの、心に寄り添ってくれるような映画なんですね。だから、もう「こういう答えを与えれば、ティーンが救われる」って、そんな簡単な時期じゃないわけで、でも、その5人いるそれぞれの個性の姉妹たちに、なんかソフィア・コッポラはほんとに優しく寄り添ってるような映画だなと思います。内容はシリアスなんですけど。
渡辺:うんうん。
有坂:この映画は、もともとソフィア・コッポラって人は、お父さんもお母さんも映画監督やっていて、お兄さんも映画監督で、もうゴリゴリの映画一家なんですけど、そんな中、えっとソフィアは元々ファッションデザイナーとしてキャリアをスタートさせています。あのカール・ラガーフェルドのところでインターンやったりして、23歳でミルクフェドっていうブランドを自分で立ち上げて活躍し始めるんですけど、その最中、今後自分のキャリアをどうしていこうかっていうことで、なんかわりと悶々としていた時期があったらしいんですね。そのときに、彼女の友人で、ソニック・ユースというバンドのサーストン・ムーアって人がいるんですけど、彼から、「ぜひソフィア、この本読んでみて」って言われて渡された、その小説っていうのが、『ヘビトンボの季節に自殺した五人姉妹』という『ヴァージン・スーサイズ』の原作になった本です。で、これを読んで、ソフィアはもうガツンときて、「これはもう絶対に自分が映画化したい、誰にも渡したくない」っていうことで、その映画化の権利を買い取って、結果、映画監督としてデビューすることになったんですね。なので、もしかしたら、そのサーストン・ムーアからこの小説をもらっていなかったら、今でも映画監督をやっていなかったかもしれない。そういった、こう運命的な出会いで、導かれるように彼女は映画監督としてデビューしました。で、この映画は見どころはたくさんあるんですけど、ここで紹介するのは1つにしときます。音楽です。この全体の音楽自体はフランスのバンドの「エール」がサントラを担当してるんですけど、そのエールが担当したのは歌詞の載っていない、いわゆるスコアですね。それ以外に、シーンに合わせて色んな曲をソフィアが選曲して使っているんですけど、例えば、トッド・ラングレンの「ハロー・イッツ・ミー」、ギルバート・オサリバンの「アローン・アゲイン」とか、もうね、名曲ぞろいなんです。
渡辺:そうなんだよね。
有坂:この70年代のね、空気感がすごく伝わってくるような選曲で、おそらく僕が今まで聴いてきたサントラ、いろんなサントラを聴いてきましたけど、最も回数を聴いているのが、この『ヴァージン・スーサイズ』のサントラです。多分ね、時期的にもこれから、暑い夏の光の中で聴くのに心地いい曲がたくさんあるので、ぜひサントラも合わせて聴いてみてください。
渡辺:なるほどね。
有坂:ああ、よかった!
渡辺:いやー、言われちゃった!
有坂:でしょ、準備してるよね。
渡辺:してますよ、そりゃ。まあ、でもこれがデビュー作ってすごいよね。
有坂:すごいすごい。
渡辺:センスをすごい感じたもんね。
有坂:もうなんかね、彼女にしかつくれない世界観を、もうなんかこの1作目で、ソフィアはね、自分のスタイルをなんかはっきり確信を持てたから、『マリー・アントワネット』とかでもね、結構あんな大胆なことができたんじゃないかなと思いますね。
渡辺:まあでも、結構この1作目から確立されている感じはあるね。……いやー、言われてしまいました。そうですか。じゃあ、どうしよう。まあ、これはちょっと被らないかなと思いますが、2本目、これにします。フランス映画です。
渡辺セレクト2.『レ・ミゼラブル』
監督/ラジ・リ,2019年,フランス,104分
有坂:うんうんうん。
渡辺:『レ・ミゼラブル』といっても、あの『レ・ミゼラブル』ではない、違うほうのやつです。
有坂:違うの? アン・ハサウェイが熱唱してくれるやつじゃないの?
