あなたの人生をきっと豊かにする手紙社リスト。今月の本部門のテーマは、「持ち寄りパーティーに持ち寄りたくなる本」。その“読むべき10冊”を選ぶのは、ブックコンシェルジュや書店の店長として読書愛を注ぎつつ、私小説も人気を博している花田菜々子さん。「雰囲気こそ大事なのでは?」という花田さんが雰囲気で(いい意味で!)選ぶ、ジャンルに縛られない10冊をお届けします。


──


1.『光の旅 かげの旅
著/アン・ジョナス,訳/内海まお,発行/評論社




まずはクリスマスプレゼントにもおすすめだし、みんなで見ても盛り上がれるこの絵本。《さかさ絵》と言いますか、白い方を上にして読んだ後上下をひっくり返してまた最初から読むときちんとつながったひとつのストーリーになっていて、絵もぜんぶ絶対に別のものとして再利用されているのです。すごすぎて目が点になる本です。



2.『ツレヅレハナコのホムパにおいでよ!
著・文/ツレヅレハナコ,発行/小学館




数人で集まるときのおうちごはんに必要なのは、贅沢な食材や手の込んだごちそうじゃなくて、ワクワクするような仕掛けのあるアイデアだと思うんです。ふつうの料理本じゃ探せなそうなトキメキ最優先のこのレシピ集は、ホームパーティーの前に必ずチェックしてネタをパクらせていただきたい1冊。



3.『西洋アンティーク・ボードゲーム 19世紀に愛された遊びの世界
著・文/エイドリアン・セビル,編/ナショナルジオグラフィック,訳/鍋倉僚介,発行/日経ナショナルジオグラフィック社




みんなで集まったときおしゃべりや映画鑑賞もいいけど、ゲームってなんだか年末年始感もあっていいですよね。しかもアナログなやつ。なんて思っていたらこんな本を見つけました。昔のゲームを図録的に集めた本なのですが、見てるだけで楽しい。そういえば「すごろく」って最近見ないなあ。



4.『ファッションマジック
著・文/ヒグチユウコ,発行/白泉社




クリスマスの幸せそうな音楽を聴くと、子どもの頃の記憶がよみがえります。この一年慌ただしく生活していた大人な自分を労うためにも、童心に帰る時間を持つのもいいかもしれません。みんな大好きヒグチユウコさんの猫イラストで、着せ替えコーディネイトをあれこれ楽しむパタパタブックです。



5.『変なお茶会
著・文/佐々木マキ,発行/絵本館




佐々木マキさんのナンセンス絵本。あらすじをYoutuber風に言えば「めちゃくちゃ遠いところからパーティーって言って人呼びまくってココアだけ出してみたw」って感じでしょうか。でもパーティーってそれでいいんだよな。お客さんもみんなうれしそうだったもん。そんな本です。



6.『ひまつぶ刺しゅう
著・文/上田歩武,発行/オークラ出版




クリスマスと言えばやはりプレゼント。手編みのセーターは無理でも、自分が刺繍をしたハンカチなんてどうでしょうか? ここに掲載されているのはタモリ、コンセント、ねぎま、ターミネーター……と、ちょっとシュールなものばかり。でもその人の好きな変なものを刺繍して贈る、なんてちょっといいかも。



7.『気持ちを表すことばの辞典
監修/飯間浩明,発行/ナツメ社




気の利いたすてきな本をプレゼントしたいけど、小説は好みがあるし……という悩みは、店に立っていてもよく聞くものです。言葉が好きな人にプレゼントするならこんな本はどうでしょうか。たとえば「切ない」を「きゅんきゅん」「胸が締めつけられる」「遣り切れない」などにさらに切り分け、解説しています。読んでいるだけで楽しい。



8.『あなたとなら食べてもいい −食のある7つの風景−
著・文/千早 茜・遠藤彩見・田中兆子・神田 茜・深沢 潮・柚木麻子・町田 そのこ,発行/新潮社




パーティーの醍醐味は、誰かとおいしいものを食べて楽しい時間を過ごすこと。好きな人と何かを食べることってときに官能的だったり、やさしい気持ちになれたり、感情が動く場面な気がします。そんな瞬間を女性作家たちが描く、おいしそうな描写がいっぱいのアンソロジー小説集。



9.『となりの国のものがたり1 フィフティ・ピープル
著・文/チョン・セラン,訳/斎藤真理子,発行/亜紀書房




2021年も大勢のパーティーなどは難しく、たくさんの人とは出会いにくい一年になってしまいましたね。でも少しの人と濃く会うだけじゃなく、遠い人と薄く会うことも大切だったんだな、と改めて思います。50人の登場人物が出てきて互いに交差するこんな小説で「誰かに会いたい欲」を解消できるかも?



10.『かのひと 超訳 世界恋愛詩集
著・文/菅原 敏,絵/久保田沙耶,発行/東京新聞




最後にチルアウト的な1冊を。最近注目されている詩人・菅原敏さんが、恋愛がテーマの古典作品を今風の言葉にして新しい詩に生まれ変わらせたこの本。昔教科書で読んでピンとこなかった作品もぐっと強い言葉に縁取られていて、心を掴まれます。装丁や造本もとてもかっこいいので、特別な人への贈り物にしてもいいと思います。


──



選者:花田菜々子
流浪の書店員。あちこちの書店を渡り歩き、現在は「HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE」で店長をつとめる。著書に『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』など。