あなたの人生をきっと豊かにする手紙社リスト。今月の映画部門のテーマは、「もっとロックが好きになってしまう映画」です。その“観るべき10本”を選ぶのは、マニアじゃなくても「映画ってなんて素晴らしいんだ!」な世界に導いてくれるキノ・イグルーの有坂塁さん(以下・有坂)と渡辺順也さん(以下・渡辺)。今月も、お互い何を選んだか内緒にしたまま、5本ずつ交互に発表しました! 相手がどんな作品を選んでくるのかお互いに予想しつつ、相手の選んだ映画を受けて紹介する作品を変えたりと、ライブ感も見どころのひとつです。


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お時間の許す方は、ぜひ、このYouTubeから今回の10選を発表したキノ・イグルーのライブ「ニューシネマ・ワンダーランド」をご視聴ください! このページは本編の内容から書き起こしています。




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−−−乾杯のあと、恒例のジャンケンで先攻・後攻が決定。今月も有坂さんが勝利し、先攻を選択。それでは、クラフトビールを片手に、大好きな映画について語り合う、幸せな1時間のスタートです。


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有坂セレクト1.『あの頃ペニー・レインと』
監督/キャメロン・クロウ,2000年,アメリカ,123分

渡辺:うーん!
有坂:みなさん、この映画観てますか? これは、もう今から23年前の映画になるんですけども、これは監督が、トム・クルーズが主演した『ザ・エージェント』という映画でも知られるキャメロン・クロウという人なんですけども、キャメロン・クロウの代表作のひとつと言われている映画です。時代設定は1970年代です。教育熱心な母に育てられたウィリアムという15歳の少年が主人公で、彼は、家出したお姉さんが残していったレコードがきっかけで、ロックにのめり込んで、だんだん聞くだけではなくて、聞いたことを言葉で表現することに目覚め始めて、自分の書いた音楽記事がロック雑誌に送ったら認められて、そこの音楽誌で「記事を書かないか?」というオファーを受けるんですね。オファーを受けたときは、自分が15歳ということは言わずにオファーを受けて、あるバンドのツアーに同行する。そのツアーの中で知り合う、この、写真が出ていますけど「グルーピー」本人は「グルーピーと言われたくない」と言ってるんですけども、バンドに同行するファンたちの一人に恋をしながら、彼はロックを通してだんだん自分のことを理解し始め、人生に目覚めていくという物語になってます。ケイト・ハドソンが演じるグルーピーの役名が、ペニー・レインっていうんですね。この「ペニー・レイン」っていう時点で、ビートルズ好きはもうピンとくると思いますけど、その曲から彼女の役名を使っているという意味でも、作り手のロックへの愛情がすごく感じられる一作かなと思います。最初に、ちょっとキャメロン・クロウという監督の話をしましたけど、この映画は、実はキャメロン・クロウの半自伝的な映画なんです。すごくないですか!? 彼は、実際に15歳で書いた記事が、有名音楽誌のローリング・ストーン誌に掲載されて、若くしてデビューしたという意味で、神童と言われたライターだったんです。やがて、彼は音楽だけではなくて、映画とかいろんなカルチャーに興味を持って映画監督になり、世界的な監督として認められたんですけれども、その彼の思春期を描いた作品なので、ここからこういう青春期を過ごした人が、やがて映画監督になっていくんだな、というのを想像しながら観る楽しさもあるかなと思います。
渡辺:そうだね。
有坂:これはすごく脚本がよくできていて、アカデミー賞でも脚本賞を受賞したほど話題になった映画なんですけども、もともとは、これはキャメロン・クロウは、やっぱり自分の半自伝的な物語を映画にするなんて、そんなのはおこがましいと最初思っていたらしいんだけど、『ザ・エージェント』でトム・クルーズと一緒にやって、それで成功したことで、「次何つくってもいいよ」っていうチャンスを得て、ついに自分の半生を映画にするという決断をしたらしいんですね。そうしたら、むしろこの『あの頃、ペニー・レインと』が、キャメロン・クロウの代表作と言われるような映画になったと言われています。 これはもう、2000年代、ゼロ年代屈指の傑作の一本としても語られているんですけども、実際、公開当時は興行面では失敗に終わったらしい。本人曰く、『エクソシスト』っていう昔のホラー映画がありますけど、『エクソシスト』のリバイバル上映と丸々被っちゃったらしくて、その『エクソシスト』に負けたと。『エクソシスト』って1973年の映画で70年代の呪縛から自分は逃れられないってことを、改めて思い知らされたということを語っています。自分の青春期に出会った映画ですね。
渡辺:アメリカではそうだったのかもね。日本ではミニシアター系でヒットしてた。
有坂:そうだね。口コミで、本当にこれはどんどん広がっていくタイプの映画でした。
渡辺:音楽もいいしね。
有坂:そう、音楽は、デヴィッド・ボウイとか、ジョニ・ミッチェルとか、これはあれかツェッペリンとか、その辺はインタビューをしているんだよね。実際に使われている曲は一体誰かっていうのは、これは聞いてからのお楽しみですけども、本当にキャメロン・クロウというのは、劇中に使うBGMにすっごいこだわっている人。その中でも、本当にサントラとしてもベストなできだと思うので、音楽好きには観てほしいですし、ロックにまだ興味がないよっていう人も、本当にこの映画で目覚めてしまうかもというぐらい、心に響くとっても素敵な一本です。
渡辺:なるほど。
有坂:ぜひ観てください!
渡辺:では、続けて僕の1本目は、どれにしようかな。僕の1本目はですね、2019年のイギリス映画です。