渡辺:(笑)違います。こちらは、2020年上映のフランスの作品なんですけど、『レ・ミゼラブル』っていうタイトルが、なんで付いているかというと、これがフランスのパリ郊外の、モンフェルメイユっていう土地が舞台なんですけど、そのモンフェルメイユっていうのは、かつてあの『レ・ミゼラブル』の舞台となった場所なんですね。で、そこが舞台なので、「レ・ミゼラブル」っていうタイトルがついているんですけど、そこが今、現代だとどうなってるかというと、移民街なんですね。それで、移民街の中でもすごい雑多で、アフリカ系とか、ジプシーとか、イスラム系とか、もうごちゃ混ぜになっている、犯罪地域になっているっていうのが現状なんですね。そこに、もういろんなグループが複雑に絡み合っていて、なんかちょっと火種があったら、大暴動が起こるんじゃないかって言われるような危険地帯になってます。で、そこを舞台に、警察も絡まったりして、もういつ何が起こってもおかしくないっていう緊張感に全編包まれた作品となってます。なので、すごいゆるい感じではまったくなくてですね。常に「何かが起こるんじゃないか?」っていう緊張感をはらんだ作品で。そんな中、ある少年が、あることをやらかして……、
有坂:ついに。
渡辺:それが連鎖していってっていうですね、もうほんとにずっと緊張感、ハラハラドキドキが続く作品となってます。で、Filmarksでもね、スコアがすごい高いんですけど、めちゃくちゃ面白いです。なので、こうちょっとハラハラドキドキのスリルを味わいたいみたいな感じであれば、すごいおすすめの作品です。……あの『レ・ミゼラブル』の舞台がね、今こんなことになっているっていう、そういう現代のフランスのパリ郊外が知れる作品でもある、という感じでこれ挙げました。
有坂:このメインビジュアルもいいよね。凱旋門をバックに。これを観て結構、あんな緊張感のあるシリアスな内容って、ちょっと連想しにくいところもあるかもしれないですけど、割とやっぱりフランスの今、現実をね、映画を通して知れるっていうね、結構そういうものが増えてきたんですよね。その中の代表的な1本が、この『レ・ミゼラブル』。もう、タイトルをこれにするあたりが確信犯的で、すごくなんか作り手の才能も感じられるような。
渡辺:そうだね。
有坂:楽しみな監督が出てきたなと。……そうか、『レ・ミゼラブル』ね。ちょっとあんまり言うのやめておこう。今後のちょっと作品選びに影響が出るんで(笑)。じゃあ、僕の2本目に行きたいと思います。僕はまたアメリカ映画です。これも順也は候補に入っていたかもしれない。1986年の映画です。
有坂セレクト2.『ブルーベルベット』
監督/デヴィッド・リンチ,1986年,アメリカ,121分
渡辺:うーん、なるほど!
有坂:『ブルーベルベット』、これはもうアメリカをですね、というか、映画界を代表する鬼才・デヴィッド・リンチのある意味、彼の代表作の1本というか、彼のスタイルが確立した1本とも言えるかなと思います。この映画は、ほんとにアメリカの郊外の、一見のどかですごく平和な町が舞台なんですけど、あの……なんだろうな、こう、「幸せそうに見えるその裏には、ものすごいこうドロドロした闇が潜んでる」っていうのを、このデヴィッド・リンチは『ブルーベルベット』で、ものすごくわかりやすく描いてくれています。で、この映画の始まり方は、ほんとにもう僕たちがイメージするアメリカの郊外の美しい部分。光も綺麗だし、さっき順也が言っていた芝生。家の前の芝生があって、そこにスプリンクラーで水をまいて、本当に美しいアメリカのサバービアの風景から始まるんですけど、こう、カメラが芝生の方にフォーカスしていくと、なんかものすごいアリみたいな虫がいっぱいうごめいていて、よく見ると、何かあるんですよ、そこに。「うん? なんだ?」と思って見たら、人間の耳が落ちているっていう、本当に衝撃しかないオープニングシーン!
渡辺:ね(笑)。
有坂:で、この耳は一体なんなんだっていうことで、それを見つけた男の人が、どんどんこの小さい町の闇の部分に引きずり込まれていくっていう物語です。本当にもうこのデヴィッド・リンチっていう人は、人間の闇の部分にフォーカスさせたら、まあアメリカ人の中ではほんとにダントツだと思います。で、この映画に関しては、デニス・ホッパーが出てくるんですけど、彼の役どころとか、彼のもう怪演と言っていい演技は結構トラウマ級のレベルです。ほんとこの人、「ほんとにやばい人なんじゃないかな」としか思えない。この映画を観ておくと、僕は流れ的に『ブルーベルベット』を当時ビデオで観て、その直後にキアヌ・リーブスの『スピード』を観たんですよ。で、『スピード』で悪役で出てくるんですけど、もう「キアヌ・リーブス、勝てるわけないじゃん!」って思うぐらい、この『ブルーベルベット』でのデニス・ホッパーの怖さというのは際立っております。
渡辺:(笑)
有坂:なんかね、この映画はいろんな面白さがあるんですけど、いろんな映画のジャンルがごった煮になっているところが、個人的には面白いなと思っていて、ラブロマンス的な要素もあったり、あとはその犯罪映画的なフィルム・ノワール的な要素もある、あとはちょっと倒錯した、こうちょっとセクシャルなシーンもあるし、一方でちょっと暴力的なところもありながら、でもね、ちょっとユニークさは常にある。
渡辺:うんうん。
有坂:なんかそういう、「アクション映画としてアクションしかつくらない」っていうタイプではなくて、デヴィッド・リンチは、そういったいろんな要素を、最終的に自分の表現としてアウトプットできる人なんですね。なので、ほんとに最終的には「すごい才能に触れてしまったな」って。「ちょっと気持ち悪かったし、怖かったけど、もうちょっとまた他の作品も観てみたいな」って言って、デヴィッド・リンチファンになる人は結構います。でまあ彼の代表作は、他に(ドラマの)『ツイン・ピークス』とか、『マルホランド・ドライブ』とかあるんですけど、『ブルーベルベット』を1本目ってどうなんだろう?(笑)
渡辺:(笑)
有坂:ちょっとハードル高いかもしれないですけど、そんなちょっと恐ろしい感じのダークファンタジーをこの夏の夜に観たいなという人は、ぜひチャレンジしてほしいなと思います。ちなみに最後に、手塚治虫はこの『ブルーベルベット』を観たそうなんですけど、「俺はこの映画は大っ嫌い」って言い放ったらしいです。
渡辺:そうなんだ(笑)。
有坂:なので、それぐらい好き嫌いの別れる映画かなと思いますが、僕は大好きな一本です。
渡辺:なるほど、まあね、ちょっとダークな郊外。『ツイン・ピークス』とかも思いっきりそうだし。
有坂:そうだね。じわじわじわじわ、ダークな方に引きずり込まれていくっていう、なんか、あの辺りはね、やっぱりうまいよね。
渡辺:なんか信号機とかさ、ちょっとデヴィッド・リンチってわかる、この撮り方というかね、そういうショットがあるよね。……なるほど、じゃあ、3本目ですね。ちょっとじゃあ、テイストを変えて、最近の日本のアニメーションを、3本目に挙げたいと思います。
渡辺セレクト3.『サイダーのように言葉が湧き上がる』
監督/イシグロキョウヘイ,2020年,日本,87分
有坂:お!
