あなたの人生をきっと豊かにする手紙社リスト。今月の映画部門のテーマは、「農村な映画」です。その“観るべき10本”を選ぶのは、マニアじゃなくても「映画ってなんて素晴らしいんだ!」な世界に導いてくれるキノ・イグルーの有坂塁さん(以下・有坂)と渡辺順也さん(以下・渡辺)。今月も、お互い何を選んだか内緒にしたまま、5本ずつ交互に発表しました! 相手がどんな作品を選んでくるのかお互いに予想しつつ、それぞれテーマを持って作品を選んでくれたり、相手の選んだ映画を受けて紹介する作品を変えたりと、ライブ感も見どころのひとつです。


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お時間の許す方は、ぜひ、このYouTubeから今回の10選を発表したキノ・イグルーのライブ「ニューシネマ・ワンダーランド」をご視聴ください! このページは本編の内容から書き起こしています。




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−−−乾杯のあと、恒例のジャンケンで先攻・後攻が決定。今月は渡辺さんが勝利し、先攻を選択。それでは、クラフトビールを片手に、大好きな映画について語り合う、幸せな1時間のスタートです。


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渡辺セレクト1.『リトル・フォレスト 夏・秋』
監督/森 淳一,2014年,日本,111分

有坂:ああー。
渡辺:これは、2014年の日本映画です。もともと漫画が原作なんですけど、主演は橋本愛で、都会に行ったけど、居場所がなかなか見つからなくて、やっぱり田舎に帰ってきたという女の子が主人公です。それで、一人暮らしで、小さな農村に住んでいて、自給自足の生活を始めるっていう話ではあるんですけど。もうとにかく、出てくる野菜とかが全部おいしそうなんですよね。で、冒頭から薪ストーブでパンを焼いていたりとか、自らつくるスープとか野菜をそのまま食べたりとか、そういうのがですね。とにかくおいしそうで、音楽もすごく良くて、リズミカルな感じで、テンポよく進んでいって、この都会に疲れた女の子が、田舎の農村で健康なおいしい食べ物を食べていくことで、元気を取り戻していくというお話です。なので、本当にこれは、「つくること」「食べること」みたいな、そういう結構、原始的な喜びとか大切さみたいなのがすごく伝わってくる作品で。すごい見やすいので、なんだろう、農業とか新鮮な野菜とかが好きみたいな方には、めちゃくちゃおすすめな作品です。多分配信とかでも観られると思いますんで。
有坂:韓国版もあるよね。
渡辺:あ、そうだね。そうそう、リメイクされた。
有坂:韓国版のほうは観てないけど、ポスターがすごく良いんだよね。ポスターデザインがすごい素敵なので、あのPinterestとかで、ぜひ検索してみるといいかなと思います。
渡辺:配信はAmazonプライムとかでやってますね。ぜひ、チェックしてみてください。
有坂:夏・秋編と
渡辺:冬・春編が。
有坂:あ、コメントで「好きな映画です」っていう人が。
渡辺:夏・秋編のほうがやっぱり野菜が多く出てくるので、そっちの方が個人的には好きかなと思います。
有坂:何、そんな、なんかちょっと「お肉食べません!」みたいな(笑)。
渡辺:食べませんよ。野菜派ですから(笑)。
有坂:唐揚げ大好きなのに、ちょっとヘルシーなイメージでいこうとして(笑)。でも、これはね、『リトル・フォレスト』は、きっと出してくるだろうなと、あえてそこは外して考えていたので良かった。じゃあ、僕、1本目いっていいですか。全然違うタイプになります。