渡辺セレクト1.『カセットテープ・ダイアリーズ』
監督/グリンダ・チャーダ,2019年,イギリス,117分

有坂:あぁ、あぁ、あぁ。
渡辺:これはどういう話かというと、主人公の少年が、パキスタン移民の2世の男の子なんですけど、お父さんがけっこう厳格な人で、パキスタン人として宗教だったりとか、しきたりだったりとか、もうギチギチに厳しい環境で教えるタイプのお父さんのもとで、ちょっと堅苦しい感じで育っている男の子が主人公です。パキスタン移民なんで、差別を受けたりしながらも、ある日、学校で友達が貸してくれたカセットテープ。「これはすげーぜ!」 みたいなのを借りたら、まさにそれを聞いて雷が落ちるっていう。音楽を聞いて、雷が落ちるみたいなのを、本当にこの演出上もリアルに雷が落ちるんですけど、それで音楽に目覚めるっていうお話になってます。その貸してくれたカセットテープのアーティストが誰かというと、ブルース・スプリングスティーンなんですね。舞台が1970年代だっけ、80年代かのイギリスだったりするので、「ボヘミアン・ラプソディ」とまったく時代が被っている感じなんですよね。その時代のイギリスで、ブルース・スプリングスティーンって、ファンの間から“ボス”って言われてるんですけど、そのボスに出会って、180度人生が変わってしまった少年の話になります。やっぱりこの少年は、パキスタン系の厳しい家で育っているから、ロックなんかとんでもないという家なんですけど、その中で自分に折り合いをつけていって、もともと歌詞を書くのが好きで、趣味でやってきている少年なんだけど、だから、文章を書くっていうことで自分は表現していきたいということに、だんだん音楽を通して目覚めていくと。本当に自分らしい生き方っていうのを、狭苦しい世界から殻を破っていくきっかけになったのが、このロックだったっていうお話となってます。これも実話なんですよね。モデルになった人がいて、エンドロールで最後出てくるんですけど、普通におじさんなんで。そこはね、本当におじさんではあるんですけど、モデルになった話としてはかなり面白いので、保守的なところから雷に打たれて目覚めて、それで夢をつかんでいくという話なので、映画としてもすごく面白いので。これも配信でも結構ね、確かやっていと思うんですよね。結構いろいろ観られると思いますので、機会があればぜひ観てください。
有坂:なるほどね。『あの頃ペニー・レインと』もそうだし、『カセットテープ・ダイアリーズ』もね、少年が音楽を通して自分に目覚めていくっていう。
渡辺:そうだね。成長していくという。
有坂:やっぱりロックを描いた映画って、基本、やっぱり反権力とか反体制とか、「やっぱり俺はこうなんだ」っていう自分に目覚める物語が多いよね。だから、やっぱりロックに興味がなくても、そういう少年の成長物語とかね、そういうものが好きな人は、けっこう相性がいいような気がします。ちなみに、手紙社の小池くんから、「今日二人が飲んでもらっているこのビール、完成すると『ペニー・レイン』という名前になりそうだ」と。ちょっと聞いてなかったんですけど、それ。よかった!
渡辺:これはすごい!
有坂:じゃあ、そんな情報を受け……れない、2本目にいきたいと思います。次は、フィンランド映画にいきたいと思います。



有坂セレクト2.『レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ』
監督/アキ・カウリスマキ,1989年,フィンランド、スウェーデン,78分

渡辺:うんうん、はい。
有坂:これは、今、「ロックが少年の成長物語でもある」って言いましたけど、それとはまったく違ったタイプのロードムービーとなっています。これはですね、監督は僕たちキノ・イグルーの、「キノ・イグルー」という名前をつけてくれた、名付け親のアキ・カウリスマキが、1989年につくった映画になっています。そう、このねリーゼント、ものすごいリーゼント! これは頭だけじゃなくて、実はブーツもとんがりブーツで、すごい見た目のインパクト。みんな黒いファッションで、サングラスで、日本で言えば本当に「氣志團」みたいなスタイルを持ったバンドが、この「レニングラード・カウボーイズ」という売れないバンドになっています。これは、シベリアを舞台に活動しているレニングラード・カウボーイズというバンドが、ある独裁的なマネージャーに引き抜かれ、彼らが売れるためにはアメリカに行かなきゃいけないって言って、アメリカ、メキシコを旅するっていうロードムービーになっています。
もう、本当に独裁的なマネージャーなので、自分はステーキ食べてるのに、バンドメンバーは何もおいしいもの食べれないみたいな、その辺のギャップをすごく面白おかしく、笑いを交えながら描いている、ちょっとコメディ調のロードムービーになっています。とはいっても、このアキ・カウリスマキという監督の映画はすごい独特で、基本的に大げさな芝居はない。登場人物はみんな無表情、動きも少ない、説明的なセリフもない、変な長い間で笑わせる、そういう独特なスタイルを持った監督なんですけども、最初アメリカ映画みたいな、わかりやすい笑いに慣れてる人は、ちょっと一瞬違和感があるんですけど、だんだんその間が癖になっていく、っていうタイプの監督なので、アメリカのジム・ジャームッシュもアキ・カウリスマキを尊敬しているということで、ジム・ジャームッシュの『パターソン』とか、その辺が面白かったよっていう人にもおすすめの一本となっています。実際に、ジム・ジャームッシュも、この映画の中に役者として出てきます。ちょい役で、中古車ディーラーで出てくるので、そんなところにも注目してもらいたいなと思うんですけども。この映画の面白いポイントは、このレニングラード・カウボーイズというバンドが、シベリア時代というのはすごく牧歌的な音楽しか演奏していなかったのに、アメリカに行ったときに、あるレコード一枚に出会って、そこでロックに目覚める。彼ら自身のそこもある意味、成長物語になっているんですけども、本当にでも一枚のレコードが人生を変えるっていうのは本当によくあることで、それを笑いの中で描いた作品がこの『レニングラード・カウボーイズ』になっています。上映時間も78分、観やすいので、ぜひ!
渡辺:配信でも観られるんだね。
有坂:観てほしいですね。これ入れてた?
渡辺:うん!
有坂:だよね(笑)。
渡辺:そりゃあ、なるほど。
有坂:関西でやっているんだ。すごい関西の人、絶対劇場で観たほうがいいですよ。いや、上演終了、終わっているんだ。
渡辺:なるほど、それを受けて、悪徳マネージャーでいきたいと思います。僕の2本目は、2022年のアメリカ映画です。