渡辺:これは、とにかく絵がポップで、なんかおしゃれな感じの雰囲気のするアニメーションなんですけど、内容はですね。地方の郊外が舞台で、イオンモールみたいな、ああいう大型のショッピングモールがあるような街が舞台です。で、内容的にはボーイ・ミーツ・ガールなんですけど、コミュ障の男の子……俳句が趣味な男の子が、女の子に合うんですけど、その女の子はこう、出っ歯がコンプレックスで、常にマスクをしているっていう。その二人と友達たちがですね、ショッピングモールで出会って、おじさんに持ちかけられて「無くしたレコードを探す」っていうことで、どんどん近づいていくという青春映画となっています。とにかくなんか絵がね、すごいポップだし、なんかあの絵の感じが昔のこうシティ・ポップの80年代の絵みたいな。
有坂:大瀧詠一とか、永井博とか。ああいう青がね。
渡辺:そうそう、そんな感じもあって、さらに音楽がnever young beachっていうですね。というのがあって。
有坂:ネバヤン……。
渡辺:そう、ネバヤンのまたあの音楽も、昔のね、シティポップっぽい感じだったりするので、なんか現代のアニメなんですけど、ちょっと昔の感じもしつつ。で、郊外がなんか爽やかな感じで描かれているっていう、まあ、最近の日本の新しいアニメの中では結構好きな作品でした。で、俳句がモチーフになっていたりして、なんか主人公がつぶやく俳句とかが、背景にこう文字で映し出されていたりとか、そういう表現の仕方っていうのも結構新しくてですね。その辺もすごい好きなタイプの作品でした。
有坂:これまだ観られてないんだよね。
渡辺:そうなんだ? これ声優がね、市川染五郎かな、
有坂:書いてあるね。あと杉咲花ちゃん。
渡辺:そうそう、息子の方の染五郎。新しい染五郎がね。
有坂:山ちゃん、山寺宏一も出ているね。
渡辺:天才。何やってもできるっていうね。
有坂:安心できるよね、山寺宏一いると。
渡辺:そう、これ音楽もいいし。
有坂:ネバヤンなんだね。大貫妙子も歌ってるんだね、挿入歌。
渡辺:そうそうそう。
有坂:ネバヤンと大貫妙子……。寝ちゃいそう?(笑)
渡辺:(笑)。まあ、でもそういう感じのことをやるアニメも出てきたんだと。
有坂:それぐらいシティ・ポップの影響はいろんなところに広がっている。
渡辺:これもまあ夏が舞台だったりするので、これどっかで……Netflixで観られるので、ぜひこの夏に観てみてください。
有坂:確かに夏に観たい1本ですね。……はい、じゃあですね、順也が日本映画を挙げたので、僕も日本映画を行きたいと思います。2004年の映画で……わかる?
