あなたの人生をきっと豊かにする手紙社リスト。今月の本部門のテーマは、「楽しもう、乗り切ろう、中年ライフ! な本」。その“読むべき10冊”を選ぶのは、ブックコンシェルジュや書店の店長として読書愛を注ぎつつ、私小説も人気を博している花田菜々子さん。「雰囲気こそ大事なのでは?」という花田さんが雰囲気で(いい意味で!)選ぶ、ジャンルに縛られない10冊をお届けします。


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1.『私がオバさんになったよ』幻冬舎文庫
著・文/ジェーン・スー,発行/幻冬舎




何よりタイトルがいい! お気づきでない方のために野暮を承知でお伝えしますと、森高千里の「私がオバさんになっても」をもじったものですね。ラジオやエッセイなどで活躍中のジェーン・スーさんが仕事で会って「もう一度会いたい」と思った人にそれを伝え、テーマを決めずに話したというこの対談集は、年齢と経験を重ねたからこその知性に溢れる会話ばかりでワクワクが止まらない。歳をとることが素敵なのではなく、ちゃんと積み重ねたことの素敵さが伝わる1冊。


2.『パーティーが終わって、中年が始まる
著・文/pha,発行/幻冬舎



できることなら「歳をとってからのほうが人生楽しいです(キラッ)」って言いたい。でも「それ、無理して言ってない?」と思う自分もまたいて……。45歳、「人生のピークは30代後半だった」と身も蓋もないことを言い切る著者の“中年わびさびエッセイ”。たしかに、さびしいものを「さびしいね」って言いながら眺めるのもよいものです。読んだ後は心がふわっと軽くなるから不思議。


3.『わたしのごちそう365』河出文庫
著・文/寿木けい,発行/河出書房新社



とは言え、やっぱり歳をとってよかったこともある。たとえば若い頃は「意味ない野菜第1位」だと思ってた、“蕪”のおいしさがわかるようになったこと。いちじく、みょうが、モロヘイヤ……大人にしかわからない、大人にこそ響きそうな季節ごとのレシピがたくさん載った小さな文庫本。さりげないけどセンスのよさをびしびし感じる食材の組み立て方が楽しい……これも若い頃から長年自炊をしてきたからこそ味わえる感動なのかも。


4.『47歳、ゆる晩酌はじめました。
著・文/ツレヅレハナコ,発行/毎日が発見




もう1冊大好きな料理本のご紹介。「身体を大事にしろ!」「健康に気を遣え!」と正面きって言われるとたじろいでしまう自分ですが、「食べることも飲むことも大好きなまま、ちょっとだけ身体をいたわるようにしてみた」というテーマのこの1冊は、レシピもマインドも今の気持ちにジャストフィット。無理せずおいしくて健康になる、って、そんな夢みたいな世界がここにはあるんです。ハナコさんの手にかかったヘルシー料理はほんとうに「我慢」からかけ離れてる!


5.『平場の月』光文社文庫
監修/朝倉かすみ,発行/光文社




異性の目を気にせずに生きられるようになった、というのも中年の大きなメリット(?)ですが、恋愛のある中年期もまたいいものかもしれません。お金持ちでもなければ美男美女でもない、50代の男女のリアルな恋愛を描いたこの小説、ぜひ中年のみなさんにおすすめしたい1冊です。お金や病気、自分の生き方のポリシー……。「好きという気持ちが最優先」ではない年齢だからこそ、彼らが出した答えが心に沁みます。


6.「恋ははかない、あるいは、プールの底のステーキ
著・文/川上弘美,発行/講談社




こちらも今の時代、今の年齢、今の気分にぴったりの60代恋愛小説。作者の川上弘美さんご本人とプロフィールや経歴に共通点が多く、「もしかして私小説?」「っていうか日記?」「どこまでが事実なの?」と気になりつつ、本作の魅力はそこにとどまらず、どこへ向かっているのかわからない登場人物たちの人生語りや味わい深い会話。自分にこの先訪れる友情も恋愛も、こんなおだやかなよいものであってほしい! 寝っ転がりながらリラックスして読みたい1冊。


7.『なぜヒトだけが老いるのか』講談社現代新書
著・文/小林武彦,発行/講談社




しかし、そもそもなんで老いることはネガティブな要素となりがちなのか。犬や猫も自らの加齢を憂いているのでしょうか? はたまた野生の動物たちは。答えは、死の前にこんなにも「老い」があるのは人間だけなのだそうです。では何のために? そんな疑問に生物学の観点から完璧に答えてくれるのがこの1冊。地球規模で人類を俯瞰してみたら、きっと口癖が「最近疲れがとれないなあ」から「有益なシニアになって死ぬぞ!」に変わるはず! たぶん。


8.『自由の丘に、小屋をつくる
著・文/川内有緒,発行/新潮社




挑戦は若者だけのものではありません。それも「何か成し遂げるぞ!」的なブチ上げではなく、結婚、出産、育児……と人生を進めていくうちに「あれ、若い時に選んだプランじゃあんまりうまくいってないかも」と挑戦せざるを得なくなる人のほうが多いのかも。都会で自由気ままに生きてきた著者が子どもを持って初めて生まれた唐突な欲望、それは「自分の手で小屋を建てる」こと。DIYエッセイとして、生き方論として、1冊で2冊分楽しめる新たな時代の“中年ガイドブック”。

9.『臆病者の自転車生活
著・文/安達茉莉子,発行/亜紀書房




こちらも「人生変えるってのはちょっと怖いな……」とたじろぎがちな中年たちを強く励ましてくれる1冊。運動が苦手でコンプレックスもあり、外で身体を動かすなんてまったくしていなかった著者。自転車の楽しさに目覚めたのをきっかけに、外に出ることがどんどん楽しくなって世界がぐんぐん広がっていくというエッセイ。人生の革命は大それたものじゃなくて、日常のささやかな「これ、好きかも」から始まるのかもしれません。

 

10.『今日の人生3 いつもの場所で
著・文/益田ミリ,発行/ミシマ社

 

 

たくさんの名作を生み出している益田ミリさんの本の中でも個人的にいちばん好きな1冊。50歳をすぎたミリさんのただの日々のスケッチ、それだけなのですが輝きがすごい。中年の感受性とはこうあるべきなのか、いや、こんなふうにみずみずしく居ていいのか、と言うほうが正しいか。老化にかまけて、やることがたくさんあって忙しいというふりをして、感受性をみずみずしく保つことをなまけていたかも……。すべての中年の心のバイブルとなってくれそうな名著です!


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選者:花田菜々子

流浪の書店員。あちこちの書店を渡り歩き、2018年から2022年2月まで「HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE」で店長をつとめる。2022年9月1日に自身の書店「蟹ブックス」を東京・高円寺にオープン。著書に『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』など。