有坂セレクト1.『木靴の樹』
監督/エルマンノ・オルミ,1978年,イタリア,187分

渡辺:ああー、はいはいはい。
有坂:この『木靴の樹』は、ある意味、こういう農村とか農業っていう切り口で映画を考えたときに、真っ先に思い浮かぶような名作中の名作と言っていい1本です。で、これ舞台は北イタリア、ベルガモっていうところの農村なんですけど、時代設定が19世紀末なんです。なので、現代ではないっていう時代設定で、そこで暮らしている農村の人たちの生活に密着したような、まるでドキュメンタリーを観ているかのような、フィクション映画です。で、いわゆる、大地主の人に搾取されてしまってる農家の人たち。本当こう貧しくて、もう毎日毎日頑張って働いて、食べるものも質素でなんとかこう食いつないでいっているんだけど、そんな日常の中にも小さな喜びがあったりっていうことを、すごく綺麗な、自然光を使った光をうまく取り入れて、まるで絵画を見てるような美しい演出で表現したような映画です。……あ、これです(パッケージを見ながら)、この男の子が可愛いんだよね。本当、もう純粋無垢なまん丸な目で、もちろんちょっとした幸せもあるんですけど、こういう環境で暮らす人たち特有の厳しさみたいなものとかも描いているし、なんかね、作為的な演出が全然なくて、本当にねドキュメンタリーなんじゃないかなっていうぐらいに、淡々と映画が進んでいきます。セリフも最小限だし。
渡辺:でも長いよね。
有坂:3時間ぐらい。これ僕、最初に見たとき、2本組のVHSビデオをレンタルで借りて観たんですよ。
渡辺:そうだったよ、覚えてる。
有坂:もう、今でも覚えているけど、昼間に観て、昼間に観ると光がこう反射してさ、真っ暗なシーンとか何が映っているかわかんない。なんなら、反射して自分が映っちゃう。で、観て、「なんだったんだ今の映画?」って、正直わからなかったんですけど、でもこの映画って70年代の名作の1本って言われていたり、あと、カンヌ国際映画祭のパルムドールっていう最高賞を受賞しているんですね。だから、背伸びして、この映画がわかった自分でいたいと思って、「あの『木靴の樹』って面白かったよ」って、当時、順也に言ってました。
渡辺:ああ、そうだよね。俺、それで観たんだと思う。
有坂:騙されて(笑)。
渡辺:(笑)
有坂:実際ね、映画は本当に、まあその当時の僕の映画IQ と、その昼間に観た小さなテレビだと理解しきれなかったんですけど、あらためて劇場でリバイバルしたときに、もう1回観たのかな、そのときは本当に打ちのめされるぐらい感動したので、結構環境だったり、観る時間帯とかにも影響されるような作品かもしれません。
渡辺:うんうん。
有坂:この映画は、そのイタリア映画って、まあどの国にも脈々と受け継がれている伝統っていうのがあるけど、それでいうとイタリア映画っていうのは、ネオリアリズモっていう文化があって、これはなんかこうリアリズムを基調にした映画。例えば、出てくる人たちは役者ではなくて、実際の素人。この『木靴の樹』も役者ではなくて、その村で暮らしている家族を本当に使っています。そういうなんか、こうリアリズムをベースに映画を作るっていう伝統がイタリアっていうのは昔からあって。その中の割と現代に近い時代の傑作の一本が、この『木靴の樹』って言われています。なので、ハリウッド映画みたいな、はっきりした起承転結があるようなジェットコースタームービーとは対局で、淡々と日常を撮りながら、でも、その中にある愛おしさみたいなもの。そういう小さなものを何か掴み取りたいっていう人にとっては、このイタリア映画の流れっていうのは、もしかしたら好きかもしれないので、ぜひ興味のある方、チャレンジしてもらいたいなと思います。
渡辺:あの木靴をつくっているんだよね。
有坂:そうそう、物語を言うのを忘れた。
渡辺:タイトルなのに(笑)。
有坂:そうそう、これ暮らしている家族の子どもが靴をなくしちゃって、で、そのお父さんが、よしって言って、隣のどっかの敷地にある木を切って、木で靴をつくるんですよ。子どものために。そうしたら、その木を切ったってことが大問題になって、だんだんその村に自分たちの居場所がなくなっていくっていうのが、一応大まかなストーリーなんです。
渡辺:でもね、木の靴ね。絶対履きたくないなと思って、この映画観て(笑)。
有坂:そんな目に合うんだったら(笑)?
渡辺:いや、靴擦れするんだろうなって(笑)。
有坂:ああ(笑)、でも、見た目はすごい可愛いんだよね。フォルムがね、なんか、ちょっとまん丸で可愛らしくて。
渡辺:そういう感想を持ったのを覚えています(笑)。
有坂:3時間の末に。
渡辺:じゃあ、僕の2本目いきたいと思います。僕の2本目は、2018年のアメリカ映画です。



渡辺セレクト2.『ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方』
監督/ジョン・チェスター,2018年,アメリカ,91分

有坂:うんうん。
渡辺:これは、ドキュメンタリーなんですけど、都会に住んでいた夫婦が田舎に移住して、それで理想の農園づくりを始めるというお話です。小さな農村に移住して、自分たちでゼロからオーガニックな、理想となるような農園っていうのをつくり始めていくというお話なんですけど、これがですね、めちゃくちゃ面白くて。なんか、もう経済合理性と真逆な、本当に自然に近い形でやっていてですね、「この作物の隣にこれを植えた方がいい」とか、そういう相互作用する自然の力っていうのがあるんですけど、それを生かしたやり方を、学んでやっていったりとかですね。あとは、害虫とか害獣って呼ばれる動物とか、虫たちにも、実はちゃんと役割があるみたいなことを理解していくんですよね。なので、「駆除すればいい」っていうものじゃないみたいな。オオカミは、家畜のニワトリを襲うんだけど、オオカミがいることで、オオカミが駆除してくれている他の動物とか虫もいるみたいなことが、オオカミを駆除してしまうとそれがわかる、みたいなですね。そういうのを学んでいくんですよね、この都会の夫婦が。
有坂:うん。
渡辺:これがすごいのが、映像がすごくて、なんで映像がすごいかっていうと、この主人公の夫婦がネイチャードキュメンタリーを撮っているカメラマンなんですよ、仕事が。なので、自分たちの家を自分たちで撮っているんですけど、めちゃくちゃ高性能なカメラで撮っていて、映像もかっこいいっていう。だから、本当に家庭の日常を描いているんですけど、映像は本当にプロの映像っていう感じで観られるのと、あとやってることがやっぱり、本当に自然を生かした、なんて言うんですかね、農薬とかを使わないナチュラルな、オーガニックなやり方っていうのをどんどん学んでいく姿とか、すごい虫とか発生しちゃっても、その虫をカモを放してカモに食べさせるみたいな、そういう自然の循環で成り立たせているみたいなところが、どんどん軌道に乗り出すみたいなところが、観ていてすごい面白いです。これは評価も高いんで、本当にね面白いんですよね。あの「ザ!鉄腕!DASH!!」とか、ああいうのが好きな人は、もう本当に好きだと思います。
有坂:結構配信でも見られるね。Amazonプライムとか。おっ、なんかコメントで、「福井の端っこの農村から今見ています」、すごい。ありがとうございます。
渡辺:ありがとうございます。
有坂:「カメムシにも、なんか役割はあるんですか?」だって。
渡辺:あるんじゃないですか。ぜひ観てほしいですね。本当にどんな害虫って言われているものにも、役割があるんだみたいなことは、気付きになる作品だなと思います。
有坂:それを知ることは本当に大事なことだね。
渡辺:本当に! 俺は、大好きな作品ですね。
有坂:じゃあ、僕の2本目にいきたいと思います。2本目は、2019年のデンマーク映画です。