渡辺:わかんない。
有坂セレクト3.『犬猫』
監督/井口奈己,2004年,日本,94分
渡辺:あはは、なるほど。
有坂:これは、主演は榎本加奈子と藤田陽子。女優2人なんですけど、えっとですね。昔、『人のセックスを笑うな』っていう映画がありましたよね。あの監督、井口奈己さんの、これはデビュー作になります。東京近郊の静かな街が舞台なんですけど、そうこのね瓦屋根のね縁側のある一軒家。もうこの家自体が、主人公の一人といってもいいようなね、ほんとに存在感で、すごくのどかな日常を一応描いています。これ、まあ話的には、さっき紹介した榎本加奈子と藤田陽子という2人は幼馴染なんですね。で、性格が正反対なんだけど、なんかこう好きなものは一緒だし、なんだかわかんないけど、いつも好きな男の子も被るしっていうんで、なんだかんだの腐れ縁みたいな2人が、親友がちょっと海外に期間限定で行ってしまうっていうことで、「この家に代わりに何か月か住んでくれないか」っていうことで、同居することになるという話です。その住んでいる間に、2人の間に元彼が来たりとか、新しく気になる男の子が出てきたりっていう、ちょっとしたエピソードが続いていくっていう、のどかな作品になってます。
渡辺:うんうんうん。
有坂:で、なんかね、この映画、今話したように、ストーリーとか、光とか、空気感としてはすごくのどかなんですけど、なんかね、映画の作り方としてはすごいカチッとつくっていて、例えば構図。画面の構図であったりとか、あとはあの基本的にカメラをフィックスで、固定で撮っているとか、あとはその画面の中で役者をどういう風に動かすか、なんか映画撮る時って結構これが大事で、ここの動きにあんまり工夫のない映画って、観客は途中で飽きてきてしまうって言われるんですけど、すごいね、その画面の中での人の動かし方とかがうまい人、うまい監督になっています。なので、ほんとに誰でも観られるような、いい意味で間口の広い映画に見せておきながら、実はゴリゴリの映画オタクの人も、「この映画はすごい」っていうようなね。なんか両方から支持されるような、珍しいタイプの監督が、井口奈己さんです。
渡辺:うん。
有坂:実はですね、この『犬猫』というのは、これ商業映画のデビュー作なんですけど、実は井口さんは、8ミリフィルムで自主映画でかつて『犬猫』を作っていたんですよ。それが認められて、またリメイクしてくださいというオーダーのもと、商業映画監督としてデビュー。おそらくそんな人って、世界中、歴史上一人もいないんじゃないかなと思うんだよね。自分のつくった自主映画をリメイクでデビューできるなんて、それぐらいオリジナルの8ミリ版もすごくやっぱり魅力的だし、もう才能に溢れた作品なので機会があったら、ぜひ観比べてみると、また面白いかなと思います。この2004年版の『犬猫』の主題歌は湯川潮音さんが担当してますので、そのあたりが好きな方もぜひ観てみてください。……井口さん、なんかドキュメンタリー撮ったね。
渡辺:あ、そうなんだ。
有坂:そうそう、全然、最近新作の話を聞いてなかったんですけど、映画をつくるワークショップの子どもたちに密着したドキュメンタリー。
渡辺:へえー。
有坂:配信でね、やってて今度神戸で上映もされるみたい。
渡辺:あ、もう配信ではあるんだ。
有坂:配信っていっても、アマプラとか、そういうのではないと思う。ちょっと僕もすいません、そこがあんまりわかってないんですけど、ぜひなんかこの井口奈己監督というのはね、ちょっと独特なポジションにいる面白い監督なので、ぜひ合わせて注目してみてください。
渡辺:なるほど、キノ・イグルーでもね、やったもんね。
有坂:そうそうそう。8ミリ版をね、クラスカのルーフトップシネマでね、屋上でやったね。
渡辺:はい、じゃあ、もう4本目ですか。どうしよう。
有坂:ここはもう被らないと思うんだよな。
渡辺:そうですか、じゃあこれにしようかな、えっとですね……どうしよう、やっぱりこれにしようかな。まあいいや(笑)
有坂:ここに来て、そんな悩む!
渡辺:じゃあ、アメリカ映画、2016年のアメリカ映画です。
渡辺セレクト4.『パターソン』
監督/ジム・ジャームッシュ,2016年,アメリカ,118分
有坂:ああー。
渡辺:これはジム・ジャームッシュ監督の作品です。舞台はニュージャージーですね。その郊外の街が舞台なんですけど、このニュージャージーのパターソンっていう街なんですけど、主人公の名前もパターソンっていうんですね。で、このパターソンの、ほんとにいつも同じルーティーンで過ごしてる日々を描く作品なんですけど、これがめちゃくちゃ素晴らしい作品で、もうほんとに毎日同じような日々を過ごしている、夫婦を描いているんですけど、その毎日のルーティーンなんだけど、微妙にやっぱり違うんですよね。あの、何かがちょっと違ったりとか、でも同じように日々過ごしていて、で、ちょっとした、いつもと違うことが起こったりとかっていう、何気ない日常を丁寧に撮っていく作品なんですけど。ほんとにこの「何気ない日常」っていうのが一番幸せなんだなって思わせてくれる。もうなんて言うんでしょう、ほんとに日々の日常を淡々と描いてるのに泣けてくるっていうですね、ほんとにジム・ジャームッシュの中でもかなりトップクラスに好きな作品です。あと、キーポイントでのワンちゃんが出てくるんですけど、めちゃくちゃ可愛い!
有坂:最高だよね。マーヴィン!
渡辺:いいんだよね、あの郵便ボックスをね、やるくだりとか……
有坂:そうそうそう。言っちゃうの?
