あなたの人生をきっと豊かにする手紙社リスト。今月の本部門のテーマは、「春だ! 植物ライフ始めよう! の本」。その“読むべき10冊”を選ぶのは、ブックコンシェルジュや書店の店長として読書愛を注ぎつつ、私小説も人気を博している花田菜々子さん。「雰囲気こそ大事なのでは?」という花田さんが雰囲気で(いい意味で!)選ぶ、ジャンルに縛られない10冊をお届けします。


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1.『園芸家12カ月 新装版』中公文庫
著・文/カレル・チャペック,訳/小松太郎,発行/中央公論社




まずは世界的名著の1冊。チェコの作家によるエッセイで、自身の園芸オタクっぷりをユーモアたっぷりに語った本なのですが、なんと初版は1929年。えっ、約100年前……? そんな古さを全く感じさせない、海外の絵本のような柔らかな文章に魅了されます。挿画もとにかくかわいい。自分の中に植物を育てたい・手入れしたい気持ちが芽生えること間違いなしです。


2.『日日是植物
著・文/いとうせいこう,発行/マガジンハウス




と、このカレル・チャペックに影響を受け、自身も影響を受けて生粋の園芸マニアとなったいとうせいこうさんによる「日本現代版・園芸家12カ月」がこちら。目次からすでに「男パンジー宣言」「自分に胡蝶蘭を贈る」「切り花のおでんシステム」……とおもしろさの片鱗がちらほら。園芸に熱中する著者の姿が眩しすぎて、読んでいる側も幸せになれる本。


3.『植物園の歩き方 きれい、心地よい、愛おしい さまざまな「うつくしい」を求めて
著・文/カシワイ,監修/保谷彰彦,発行/グラフィック社



しかしいきなり園芸家になるのはなかなか大変なもの。まずは1日だけでも植物の豊かさを味わいたい、という人におすすめなのが植物園。人気イラストレーター・カシワイさんによるコミックエッセイ風のガイドで、植物園の楽しみ方や注目ポイントがわかります。「うわーっ、自分もこんなふうに植物スケッチとかできたらいいのになあ」とうらやましくなりつつ、まるで自分もそこにいるような気分に。


4.『緑をみる人
著・文/村田あやこ,発行/雷鳥社



日々の散歩でも植物を楽しむことはできます。「路上園芸鑑賞家」を名乗る村田あやこさんが、長い時間をかけて撮りためた、都市の隙間で勝手に育つ植物たちの写真と、志を同じくする世界13カ国18人の隙間植物愛好家たちへのインタビュー、そして彼らが撮った写真を収録した、ささやかながらもアーティスティックな1冊。植物を愛する喜びはこんな形でもいられるのだと感動。


5.『ゲリラガーデニング 境界なき庭づくりのためのハンドブック
著・文/リチャード・レイノルズ,訳/甘糟智子,発行/現代書館



そしてこちらは同じ「路上系」でもかなり挑発的な試みの本。庭がないならその辺の土地に勝手に植えてしまえばいいじゃない、ということで、無許可の「そのへんガーデニング」のすすめです。悪いことはしてないが常にコソコソしないといけないとのことで、「中央分離帯は意外と穴場」とか「作業中に近くの住民がココアを持ってきてくれるようになったらこっちのもの」など、ゲリラ・ガーデナーならではの知識が楽しい!


6.『愛なき世界
著・文/三浦しをん,発行/中央公論新社




植物が出てくる、植物LOVEな小説といえばこれ。洋食屋で働く青年が恋したのは植物の研究に夢中な女子大学院生。研究室の個性豊かなメンバーたちも登場し、ただの恋愛小説ではなく大学院の様子や、研究の面白さ、そして植物の魅力があますことなく描かれています。新しい季節に読むのにぴったりの「勉強×恋愛」最強小説!


7.『みどりのゆび』岩波少年文庫
著・文/モーリス・ドリュオン,訳/安東次男,発行/岩波書店



植物文学(?)を語る上ではこちらも欠かせない1冊。さわった場所に花を咲かせる不思議な「みどりのゆび」を持った少年チトは、その能力を使って刑務所や病院に花を咲かせ、人の心に幸せをもたらします。しかし実は父親が武器商人だったと知り、動揺しますが、反戦のために武器工場を花でいっぱいにします。植物を愛することは自然と反戦につながっていくのかもしれません。今こそ読みたい古典児童文学の名作。


8.『牧野富太郎 なぜ花は匂うか
著・文/牧野富太郎,発行/平凡社




日本を代表する植物学者、牧野富太郎が晩年に記したエッセイを集めた1冊。「三度の飯より女より植物が好き」と宣言するさまは、ところどころ破天荒なガハハおじさんの雰囲気ありつつも、植物にほんとうに魅せられ、植物のために人生を捧げ、植物のために生きたのだなと芯から伝わります。植物への観察や逸話ももちろん面白いけど、その生き様にもぐっときます。

 

9.『野山花花図譜
著・文/梨木香歩,絵/波多野光,発行/淡交社

 

 

こちらは見た目にも美しく、心癒される本。野山に咲く花ひとつひとつの繊細な植物画に、作家の梨木香歩さんがその花についての短いエッセイを綴っています。和綴じ風のデザインや紙の色、文字の色まで丁寧に作られていて、手元にずっと置いておきたくなるような、紙の本の魅力にあふれています。植物を愛する人へのプレゼントにもぴったり。


10.『観葉植物を枯らさないための本
著・文/ヴェロニカ・ピアレス,監修/深町貴子,訳/堀口容子,発行/グラフィック社




まあしかし、まず植物を愛するために始められることといえば花屋で観葉植物を買ってくることくらいなのですが、とにかく「枯れる」がトラウマになっている人は多いです。何を隠そう私も、あまたの鉢植えを枯らせてきました(あれってなんか突然枯れますよね?)。 で、そんな我々の心情を見透かすように「とにかく枯らさない」ことに全振りした本がこちら。どうやったら「育つか」ではなく「枯れないか」ですべてが記述されている実用書です。これなら私もできるかも……!!

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選者:花田菜々子

流浪の書店員。あちこちの書店を渡り歩き、2018年から2022年2月まで「HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE」で店長をつとめる。2022年9月1日に自身の書店「蟹ブックス」を東京・高円寺にオープン。著書に『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』など。