有坂セレクト2.『わたしの叔父さん』
監督/フラレ・ピーダセン,2019年,デンマーク,106分​​

渡辺:うーん!
有坂:これ、制作2019年なんですけど、日本公開は去年ですね。2021年に公開されたばかりの映画です。これはデンマークののどかな農村が舞台なんですけど、そこで暮らす2人を追った物語。で、この2人っていうのが、えっと27歳の女性、クリスっていう女の子と、その叔父との2人暮らし。で、この2人が、いわゆる伝統的な酪農の仕事を2人でやっている。でも、叔父はちょっと体が不自由だから、叔父が朝着替えるところから、このクリスっていう女性は、介護のように手伝いながら、でも、叔父もね、酪農のほうももちろん手伝いしながら、という感じではあるんですけど、そんな2人に密着した映画になります。ドキュメンタリーではないです。フィクション映画です。 それで、この映画の最初、映画が始まってから、朝早く起きて叔父さんの着替えを手伝って、朝ごはんをつくって食べて、牛の世話をして、途中でコーヒー飲んでくつろいでみたいな。そのいわゆる彼女たちにとっての日常のルーティーンが描かれるんですけど、びっくりしたのが、最初の10分間ぐらいに、セリフが1個もない。
渡辺:へえ、観てないんだよねこれ。
有坂:あれ、本当に? そっかそっか、そうなんですよ。だから、本当にそこだと、もうドキュメンタリーとしか思えないぐらい、もうなんだろ、そういう日常を送ってる人の所作なんだよね。すごくすべてが自然で、淡々と進むから、最初のほうは「この叔父とクリスは不仲なのかな?」と思っちゃう。言葉を交わさないから。だけど、もう言葉を交わすまでもなく、日常化している動作だから、逆に、言葉がいらないっていうことなんだなっていうのが、だんだんわかって、だから、そうやって彼女たちの日常のリズムを、最初の10分間でなんかこう体感できる。そういう意味で、本当によくできた映画だなっていうふうに思いました。で、なんかね、テレビを見てて、テレビの音声とかが入ってくる。基本、喋んないから、そういうちょっとした音声、ラジオの音とかが、観ている観客にとっては、すごい情報として入ってくるんだけど、そこはなんか北朝鮮のミサイル演習情報とか、いわゆるニュースの情報が入ってくるんだけど、なんか難民問題とか、そういうすっごいおっきなことが起こっているニュースを聞きながら、でも、すごくこう淡々とした、ミニマムな日常の映像を観ているっていう。なんか、このバランス感覚はすごい面白い。
渡辺:うんうん。
有坂:世界は広いんだけど、こういう小さな世界で淡々と暮らしている人もいるっていうのが、なんか、目と耳ですごい感じられる映画なので、すごく緻密に計算されてつくっているなと。でも、そこがいやらしくは感じない、すごくバランス感覚のとれた、素晴らしい映画だなって個人的には思ってます。映像も綺麗なのでね。ぜひ、北欧の農村が観たい方は、ぜひ、『わたしの叔父さん』を観てみてください。
渡辺:なるほど!
有坂:これも順也に挙げられる前にと思っていたけど、見逃してたのね?
渡辺:そうそう、デンマークなんだね。
有坂:うん。
渡辺:すごい映像が綺麗なイメージ。
有坂:そうそう、さっきのね、ビジュアルもそうなんですけど、やっぱりこう光が、総じてあれだよね、こう、農村が舞台の映画は映像が綺麗! 絵になる。
渡辺:うんうん。……なるほどね。そうですか。
有坂:これ観てないなら、じゃあ、順番変えればよかったな。先に言ってよ、それ。
渡辺:言いませんよ(笑)。じゃあ、3本目いきたいと思います。
有坂:頼む、言わないでくれ!
渡辺:これもちょっと被っているかもしれないので。僕の3本目は、2014年のフランス映画。



