
あなたの人生をきっと豊かにする手紙社リスト。今回のテーマは、「あのチームの素晴らしさを思い知った映画」です。その“観るべき10本”を選ぶのは、マニアじゃなくても「映画ってなんて素晴らしいんだ!」な世界に導いてくれるキノ・イグルーの有坂塁さん(以下・有坂)と渡辺順也さん(以下・渡辺)。今月もお互い何を選んだか内緒にしたまま、5本ずつ交互に発表しました! 相手がどんな作品を選んでくるのかお互いに予想しつつ、相手の選んだ映画を受けて紹介する作品を変えたりと、ライブ感も見どころのひとつです。
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お時間の許す方は、ぜひ、このYouTubeから今回の10選を発表したキノ・イグルーのライブ「ニューシネマ・ワンダーランド」をご視聴ください! このページは本編の内容から書き起こしています。
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−−−乾杯のあと、恒例のジャンケンで先攻・後攻が決定。今月は有坂さんが勝利し、先攻を選択。それでは、クラフトビールを片手に、大好きな映画について語り合う、幸せな1時間のスタートです。
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有坂セレクト1.『アンジェントルメン』
監督/ガイ・リッチー,2024年,アメリカ、イギリス,120分
渡辺:ああ!
有坂:実は、僕、さっき観てきました。新宿の「バルト9」で。
渡辺:取って出しですね。
有坂:そう。ほんと数時間前に観たばっかり。全然、今日のテーマと『アンジェントルメン』の内容がリンクしてるってことは知らずに観て、始まった瞬間「うわ、観るべくして出会ったな」っていうような映画です。これは監督が、『スナッチ』とか、『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』、『シャーロック・ホームズ』のガイ・リッチー。マドンナの元旦那。そのガイ・リッチーの初期の群像劇というか、集団劇みたいなものの良さが出ている映画なんですけど、設定は第二次世界大戦中のイギリスで、「チャーチルのもとで、実はこんなことが起こっていた」っていう実話の映画化です。これが、無許可、無認可、非公式に結成された特殊部隊が主人公。なので、一人の主人公というよりは、この特殊部隊が一つのチームとして描かれている、言ってみたら、スパイアクションになっています。これが実は、チャーチルが音頭をとっているものの、もうけっこう追い込まれている中で、政府全員許可を取って、いわゆる正規のルートでやるには時間もないし、もうナチスの手もどんどん来ていて、今すぐスピード感を持ってなんとかしないとっていう状況で、要はもう政府は助けてくれないし、捕まってしまえばナチスにもう拷問されて死が待っている。それでも、イギリスのために戦ってくれる奴らを集めるっていうところで、もう本当に、訳ありの強者の男たちが集結させられて、これはナチスに立ち向かっていくっていうようなアクション映画となっています。これは主人公が一応一人いて、イアン・フレミングっていう役名なんですよ。イアン・フレミングって、『007』の原作者です。この実話の映画化ということで、実際に実在した主人公が後の『007』のモデルになっているという意味でも、スパイアクション好きにとっては必ず観ないといけないような一作となっています。本当にさっき観てきたばっかりで、まだ余韻もすごいんだけど、なんかね、ちょっと前に公開されたジェイソン・ステイサムの『ビーキーパー』と同じ感想で、やっぱりね、無敵って楽しいんだよね。映画における主人公が無敵すぎるみたいな。もちろん、相手の悪役が強ければ強いほど、そこにドラマが生まれてっていう面白さもあるんですけど、一方で「こいつら絶対死なないな」みたいな。こっちのストレスを全部発散させてくれるような、わりと無敵なチームの話でした。これ、設定としては、タランティーノが作った『イングロリアス・バスターズ』、いわゆるナチス撲滅に向かう特命を受けた、ならず者たちが集められてというところまで設定も一緒です。だけど、やっぱりタランティーノのほうは、どっちもバイオレンスではあるけど、暴力に痛みがある。なんかずっしり重いみたいな。だけど、『アンジェントルメン』のほうは、もっとエンタメ系に振り切っていて、スカッと楽しめるみたいなところがちゃんとフレームになっているので、こっちのほうがたぶん楽しんでもらえる人のレンジは広いなと思いました。二本立てで観るとまたね、それぞれの監督の個性とかも浮き彫りになって面白いかなと思うんですけど、エンタメ要素が強いのって、この監督のガイ・リッチーの個性もあるけど、プロデューサーがジェリー・ブラッカイマーっていって、聞いたことない人でも、彼が手がけたプロデュース作、知っていると思います。例えば、『アルマゲドン』、『パール・ハーバー』、『パイレーツ・オブ・カリビアン』、『トップガン マーヴェリック』ということで、ブラッカイマーというとブロックバスター映画の王様みたいな人で、どれだけ映画の中で爆破をさせるかっていうところが、ブラッカイマー好きにとってはたまらないポイントで、今回すごかったよね。
渡辺:そうだね。
有坂:バンバン! 何が爆破したかまでは言いませんけど、とにかくそういった意味で、アクション映画にスカッとできるタイプの人にとっては、ぜひ観てほしいなと思う作品だし、やっぱりチームで、一人では戦えないわけです。みんなそれぞれ訳ありの個性派がチームとしてまとまった結果、これは戦争の流れを変えていく、大きなきっかけになった出来事となっています。
渡辺:この中でさ、ムキムキのスウェーデン人のあいつが弓矢でね、バシバシやっていて、みんな銃撃戦の中で一人だけ弓矢使っていてね。