渡辺:言わないけどね(笑)。あれなんかもキュンキュンするよね。
有坂:あれはすごいね。
渡辺:これはぜひ、観ていただきたいんですけど、まあ、ほんとにこれもアメリカの郊外を舞台にしてるんですけど、本当にこう家と暮らしみたいなところを丁寧に描いて、本当に素晴らしさを伝えてくれるいい作品なので、ぜひ、これも機会があったら観てみてほしいです。
有坂:なんか朝起きて、朝ごはん食べて、仕事行って、その仕事っていうのがバスの運転手で、その仕事場について、バスを走らせるまでの何気ないルーティーンとかもしつつ、なんかほんとに淡々と進んでくんですよ。でも、淡々と進んでいると、やっぱり退屈って思っちゃう人もいると思うんですけど、これが退屈じゃないっていうのが、やっぱりすごい!
渡辺:すごいね。
有坂:これ、ジム・ジャームッシュのこの時期得意な手法で、淡々とした日常を何回か描く、でちょっとずつずらしていく。そうちょっとずらすっていうところに、なんかこう観てる側の心が動く。ほんとちょっとずれるだけで面白い。なんか、そういうところは監督としてのなんか成熟さみたいなね、感じるような一本かなと思います。あと、永瀬正敏がね。
渡辺:そうそう、これもね、「アー、ハン?」って(笑)。ちょっとぜひ観てもらいたいですね。
有坂:賛否両論ある永瀬正敏の名演をね(笑)。そうか、『パターソン』もあったね、忘れてた。はい。じゃあ、僕の4本目は、アメリカ映画です。
有坂セレクト4.『プロジェクト X』
監督/ニマ・ヌリザデ,2012年,アメリカ,87分
渡辺:ははは! なるほどね(笑)
有坂:手紙舎好きに、『プロジェクト X』を紹介していいのか。いや、よくないんじゃないって思いながら紹介します(笑)。
渡辺:(笑)
有坂:これはアメリカのちょっと地域は特定されていないんですけど、郊外の静かな住宅地が舞台です。主人公は3人の男子高校生で、いわゆる“いけてない”3人組が主人公のティーンコメディです。で、彼らは夢を持っているんですけど、彼らの夢というのは有名になること。もうなんか迷惑系YouTuberみたいな、夢を持っている3人組の男子が主人公なんですけど、その中の一人の家で両親が旅行に行くということで家を空ける。しかも夏の夜。これはもう自分たちのイケてないグループから脱出するために、盛大なパーティーを家でやって、「もう俺ら人生変えようぜ!」みたいな物語なんですね。それで、イケてないなりに、もういろんな、あの手この手を駆使して、Facebookとか使って、「もうこんなパーティーやるからみんな集まって!って、集めてみたら、もうその噂が広がりに広がって、もう想像をはるかに超える、誰かもわかんないような人たちばっかりが押し寄せてきて、もう大パーティーになってしまうんですね。そのパーティーが、こう時間とともにですね、どんどんどんどんエスカレートしてカオスになっていって、これも最終的に行くとこまで行きます。で、映画の内容はね、ほんとそれだけです。ほんとに内容がゼロ。ほんとにパーティーで、パーティーを楽しんでいる若者たちが、90分弱……87分か、永遠続いていくっていう内容なんですけど、これは一応そのカメラが一人称で、基本的に一人称で、誰かの視点で、こう例えばこういうふうにスマホで撮っている映像が、映っているんですね。
なので、それを観ている観客っていうのは、自分もパーティーの参加者の一人みたいな感じで、パーティーをすごい臨場感を持って内側から楽しんでいるような内容になってます。なので、そのだんだん最初はおとなしくお酒とか飲んでたような若者たちが、だんだんこうダンスして、プールに飛び込んで、プールに車が突っ込んで……。この先はもう言えないですけど、ほんとにね、想像をはるかに超えるところまでね、最終的に行きます。で、そこは僕が個人的にはこの映画の素晴らしいとこだなと思って、どうしても映画ってこう観ている側の安心なほうに収めようとしがち。特にアメリカ映画だと、プロデューサーが権限を持ってるから、みんなが満足するようなハッピーエンドに収めがちな中、ちょっとこの映画は全く違った方向に向かってくんですね。なので、一応これティーンコメディーっていうジャンルなんですけど、ある意味、もう途中からはパニックムービーみたいなジャンルに変わっていくような……
渡辺:(笑)。
有坂:ほんとにね、ちょっと比べる作品が他にないような、魅力的な1本です。アメリカでは、これって結構大ヒットしたらしくて。大ヒットしたが故に、この後、このパーティーを真似する若者が続出して、社会問題になった。なんか、そのパーティーをパーティーの名前がプロジェクトMとか、プロジェクトPとか、もう完全にこの映画から影響を受けただろうなっていうパーティーが続出したっていう、それぐらい若者たちの社会問題にもなったという1本です。残念ながらですね、日本では、この映画は劇場未公開。
渡辺:そうだよね。
有坂:でもね、このほんとに後半にかけてのパニックムービー的な迫力は、ほんと大スクリーンで観たい1本だなと思うので、またね、これからもしやることがあったら、劇場で観たいなと思いますし、その前にぜひ夏の夜に、ほんとねビールとか飲みながら観ると楽しいと思うので、真面目に観ないでください。ビールを飲みながら、夏の夜に楽しむのに最適な1本かなと思います。
渡辺:なるほど。
有坂:『プロジェクト X』でした。
渡辺:しかし、アメリカ人って、ほんとにあんなパーティーしてんのかね。
有坂:いや、そうだよね。そう思っちゃうよね。
渡辺:うん、なんかさ、両親が留守ですって瞬間にさあ(笑)。
有坂:そうそうそう、よく見るもんね。
渡辺:もう、お酒かき集めて、もうやばいやつが続出してみたいな。
有坂:そういう、ある意味、青春映画の定型じゃん、それって。よく観るし。そこだけにフォーカスしたっていうところが、この映画の面白いところ。
渡辺:あと、あんなふうに、自宅にプールあんのみたいなね。
有坂:ねー。でも、そういうところが会場になったりするんだろうね。なんか、どっから来たのか、DJとかもちゃんといて。
渡辺:で、大体警察呼ばれるっていうね(笑)。
有坂:そうそう、あるあるなんだけどね(笑)。ぜひ観てみてください!