渡辺セレクト3.『エール!』
監督/エリック・ラルティゴ,2014年,フランス,105分

有坂:セーフ……(かぶってなかった)。
渡辺:この『エール!』っていうのは、フランスの田舎の農村が舞台で、農家を営んでいるある家族が主人公で、主人公はその家族の中の女の子なんですけど、この家族がちょっと他と違うのが、その女の子以外の家族、両親とお兄さんは、耳が聞こえないんですね。で、その主人公の女の子だけ耳が聞こえるんですけど、こういう、家族の中で1人だけ耳が聞こえるっていう、このことを「コーダ」っていうんですけど。去年かな、アメリカ映画で、リメイクされて『コーダ あいのうた』っていうタイトルでリメイクされて、なんとそれがアカデミー賞作品賞を獲るっていうですね、そのぐらい、有名になった作品なんですけど、それの元ネタがこのフランスの『エール!』という作品です。
有坂:うんうん。
渡辺:これ、まあリメイク版も話は基本的にそのままなんですけど、コーダとして育った主人公っていうのは、やっぱり立ち位置的にこう他の人たちとの通訳にならざるを得ないですね。なので、家族にとっても必要な存在だし、まあ、ずっと家族の一員で、通訳の立ち位置として、そのまま過ごしていくものと思っていたんですけど、あるとき、学校で「音楽の才能がある、歌の才能がある」っていうことを教師に言われて、で、自分も歌に目覚めて、「そっちの方向に行きたいかも。でも、自分が一人で夢を持って行ってしまうと、家族はどうなるんだ?」みたいな。そういう間に立たされて思い悩む女の子のお話になるんですね。しかも、その夢を持ったのが歌っていうのが。やっぱり歌だから、耳の聞こえない家族には一番理解できないものなんですよね。なので、その歌の何がいいんだっていうところが理解されない部分だったりとか、そこがね、ちょっともどかしさが続くんですけど、この彼女の決断したことは……、みたいなですね、ところがこう……。
有坂:また言っちゃうとね(笑)。ネタバレ。
渡辺:どういうふうになるのかっていうですね。そこがね、泣かせるんだよね。
有坂:泣けるね。
渡辺:感動しちゃうんですよ、結構。なので、映画としてもすごいよくできていて、「そういう設定があるんだ?」っていうのもそうですし、そこから、「そういう立ち位置ってのは、辛い立場の子たちっていうのがいるんだ」っていうのもそうですし、そこからね、こう「一歩を踏み出す、その先が、どういう未来が待っているか」みたいなところも、ちゃんと見せてくれるっていうところで、映画としてもすごい面白いです。あとは、本当にこういう環境の子たちが、実際けっこう世の中にたくさんいるんだっていうことも、知らしめてくれた作品ではあると思いますので、そういう意味でもすごい意義の深い作品かなと思います。あ、アマプラでやってますね。ちょっとね、これは観やすいんで、あのまあ、リメイク版の方でも観やすいので、ぜひ!
有坂:観比べてみると面白そうだね。
渡辺:そうだね。
有坂:リメイク版の『コーダ あいのうた』の方は、実際に耳が聞こえない人たちをキャスティングして。
渡辺:そうだね、役者さんね。
有坂:で、アカデミー賞を獲って、で、やっぱり今って、そういう例えば「耳が聞こえないけど役者をやってるって人もいるのに、なんで耳が聞こえる人をキャスティングしたんだ!」っていうことが問題になるような時代。でも『コーダ』はそれで、きちんとアカデミー賞を獲って、よりちゃんと、だから、「その属性にあった人をキャスティングしていこう」っていう流れに、今ってなってきている。それのきっかけになったのが、リメイク版のほうの『コーダ』なんですけど、なんかこの前ニュースで見たら、そのいわゆる、コーダ役の、主人公の実際に耳が聞こえている彼女が、「なんでリアルなコーダじゃないんだ!」っていうことが問題になったらしくて、それもどうなんだろうね……。
渡辺:そこもね。突き詰めるとちょっと大変だよね。
有坂:突き詰めたらそうなるんだろうけど、何を大事にしなきゃいけないかっていうのも含めて、なんか多分、今考えていかなきゃいけないのかなっていうのを、こう考えさせられるものだけど、でも、本当に一石を投じたことも間違いないし、ぜひ合わせて観てもらいたいね。
渡辺:はい、そうですね。とっても観やすいんで、おすすめです。
有坂:まったく抜けてたわ。そっか、確かにね。
渡辺:リメイク版のほうはね、漁師じゃん。だから農村じゃないなと(笑)。
有坂:そうだ、そっちに引っ張られた。じゃあ、僕、さっき紹介したかった3本目の映画は、韓国映画です。



有坂セレクト3.『あなた、その川を渡らないで』
監督/ジン・モヨン,2014年,韓国,86分​

渡辺:うんうん。
有坂:これは、ドキュメンタリー映画です。これは韓国版『人生フルーツ』って言われることが多い作品で、いわゆる老夫婦に密着したドキュメンタリーです。「結婚76年目の老夫婦の純愛を描いた」って、最初チラシで見たときに、あんまり内容がイメージ湧かなかったんだけど、本当にそのまんま。もう、まるで初恋をしてるからのような、98歳のおじいちゃんと89歳のおばあちゃんの日常なんですけど、もうお互いが相手に対してどういうことを思ってるかっていうのを言葉にするようなときも、もう何十年も連れ添った2人とは思えないような、すごいまっすぐな言葉で自分たちの思いを伝えられる、そんな老夫婦の日常に、これは密着してるんですけど。なんかね、やっぱり時間の流れもゆっくりしているし、何かが起こりそうで起こらないし、なんて言うんでしょう、その大きなものを期待してみるような内容の映画ではないんですけど、2人が、僕がいいなと思ったのは、2人が着てる韓国のいわゆる伝統衣装。……これ、あれかなパッケージに出ているかな、ちょっとこれ出てるね。伝統衣装を、けっこう色々見せてくれるんですけど、本当に鮮やかで、すごい見たことがないような、そういうものを日常的に着てるようなおじいちゃんおばあちゃんで、見た目がね、すごく可愛いんですよ。で、こんな組み合わせで、本当、田舎暮らしで誰とも会わないような生活してるのに、こんなカラフルな素敵な衣装を、……衣装じゃないわ、洋服着て過ごしているっていう人がいるっていうのも素敵だなって思ったし、あとは、その15か月密着したドキュメンタリーなので、そのいろんな季節も、雪が降る寒い季節もあれば、こう花が咲いてくる春の陽気みたいなのも感じられるので、1年間を通したそういった四季も映像として楽しめるのもいいところかなとはい思います。
渡辺:これ観てないんだよ。
有坂:あ、そうなんだ。先に言ってよ(笑)。そうなんだ?
渡辺:(笑)。そうこれ、すごい泣けるっていう評判で。
有坂:「そんな夫婦興味ねえよ」って感じ?
渡辺:いやいや、これは本当に観たいと思っていて、ずっと観逃していたやつですよね。これアマプラでやってるじゃん。
有坂:そうそう。これなんだろう、小津安二郎の『東京物語』みたいに、やっぱりこの2人だけじゃなくて、途中でその息子とか、自分たちの子どもとかが、孫を連れてきたりするんだけど、そのときにやっぱり、ちょっと息子たちは、なんていうんだろう、息子たちなりになんか色々あって、言い争っていたりとか。
渡辺:あんま言わないでもらっていい?
有坂:ラストは(笑)。
渡辺:一番ダメだ(笑)。
有坂:でも、そういう、「わかるわかる」みたいな、ちょっと日常のシビアな部分もちゃんと記録していて、でも、そういうとこを記録してくれるから、余計に2人の幸せな時間が、よりこう尊いものに感じる。そういう美しいドキュメンタリーなので、ぜひ、『人生フルーツ』と一緒にって言いたいところだけど、あれ(『人生フルーツ』)はなかなか観られないんだよね。
渡辺:そうだね、本当に。配信もないしね。
有坂:「『人生フルーツ』は大学の上映会で観て感動しました」というコメントが。
渡辺:大学でやるんだ、いいな。
有坂:じゃあ、ぜひこっちの『あなた、その川を渡らないで』も観てもらえたらと思います。
渡辺:なるほど、ドキュメントリーね。じゃあ、僕の4本目にいきたいと思います。ちょっとテイストはがらりと変わって、2019年のアメリカ映画ですね。