渡辺セレクト2.『エルヴィス』
監督/バズ・ラーマン,2022年,アメリカ、オーストラリア,159分

有坂:ああ!​​
渡辺:これは去年かな、劇場公開したばかりの作品なので、まだ新しいんですけど、エルヴィス・プレスリーを描いた作品となってます。監督が、バズ・ラーマンで、結構『ムーラン・ルージュ』とか、きらびやかな世界を描くのを得意とした監督が描いた『エリヴィス』です。エルヴィス・プレスリーって、本当にソロアーティストとしては、たぶん一番売上が上がってるぐらいのスターなんですけど、また有名なのがその悪徳マネージャーと言われている、本人はね、悪徳とは当然言ってないですけど、めちゃくちゃ金をむしり取られたでおなじみの人です(笑)。この劇中では、そのマネージャーをトム・ハンクス、名優トム・ハンクスが演じています。トムはもちろん、自分は悪徳じゃないって言い張りながら、金をせしめていくっていうですね、絶妙なところを演じているんですけど。この『エルヴィス』のすごい面白いところが、やっぱりエルヴィス・プレスリーからロックが、アメリカでは始まっていったんですけど、なので、この劇中で描かれる“当時”っていうのは、ロックなんかまったく知らないですね、アメリカ人。何も知らないところにツアーしに行くんですけど、サーカス小屋みたいなところに、農村地帯のテントが建っていて、すごい大きいテントが建っていて、そこが会場になっているんですね。カウボーイハットをかぶったお兄さんに、「じゃあ次演奏します」みたいな感じで、ステージに上がっていくんですけど、観客は全員現地の農家の人たちとか、若い女の子たちもいっぱい見に来てはいるんですけど、なんかこう出し物を見るみたいな目で見ているんですけど、このプレスリーがジャーンって弾いた途端に、「何? この音楽」ってなるんですよね。その描写が、大げさすぎるんですけど面白くて、プレスリーが腰をひねりながらくねくねしながら、セクシーにロックを歌いだすことに、ギャーって熱狂しだすんですよね、観客たちが。初めてロックを聴いた人たちの衝動、衝撃みたいなものがそこで描かれていて、特に女の子たちが熱狂して、エルヴィスに熱狂してその場で失神する子とか、叫びを上げて下着をステージに投げる子が出るみたいな。そういうところが描かれているのが、ロックを知らなかった人たちが、初めてロックを知った衝撃、衝動みたいなのが、そこで描かれているっていうのが、この映画のすごい面白いところです。だから、当時、何もロックなんか知らない人が、初めて聞いたらとかね、そういうのがすごい面白いなと思います。映画も、初めて映画を観た人たちの衝撃っていうのは、今の人たちとはまったく違うので、その辺が描けているっていうところが面白いなという作品です。これも、まだ公開したばっかりなので、けっこう観られると思います。まだ見放題にはそんなに入ってないのか。Netflixで見放題。
有坂:そのロックに目覚めた瞬間とか、ロックが誕生した瞬間とか、映画が誕生した瞬間ってさ、言っても、映画だったら120年ぐらいじゃない。ロックだって、まだもっと歴史が浅くて、自分の家族でいえば、おじいちゃん、おばあちゃんとかの世代が出会ったりしているようなカルチャーが、そこからどんどん細分化されて、でも、ある意味、一つのジャンルになっているから、今回みたいなロックな映画っていうお題で語れるぐらいに今はなっていますけど、改めてこれだけ細分化されたからこそ、その原点に立ち返る面白さ。なんで、これだけ一つのジャンルになり上がったのかっていうところも、知識として知ると、より今の音楽も聴こえ方が変わってくるかなって、ちょっと今話を聞いていて思いました。じゃあ、そんな順也の『エルヴィス』を受けて、ちょっと僕の作品を変えました。僕の3本目は、1996年の映画です。



