あなたの人生をきっと豊かにする手紙社リスト。今月の本部門のテーマは、「『問い』と『答え』をめぐる10冊本」。その“読むべき10冊”を選ぶのは、ブックコンシェルジュや書店の店長として読書愛を注ぎつつ、私小説も人気を博している花田菜々子さん。「雰囲気こそ大事なのでは?」という花田さんが雰囲気で(いい意味で!)選ぶ、ジャンルに縛られない10冊をお届けします。


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1.『書いたら燃やせ
著・文/シャロン・ジョーンズ,訳/白浦 灯,発行/海と月社





世界的なブームとなり、なんと累計350万部も売れているというこちら。書き込み式の本には「いちばんしあわせだったころは」「殴ってやりたい人は」「名前を変えられるなら」「死ぬまでにいきたい場所は」とユニークな質問がいっぱい。誰にも見せずに、真剣に向き合って書いてみるのも新年らしくていいかも。ちなみに少しネタバラシしますと、書いた後燃やさなくてもいいらしいです。火事怖いしね。


2.『谷川俊太郎質問箱』ほぼ日ブックス
著・文/谷川俊太郎,発行/ほぼ日




質問することと、それに答えること自体の面白さを教えてくれる本。子どもから大人までのさまざまな質問に谷川さんがどんどん答えていくのですが、「こんな答えもありなのか!」と思わず唸ってしまうような回答ばかり。ときに真摯でときにバッサリ、ときに場外ホームラン。言葉から広がる世界の豊かさに身を委ねてみてください。


3.『鴻上尚史の具体的で実行可能!な ほがらか人生相談 息苦しい「世間」を楽に生きる
著・文/鴻上尚史,発行/朝日新聞出版



この世でいちばんメジャーな(?)問いは「悩み相談」かもしれません。その中でも名相談と名高い鴻上さんの人生相談本です。何がいいって、質問を送ってきている人もみんな真剣で誠実。「こんなことを考えるのはよくないとわかっているけれど」「自分に問題があるけど直せない」と苦しんでいて、それに対する回答も“無難なアドバイス”とは正反対の芯のある言葉が並びます。自分に全く関係ない悩みなのに泣けてしまうほど。


4.『お悩み相談 そんなこともアラーナ』MOE BOOKS
著・文/ヨシタケシンスケ,発行/白泉社




せっかくなのでもう1冊くらい人生相談的な本を。くよくよ、ひねくれ、逃げたい、めんどう……などなど、ネガティブ心に満ちていて「今年も元気を出さないことをがんばるぞ」というあなたに寄り添ってくれるたのもしい内容。でもネガティブが一周して、生きる力が湧いてくるような……? あるいは「もっとがんばらなきゃ」「他の人はもっと頑張っている」が口癖の人はいますぐ100冊買ってください。


5.『文通 答えのない答え合わせ
著・文/古賀及子、スズキナオ,発行/シカク出版



ライターとして人気の40代のふたり。大人の青春について、感受性について、年をとることについて……ゆっくり流れる時間の中で交わされた書簡はみずみずしい言葉に溢れていて、読んでいる自分の心まで解き放たれます。「賛成か反対か」「敵か味方か」という発想ばかりしていると心はどんどん痩せ細ってしまう気がして(もちろん差別や戦争には絶対反対ですが)。答えがない問い、雑談の中にひそむ本質の面白さが伝わる1冊。


6.『お金のために働く必要がなくなったら、何をしますか?』光文社新書
著・文/エノ・シュミット、山森 亮、堅田香緒里、山口 純,発行/光文社




質問がそのままタイトルとなった1冊ですが、たしかにそう聞かれたら「そりゃあ、もちろん……えーと」と言い淀んでしまうような質問です。実はこちらはベーシックインカムについての本。もちろん今の日本では「いやいやそんなの実現できるわけないでしょう」と考える人が多いと思いますが、本当にそうでしょうか? とりあえず読めば「なんで働かなきゃいけないんだろう」という気持ちにバチっとハマるかもしれません。


7.『とんこつQ&A』講談社文庫
著・文/今村夏子,発行/講談社




本作におけるQ&Aとは、接客が苦手でまったく返事ができない「わたし」が中華料理屋『とんこつ』で働くために作った接客マニュアルのこと。「とんこつラーメンがないのになぜとんこつという店名なの?」「おすすめは?」「トイレどこ?」……で、接客できるようになってよかったねという話かと思いきや、物語は斜め方向に急展開。ゆかいで奇妙な世界に迷い込みたい人におすすめの小説です。


8.『チ。―地球の運動について―』ビッグコミックス
著・文/魚豊,発行/小学館




「空が動いているわけではなくて、地球が動いているのではないか?」という、今となっては当然の常識であるこの答えも、当時は問うだけで命が危なくなる異端の思想でした。これはそれでも答えを求めようとした人たちと、問いを消そうとした人たちの物語。命を狙われながらも問いのバトンを必死に繋いでいく彼らの思いに胸が熱くなります。

 

9.『君のクイズ』朝日文庫
著・文/小川 哲,発行/朝日新聞出版

 

 

クイズ番組の決勝で、問題文が読まれる前に正解を答え優勝した本庄と、その勝負で負け、不正ではないかと真相究明に乗り出す三島。「どうして問題文を読み上げる前に答えられたのか」を追うミステリーでもありながら、彼らの人生にとってクイズとは何なのか、その答えを探す文学にもなっているこれ以上ない「答え探し」の小説です。新しいことを始めたいこの季節に読むのにもぴったり。


10.『この問題、とけますか?』だいわ文庫
著・文/吉田敬一,発行/大和書房




クイズであれ何であれ、問題を解くことには他に代え難いよろこびと快感があるのだと思います。“頭の体操”的な良問がずらりと並んだこの本、けっこう難しいものもあるけど難しすぎず(何でも60代のモニターの人に解いてもらって難易度を調整したとか)、何人かでやってみたり、ドライブや旅行のひとときに出題してみても盛り上がりそう。ハイテクなゲームもよいけどじっくり自分で考えて探すアナログ感が新鮮です。

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選者:花田菜々子

流浪の書店員。あちこちの書店を渡り歩き、2018年から2022年2月まで「HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE」で店長をつとめる。2022年9月1日に自身の書店「蟹ブックス」を東京・高円寺にオープン。著書に『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』など。