渡辺セレクト4.『ミッドサマー』
監督/アリ・アスター,2019年,アメリカ,147分

有坂:『​ミッドサマー​』!?
渡辺:えーっと、ホラー映画です。なんと、『ミッドサマー』の舞台になるのが北欧のスウェーデンなんですね。スウェーデンの片田舎にある小さな農村が舞台になります。で、ここがめちゃくちゃ綺麗なんだよね。もうすごい緑豊かな、あ、このパッケージですね。すごい、緑豊かなスウェーデンの田舎で、本当に北欧のログハウスがありますけど、あれがぽつんぽつんと建っていて、そこの農村の人たちはみんな白い衣装を着ているっていう、本当になんかおとぎ話に出てくるような綺麗な世界。で、そこに夏至を祝うお祭り、夏至祭が「ミッドサマー」っていうんですけど、そのミッドサマーをお祝いするっていうので、アメリカ人の大学生たちが、そこにスウェーデンからの留学生が来ていて、「僕の実家で夏至祭があるか来なよ」って言って、みんなで行くっていうお話で。そこで巻き起こるホラーっていう話なんですけど、これのやっぱりすごいのが、普通ホラーって、やっぱり怖い環境で起こることが多いと思うんですけど、例えば、「夜でもうボロボロの廃虚で、今にも何かが出そうなところに閉じ込められて」とか、「誰もいないはずなのに……」とか、もう設定自体が怖いっていうのが、ホラーでよくあるシチュエーションなんですけど、ここの舞台は、もう北欧のスウェーデンのめちゃくちゃ綺麗な田舎の農村が舞台で、夏至なので、白夜でずっと明るいんですね。で、農民の人たちも綺麗な衣装を着てたくさんいるっていう。なので、ホラーの普段の怖い設定とは真逆の設定の中で、ホラーをやるっていうのが、本当にすごいなと思ったんですね。
有坂:うんうん。
渡辺:このアリ・アスターっていう監督は、割と前の作品で出てきて有名になって、この作品でまた一気に知名度を上げたんですけど、割とホラーをつくっている監督なんですけども、若き天才と言われている監督です。このパッケージに映っているのは、主演のフローレンス・ピューなんですけど、フローレンス・ピューもこの作品を皮切りに、一気にスターになって、この後、『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』とかですね。あと、マーベルの作品、『ブラック・ウィドウ』とかで、スカーレット・ヨハンソンの妹役みたいな形で、準主役みたいな形で出たりとか、もう今は主演を一人で張るようなタイプの大女優になったんですけど、そのきっかけになったのがこの『ミッドサマー』という作品です。なので、こうビジュアル的にはめちゃくちゃ美しくて綺麗なんですけど、ホラーなので、あの怖いのとか、グロいのが苦手な方は、本当おすすめしないですけど、あのホラー好きには、やっぱりこう一目置かれてるような作品なんで、ちょっと怖いもの見たさっていうのがある方はぜひ。これもアマプラでやっていますね。
有坂:ジャケットだけ見て感動系だと思ったらホラーで(笑)。そうだね。
渡辺:あれデザインは大島依提亜さん?
有坂:そうそう、ビジュアルはね。
渡辺:という作品です。
有坂:でも、本当に見た目、目に見える世界が本当にこう色も光も綺麗で、なんだけど、もうね、本当、ドン引きするくらいのことが起こるんですよ。でも、起こっていても、それでも映ってる映像が綺麗だから、「うわ、怖い」だけの感情じゃない、こう自分の中で言語化できないような不思議な感覚にはなれる映画で、体験として面白いよね。
渡辺:まわりでは、女性のほうが評価が高い。やっぱりあのフローレンス・ピューに共感してというか。
有坂:共感するって、本当、もう地獄を体験するようなね。
渡辺:男からすると怖いんですけど。ちょっとそういう怖いもの見たさで。
有坂:なんかあれだよね。今聞いていて思い出したのが、いわゆる白夜でっていう設定を生かした映画ってさ、他にもあったなと思って。で、思ったのは、クリストファー・ノーランの『インソムニア』。あの映画ってもともとノルウェー映画のリメイクなんですけど、白夜で、その白夜がきっかけで、もう眠れない。ストレスもあって、白夜もあって、眠れない不眠症の刑事のサスペンス映画なんですけど、あれもね、いわゆる刑事もののサスペンスなんだけど、そのダークな世界じゃなくて、キラキラすごい光の綺麗な中で行われるって意味では、ちょっと不思議な感触の残る映画で、そこはちょっと似ているかもね。
渡辺:確かに、うん。
有坂:ぜひ! じゃあ、僕の4本目はフランス映画をいきたいと思います。