有坂セレクト3.『すべてをあなたに』
監督/トム・ハンクス,1996年,アメリカ,110分

渡辺:んー!
有坂:今、順也がトム・ハンクスのことを、我らがトム・ハンクスのことを「悪徳マネージャー」って言いましたけど。
渡辺:役だからしょうがない(笑)。
有坂:いや、ひどいよ。よく言えたね(笑)。『すべてをあなたに』のトム・ハンクスは、悪徳ではないマネージャーを演じてます。しかも、この映画のトム・ハンクスは、役者としてだけではなくて、実は監督もやっているんです。これはトム・ハンクスの初監督作なんですね。……これ! ほらーちょっと悪徳っぽい顔しているけど、でも、これはトム・ハンクスが本当にもうずっと長い間寝かせていた企画。彼は、実は大のビートルズファン。いつか、そういう自分がビートルズに目覚めた、60年代の青春映画をつくりたいっていう思いをずっと持って、96年に初めて監督として手がけた作品になっています。これ、時代設定は、ビートルズがアメリカに上陸した1964年という設定になっていて、当時、たぶんたくさんいたネクスト・ビートルズみたいな若手バンド。この映画の中では、「ワンダーズ」っていうバンドなんですけど、地元のコンテストで優勝して、大手の敏腕プロデューサーに見出されてメジャーデビューを果たして、けっこうヒットチャートの上位まで登り詰めるものの……っていう音楽青春映画になっています。そのバンドのマネージャーを、トム・ハンクス自身が演じているんですけど、あくまでこの映画のメインっていうのは、バンドのメンバー4人と、あとリヴ・タイラー。この映画のリヴ・タイラー、いいんだよね……になってます。これは60年代なので、例えばファッションとか、出てくる車だったり、あとは街並みも60年代の雰囲気、世界観をしっかりお金をかけてつくり込んでいる。でも、そこで描かれているのは、「バンドやろうぜ」っていうわかりやすい青春映画。変な方に話を振らないで、割とそのバンドやろうぜ青春映画を軸に、突っ走るタイプの作品なので、内容的に深みがないとか言われるんだけど、「いやいや、深みがあったらこんな面白くないですから!」っていうタイプの作品です。そういう映画で一番大事になってくるのは、やっぱり音楽。もちろんバンドの映画なので、音楽が大事になってくるんですけど、この映画は本当に音楽がよくできていて、実際、トム・ハンクスも作詞作曲を手がけたりもしてるんですけど、この代表曲、「That Thing You Do!」っていう曲は、本当にその当時のビートルズとかの時代のヒット曲としか聞こえない。日本のバンドもカバーしていたり、CMでも使われてたかな。アカデミー賞の主題歌賞にもノミネートされるような、本当に曲としてもよくできているので、やっぱりそのテーマ曲が、一個この映画の軸になっているので、話はシンプルにまとめて、作品として結果的にいいものになったという映画になってます。これ、今でも覚えてるのが、やっぱりトム・ハンクスが初監督、しかも96年だと『フォレスト・ガンプ』の後とかなんですよ。トム・ハンクスが大ブレイクした後の監督作だから、すごい力を入れていて、プロモーションも。日本に来たときに、「夜もヒッパレ」に出ていた。
渡辺:そうなんだ(笑)。
有坂:最近、また話題になっている、あの伝説の番組の「夜もヒッパレ」にトム・ハンクスだけじゃなくて、ワンダーズのメンバーも出ていた。で、生歌を披露するっていうのは、ものすごい覚えてるので、当時それくらい話題になった映画なんですけど、だけどね、観てない人が多いし、過小評価されすぎているので、今回のロック映画で、ぜひこれは入れたいと思って、熱を込めて、好きだったころのトム・ハンクスになってます。
渡辺:なるほど、トム・ハンクス好きだねー。じゃあ、それを受けて行きたいと思います。
有坂:どこに行くかわからない……。
渡辺:トム・ハンクスではないです。ビートルズに。ビートルズものもいっぱいあるんですけど、僕の3本目は、2014年のノルウェー映画です。



渡辺セレクト3.『イエスタデイ』
監督/ペーテル・フリント,2014年,ノルウェー,114分

有坂:はいはい!
渡辺:『イエスタデイ』っていう映画は、他にもあるんですけど、このノルウェー版の『イエスタデイ』がどういう話かというと、まさに舞台が1960年代、ビートルズが大ブレイクしている時代のノルウェー・オスロが舞台となっています。そのオスロの少年たち、ビートルズに憧れる少年たちが、バンドをやっているというですね、そういう青春ストーリーになります。
有坂:いい映画だよね
渡辺:そうなんですよね。この少年たちが、3ピースのスーツを着て、ビートルズを真似てっていう。で、バンドを始めた理由が「モテたいから」っていうですね、そういうところがまたいいなと思って。
有坂:ピュアだよね。
渡辺:なんか変に言ってなくて、シンプルに、モテたくて、ビートルズに憧れてみたいなところで音楽を始めるっていう。これは音楽ものではあるんですけど、本当に青春ラブストーリーっていう話です。この少年たちの中で、「あの子、可愛くない?」みたいなところを追っかけていったら、誰かと誰かが繋がってみたいな、偶然、距離が近づいてその子と付き合えるのかどうなのかみたいな、そういうお話になっています。その背景にビートルズだったり、バンドだったり、音楽みたいなところが出てくるという感じなんですけど、本当になんかこの少年たちの清々しいラブストーリー、青春ラブストーリーみたいなところが楽しめる作品なので、けっこう日本でもかなりミニシアター的に公開したものなので、小規模だったんであんまり知られていないんですけど、そこそこヒットはしていた作品なので、けっこう評価は高い作品かなと思います。配信、そんなにやってないのかな?
有坂:やってない、今のところないよね。でも、またどっかでやるよね。
渡辺:でも、これは観られる機会があったら、ぜひ観てもらいたいなと。
有坂:これはあれだよね、公開されたとき、『イエスタデイ』っていうタイトルで、このビジュアルだから、当然イギリスとかアメリカの映画かなと思っていたら、まさかのノルウェー。それがやっぱり新しいなと思ったし、やっぱり当時の60年代のビートルズの大旋風みたいなものが、どれだけ世界に影響を与えたかっていうのを、やっぱりそのノルウェー目線から観られるっていうのは面白いし、学びがあるよね。
渡辺:そうですね。60年代のオスロの街並みとかファッションとか、そういうとこもちゃんと描かれてるんで、そこはすごい見どころです。
有坂:そう、ビートルズものの良さはそこで、やっぱり今観ると、60年代の文化やファッションとかやっぱり新鮮じゃない?
渡辺:そう、ミニスカートでね。
有坂:そうそう、その時代の良さまで描けるっていうのが、ビートルズものの良さかもしれないね。
渡辺:はい、という繋がりで。
有坂:じゃあ、それを受けて(笑)、今度はビートルズではなくて、同じ時代に活躍してたベンチャーズに影響を受けた、バンドマンたちの話。1992年の日本映画です。



