あなたの人生をきっと豊かにする手紙社リスト。今月の本部門のテーマは、「『パソコンを捨てよ、手紙を書こう』、な本」。その“読むべき10冊”を選ぶのは、ブックコンシェルジュや書店の店長として読書愛を注ぎつつ、私小説も人気を博している花田菜々子さん。「雰囲気こそ大事なのでは?」という花田さんが雰囲気で(いい意味で!)選ぶ、ジャンルに縛られない10冊をお届けします。


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1.『ののはな通信
著・文/三浦しをん,発行/KADOKAWA




最高・オブ・最高の手紙小説。女子二人の恋愛とも友情とも言えぬ特別な関係とその後の壮大な展開を二人の手紙のやりとりだけでぐいぐい読ませていく。読後の衝撃と感動は言葉では言い表せないほど。この夏ぜったい読んでほしい!



2.『回転ドアは、順番に
著・文/東 直子,著・文/穂村 弘,発行/筑摩書房




天才歌人二人の夢のコラボレーション作品。男女それぞれの立場から交換日記のように短歌でひとつの恋愛物語を作り上げていくのだが、そのスリリングなやりとりたるや。鳥肌立ちます。映画を観ているように情景が浮かぶ、唯一無二な1冊!



3.『急に具合が悪くなる
著・文/宮野真生子,著・文/磯野真穂,発行/晶文社




これも大好きな本のひとつ。哲学者と人類学者である二人が文通を始めるのだけど、その途中で宮野さんの病状が悪化し、二人は目の前にある死に向き合うことになる――。つらい結末ではあるけど、家族とのあたたかな最期より、私にはこの死が理想的に思えた。力いっぱい言葉をぶつけ合える友との文通に夢中になりながら死ねるなんて……。



4.『往復書簡 無目的な思索の応答
著・文/又吉直樹,著・文/武田砂鉄,発行/朝日出版社




うってかわって脱力系、ゆるく楽しく読ませる往復書簡のこちら。どことなくひねくれた二人の「あれってどう思う?」的なやりとりがたまらない。相手が質問にちゃんと答えず、するっとかわしてずらしてるような感じも、ふつふつと笑いが湧いてきます。



5.『きょうはなんのひ?
著・文/瀬田貞二,イラスト/林 明子,発行/福音館書店




手紙っていうのはやっぱりスペシャルな伝え方なのだと思います。朝、枕元に手紙が置かれていて、それを開けると次の手紙の場所の手がかりが書かれてて、っていうの、最高に楽しいじゃないですか。そんなワクワクを思い出させてくれる。



6. 『向田邦子の恋文
著・文/向田和子,発行/新潮社




ミーハー・下世話な趣味かもしれないですが、やっぱりすごい作家が残した「ほんとう」の手紙っていったいどんなものなんだろう、って気になってしまいます。情熱溢れる手紙よりもそっけないメモのような日記にかえって関係性を感じたり。



7.『手紙のある暮らし 手書きだからこそ伝わる大切なこと
著・文・編/一田憲子,発行/マイナビ




かなり直球な「手紙のススメ」。表紙に名前は記載されていないですが、暮らしを取り扱う名編集者、一田憲子さんの構成なのですね。納得。椅子に座り、ペンで文字を書き、切手を貼って誰かに送る。その時間の美しさをまるごと切り取ったような文章と写真の1冊!



8.『ありがとう!料理上手のともだちレシピ
著・文/高橋みどり,発行/マガジンハウス




手紙に心惹かれる理由をいろいろ考えてみると、手書き、という形式そのものを偏愛しているのかも、と思いあたる。でもこの手書きのレシピ集はおしゃれさも気取らなさもちょうどよくて、風が室内を吹き抜けていくような気持ちよさがあるんですよね。



9.『美しい日本のくせ字
著/井原奈津子,発行/パイ インターナショナル




というわけで、くせ字で1冊作った本がこちら。読んでも何か特にビジネス的教養になることはないと思うんですが、この遊び心が楽しい。街のカレー屋さんの文字を集めたり、有名人のくせ字のあり方を分布図で仕分けしてみたり。手書きの字、愛しいです。



10.『100枚レターブック』シリーズ
発行/パイ インターナショナル




もはや本とは言えないんですが、一応自分でも「ブック」って言っちゃってるんで自己申告を信じて紹介します。1枚ずつデザインの違う便箋が100枚収録された紙マニア・柄フェチ大喜びの本。うちの店でもめちゃ売れてます。特にうちの店でいちばん売れているのはウィリアムモリスの優美な柄を集めたこちら。使うのがもったいないくらいです。


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選者:花田菜々子
流浪の書店員。あちこちの書店を渡り歩き、現在は「HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE」で店長をつとめる。著書に『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』など。