あなたの人生をきっと豊かにする手紙社リスト。今月の本部門のテーマは、「女どうしで暮らすの、アリかも? な本」。その“読むべき10冊”を選ぶのは、ブックコンシェルジュや書店の店長として読書愛を注ぎつつ、私小説も人気を博している花田菜々子さん。「雰囲気こそ大事なのでは?」という花田さんが雰囲気で(いい意味で!)選ぶ、ジャンルに縛られない10冊をお届けします。


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1.『帰りに牛乳買ってきて 女ふたり暮らし、ただいま20年目。
著・文/はらだ有彩,発行/柏書房





イラストレーターとして活躍する著者の、女ふたり暮らし20年の様子を描いたコミックエッセイ。女どうしだとなぜ「いつまで続けるの?」「結婚とかはどうするの?」とか聞かれなければいけないの? という話から、弱ったときにお互い支え合うふたりに胸いっぱいになるシーンまで多様ですが、基本は“常にわいわい楽しそう”で、憧れてしまいます。この関係性、最高だ〜!!


2.『増補新版 女ふたり、暮らしています
著・文/キム・ハナ、ファン・ソヌ,訳/清水知佐子,発行/CEメディアハウス




韓国で大ベストセラーとなったこちらは、同性の友人を人生のパートナーにすることを決めた、性格正反対のふたりの暮らしをふたりがそれぞれに描くエッセイ。なんと最近文庫化され、写真もたくさん収録&愛猫との別れを描いたエッセイなども追加されて、ますます読みごたえある1冊に。いいことばかりじゃなく、喧嘩や意見の食い違いなどもリアルに書かれていて、これから始めたい人の参考になるかも。


3.『今夜すきやきだよ』バンチコミックス
著/谷口菜津子,発行/新潮社



ドラマ「じゃああんたが作ってみろよ」も大好評な谷口菜津子さんの、アラサー女子・期間限定のふたり暮らしの物語。恋愛体質で結婚したいけど家事が苦手なあいこ、家事大好きだけど恋愛はピンと来ないともこ。ふたりが悩みながら「普通」を押し付けてくるジェンダーの問題に向き合い、ときにぶっこわし、己の道を切り拓いていく様子がさわやかで勇気づけられます!


4.『作りたい女と食べたい女』it COMICS
著/ゆざきさかおみ,発行/KADOKAWA




ドラマといえばこちらもかなり話題になりました。料理を山盛り作るのが好きだけど少食なユキと、たくさん食べるのが好きなトトコ。マンションの隣人だったふたりは、ともに時間を過ごすたびに、相手が特別な存在になっていって……。今の時代にマッチする繊細さとやさしさで、自分はどんな人間なのか、誰とどんなふうに過ごしたいのか見つめ直すことを教えてくれる作品。


5.『ふたり暮らしの「女性」史
著・文/伊藤春奈,発行/講談社



同性愛の中でも、男性どうしの関係より一層「なかったこと」にされてきたのが女性どうしのパートナーシップ。しかし、昔の日本でも「女は男と結婚し、子供を産むもの」というレールを外れ、女性どうしで暮らしてきた人たちもたしかにいました。残された数少ない資料を手がかりに、明治・大正・昭和を生きた彼女たちの愛と人生が綴られていて、心にずしんと響きます。


6.『シェニール織とか黄肉のメロンとか』ハルキ文庫
著・文/江國香織,発行/角川春樹事務所




さてさて、一方こちらは現代の美しい女たちを描いた小説。最近、「女どうしの楽しい暮らし」というと阿佐ヶ谷姉妹のような庶民的なものがフィーチャーされがちですが、本書に出てくる50代の女性主人公たちの暮らしは、さまざまな困難はあれど、みな優美で艶やか。ああっ、そうだ、こんな大人になりたかったんだ、と思い出させてくれるようで、彼女たちの日々に胸がときめきます。


7.『照子と瑠衣
著・文/井上荒野,発行/祥伝社




さらにこちらは70歳の女ふたりの、暮らしというよりはもう破天荒な逃避行を描いた小説。おばあさんと呼ばれるような年齢になっても、多分現代の我々にはお茶をすするための縁側もないですし、まだまだ冒険したい、最後に一発デカい花火ぶち上げたい、って意外と思っているものかも。スピード感とワクワクに満ちた最高のシスターフッド小説で、老後へのテンションを上げていきましょう。


8.『オタク女子が、4人で暮らしてみたら』幻冬舎文庫
著・文/藤谷千明,発行/幻冬舎




女どうしの暮らし、といえばこちらも欠かせない1冊。ジャンルの違うオタクが集まり4人でルームシェアをしているという著者の実録エッセイ。文章もユーモアに溢れていて読み物としても楽しく読めますが、「いつかやってみたい」「でもできるのだろうか?」と少しでも思っているならばガイドブックとしても読んでほしい。そもそもこういう夢の暮らしって、必ず外野から「そんなのどうせうまく行かないよ」とか無根拠に言われますし、その防御策のためにも必読!

 

9.『メゾンプアナの7人の食卓』A.L.C. DX
著/オトクニ,発行/秋田書店

 

 

友達どうしもいいけど、知らない人と、プライバシーが確立したうえでのシェアハウス生活って何となく憧れがあります。年齢や職業がバラバラな人たちで、ほどよい距離感で毎日を過ごせたら最高そうだなー、というその夢を具現化したのがこちら。この家の唯一のルールは「金曜の夜だけはいっしょにごはんを食べること」。ほっこりあたたかく、前向きな気持ちになれる作品です。


10.『若葉荘の暮らし』小学館文庫
著・文/畑野智美,発行/小学館




仕事がなくなるかも、やりたいこともないし、将来どうなるんだろう……? そんなリアルな中年シングルの不安に効くのがこちらの小説。舞台は『40歳以上独身女性限定シェアハウス』。当たり前だけどそれくらいの年になればみんなそれぞれに傷も抱えているし、うまくいっているわけじゃない。でもそんな状況でも、隣の部屋にちょっとだけ話せて、少しだけ肩を貸し合える人がいたら、きっと大丈夫な気がするんです。

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選者:花田菜々子

流浪の書店員。あちこちの書店を渡り歩き、2018年から2022年2月まで「HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE」で店長をつとめる。2022年9月1日に自身の書店「蟹ブックス」を東京・高円寺にオープン。著書に『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』など。