有坂:弓矢とナイフでね。
渡辺:それで、めちゃくちゃ強い! それが面白かったな。
有坂:どこまでが、実話がベースになっているのかっていうのは、ちょっと調べたいなって思ったし、ただ、その物語としてはね、本当に起こったこと。あまりにもエンタメ感が強すぎて、「これ実話の映画化って、嘘でしょっ?」て思いたくなるぐらい、事実は小説よりも奇なりの映画かもしれないので、ぜひこれは劇場で観たほうが楽しい映画なので、間に合う方はぜひ劇場で観てみてください。
渡辺:なるほどね。取って出しで来ましたね。
有坂:これ、入れる予定だった?
渡辺:いや、大丈夫。
渡辺:それを受けて、僕もこれをいきたいと思います。このはみ出し者チームということで。
渡辺セレクト1.『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』
監督/ジェームズ・ガン,2014年,アメリカ,121分
有坂:最高!
渡辺:これは3作品あるので、全部、3作品をひっくるめてシリーズとしてかなと思っているんですけど。これはですね、マーベルなんですね。なので、マーベルでチーム戦って言ったらもう『アベンジャーズ』でしょっていうとこなんですけど、アベンジャーズはもう全員4番バッターみたいな中で、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』っていうのは、全員はみ出し者で爆ヤバキャラが詰まった作品です。もともと原作も超マイナーで、これをマーベルが映画化するっていうときに、「そのネタで大丈夫ですか?」って言われたほどの弱い作品だったんですけど、これがね、めちゃくちゃ面白くて大人気シリーズになって、その監督が、ジェームズ・ガンなんですね。ジェームズ・ガンはこれで一躍有名にはなったんですけど、彼の特徴として、持たざる者を主人公にするっていうのが、その作家性としてあります。やっぱり、この『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』というのも、マーベル・コミックの中でもアメリカ人でさえ、「そんな漫画あったっけ?」っていう、超マイナーだったものを映画化したんですけど、それぞれのキャラクターがみんな個性的で、どこか欠けていて、すごく愛おしくて、悪者なんだけどなんか愛おしいみたいな。そういうチームで、ならず者とか、はみ出し者の集団なんだけど、このチームの中ではお互いがお互いをリスペクトしていたりして、そういう4番打者ではないんだけど、みんな補欠なんだけど、それでもお互いをリスペクトしていて、お互いの持ち味を出し合いながら、チームとしてなんとか生き延びるみたいなですね。大勝ちしないんですけど、なんとか小さい勝ちで逃げ切るみたいな。そういう主人公たちになってます。なんかね、チームのリーダーが唯一人間で、あとみんな宇宙人で、肌が緑色だったり、アライグマだったり、「グルー」としか言わないちっちゃい宇宙人だったりとかっていう不思議なチームなんですけど。マーベルのいろんな『アベンジャーズ』とか、『スパイダーマン』とかありますけど、僕はダントツで一番これが好きなんですよね。なんか、このジェームズ・ガンの持たざるものを主人公にして、なんかこう面白おかしい展開をつくってくれるっていう、それで、ちゃんとアクションがあって、そういう世界観がすごい好きなんですけど、なんかこれ1、2、3とあって、3が完結編なんですけど、あの普通に観ていて面白いアクション作品なんですけど、だんだんなんかそれぞれのキャラクターの生い立ちとかがわかってきて。3なんかは、あのアライグマのロケットが主人公なんですけど、なんで、そもそもアライグマなのかみたいなところまで深掘りして、しかも、それがけっこう泣けるストーリーだったみたいなところがあって、感動も待っているっていう。1、2、3とみんな面白いんですけど、本当に3で、本当に燃えるっていう感じになる。あのマーベルが苦手っていう人でも、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』が好きっていう人はいるので、なんかこの辺のシリーズが苦手で、観ていないって人も入るんだったらもう『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』がおすすめです。
有坂:なんか、キャラクターが愛おしいんだよね。順也、さっき4番バッターって言ったけど、なんかやっぱり4番バッターのスーパーヒーローが活躍するっていう時代じゃないじゃん。なんかやっぱり、そのなんだろう、自分の個性はあるけど、誰かがこうなんか悩んでいたりしたら手を伸ばして助けてっていうような、なんかそういう時代の空気の中にすごいハマっているなと思うんだよね。だから、まあアベンジャーズも面白いけど、なんかやっぱり派手に見えて、やっぱり、そういうものが好きな人にしかヒットしないけど、逆に『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』は、もうちょっと例えば「ヒューマンドラマとかが好き」みたいな人にも響くし、しかも、サントラがいいんだよね。
渡辺:そう、そうなのよ。
有坂:これ、10CCとか、ジャクソン5とか含めて、けっこう幅広い音楽にもすごいこだわってる映画なので、割とカルチャー寄りの人からも支持されるような。
渡辺:そうなんですよね。で、ジェームズ・ガンが、これマーベルってディズニーなんですけど、一回ディズニーをクビになって、ライバルDC(コミック)に誘われて作った映画が『ザ・スーサイド・スクワッド』っていう、これもまた雑魚キャラばっかりを集めたっていうのが、本当に得意な人なんですけど、ジェームズ・ガンが、新作を今年出します。それが、なんとDCの『スーパーマン』。
有坂:そうなんだ!