有坂セレクト4.『青春デンデケデケデケ』
監督/大林宣彦,1992年,日本,135分

渡辺:うんうん。
有坂:これは、大林宣彦監督の初期の代表作と言ってもいいと思います。これは、時代設定が1965年なので、もうだいたい同じ時代だよね。春休みに、香川県に住んでいる高校生たちの物語なんですけど、「ラジオから突然流れてきたエレキサウンドに」って書いてますけど、これがベンチャーズの曲なんですね。高校入学をひかえた男の子は「高校に入ったら、絶対俺はバンドを結成する!」っていう、その高校1年生から高校3年生までの3年間を描いた作品になっています。なので、これは、友達ができて、どんな音楽好きなのっていう楽しい会話から、バイトだったり、合宿したり、夏祭りがあったり、初恋があったり、学祭があったり、受験の不安もあったり、別れがあったりっていう、もう青春映画に求めているものが全部詰まっています。
渡辺:本当にそうだよね。
有坂:いわゆる、わかりやすい感動シーン。泣いてくださいみたいな、そういうシーンとかないんですけど、目頭が熱くなる自分の同じ時代、高校生とか中学校の頃に感じてたピュアな部分をすごい刺激してくれる映画になっていて、実際に僕の周りで音楽やってる人で、この映画にものすごい影響を受けて始めたっていう人もいるので、これは割と大人だけじゃなくて、例えば中高生の子どもがいます、息子がいます、娘がいますって人に、おすすめの1本でもある。もしかしたら、音楽に目覚めてしまうかもしれないっていうぐらい、何か心を感じる映画だなと思っています。一方で、この映画を作った大林宣彦という人は、あの人が喋ってるインタビューとか見たことがある人は、語り口がマイルドで、目尻も下がって、優しそうなおじいちゃんみたいな印象かもしれないんですけど、つくる映画はめちゃくちゃ激しい。過剰なまでに、編集でいろんな映像を繋いで、映画でしか体感できない世界観をつくってくれるのが大林宣彦。だから、わかりやすい王道の青春ストーリーと、大林宣彦にしかつくれない「これぞ映画」っていう世界観が、本当にいい形でミックスした作品かなと思うので、ぜひまだ観てないという人、あとロック映画、まず「ベンチャーズって聞いたことはあるけど、音楽いまいちわかんないな」っていう人にも、観てほしいなと思う一本です。最後に、この4人組のバンドなんですけど、その中の一人は、若き浅野忠信が演じていて、そんなにメインに、前に出てくる役じゃないんだけど、ちょっと出ない、引いている浅野忠信ほど怖いものはないじゃないですか(笑)。なんかね、浅野忠信にも注目してほしいし、あと、音楽を担当したのが、これは久石譲なんで、その辺も注目して観てほしいなと思う一本です。
渡辺:これはでも、青春映画の傑作だからね。
有坂:そうだね。日本映画の中でも。
渡辺:普通に、未見の人は観てもらいたい。
有坂:けっこう観られるね。U-NEXTで見放題。観てみてください。
渡辺:なるほど、そう来ましたか。それを受けて
有坂:いやいや、もう受けれないでしょ(笑)。
渡辺:それを受けてですね。いやいや、日本のバンドをつくる話でわかりますか?
有坂:出た! はい。せーので言おう。
渡辺:2019年の日本映画で、
二人:『音楽』です!



渡辺セレクト4.『音楽』
監督/岩井澤健治,2019年,日本,71分

渡辺:これはアニメーションです。2019年なので4年前につくられたアニメーションで、高校生がバンドを始めるっていう話ではあるんですけど、その高校生がどういう高校生かっていうと、思いっきり不良なんですね。音楽なんか縁もゆかりもない、喧嘩ばっかりしてる不良。そう、この3人組の不良が主人公。あるとき、この真ん中のリーダー格の男が、音楽やりたいと言い出して、仲間がじゃあやるかみたいな感じで、やるんですけど、それがドラムにベースとベースっていう、すごい不思議なトリオになるんですけど。その3ピースバンドで、ボーカルがいない、ドラムとベースとベースっていうですね、とても不思議な感じなんですけど。でも、音楽を通ってきていない彼らだからこそ、できた組み合わせみたいな感じで、何も習っていないんですよね。でも、「じゃあ俺ん家でやろうぜ」みたいな感じで、ドラムをセットして、ベース2人持って、「せーの」ってジャーンってやるんですけど、そこで“ビビビビビビビ”ってくるんですよね。「せーの、ジャーン」ってやっただけなんですけど、彼らにとっては、それがもう雷が落ちたっていう、「音楽すげー!!」みたいな。その音楽の初期衝動っていうのを、本当に映像化、アニメ化したっていう、そういう意味で傑作の作品となっています。作品自体は、結構コミカルで、コメディタッチなんですよね。独特の間で、かなり面白いギャグ漫画みたいな感じで進んでいくんですけど、その音楽を描くことに関しては、すごい真摯にというかですね、音楽の初期衝動をちゃんと描いていて、それでロック大会を目指して、彼らはバンドとしてそこに出場することを目指す、みたいな話になっています。でも、行く途中に、不良のライバルから喧嘩を売られて、たどり着けるのかみたいなことがあったりとかですね。ちょっと山あり、谷ありみたいな展開もありつつ、でもライブの映像シーンとかですね、これちょっと観ないとわからないんですけど、実写を実はトレースしてアニメにしてるので、ちょっとこの絵のタッチなんですけど、動きはめちゃくちゃリアルで、そのライブシーンがもう傑作なんで。
有坂:実際にフェスをやったんだもんね。
渡辺:そう。
有坂:それを映像で撮って、アニメとしてトレースして使っているので。
渡辺:なかなか贅沢な。で、そのトレースされてるのは誰かみたいなのは、調べればわかっちゃうんですけど、それはあえて見ずに、ぜひちょっと観てもらいたいなと思います。
有坂:これ、キノ・イグルーでもね、代官山の「晴れたら空に豆まいて」というライブハウスで、爆音上映した後に、ある3ピースバンドのライブを、その後にやるっていう。「SPORTS MEN」っていう本当に最高にかっこいいトリオのバンドがいるので、ちょっと調べてほしいなと思うんですけど、セットでね、監督にも来てもらってトークもやってっていう上映もしたことがあるので。
渡辺:しかも、「SPORTS MEN」って静かなロックバンドっていう、そういうバンドなんで、それがまた面白いですよね。本当に静かなバンドなんだよね(笑)。
有坂:せーのって、こうなんかささやくように始めるタイプの「SPORTS MEN」。かっこいいですよ。
渡辺:爆音でやった後にね、それっていう。
有坂:そうだね。いいですか。じゃあ、僕の最後5本目、
渡辺:5本目か、もう。
有坂:迷うんだけどこっちにしよう。今までは、ロックバンドとかロックに目覚めた少年とか、そういう軸で選んできたんですけど、ちょっと最後だけ視点を変えて紹介したいと思います。1971年のアメリカ映画です。