渡辺:そう来ましたか。はい、じゃあ、ついに5本目です。僕の5本目はこれにします。2016年の日本映画です。
渡辺セレクト5.『人生フルーツ』
監督/伏原健之,2016年,日本,91分
有坂:ああー、うんうんうん。
渡辺:これはドキュメンタリー映画なんですけど、『人生フルーツ』の主人公となってるのが、建築家の津端修一さんと、その奥さんのご夫婦ですね。このご夫婦の郊外の暮らしぶりを追ったドキュメンタリー作品となっているんですけど、これがめちゃくちゃいい映画で。
有坂:名作だよね。
渡辺:うん。本当に手紙舎のファンの人たちなんかは、ほんとにどハマりするタイプだと思うんですけど。
有坂:すいませんね。『プロジェクト X』を紹介して(笑)。
渡辺:その後にちょうどいいなと。ギャップがあって(笑)。
有坂:好感度上げようとしている?
渡辺:お膳立てしてくれて、ありがとうございます。
有坂:(笑)。
渡辺:この津端さんが、建築家なんですね。この方は、阿佐ヶ谷住宅とか、かなり話題となった建築家だったんですけど、当時が1970年代で、もう大規模住宅のブームだったので、津端さんが理想とする自然と共生するとか、もっとゆとりのある空間だったりとか、そういったものっていうのは望まれない風潮っていうのもあって、当時の住宅公団とか、そういうけっこう大きい組織にいたんですけど、津端さんはそれが嫌で、辞めて、郊外に戸建てを建てて、そこでご夫婦で理想の住環境づくりっていうのを自分たちでやっていくという、そういうお話なんですよね。それがやっぱり今のスローライフとか丁寧な暮らしとか、そういうのの本当に走りというかですね。こういうのをかなり昔から地でやってきた人たちっていう、その記録が観られるっていうだけでもすごい価値があるし、やっぱりすごいちゃんとした考えを持ってやっているっていうですね、それがすごい微笑ましいし、羨ましいし、なんか「あっこういう暮らしもあるんだな」って発見がある。そんなことを色々気づかせてくれる作品です。
有坂:うんうん。
渡辺:で、物語の中で、実はもうこの津端さんご夫婦はかなり90歳と87歳っていうですね、この時点でかなり高齢なんですけど、この津端修一さんに建築の依頼が来るっていうですね。そんなところまで話が行く。そのじゃあ、建築どうするの? みたいなところもですね、こう物語のクライマックスに盛り込まれていたりしてですね、結構見どころのある作品となっています。
で、ちょっと、実はなかなか観る機会がない作品で、動画配信とかレンタルとかも実はなくてですね。たまに、劇場公開するタイミングで観られるというですね。キノ・イグルーもね、この前イベントで横須賀美術館でやったりしたんですけど、ほんとになかなか観賞機会がないので、またやるときがあれば、ぜひちょっと観てもらえると嬉しいなと思います。
有坂:DVD化とかね、配信とかは基本的にしないっていうスタンスで、もう上映機会を狙って観ることしか、基本的にはできない映画ですけど、まあ、2回でも3回でもね、観たくなる。ほんとに観ると心がすっと綺麗になるようなドキュメンタリーですよね。……あの……東海テレビの話はしなくていいの(笑)?