渡辺:一気に観る気になったでしょ。
有坂:なったなった!
渡辺:あの4番バッターをやるんだっていう、だから、どう描くのかっていうね。
有坂:雑魚キャラなんじゃない(笑)。スーパーマンと言いながら。
渡辺:そうなんですよ。だから、ジェームズ・ガンくくりで観ても面白い!『スーパーマン』も期待だなと思います。はい。
有坂:つなげたねー。わかりました。じゃあ、そんな『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』とは対照的な、1989年のフィンランド映画を紹介したいと思います。
有坂セレクト2.『レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ』
監督/アキ・カウリスマキ,1989年,フィンランド、スウェーデン,78分
渡辺:なるほど!
有坂:これはもうチーム、どんなチームかといったら、これはもうロックバンドです。日本のバンドで「氣志團」っていますね。好きな人も多いと思います。
渡辺:リーゼントのね。
有坂:この前も、フジテレビのポカポカに「GLAY」のHISASHIと出ていました。その「氣志團」をイメージするときに、やっぱりリーゼントの髪型を連想すると思いますけど、『レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ』のバンドは、みんなこれです。リーゼントなんですね。で、サングラスにリーゼント。しかも、この写真だと見えてないんですけど、ブーツもとんがりブーツなので、頭も靴もリーゼントっていうバンドが、バンドとその悪徳マネージャーが主人公のロードムービーとなっています。これが最果ての地って言われているツンドラで活動をしている、もともとは民族音楽のバンドなんですよ。で、このマネージャーの手前で毛皮を着ているマッティ・ペロンパー演じるウラジミールっていう人が、本当にもう金にしか目がないような人で、このまま行くとやっぱりもう泣かず飛ばずなので、「じゃあニューヨークに行くぞ」ってことで、行ったものの、やっぱりもうエージェントの評価をなかなか得られない。で、たまたまそのエージェント、知り合いのエージェントのいとこの結婚式がメキシコであるから、そこで演奏してくれって言われて、なんかちょっと不本意ながらもメキシコの結婚式に中古車買って、みんなで車に乗ってメキシコに旅をして、途中のバーとか、クラブとかにも寄って演奏するんですけど、そのメキシコまでの道のりでいろんな音楽と出会って、アメリカ各地の音楽を取り込んでいって、ロックンロールバンドになっていくっていう。これだけ話すと、すごいドラマチックなドラマを連想するかもしれないんですけど、実際はね、ストーリー展開もほぼないし、会話も少ないし、淡々とした内容なんです。でも、そのバランスがこの映画の面白いところだと思います。割と映画全体が淡々としているんですけど、合間合間に入るライブシーン、そこはね、しっかり観せてくれる。なので、自分もバーで一緒にライブを観ているような雰囲気になってるんで、どんどんこのバンドに感情が入っていく。しかも、何だろう、「こんな騙され方しちゃうんだ?」っていうのを見ていくと、どんどんバンド自体も愛おしくなってきて、最後どうなるかっていうと、もちろん言わないですけど、ちゃんといいオチもあります。この淡々とした流れでいったらオチがなさそうだなって思うんですけど、ちゃんと小さなオチも待っていますので。ぜひロードムービー好きとか、音楽映画好きとか、ジム・ジャームッシュが出演していたりします。なんで、そういうニューヨークのインディーズとか、その辺が好きな人には、ぜひ観てほしいなと思います。
渡辺:リーゼントもブーツも尋常じゃない長さで、その時点でコメディだなっていうね(笑)。よく歩けるなっていうぐらいの、1mぐらいとんがっているので。
有坂:しかも、これ映画のためのバンドじゃないじゃん。実在するバンドなんですよ。それをカウリスマキが、バンドを主人公にしてつくったコメディ映画なんですけど。これはかつてね、代官山のライブハウスの「晴れたら空に豆まいて」で爆音上映したことがあるね。
渡辺:よくやったよね(笑)。
有坂:そうそう、やりました。ぜひ、なんかねこれ、犬とかね、赤ちゃんとかもねリーゼントで登場します(笑)。お楽しみに!
