月刊手紙舎10月号で花田菜々子さんがセレクトした「“3”が効いてる本」を、手紙社の部員が選んだら? 3月、3時、3秒、3人、3枚……。バラエティに富んだ「3」が集まりましたよ!


✳︎ここで紹介した10冊を、手紙舎つつじヶ丘本店の一角に準備しました。どなたでも読むことができますので、カフェタイムのお供にぜひ!



1.『3月のライオン』
著/羽海野チカ,発行/白泉社




「ハチミツとクローバー」で美大生の青春悲喜こもごもを描いた羽海野先生が、将棋の世界をキーに下町人情物語を羽海野節炸裂で描いた漫画。

登場人物たちがとにかく痛苦しい(いたくるしい)。それは羽海野先生が言葉では表現できない名前のない感情を具現化することが尋常じゃなく上手で、読んでいるといつのまにかキャラクターと同じように悩み、真っ暗な海の底や谷底に引きづり込まれてしまうから。だからこそ、中心キャラクターである三姉妹の何気ない日常のやりとりや食事風景がとても大切なものに思えます(あかりさんの作るご飯が美味しそうで!)。

そして、随所に現れるこれまた羽海野節であるスピーディーなコメディ描写がとても楽しい! 同業者としては”練りに練られたネーム”が、読むたびに漫画に真摯に向き合おうと思わせてくれます。
(選者・コメント:みやこ)



2.『3時のおやつ』
著/平松洋子他,発行/ポプラ社

 



「3時のおやつ」と聞いて思い浮かぶ情景。甘くて楽しくて、たまに切なくてうれしい。例えばぐりとぐらのカステラみたいなイメージ。それは幸せであったかい。


30人のクリエイターが書いた30通りのおやつの思い出が、あいうえお順に綴られています。バタークリームケーキからペヤングソース焼きそばまで! バラエティに飛んでいます。ページをめくる度にふわっと香ってくるおいしいおやつの匂いと、優しい思い出。「わかるー」「食べてみたい」の繰り返し。その人だけの思い出の筈が自分も懐かしく感じられる不思議。「おやつ」って人類共通の原風景なのかも。


小さな頃好きだったチョコの付いたマクビティビスケット。「ヤンヤーヤ♪」とCMの歌を歌いながら冷たい牛乳に付けて食べる醍醐味。そして何よりそこにある温かい家族の風景が好きでした。久しぶりに食べてみようかな。


ぜひ紅茶でも飲みながらゆっくり読んでみて下さい。気付けば自分の「3時おやつの情景」に包まれます。
(選者・コメント:田澤 正)



3.『3秒でハッピーになる超名言100』
著/ひすいこたろう,発行/ディスカヴァー・トゥエンティワン




言葉の持つパワーがもらいたくて偉人達の名言を見るけれど、今の自分にピンとくる言葉に出会えなかったり、言葉が難解で本来の意味が分からなかったりする。そんな時はこの本。幅広いジャンルの人の言葉がピックアップされ、その名の通り3秒でハッピーになれるのです。たとえば、逆境を乗り越えたい方は、「ピンチの愉しみ方」という章をどうぞ。


名言以外にも、言葉の解釈が面白おかしく書いある。背中を押してくれるミニエッセイやおまけの話も。名言にまつわる「へ〜」と唸らせるトリビアが
てんこ盛りで楽しい。


好きなページを気が向いた時に読める自由な感じが好き。ぜひ、赴くままにパッと開いてみてくださいね。
(選者・コメント:三重のtomomi)



4.『ぱらぱらきせかえべんとう』
著/野口真紀,発行/アノニマ・スタジオ




お弁当を日々作っている人にも、お弁当を作ってもらっている人にも、お弁当箱を持たずに外食している人にも、それぞれの美味しさがある1冊。


横長の本を開くと、1ページがお弁当箱の写真を3等分した3枚のカード(「野菜のおかず」「肉と魚介類のおかず」「卵と煮物のおかず」)で構成されている。それぞれ15枚ずつある3種類のカードたちをパラパラとめくり、着せかえのように組み合わせれば、なんと3000通り以上のお弁当が出来上がる!


作りやすくて、しかも美味しい野口真紀さんのおかずたちは、3枚どれもが主役級。だけど、食材も調味料も近所のスーパーや家にあるもので作れちゃう。なんて素敵なレシピたち。これなら毎日のお弁当作りに悩まない。


学校で、職場で、お弁当箱を開ける時に、「今日のおかずはなんだろう」と毎日きっとワクワクする。写真がこれまたとっても美味しそうで、パラパラとめくっているだけでも、ときめいてしまう。まさに3拍子揃った、最強の1冊です!
(選者・コメント:KYOKO@かき氷)



5.『クリスマス・キャロル』
著/チャールズ・ディケンズ,訳/池 央耿,発行/光文社





19世紀英国ビクトリア朝時代、クリスマスイブの夜に現れた3人の精霊(幽霊)が主人公スクルージを連れ出して巡る、過去・現在・未来のクリスマス。純真な心をもっていた少年スクルージが徐々に猜疑心の強い守銭奴となっていった過去や、スクルージの元で働くボブ・クラッチをはじめとして、抜け出すことのできない貧しさのなかにあっても慎ましくも喜びに満ちた家族とのクリスマスを送る人々の情景を巡った後、最後に訪れた未来のクリスマスで見たものとは…。