有坂セレクト5.『バニシング・ポイント』
監督/リチャード・C・サラフィアン,1971年,アメリカ,106分

渡辺:おお!
有坂:これは、いわゆる70年代のアメリカ映画っていうのは、アメリカン・ニューシネマと呼ばれた時代、その時代を代表する1本なんですけれども、その時代って、アメリカがベトナム戦争がなかなか終結せず、どんどん泥沼化して、戦争をやめろって若い人たちが声を上げるものの、なかなかそれが変わらないっていう、もう悶々としたアメリカから生まれた映画。その時代をつくったアメリカン・ニューシネマの代表作は、『イージー・ライダー』っていう映画であり、『バニシング・ポイント』と言われています。この映画は、一言で言うと、ずばり、カーアクションです。このコワルスキーという主人公なんですけど、彼は新車を買った人のところに届ける、自分で運転して届けるっていうことを生業としていて、この映像にもありますけど、白の70年型ダッジ・チャレンジャーを、サンフランシスコまで15時間以内に届けるっていう、賭けをするんですよ。「俺は絶対届ける」って。お客さんの車なのに、15時間以内に届けるっていう謎の賭けをして、その道中を、これは映画として描いてる作品なんですね。もちろん、限られた時間の中で届けなきゃいけないので、ものすごいスピードで、時速200キロぐらいで暴走している車が、ずっと描かれていく中で、途中もちろん警察が出てきて警察にも追われ、でも、なぜかわからないんだけど、警察を振り切って逃げるようにというか、さらにまたスピードを上げて目的地までたどり着こうとするコワルスキーっていう人を、これは描いているんですね。なんで、捕まりたくないからといっても、仕事だから捕まっちゃまずいわけじゃないですか。だけど、何かにせき立てられるように彼はスピードを出して車をひたすら走らせ続けるんですね。映画は、そこら辺の理由を描かず、彼がひたすらスピードを上げて疾走する、追われていく姿だけを描いている、という意味で、すごい実験的な映画だなって思う部分もあるんですけど、とにかくでも、警察から追われるけどひたすら逃げてる、彼のコワルスキーの姿が、当時の若い人から見ると、反体制。警察に抗っている姿がかっこいいってことで、あるラジオDJの実況中継が途中から始まって、その実況中継を通して、若者たちが熱狂して、熱狂すればするほど、警察はムキになってコワルスキーを追っていってというようなドラマにつながっていく。ラストは……っていうような映画なんですけど、なんでこの映画を僕が5本目に紹介したかというと、実はこの『バニシング・ポイント』っていう映画に、めちゃくちゃ影響を受けたあるバンドがいるんです。それが「プライマル・スクリーム」なんですね。
「プライマル・スクリーム」はUKでしょ、スコットランドのバンドで、『バニシング・ポイント』が好きすぎて、97年に出したアルバムが、『バニシング・ポイント』っていうタイトル。さらに、その先行シングルで出した曲名が「コワルスキー」っていう。で、コワルスキーで使われている、音楽以外のサンプリングでいろんな音を使っているんですけど、『バニシング・ポイント』で劇中使われてるセリフとかを、サンプリングしてつくっているんですよ。だから、映画の影響を受けすぎて、ある世界的なロックバンドが一つのアルバムをつくってしまった。ロックの影響がここまで、ロックの影響というか、映画がロックに与える影響もありますし、あと、この「バニシング・ポイント」ってアルバムには、実はトレインスポッティングにプライマル・スクリームって一曲提供しているんですけど、それも入っている。「トレインスポッティング」って曲なんだけど、そこも映画とロックが繋がった瞬間っていうところでも、すごく面白いなと思うので。これはタランティーノがデス・プルーフっていう映画の中で、後半のセリフにも『バニシング・ポイント』って出てくるんですよ。その『デス・プルーフ』きっかけで、『バニシング・ポイント』を観た人もいっぱいいるし、あと、イーストウッドのグラン・トリノ。あれは、ダッジ・チャレンジャーじゃなかったけど、ああいうこの時代のアメ車を描いた、イーストウッドの『グラン・トリノ』の主人公の名前、コワルスキー。
渡辺:ああ、確かに!
有坂:そうなんですよ。なので、この『バニシング・ポイント』っていう映画は、本当にロック、映画監督、いろんなところに、実は影響を与えまくっているアメリカン・ニューシネマを代表する一本です。
渡辺:今年はリバイバルやっていたんだね。
有坂:やってた。4Kバージョンでね。なかなか、多分、その手紙社が好きっていう人と、カーアクションが結びつかないかなっていうところもありつつ、ただ、どうしてもロックの切り口で、せっかくなら知ってもらいたいなということで、大事な5本目に『バニシング・ポイント』を紹介してみました。
渡辺:激シブなやつを。なるほど、そう来ましたか。
有坂:ぜひ観てください。
渡辺:じゃあ、僕の5本目は、それを受けず(笑)。
有坂:だよね。
渡辺:まったく受けずですね。もう、まさに少年のバンドのお話をいきたいと思います。
有坂:ああ!
渡辺:絶対違うと思うよ。
有坂:一緒に言う?
渡辺:言わない! 2018年のノルウェー映画です。
有坂:あっ、違った。