渡辺:なるほど。じゃあ続けて、僕の2本目はヨーロッパの映画をいきたいと思います。1965年のイタリア映画です。
渡辺セレクト2.『黄金の七人』
監督/マルコ・ヴィカリオ,1965年,イタリア,91分
有坂:うんうん、なるほど。
渡辺:実は、今ちょうどリバイバル上映で観てきたばかりで、久しぶりに見直したら面白かったですね。『黄金の七人』っていうのは、なんて言うんでしょう、『オーシャンズ11』みたいな話です。ざっくり言うと、泥棒チームの話で、教授と呼ばれる頭脳派の計画を立てる人と、6人のメンバーたち。あとプラス謎の美女、という組み合わせの泥棒チーム。それが、最先端の金庫に収められている黄金の金塊を盗み出せるのかというお話になっています。けっこうコミカルだし、60年代のレトロな感じだし、すごいファッションだったりとか、見せ方とかもデザインとかめちゃくちゃおしゃれで。なので、昔90年代にヌーヴェル・ヴァーグとか、その辺のリバイバルブームがあったんですけど、そのときに紹介されているようなわりとおしゃれ文脈で紹介されていたような作品です。今観ると、めちゃくちゃ最先端機具みたいに使っているのが、おもちゃにしか見えないくらいの感じではあるんですけど、でも、やっぱりファッションとかがすごくおしゃれです。なんか、ルパン三世みたいな、そういうテイストなんですよね。工事車両のフリをして穴を開けて、金庫の地下に穴を掘っていくみたいな、そういう展開だったりとか、車を全部塗装して工事車両に見せかけてみたいな。それが終わると、全部色がはげて元の車に戻るみたいなところだったりとか、なんか本当にルパンっぽい展開だし、音楽とかもすごい良かったりするので、なんかシリアスなサスペンスみたいなものとは全然違う、コミカルな犯罪アクションっていう感じの作品です。作品としてもすごい観やすいし、なかなか、今どき知られていない作品だとは思うんですけど。
有坂:ちょうどやっているんだね。
渡辺:でもね、「日本最終上映」って書いてあったので、もう権利が切れちゃうと思うんですけど。
有坂:どこの劇場で見たの?
渡辺:シネマートでやっていました。
有坂:これ続編も2作ぐらいあるんだよね?
渡辺:そう。
有坂:『続・黄金の七人/レインボー作戦』とか。
渡辺:続編と2つやっていた。
有坂:あ、2つやってんだ。
渡辺:でも、もうそろそろ終わっちゃうんじゃないかな。
有坂:ねえ、でも、これはもう90年代の渋谷系の象徴的な映画だし、なんでそれが象徴的かっていうと、この前回のニューシネマ・ワンダーランドで、『予備校ブギ』を紹介したじゃん、ドラマの。あの『予備校ブギ』の主題歌でもあるフリッパーズ・ギターの「恋とマシンガン」のもうめちゃくちゃ有名なフレーズは、この映画のテーマ曲からサンプリングしてるんですよ。だから、もうフリッパーズ好きは、漏れなく『黄金の七人』を観ている。だから、それぐらいバンドの力が、昔の映画を観させるというところにまで影響がある。懐かしい。スパイ枠だね。スパイっていうか、犯罪組織枠。じゃあ、折り返し。僕の3本目にいきたいと思います。2022年の日本映画。
有坂セレクト3.『ハケンアニメ!』
監督/吉野耕平,2022年,日本,128分
渡辺:なるほどね!
有坂:これはどういうチームかって言ったら、仕事の仲間の話かなと思います。これは吉岡里帆さんと、天才役、中村倫也……水トちゃんの旦那の中村倫也がアニメ監督。アニメ界で覇権を取るために、天才監督と言われる中村倫也演じる監督と、吉岡里帆はもともと地方の公務員だったところからアニメ業界に飛び込んだ新人監督。
渡辺:プロデューサー?