有坂セレクト4.『ブルゴーニュで会いましょう』
監督/ジェローム・ル・メール,2015年,フランス,97分

渡辺:うん、はいはい!​​
有坂:農村の定義をどこまでか考えて、ワイナリーもありだなということで、この作品を挙げました。これはもうそのままで、フランスのブルゴーニュ地方が舞台の作品です。老舗ワイナリーを営む、家族の再生ストーリーみたいなヒューマンドラマとなってます。これ、主人公は、もともとこのワイナリーが稼業なんで、ここで育って、でも、お父さんとなかなかうまくいかなくて、家を飛び出して、著名なワイン評論家になった男が主人公です。もう本当イケイケで、なんか女性をはべらかしてみたいな、ちょっと嫌な感じのタイプのワイン評論家が、実家が、もういよいよワイナリーで続けていくのが難しくなったときに、悩みながらも、一回、評論家の仕事を辞めて実家に戻って、家業を継ぐ、そこからいろんなドラマが生まれていくっていうストーリーです。すごく話はシンプルだし、やっぱり今までとは違う環境でチャレンジをする、そこでなかなかいろんなことはうまくいかないけど、みんなと手を取り合いながら前に向かって頑張っていくっていうところでは、このワインに興味がないような人でも共感がしやすいストーリーかな、と思います。で、結構、こういったワイナリーが舞台の映画って、アメリカにもあるし、イタリアにもあったりするんですけど、やっぱりそのワイナリーの風景がすごい綺麗ですよね。
渡辺:すごいいんだよね、フランスの田舎ってなんかいいよね。
有坂:そう、いいよねえ。ブルゴーニュのブドウ畑を空撮で撮っている絵とか、あとはやっぱり夕方のこう、ちょっとマジックアワーの光の感じとか、やっぱりそういうところをいかに綺麗に撮るかっていうのに、結構、つくり手はすごく集中してやってるなっていうのが、この映画は特に伝わってくるので。で、その中でワイン飲んだりしてね。
渡辺:そうなんですよ。
有坂:もう飲みたくなること間違いなしなので。
渡辺:昼間から飲みたいっていう。
有坂:そう、これ観るときは、ぜひボトルをね、ボトルとグラスを用意して、好きなワインを飲みながら観ると、本当に特別な時間になるんじゃないかなと思います。なんかね、そのブドウの収穫が終わった後、みんなでワインを飲んだりとか、そういうシーンとかこういう光景いいよねって思ってるシーンがちゃんと使われている、ちゃんと出てくるので、まあ物語とはまた別の、そういう細かい部分でこのシーンが観られてよかったとか、こういうの真似してみたいなっていうような光景にも、結構あふれたような一本なので、ぜひこれも観てもらいたい一本です。
渡辺:そうきましたね。
有坂:観た?
渡辺:観た、観た。その辺はね。
有坂:どれにするかだよね。
渡辺:意外と被んなかった。
有坂:そうだね。ラストお願いしますよ!
渡辺:これは被んないじゃないかな。
有坂:いや、そういうのが一番危ない(笑)。嫌な予感がしてくる。
渡辺:じゃあ、僕の5本目はですね、1987年の作品です。