渡辺セレクト5.『ロスバンド』
監督/クリスティアン・ロー,2018年,ノルウェー、スウェーデン,94分

有坂:うんうんうん。
渡辺:これは、本当に可愛らしい作品なんですけど、さっきも『イエスタデイ』がノルウェーだったんですけど、北欧ものでバンドものは、実はけっこう多くて、この『ロスバンド』っていうのは、何年か前にも日本でミニシアター系で、ひっそりと公開された作品なんですけど、少年がバンドを組むっていう話です。友達同士でですね、バンドを組んで、ロック大会を目指そうと言って旅に出るっていうロードムービーなお話です。主人公の子はドラムをやっていて、ギター&ボーカルの友達に誘われて、2人でバンドをやるんですけど、「ベースが必要だよな」みたいになって、小さい町なんですけど、その町の中から9歳の女の子の、普通に真面目にクラシックでチェロを弾いている子を口説き落として、ベースとして無理やり参加させてですね、知り合いのお兄ちゃんに車を借りて、ロック大会のある町まで旅に出るっていうお話だったりするんです。家族の話だったりとか、恋愛の話だったりとか、そういう青春ものがいろいろ出てきたりするんですけど、この設定で面白いところが、主人公の友達がギター&ボーカルっていう、けっこう中心的な役割ではあるんですけど、その子がまさかのオンチっていうですね、その設定がめちゃくちゃ面白いんですよね。「なんか俺たちイマイチにウケないよな」って、そいつが言っているんですけど、お前がオンチだからだよっていうのは言えないみたいな。友情があるから、友達に気を遣って、「お前オンチだぜ」って言えないまま、大会に向かっていくっていう、そこの面白さがあるんですよね。このオンチなバンドが、果たしてたどり着けるのか、大会でどういう結果を出せるのか、みたいなところはお楽しみなんですけど。その合間の過程の珍道中っていうコミカルなところも面白いですし、あと、やっぱり少年ものなんで、そこで成長していくっていうですね、そういうところも観ていて微笑ましいところがあるので、非常に可愛らしい作品ですし、面白く、コミカルに音楽ものを楽しめるという作品となってます。ただ、これ配信とか全然ないんですよね。今日も調べていたらまったくないなっていう。
有坂:2022年公開だからね。まだ上映権っていう権利は日本にあるから、いずれどこかでね。キノ・イグルーでもやりたいよね、『ロスバンド』。
渡辺:なんで配信やらないんだろう? と思って、ちょっともったいない感じは。でも、これ本当に面白いんで、ぜひ本当にキノ・イグルーでもやる機会があれば、ぜひ観てもらいたい作品ですね。はい、という5本目でした。
有坂:5本目。だいぶ色が違うね。
渡辺:『バニシング・ポイント』は、まったく入ってなかったもん(笑)。
有坂:『バニシング・ポイント』は、実際に、その映画のサントラとしても使われている、クラシックロックみたいな、アメリカのルーツ的な、カントリーっぽいような音楽だったり、クラシックロックみたいなのも使われているので、そういう意味でもね、いいかなと思って。でも、そのいろんなね、やっぱり映画がきっかけでとか、ロックがきっかけでっていう、なんかこう点がつながっていくことってさ、やっぱりカルチャー好きにとっては、面白いところじゃない。なんかそこはね、知ってもらいたいなと思いました。


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有坂:今回は、紹介しなかったんですけど、僕、その音楽ドキュメンタリー。まだ広げるといっぱいあるじゃない。ビートルズの『Get Back』もしかり、『ウッドストック』。「ウッドストック」って、あのね伝説のライブフェス、70年代の。あれを3時間、4時間弱でまとめたドキュメンタリー映画っていうのがあるんですけど、あれ、僕、コロナ禍ではじめて観て、家でDVD持っているけど観てなかったんですよ。で、コロナ禍でステイホームで家からまったく出られなかったあの時期に、すっごい天気がめちゃくちゃいい日に、窓を開け放って、その4時間観ようって言って、奥さんと一緒にビール飲みながら「ウッドストック」を観た。で、めちゃくちゃそれが体験として、家にいながら本当に野外フェスを体験してるような時間が過ごせて、とにかく良かったのね。で、後にでもその奥さんから、友達と話してて、ああいう状況でも、そのウッドストックをこういう風に楽しもうって、この人は言ってくれるんだって言って、僕のことを絶賛してくれたの。
渡辺:何の話ですか(笑)。
有坂:でも、なんかさ、その観てなかった映画をどう楽しもうかっていうときに、なんかただ閉じこもっているのも悔しいじゃん。この状況を前向きに考えたいなと思ったときに、本当に嘘みたいに、ウッドストックのDVDが棚にあってさ、なんか、それを思いついたらもうやりたいじゃん。全力で楽しみたいなって、いつものイベントみたいに思うんですけど、でも、それを誰かと共有することで、それはまたね、こう違った視点を届けられることになるんだなっていう。なんか自分にとっても、それはけっこう気づきになって、そうなんですよ。そんな僕が絶賛されたっていう話を、ちょっと最後に(笑)。
渡辺:自慢かよ(笑)。
有坂:自慢じゃないんだけど。
渡辺:でもね、いろいろ他にも、『リンダ リンダ リンダ』とか言うかなって思ってた。
有坂:いや、俺も言うと思っていた。その辺はね、他にもいっぱいあるよね。
渡辺:うん、ビートルズものだけでもね。『ノーウェアボーイ』とか
有坂:そうそう、『ノーウェアボーイ』
渡辺:いろいろあるしね。でも、『あの頃ペニー・レインと』は、言おうと思ってた。
有坂:まあでも、キャメロン・クロウはね、『エリザベスタウン』もそうだし、だいたいロックとつながってるし、あと『ハイ・フィデリティ』とか。
渡辺:そう、『ハイ・フィデリティ』。
有坂:『スクール・オブ・ロック』とか、本当にもう挙げ始めたらキリがないぐらい、『パイレーツ・ロック』とかね
渡辺:あと、『ヘドウィグ 』とか、
有坂:『ヘドウィグ』もあるね。
渡辺:いろいろ、もう掘れば掘るだけ出てきますからね、この辺は。
有坂:なんかでも、そのロック史みたいなこともね、なんかこう全貌を分かった上で掘り下げていくのも面白いかなと思うので、気になった映画があったらぜひ観てみてください。はい、じゃあ、最後に何かお知らせがあれば