有坂:監督、プロデューサーは柄本佑。
渡辺:柄本佑か。
有坂:柄本佑はプロデューサーで、監督で吉岡里帆。この吉岡里帆と中村倫也が戦う。覇権を取り合うっていう、一応そういう大枠があって、これが、「天才監督に勝てるわけないじゃん」って思うんですけど、天才監督はいわゆる新人監督として出てきて、いきなりそれが大ヒットして、ものすごい人が出てきた、けど、その後なかなか続かず、これを機にっていうやっぱり思いがあり、新人監督は、もうその自分から見たらもう歯が立たないような人に、もう全力で向かっていっても勝てるかわからない。けど、みたいな熱い思いを持った新人監督。で、やっぱりこの天才監督 VS 新人監督っていうと一対一の対決に見えるんですけど、やっぱりアニメをつくるっていうのは、個人ではこういう規模のアニメというのはできないわけで、そこにプロデューサーとか、制作進行とか、宣伝の人とか、脚本家とか、作画チームとか、CGチームとか、あと声優とか、もうチームでないとやっぱり一つのものをつくれない、と。だから、監督がいくらこういうものをつくりたいって言っても、それが叶わない場合もあったり、監督の我を通すことが答えじゃなかったりすることもある。本当にチームで一つのものをつくるっていうところまで、しっかり描けているところが、この『ハケンアニメ!』の面白いところなので、アニメ好きじゃなくても本当にお仕事ムービーとしてすごく楽しめる。けっこう胸アツなお仕事ムービーとして、見応えのある。
渡辺:そう、お仕事ものとして面白いよね。
有坂:しかも、この映画のすごいところは、結果的にどっちが面白いアニメをつくったかがゴールになるので、その劇中にも出てくるわけですよ、つくったアニメが。そこのクオリティが低かったら作品として成立しないんですけど、それをやっぱりアニメ、本格的なアニメをつくるために、なんかね、やっぱりアニメの業界ってさ、ずーっとフル回転でさ、フル稼働で回っていて、なかなかそのちょっとした仕事を振れないような実情があるらしくて、結局でもそこを妥協したくないから、7年かけて東映アニメーションとあとProduction I.Gっていうところにお願いして、その一作品ずつをつくってもらったんですよ。で、これ、あの一応原作もので、これは、原作者がアニメで辻村深月か。原作で書いている分には、アニメを再現しなくてもいいけど、映画にした途端、アニメにしなきゃいけないわけですね。で、じゃあ、それをどうしよう、けっこう大変、難題だなってなったときに、知り合いの人にいろいろ相談していったら、やっぱりアニメの冒頭部分とラストの部分は劇中で紹介されるじゃん。それは取って付けたように、オープニングとエンディングだけつくっても、そんなのは多分、アニメファンにはバレちゃうから、しっかり12話の話をつくってからやったほうがいいですよって言われたらしい。じゃあ、もう、辻村深月はもう覚悟を決めて、劇中では描かれない12話をちゃんと書いて、それをもとにアニメーション化している。だから、すごく劇中で紹介されるアニメのクオリティも高いし、ドラマとしてもさっき話したような、会社勤めしてる人とか、本当に組織に属してる人ならではの共感性みたいな高い映画でもあるので、意外とこのビジュアルで観なくていいかなって思われがちな作品なんだけど、観てみたらグッとくる。
渡辺:そうね。本当に面白いからね。
有坂:面白いんだよね。胸アツ映画となっていて。
渡辺:観やすいしね。
有坂:そうだね。難易度は難しくないし、テンポもいいしね。
渡辺:アニメ知らなくても、まったく関係ないからね。
有坂:そうだね。もっと観てほしいなって思うタイプの映画です。
渡辺:じゃあ、僕も、3本目、日本映画をいきたいと思います。
渡辺セレクト3.『新幹線大爆破』
監督/樋口真嗣,2025年,日本,134分
有坂:ははは、これ観たばっかり?