渡辺:そう言いたくなっちゃうね。止まんなくなっちゃうね(笑)。そう、このドキュメンタリーをつくっているのは、東海テレビというところで、テレビ局なんですよね。で、テレビ局って、報道部門で結構ドキュメンタリー作品をつくっていたりするんですけど、この東海テレビは、映画を結構つくっていて、大成功させてるんですよね。この『人生フルーツ』が代表作なんですけど、他にも『ヤクザと憲法』とかいろんな名作を、毎年1本出してるので、東海ドキュメンタリー映画祭ってのができたぐらい。
有坂:うんうん、そうだね。
渡辺:定評のあるところなので、そこのレーベル軸でチェックするっていうのも面白いかなと思います。
有坂:おすすめ。まあ、人生フルーツとは全然違ったタイプのドキュメンタリーばっかりなんですけど、そう、でも、ほんとに見応えのあるドキュメンタリーがそろっています。……はい、いいですか? じゃあ最後、僕の5本目、いきたいと思います。5本目は……映画ではないです。
渡辺:えっ?
有坂:5本目はね、ミュージックビデオを紹介したいと思います。
有坂セレクト5.『The Suburbs』Arcade Fire
監督/スパイク・ジョーンズ,2011年
渡辺:ああー!
有坂:これは、2010年にアーケード・ファイアが発表した曲で、このミュージックビデオ。これを監督したのは、映画監督であるスパイク・ジョーンズです。スパイク・ジョーンズって、最近だと『her/世界でひとつの彼女』とか、『かいじゅうたちのいるところ』とか、『マルコヴィッチの穴』とかね、作った監督でね。これはちょっとしたプロジェクトになっていて、スパイク・ジョーンズが、バンドのボーカルのウィン・バトラーが昔に書いた脚本を、これ実は30分の短編映画として作っているんですよ。その30分の短編映画をぎゅっとまとめたものが、ミュージックビデオとして発表されてます。なので、YouTubeとかで検索して、「The Suburbs ミュージックビデオ」とかで検索すると、そのぎゅっと凝縮されたミュージックビデオ、ある意味映画の予告編的な映像を、もう今すぐにでも観ることができます。
渡辺:うんうん。
有坂:5分ちょっととかに、あくまで、その物語のある30分の短編映画をまとめているので、「なんでこういう展開になってくるんだろう」っていうのは、ミュージックビデオを観ているだけだと、ちょっとわからない部分もあるんですけど、一応ね、こんな内容になってます。これ、紹介されている文章をちょっとそのまま読みますね。
アメリカ郊外の若者の集団。ある年の夏、もう随分前のこと。若者たちは屋外で戦争が行われていて、軍が生活のすべてと出入り口を支配しているため、街に出ることもできなかった。若者たちは、無目的に街中をさまよう。愛と憧れと友情は、それでもまだすべてを意味していた。
というですね、ちょっと抽象的な紹介文なんですけど、あの、設定的にはちょっと近未来風な郊外なのかな、現代ではないです。ただ、もしかしたら、こういうことが今後起こり得るかも、という意味での近未来な郊外が舞台になってます。主人公は地元の高校生で、実際、地元の高校生をキャスティングしたらしいんですけど、ほんとになんか素人とは思えないぐらい、みんなキラキラした若者を演じていて、なんかね、ほんとみんな楽しそうに、バカやったりとか、悪ふざけしたりとかしてるものを、カメラはちゃんと記録しているんですね。で、最初に、順也が紹介した『グーニーズ』と同じで、BMX乗って、だらだらだらだら街中を5人で並んで走ったりとか、もうアメリカ映画でよく見るような、郊外のサバービアな風景も楽しむことができる作品になってます。なんかこう学生の頃ってね、何にも考えないで、友達と遊んでいたあの時間、なんか、そういう青春の時間をなんか映像を通して体感できるっていうのは、実は簡単なことじゃないなって思うんだよね。そういう空気感をつくるっていうのは。でもね、このミュージックビデオと30分の短編映画は、それがものすごくね、映像と音を通して伝わってくる作品になっています。だからこそ、なんか、後半にかけての展開がちょっとね切なかったりするんです。それで、これ、30分の短編映画、こっちは『Scenes from the Suburbs』っていうタイトルなんですけど、こっちの30分バージョンはYouTubeでは、日本語字幕なしであれば確か上がっています。ただ、アーケード・ファイアのアルバムの特典として、実は日本語字幕付きのDVDが付いていますんで、さっきAmazonで調べたらまだ廃盤になっていなかったので、スパイク・ジョーンズが好きとか、アメリカの郊外が好きとかっていう方は、買ってでもぜひ観ることをおすすめしたいなと思います。アーケード・ファイアの『The Suburbs』 国内版で検索すれば多分出てくると思いますので、ぜひ観ていただきたいなと思います。
渡辺:そうきましたか。
有坂:なんか、サバービアの風景をイメージしたときに、けっこう真っ先に出てくるぐらい、タイトルも『THE SUBURBS』だしね。
──
有坂:……という5本と5本、計10本を紹介しました。いかがだったでしょうか。みなさんは、観たことがある映画とかあったのかな? 他にもね、何かあった?