渡辺セレクト5.『友だちのうちはどこ?』
監督/アッバス・キアロスタミ,1987年, イラン,85分

有坂:確かに(笑)。
渡辺: これは今回、ちょっと全部、国を変えてやってみたいと思ってたんですけど、イランですね。イランの本当に田舎の農村が舞台のお話です。本当に田舎の農村で、学校が少ないので、結構遠方から子どもたちが集まってくる学校があります。で、主人公の男の子は、その小学校に通ってるんですけど、いつも怒られている友だちがいるんですね。宿題を忘れたりとか、ノートを忘れたりとか、いつも先生に来られていて、「お前、今度ノートを忘れてきたらもう退学だぞ」っていう、そんな友だちが隣の席に座ってるんですけど。で、主人公が、ある日、お家に帰ってきたら、なんとその友達のノートも一緒に持って帰ってきちゃったんですね。で、「これはもう返さないと、また宿題ができてないってなって、あの子は退学になっちゃうと大変だ」っていうことで、その友だちにノートを返しに行くんですけど、友達がどこに住んでるかわからないんですね。なので、「友だちのうちはどこ?」っていうのを、いろんな人に聞きながらたどり着いていくっていうお話です。
有坂:そうそう。
渡辺:本当に話としたら、もうそれだけなんですよ。で、監督のアッバス・キアロスタミっていうのは、本当に子どもの演出が上手な監督で、なんかこれもドキュメンタリーを観ているかのような、本当にこの子に感情移入してしまうんですけど。必死に子どもながら、自分の分かる範囲で大人に聞いてうちを訪ねて、その子のおうちを突き止めていくっていう話なんですけど、もう手がかりがなさすぎてね。よくこれで探していくなっていう感じなんですけど。なんか、「そんな子、知らないよ」とか、「その家はあっちじゃないかな」って、行ったら違ったとか。なんか本当にね、話としたら本当に大したことないんですけど、やっぱり子どもに起こることなので、大冒険なんですよね。だから、大人だったら大したことじゃないことが、子どもにとってはもう超スペクタクルの大冒険になるっていう、それを本当に見事に描ききった作品だなと思います。で、これ結構世界的にも評価をされている作品なので、今年かなユーロスペースでリバイバル、去年だっけやってたのを久しぶりに観たら、もう改めて大傑作だなと思って、やっぱり時代を感じさせないじゃん? いつ観ても変わらない。もう色褪せない作品なんで、本当にこれは素晴らしい作品だなと思って。で、イランのこの田舎の農村の様子も、ちゃんと垣間見れて、家の手伝いをしなきゃいけないし。
有坂:そうそう、この子自体が、なんかすごく内気で、自分の思ってることを親にも強く言えない子だから、いじらしい子だから、余計に応援したくなる。
渡辺:そうそう、本当はね、家から出ちゃいけないのに。
有坂:そうそうそう。
渡辺:「もうこれは行かなきゃ」って言って。
有坂:この子がその決断をするんだからさ、相当なことだなと思って始まるんだよね。
渡辺:そうそう。
有坂:そうしたら、途中で何にもやることがないおじさんたちが、この子に絡んで、この子時間ないのに話しかけて、急に叱り始めたりとかしてね。もう観ている側としたら、「親父、ほっといてやれよ」って思うんだけど、そのときの表情とかがまたいいんだよね。この子のね。
渡辺:これは本当にちょっとね、観てない方がいたら、ぜひ傑作なんで。
有坂:黒澤明も絶賛していた映画。
渡辺:これもAmazonプライムで観られます。
有坂:そっか、農村だね、確かに。じゃあ、僕の最後の映画は、日本映画です。これ観ている人いるかな。2004年の作品です。



有坂セレクト​​5.『深呼吸の必要』
監督/篠原哲雄,2004年,日本,123分​​

渡辺:うーん!
有坂:これは、主演は香里奈で、谷原章介とか、成宮くんとか、あとは長澤まさみね。あと、さりげなく大森南朋とかも出ている、
渡辺:沖縄だっけ?
有坂:そう沖縄、これは沖縄が舞台で、サトウキビの“キビ刈り隊”に、現地のスタッフだけじゃ足りないからバイトを募集して、そのバイトのメンバーとして集まってきた5人と、現地の2人、計7人のいわゆる群像劇になっています。この人手が不足した農家を、まあ手伝いに来ている彼らにとっては、もちろん、そのお金をもらうっていうのも大事な目的なんだけど、普段、都会の生活では感じられないような、例えば人間関係だったり、もう時間の流れ方から違う。で、実は彼らにはそれぞれ思う部分があって、逃げるようにして都会を離れた人がいたり、そういう中で偶然出会った人たちが、この時間、35日間っていう時間の中でだんだんだんだん心がこう変化してくるっていう映画なんですけど。僕、この映画、結構好きで、何が良かったかっていうと、これね大した事件が、何も起こらないんですよ。本当に。だから、毎日サトウキビを刈っている中で起こる、ちょっとしたことだったりとか、実はこういうことを考えてるんだよっていう、内面を吐露するとか、そういう小さなエピソードの積み重ねで映画ができていて、でもね、さっきの『友だちのうちはどこ?』と同じで、映画ってやっぱり大っきな事件が起こるのが映画だって思っているけど、僕たち日常で暮らしていて、大きな事件ってなかなか起こらないじゃないですか。その中にも、やっぱり小さな楽しさとか、言葉にはできないけど感じる幸せとかってあると思うんですけど、そういうものをなんかね、一つの作品にまとめたのが、この『深呼吸の必要』かなと思います。
渡辺:うんうん。
有坂:もう『深呼吸の必要』っていうタイトルなので、やっぱりそういう本当に癒しみたいなものを求めてる人たちに、映画が寄り添ってくれていないと成立しないし、この映画は今お話ししたように大したことが起こらないんだけど、でも、なんか観ていて、こうちょっと心が揺さ振られたり、静かな感動があったりする映画。で、これ後から知ったんですけど、そのなんかサトウキビを刈っていくシーンっていうのは、ちゃんとシナリオの順番通りにやったそうなんです。順撮りって言うんですけど、映画ってやっぱりスケジュールの問題で、ラストシーンから撮るとか、結構バラバラに撮ることが多いんですけど、やっぱりそういう小さな心の機微みたいなものを収めることがこの映画の目的だから、順撮りでやってかないと始まらない。順撮りで、その演じてる人もこう体を使ってサトウキビを刈っている中で出てくるエネルギーとか、そういったものがこの映画には必要ってことで、ちゃんと真摯に順撮りでつくった。だから、多分観ているこちらに、そういう感動が届いてくるんじゃないかなと思います。そういった意味では本当に映画じゃないと、表現ができないタイプの、ちょっとなんていうんだろうな、つつましい映画だなと思いますので、そこに長澤まさみが出ているっていうのも面白い、あと最近、朝の顔でお馴染みの谷原章介も、役者として観られますので、ぜひ観てもらいたいなと。
渡辺:リゾートバイトがね、流行っていたからね。
有坂:流行ってた?
渡辺:流行ってた。
有坂:やってた?
渡辺:やってた。で、リゾートバイトは、その、なんだろうバイトなのに、そのリゾート地に行けるっていうのがあって、流行っていたんだよね。その流れでできた映画だと思うんだけど。
有坂:何やっていたの?
渡辺:何やってたっけな。でも、なんかスキー場とか、スキー場の喫茶店でバイトしながら、「空き時間は滑りに行っていい」とか。
有坂:ああ、なるほど。
渡辺:で、リフト券もくれる。だから、こっちからしたらタダでスキーできて、最後にお金もらえるっていう、そんなのやってましたよ。
有坂:いい出会いはありました?
渡辺:いい出会いなかった(笑)。
有坂:それ、期待してたんでしょ(笑)。
渡辺:それも友だち二人で行って、二人しかいなかったの。
有坂:他にいなかったの?(笑) 行ってみてわかったんだ?
渡辺:「女子いないんかい!」と思って(笑)。
有坂:それは、それで、でもあれでしょう。なんか色々充実したね。
渡辺:それはね、そう、ストイックに滑ったよ。
有坂:でも、そういう時間が体験できる映画だと思うんだよね。よみがえると思う。
渡辺:だから、こういう男女いいなと思うもん(笑)。そういうのが良かった。
有坂:そういうバイト、今からでもやったらいいじゃん。
渡辺:受かりますかね。
有坂:うん、おと落とされるかもね(笑)。