渡辺:そう、昨日観たばっかりで、しかも、昨日配信開始なんですよ。主演が草薙剛さんで、監督が『シン・ゴジラ』の樋口真嗣監督です。これもともと1975年につくられている作品があって、それが元ではあるんですけど、それの現代版ということでつくられたのが、Netflixのオリジナルとしてつくられた、この『新幹線大爆破』なんですけど。ストーリーはわりとシンプルで、新幹線に爆弾が仕掛けられて、さあ大変というお話です。どうするんだみたいなところなんですけど、もともとの1975年版と一番違うところは、犯人が誰かわからないというところなんですね。1975年版は、わりと犯人がしっかりいて、むしろ犯人が主役なんですね。高倉健が主人公で、高倉健が犯人なんですね。で、わりとなぜそういう犯行に及んだかみたいな背景まで、ドラマとしてしっかり描かれているんですけど、このNetflix版は、そこが誰かわからないっていう、そういうつくりになっていたので、そこが大きな違いだなと思います。ただ、犯人が誰かわからない、テロリストに新幹線に爆弾を仕掛けられて、乗客を助けなきゃいけないという、車掌の草薙剛が主人公なんですけど、草薙剛だけではなくて、運転手が“のん”なんですけど、あとは司令官みたいなところがあって、そのJRの路線を全部管理している人たちが、これ100キロ以下になると爆発するっていう、そういう設定なんですね。
有坂:『スピード』と一緒だね。
渡辺:『スピード』の元ネタなんですね。もともと75年版の作品が『スピード』の元ネタって言われていて、だから止まることはできない。だから、本来止まるはずの駅を通過しなきゃいけないし、前の車両に追いついちゃうから、線路を微妙に変えながら止まらないようにしなきゃいけないっていう。そういう操作を司令室がしながらやっていくっていう、そういうチーム戦になるんですね。その司令官が斎藤工だったりするんですけど。犯人を追う警察がいたりとか、あとはとんでもない身のしろ金を要求されるので、政府に官僚が来るみたいなところのチーム戦で、乗客をどうやって逃がすのか、どうやって犯人を捕まえるのか、どうやって爆弾処理するのか、っていうところを、この時間のない中でやっていかなきゃいけない。そういうサスペンスになっていて、すごい面白い、ちゃんとしたつくりになっていました。監督が、『シン・ゴジラ』の樋口真嗣監督なので、『シン・ゴジラ』を観た人だとわかると思うんですけど、あれもゴジラっていう想定外の存在が出たことで、チームジャパンで何とかするっていう話だったんですけど、そんな展開になってたので、そこがちょっと樋口さんっぽい。樋口監督っぽい。CGもゴリゴリ使いながら爆破シーンとか、すごいそういった迫力あるシーンがありつつ、こうチーム新幹線みたいな感じで、このテロに立ち向かうっていう。そういうチーム戦になってくるので、そこがね、けっこうチーム戦として面白くなっているところになっていました。本当に、まさに昨日配信が開始されたばっかりで、まだ観ている人は少ないと思うんですけど、けっこう面白いつくりになっていましたので、Netflix入っている方じゃないと観られないんですけど、入ってる方はぜひ。
有坂:134分。
渡辺:そうね。
有坂:オリジナルのほうが長いよね。
渡辺:長い。2時間半あるので。
有坂:なんかでも、そのオリジナルとの違いは、なんか時代の違いな感じがするね。その内面に迫るんじゃなくて、もう、その内面に迫ってじっくり見せていたら、多分みんなチャンネルを変えちゃう。逆に犯人は誰だとか、そのスリルとかね、ハラハラするほうにもっていく展開っていうのは、すごく面白い。現代版アップデートがうまいね。樋口さんさすが! 昨日インスタに挙げていたね、順也。早速来たか。
渡辺:取って出しで。
有坂:負けず嫌いだよね(笑)。じゃあ、僕の4本目いきます。なんか、このチーム戦テーマで考えたときに、やっぱりアメリカ映画が多いなと思って、ヨーロッパ映画になかなかチーム戦の面白いものがなくて、特にフランス。やっぱ個人主義の国だからなのか、ないなって思ってたんですけど、一本ありました。2005年の作品です。
有坂セレクト4.『サン・ジャックへの道』
監督/コリーヌ・セロー,2005年,フランス,112分
渡辺:なるほど!