渡辺:そうですね。ロックつながりではあるんですけど、またFilmarksでリバイバル上映企画って、僕いろいろやっているんですけど、今度、『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』をやることになりました。それは、まだ10月の6日かな? ではあるんですけど、1週間限定で、全国の映画館でやりますので、ガイ・リッチーの長編デビュー作なんですけど、でもまあ多分一番最高傑作なんじゃないかなと。
有坂:大好きだよね。
渡辺:大好き!
有坂:これだ。全国62館。
渡辺:そうなんです。ポスターも、当時のバージョンなんですよね。というのでやりますので、ロックつながりでぜひ。面白い作品です。
有坂:さすがプロデューサー。いい企画やってますね。10月6日、金曜日、劇場も出てるね。新宿ピカデリー、イオン系と目黒シネマでもやるんだ。面白い。
渡辺:目黒シネマは『スナッチ』と二本立てでやるんですよ。
有坂:それ言ったら、それを観にいきたくなっちゃう。それで新作もやるよっていう。
渡辺:そうそう、ちょうど同じタイミングでやります。

有坂:僕は11月、ちょっと先なんですけど、11月11日にキノ・イグルー史上最も攻めた企画、といってもいいイベントをやります。これは場所が、テアトル蒲田っていう、かつて鎌田で名画座としてやっていた場所。今はもう、ドラマとかCMの撮影でしか使われていない、一般の人が入れない場所を、1日貸し切ってやります。
これが、朝10時半から始まって、終わりが夜の20時っていう9時間半のイベントで、250人限定の企画となっています。これは、一応映画館、「いつも映画館のことばかり 考えている人のために」っていうイベント名で、とにかく映画館が好きですっていう人たちに、テアトル蒲田っていうのは、実はその建物自体も来年、再来年なくなっちゃうらしくて、かつてあった名画座の空間を体験してほしい。さらに、今ってマイクロミニシアターと呼ばれるような劇場も出てきて、昭和の映画館がなくなりつつ、違った形で、映画館も新しい形で始まっている。ちょうどそういう過渡期かなと思っていて、その辺を考えたり、体験できたりする場にしたいなと思ってます。
映画は2本上映して、まず『ワン・セカンド』っていう中国映画で、これはチャン・イーモウが監督した映画。中国版ニュー・シネマ・パラダイスと言われています。もう1本が『ニュー・シネマ・パラダイス』の二本立て。トークも二本立てになっていて、まず1個目が、藤沢にある「シネコヤ」という映画館の支配人に、竹中さんという女性の方に来てもらうのと、あと今絶賛公開中の『ABYSS』という日本映画の監督をしている、須藤蓮という俳優もやっている、彼は自分の映画を配給会社を通さず、自力で全国に届けるということをまず、デビュー作で1回やっている人なんですけど、その2人と僕3人で、映画上映の話をいろいろしようと思ってます。2本目の『ニュー・シネマ・パラダイス』の後は、女優の片桐はいりさんをお招きして、僕と順也で片桐さんを質問責めにしようと。彼女もすごくいろんな豊かな映画体験をされている人で、本当に昭和の映画館事情をいろいろ知っている人から、ヒントになるようなお話もいろいろ聞いた上で、未来につながるような映画館のお話ができればと思っています。昨日からPeatixで先行発売ももうしているので、気になった方はぜひそちらをチェックしていただけると嬉しいなと思います。という感じで、ちょうど10時過ぎということで、みなさん、1時間お付き合いいただきましてありがとうございます! 手紙社のビールの名前は「ペニー・レイン」という名前になりそうです。こちらも楽しみに待っていましょう。ということで、今月のキノ・イグルーの「ニューシネマ・ワンダーランド」は、これをもって終わりたいと思います。みなさん遅い時間までありがとうございました!
渡辺:ありがとうございました!


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選者:キノ・イグルー(Kino Iglu)
体験としての映画の楽しさを伝え続けている、有坂塁さんと渡辺順也さんによるユニット。東京を拠点に、もみじ市での「テントえいがかん」をはじめ全国各地のカフェ、雑貨屋、書店、パン屋、美術館など様々な空間で、世界各国の映画を上映。その活動で、新しい“映画”と“人”との出会いを量産中。

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キノ・イグルーイベント(@kinoiglu2003
有坂 塁(@kinoiglu)/渡辺順也(@kinoiglu_junyawatanabe