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有坂:はい、という10本でしたが、今日は「全部観たことがない」という人もいた。おお、良かったね。結構幅広く、僕もね、国は被らないように選んだつもりで、うん被ってないから、もしかしたら、僕と順也でも、ほとんど国も被ってないってなったら10カ国ぐらい。
渡辺:まあ、でも、日本とアメリカが被っているでしょ。
有坂:そっか、フランスもあるか。
渡辺:そうだね。


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有坂:はい、じゃあ最後に何かお知らせがあれば。
渡辺:まず、「もみじ市」お疲れ様でしたっていうね。本当に来てくれた方もいらっしゃると思うんですけど。
有坂:いや、楽しかったね。本当に。
渡辺:ねぇ。やっぱ晴れ、2日間とも晴れで本当によかったな、っていうのが、まず思いました。あとは、フィルマークスのほうで、映画のリバイバル上映企画で、今僕やってるんですけど、それで今度、『桐島、部活やめるってよ』の10周年記念のリバイバル上映をやります。
有坂:そう、キノ・イグルーであり、フィルマークスでもある、この人は。
渡辺:はい、フィルマークスのほうで、今そういう映画館でリバイバル企画をつくっていまして。
有坂:ブイブイ言わせているんだよね。『カリオストロ』やったり、『パンダコパンダ』やったり、最近なんかネットを騒がせているプロデューサーです。
渡辺:そうなんです。『桐島、部活やめるってよ』が、ちょうど今年10年っていうのがあって、舞台となっているのが、ちょうど11月なんですね。なんで、その日に合わせて1週間限定で上映するというのがありますので、ぜひ、近くであれば。
渡辺:劇場は、全国でやっているんですけど、主な新宿とか名古屋、大阪みたいなとこでは、やっております。
有坂:面白いよね。名作だよね。
渡辺:面白い。そう、当時は神木隆之介、橋本愛っていうキャストでやったんですけど、当時、無名の若者だった人が、今も仲野太賀とか山本美月とか、松岡茉優とか、東出くんがあれ、デビュー作で、結構ですね、LDHの鈴木伸之とかですね、割と錚々たる人たちが当時無名の若手役者として出ているので、今観るとめちゃくちゃ錚々たるメンツっていう感じなので、それも面白いと思います。
有坂:ぜひ、劇場でなかなか観られる機会もそうないからね。
渡辺:ぜひお越しください。
有坂:僕は、キノ・イグルーのイベントは、そう1年半ぶりぐらいなんですけど、『あなたのために映画をえらびます』という。1対1の映画カウンセリングが、11月から復活します。11月の会はもうちょっと予約は締め切ってしまったんですけど、また定期的に月1でやっていけたらなと思ってますので、窓もないギャラリーで、1対1で僕と1時間話すという、相当あやしい企画なんですけど、もし興味がある方はぜひ。最終的に1時間お話を聞いて、5本の映画を選んで、カードに書いてお渡しするという、まあ新しい映画との出会い方が、体験できますので、ぜひよろしくお願いします。はい、年内はあのクリスマスイベントなどもちょっと今準備を進めてるところなので、また、その辺もそれぞれインスタグラムなどで、お知らせしていきますので、ぜひそちらもフォローしてください。ということで、大丈夫ですか。
渡辺:はい。
有坂:心残りなし。
渡辺:はい!
有坂:ということで、今月11月のキノ・イグルーの「ニューシネマ・ワンダーランド」はこれをもって終わりたいと思います。みなさん、遅い時間までどうもありがとうございました!
渡辺:ありがとうございました! 映画観てください!
有坂:『ミッドサマー』を観るときは、気を付けてくださいね(笑)。


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選者:キノ・イグルー(Kino Iglu)
体験としての映画の楽しさを伝え続けている、有坂塁さんと渡辺順也さんによるユニット。東京を拠点に、もみじ市での「テントえいがかん」をはじめ全国各地のカフェ、雑貨屋、書店、パン屋、美術館など様々な空間で、世界各国の映画を上映。その活動で、新しい“映画”と“人”との出会いを量産中。

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キノ・イグルーイベント(@kinoiglu2003
有坂 塁(@kinoiglu)/渡辺順也(@kinoiglu_junyawatanabe