有坂:これはどういうチームかっていうと、旅仲間です。これは、主人公3人の兄弟なんですけど、親が亡くなって、特に仲も良くない3人が、亡くなったタイミングで集められて、そこで弁護士から言われたのが「遺産があります」と。ただ、遺産を相続する条件として、いわゆる聖地サンティアゴまでの巡礼路を一緒に歩きなさいと、それを果たさないとあなたたちに遺産は入りませんという設定のロードムービーとなっています。もともと仲も悪いし、無神論者だから、全然お金のことがなければそんなことしないような兄弟が、ただお金に目が眩んではいるものの、それでも、この旅に参加することで、だんだん仲間。この兄弟だけじゃなくて、他にもこの写真にいるように、その旅仲間がいるんですね。みんなで旅をしていくんですけど、やっぱりそれぞれ訳ありだったりとか、個性の違いだったりとか、その自分一人では生きれらない。みんなで運命共同体で旅をするっていう中で、だんだん自分の内面が変わっていくという、けっこうそういう意味では、こんなダメな人たちもこれだけ成長できるんだなっていうことが、表現されているロードムービーとなっています。なんか、こういいなと思ったのは、やっぱりそれぞれの兄弟が、本当にこの人たちダメな人たちなんだなっていうのが、またちゃんと描かれている。本当に途中まではいやいやな旅だったんだけど、歩いていくうちに、だんだん自分がかつてなくしてしまったものを、前向きに、そういうものと向き合おうとしていく。それは、やっぱり都会でじっとしているだけでは、人はそういうふうには変われないんだけど、やっぱり自分の体を使って、大自然の中、誰かとともに歩いていく。その時間があるからこそ、初めて自分に改めて矢印を向けて、本当の自分の持ってる良さとか、個性とか、弱さみたいなことと向き合える。それは一人だけではなくて、旅を共にしている仲間たちそれぞれが、そういう思いを抱えたまま、1,500キロの旅なんで、相当きついんですよ。で、だんだんそのチームに一体感が生まれていく。そういう意味では、旅とともに一体感が生まれていくっていう設定は、すごくアメリカ映画とか、フランス映画にはあんまりないんですけど、やっぱりフランス人の個人主義的なところも描かれつつ、そういう人もやっぱりこう旅を共にすると、一つになっていくんだなっていうことを、丁寧描いているのと、あともうね、風景が圧倒的に素晴らしいです。これはもう自分も旅をしているような気分になれるような映画で、最後はちょっと泣けたりするんですよね。
渡辺:これは面白い。
有坂:これ、2000年代の名作の一本だなって思っているんだけど、多分、今配信で観られないよね。
渡辺:配信もない。
有坂:そう、今はちょっと観られないんですけど、ただその作品のクオリティとしては間違いないし、多分、こういう閉塞感のある時代で、改めて求められるような映画かなと思う。ぜひ、ちょっとタイトルを覚えておいてもらってね。
渡辺:遺産のために、嫌々集まるっていう設定がいいよね。
有坂:そういう設定でさ、『スクール・オブ・ロック』もそうじゃん。ジャック・ブラックがお金欲しさに、だいたい不純な動機から始まる映画は感動するんですよ。それがね、なんかフランス映画であるっていうのも面白いかなと思います。けっこうコミカルでもあるんで、観やすい映画です。
渡辺:そうだね。では、僕の4本目、それを受けてフランス映画でいきたいと思います。
有坂:おっ、あった?
渡辺:ありました。2011年のフランス映画です。
渡辺セレクト4.『最強のふたり』
監督/エリック・トレダノ, オリヴィエ・ナカシュ,2011年,フランス,113分
有坂:あー!
渡辺:チームの最小単位として2人です。この『最強のふたり』はどういう話かというと、下半身付随になってしまった大富豪がいるんですけど、その大富豪が、自分を介護する人を採用するんですけど、いろんな面接をした中にいたのが、スラム街出身の黒人男性なんですね。その面接のときからみんなは、他の人たちは「自分は障害者の手助けになりたいんです」とか、そういう感じでみんな採用に申し込んでくるんですけど、この黒人だけ「俺すぐクビにしてくれ」みたいな。失業手当が欲しいだけだからみたいな。そしたら「お前採用」みたいになるっていう。やっぱり大富豪なんで、全員が自分の言うことを聞く。みんなが忖度をして、自分のいいようにしてくれるっていう。そういう環境にいる大富豪にとって、まっすぐに物を言ってくる黒人青年というのが、すごい新鮮に映ったんですね。実際、仕事をスタートするんですけど、もう明らかに向いてないというか、人を世話するのに向いてない人なんですよね。でも、それでも最初はぶつかりながら、だんだん心を通わせていくところがあったりとか、黒人青年としてもスタンスとしては全然変わらないですね。ぶっきらぼうだし、自分の思ったことを言うという。で、なんかこう車椅子なので、それとこう、かけっこしてお前遅いなとか普通に言ってくるとか。下半身付随だから動かないのに、こういう雪合戦して、お前も投げ返して来いよとか。ただそれが、大富豪にとっては忖度なしに、彼だけは自分のことを平等に扱ってくれる。そういう存在としてどんどん心を通わせていくっていう。そういう最後にはめちゃくちゃ感動するヒューマンドラマになってます。これは本当に分かりやすくいい映画なので、本当に映画ビギナーの人も、この辺から入っていったら「映画って面白いな、映画って感動する」って思ってもらえるような、本当にいい作品です。こういうね、凸凹のチームみたいなのもいいなと思うので、これね観たことがない人がまだいれば、ぜひ観たらもう間違いない名作なので、観ていただけたらと思います。