渡辺:あと、『シザーハンズ』とか。
有坂:だよね。
渡辺:あと、『バッファロー’66』とか。
有坂:うんうん、そうか、結構あったね。
渡辺:あとね、『幸せへのキセキ』とか入れようかなと思った。
有坂:俺ね、『マグノリア』とか、『エデンより彼方に』とか、あと日本映画だと『好きだ、』とかね。
渡辺:アメリカがやっぱ多くなっちゃうなっていうのがあったから。
有坂:うーん。なんだろうね。それ俺も考えたんだけど。
渡辺:あの郊外っていう、なんかアメリカは郊外っていう町がしっかりあるじゃん。で、映画になってる感じがするんだけど、なんか他の国とかだと……
有坂:フランスでもさ、『憎しみ』を挙げるかなと思ったんだ。
渡辺:そうそう、それ観て『レ・ミゼラブル』にしようと思って。
有坂:フランスの郊外が舞台の映画って結構ヘビーだよね。
渡辺:そうそう、治安が悪い。
有坂:そういうのが多い。アメリカはなんか「一見幸せそうな感じなんだけど」みたいな。
渡辺:そう、『アメリカン・ビューティー』とかね。
有坂:そうだね。そこの違いはあるかもね。
渡辺:なんか、アメリカは郊外ものが多い。
有坂:あと、『ハピネス』とか。『ハピネス』っていう映画があるんですけど、これは絶対観ないでください。僕、大好きな映画なんですけど、手紙舎ファンの人は絶対観ちゃいけない映画です。
渡辺:タイトルに騙されちゃいけない。
有坂:そうそう、皮肉でしかないタイトルなので、絶対に観ないでください。『ハピネス』(笑)。
渡辺:2回言ったけど(笑)。
有坂:はい、ということで、ご紹介してきました。
──
有坂:何か最後にお話があれば。
渡辺:そうですね。どうしよう、何も考えてなかった。……僕はnoteも書いていたりするので、noteで映画の情報とかも、発信していたりしますので、そちらもたまに見ていただけると嬉しいです。
有坂:それ、何で検索したら出てくるの?
渡辺:なんだろうね。
有坂:渡辺順也 noteとか?
渡辺それでいいと思います( https://note.com/junyawatanabe/ )。
有坂:結構内容濃いよね。よくあんなに書けるよね。
渡辺:書き出すとね。
有坂:インスタより力入れてるよね。
渡辺:その1個のボリュームはね。全然さ、気軽さが違うというか。インスタのほうが気軽にあげられるっていう。
有坂:僕はインスタにすごい力を入れてやってるんですけど、じゃあ、僕は、今日ちょうど更新された記事。「TOKION」というカルチャー系のwebサイトで、えっとインタビューが今日(7月28日)15時に公開されたんですけど、僕のストーリーから飛ぶことができるので、インスタのストーリーでぜひ見てみてください( https://tokion.jp/2022/07/28/creators-talk-about-books-vol8/ )。
渡辺:いろんな本の紹介を。
有坂:そうそう、この「TOKION」の連載で、「クリエイターが語る写真集とアートブックの世界」っていうのがあって、それに呼んでいただいて、僕はその映画に関連するアートブックを3冊と、あと映画のパンフレットも紹介しました。映画のパンフレットについても結構いろいろ語っていたりしますので、ぜひ、僕のインスタのストーリーから飛んでいただけたらと思います。
──
有坂:まあ、あれだね、なんか今ちょっとこう振り返ってみると、アメリカのサバービアが舞台の映画ってさ、冬が設定のってあんまりないかもね。夏のイメージが強いかもね。
渡辺:確かにね。
有坂:なんか、すごい夏っぽい映画をいっぱい紹介したなって、今思ったんだけど。ちょうどよかった。本当は、今回「砂漠」っていうテーマだったんです。多分ね、月刊手紙舎でも、最初「砂漠」で告知されていたんだけど、砂漠は無理だなと思う。多分ね、めちゃくちゃ被るんですよ。『ハムナプトラ』とか、『アラビアのロレンス』とかになっちゃうので。ちょっと急遽「郊外」に変えたけど、結果良かったね。はい、ということで、今月の「ニューシネマ・ワンダーランド」は、これで終わりましょうかね。ということで、次回は8月の終わり、夏の終わりですが、また来月もぜひ楽しみにしててください。では、今月の「ニューシネマ・ワンダーランド」はこれで終わりたいと思います。みなさん、どうもありがとうございました!
渡辺:ありがとうございました! おやすみなさーい。
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選者:キノ・イグルー(Kino Iglu)
体験としての映画の楽しさを伝え続けている、有坂塁さんと渡辺順也さんによるユニット。東京を拠点に、もみじ市での「テントえいがかん」をはじめ全国各地のカフェ、雑貨屋、書店、パン屋、美術館など様々な空間で、世界各国の映画を上映。その活動で、新しい“映画”と“人”との出会いを量産中。
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キノ・イグルーイベント(@kinoiglu2003)
有坂 塁(@kinoiglu)/渡辺順也(@kinoiglu_junyawatanabe)