困難や貧困といった場面が多くても読んでいて温かい気持ちになれるのは、困難な幼少期を経験したディケンズが持ち続けていた慈善の心がベースにあるからかもしれません。


“3”という言葉で真っ先に思い出したのは、本ではなくてビル・マーレー主演の映画『3人のゴースト』。この映画の他にも『クリスマス・キャロル』を原作とした映画は多いので、小説だけでなく映画も楽しんでみては如何でしょうか。
(選者・コメント:井田耕市)

 

6.『うちの3姉妹』
著/松本ぷりっつ,発行/主婦の友社




漫画家である筆者が娘たちとの生活を綴ったブログから生まれたエッセイ集です。10年ほど前、TVアニメや映画にもなったようなので、どこかで見かけた記憶があるかもしれません。


まじめでおとぼけの長女、自由人の次女、まんま小僧(笑)の三女が繰り広げる日常は、爆笑の連続! 子どもが小さい頃は、言いまちがいや面白いエピソードを書き留めておこうと思いつつも、なかなかできないものですが、この本を読むと、懐かしく思い出します。


かわいいお絵描きやお手紙も登場、睡魔に負けて寝てしまうお母さん(筆者)を静かに見守って待っている場面は、きゅんとします。さぁ、気楽に手に取り、思いっきり笑ってください~。
(選者・コメント:はたの@館長)



7.『すてきな三にんぐみ』
著/トミー・アンゲラー,訳/今江祥智,発行/偕成社




“あらわれでたのは、くろマントに、くろい ぼうしの さんにんぐみ。”


黒と青、シンプルな線、印象的なデザイン。お芝居のような語り口。息の合った三人組が、おそろしいどろぼうであることを、まざまざと体験させるはじまり。そして主役はひとりの子どもに移ります。しゃべるのは、みなしごのティファニーちゃんだけ。おそろしい三人組は、ひとこともしゃべりません。始めから終わりまで、すべての大人はわき役です。子どもの喜びが詰まった、シンプルな絵本です。子どもはみなしごになることを想像するのが好きですし、大金持ちになったら何にお金を使うか、考えるのも好きです。子どもはおそろしいどろぼうが本当はすてきなひとである、と見破って、めでたしめでたし、にたどりつくのです。


物語を動かす原動力は子どものちからです。大人はかつて子どもだったことを、三つの塔を見て思い出すことでしょう。
(選者・コメント:まっちゃん)



8.『精神科医が見つけた 3つの幸福』
著/樺沢紫苑,発行/飛鳥新社




科学的に、そして実用的に「しあわせ」を語る、という、ちょっと手紙社さんらしくない本をあえて選んでみました。


でも、実は、大切なつながりがあるのです。手紙社の部員さんが毎週月曜日に北島家ラジオで楽しみにしている「小確幸」のシステムが、「3行ポジティブ日記」として紹介されています。寝る前に15分間、今日あった楽しい出来事を3つ書くことで、脳が寝ている間にハッピーな状態で疲労回復してくれるそうです。北島家ラジオでは、先週の3つのしあわせをシェアすることで、みんなでほっこりとした気持ちで1週間をスタートできる、まさに、ポジティブマンデー! しあわせにきづける、しあわせ。


オキシトシン的しあわせ、セロトニン的しあわせ、ドーパミン的しあわせ、この3つのしあわせについて、「なるほど!」と腑に落ちて、なんだかすっきり、なこの本。秋の夜長に、小説や漫画と並行して、こんな本も同時進行で読んでみては?
(選者・コメント:San DiegoのTomomi)



9.『シングルファーザーの年下彼氏の子ども2人と格闘しまくって考えた「家族とは何なのか問題」のこと』
著/花田菜々子,発行/河出書房新社




あなたは「3人家族」と聞いてどんなイメージが湧きますか? 母と父に子ども1人? 母と父に猫が1匹、なんていうケースもあるでしょう。シングルマザーに子ども2人、なんて話も聞くようになりました。では、シングルファーザーに子ども2人は? しかもそのシングルファーザーの男性と付き合うことになったら? 

本書は、そんな有り得そうであんまり聞いたことがない3人家族と、徹底的に向き合ってみた著書の実験と考察の日々の記録です。

私が読み進める中でイイなぁと思ったのは、無理に「良い母親」や「4人家族」になろうとししないところ。子どもを子ども扱いせず、1人の人間として真摯に(時にマジメ過ぎ! と周囲に突っ込まれながら)向き合うところ。一丸となってバラバラに生きているところ。世間的に、一般的には〇〇かもしれないけれど「もう時間ないし、自分の道行かなきゃ」と、歩み出すところ。

著書が店長を務める日比谷の「女性のための本屋」の開店奮闘記としても面白い一冊です。
(選者・コメント:部員S)



10.『なたぎり三人女』
著/群ようこ,発行/幻冬舎




物書き・ヘアメイクアーチスト・イラストレーターの大人の女性3人(全員40歳前後)が将来のために食堂経営を考えたり、自分に高価なご褒美をしたり、体を鍛えたり。今の自分と重なるところがあってクスっと笑えたりスカッとすっきりしたり、群ようこさん独特の世界が広がっています。この3人の女性が、飾らない友人関係で面白くて羨ましい。人生悩んで迷って楽しまなくちゃ! と思います。
(選者・コメント:伊万里のともこ)