有坂:これもなんかあれだね、フランス映画っぽくないって形容されてたよね。
渡辺:うん、そうね。
有坂:公開されたときにね。
渡辺:エンタメっぽい。
有坂:そうそう、でももうね、フランスっぽいとか、アメリカっぽいっていうのもなくなってきた時代の中で生まれた、2011年。
渡辺:もう10年以上前。
有坂:14年前。はい、じゃあ、そんな爽やかな感動作を紹介されちゃうと、5本目紹介しづらいんですけど、じゃあ、僕のラストは2007年のアメリカ映画です。
有坂セレクト5.『デスプルーフ in グラインドハウス』
監督/クエンティン・タランティーノ,2007年,アメリカ,113分
渡辺:はははは。ええー。
有坂:はい、これはチームで言うと、女友達。
渡辺:そうですね。
有坂:最高の女友達チームが主人公の作品です。これは僕の1本目で紹介した、あの『アンジェントルメン』のガイ・リッチーのときに、タランティーノの『イングロリアス・バスターズ』っていいましたけど、そのクエンティン・タランティーノの2007年の作品です。これは一言でいうと、カーアクションです。あの、すごくなんかセクシーな美女たちで、美女軍団vs殺人鬼みたいな、本当にこの時代らしかぬ、めちゃくちゃシンプルな設定の一見B級っぽいアクション映画なんですけど、これがねぇ、傑作なんですよ。大好きな映画で、本当に好き。これ劇場に何回も観にいったもん。これ、一応セクシー美女軍団と殺人鬼って言いましたけど、要は女友達で、みんなでドライブしてイエーイって盛り上がっていたら、その車のドライブしている後ろから、ボンネットにドクロのマークがついたやばい車が急接近してきて、というところから始まるんですね。途中から、バンバンバンバン、後ろから追突されて大変な目にあって。で、それから数年後みたいに、一応二部構成みたいになっていて、その二部構成のほうで主人公になるのが、ゾーイ・ベルっていう、この映画の主人公の一人なんですけど、彼女を中心にした、その第2部に出てくる女友達のチームが、本当にね、映画史上一番気持ち悪いかもしれないっていう悪役。このカート・ラッセル演じるスタントマン・マイクっていう悪役がいるんですけど、それとめちゃくちゃバトルするんですよ。この映画のいいところっていうのは、カーアクションなんですけど、そのCGでまずやっていない。その第2部の主人公がゾーイ・ベルって言いましたけど、彼女は、実は女優さんではなくて、スタントウーマンなんです。『キル・ビル』っていう映画でタランティーノが、ユマ・サーマンの役のスタントを任せたのが、このゾーイ・ベル。だから、もうその女優さんに怪我があってはならないということで、そういう派手なアクションはゾーイ・ベルに任せてやっていた。ところが、このゾーイ・ベルっていう人のアクションが素晴らしすぎて、今度はタランティーノが、この人を主人公に映画を撮りたいということでつくられた映画が、『デスプルーフ』となってます。なので、このボンネットにしがみついて振り落とされそうになるんだけど、なんとか自分の腕力だけでしがみついてみたいな、そういうスタントウーマンとして最大の見どころも本人が演じてます。これ、ゾーイ・ベルが言ってたんだけど、スタントの人は基本影の存在だから脚光を浴びなくていいって普段思っていると、別に映画スターになりたいわけじゃないし、私って。だけど、スタントマンとかは基本顔が映っちゃいけない。だから、自分が最高のアクションができたと思っても、顔が映った時点でそれは使われないと。それは、監督とかつくり手に申し訳ないって思っちゃうらしいのね。
この『デスプルーフ』でも、ボンネットにしがみついてアクションしているときに、自分の顔が映っているって映像を見たときに、いつもの癖で「やってしまった!」って思った。だけど、この映画に関してはむしろ顔が映っていたほうがOKなわけで、それをOKってタランティーノから言われたときに、「最高の気分だったわ」って言って。だから、スタントウーマンで、別に映画スターになりたいと思ってたわけじゃないはずが、タランティーノの熱量で女優さんに、スターに駆け上がっていったっていう、なかなか見ないタイプの女優さんでもあります。タランティーノっていうのは、もともとビデオレンタルショップでアルバイトをして誰よりも映画に詳しいという、いわゆる映画オタクがそのまま監督になったみたいな人ですけど、改めてこの『デスプルーフ』で、監督とか俳優さんだけじゃなくて、影の存在って言われていたような、そういうスタントウーマンとかにも脚光を、裏で支えている人へも、同じように愛情を持って接して、そういう目でずっと映画をつくってきた人だからこそ、こういうアイデアでスタントウーマンの人を主人公にしてみようと思ったから、それは本当にタランティーノの笑顔とか優しさだなっていう気もするので、一見派手なカーアクションだけに見えるんですけど、裏ではそういうタランティーノの真っ直ぐな映画愛があったり。あとこの映画のね、絶対に今言えないですけど、ラストが最高! ここで終われっていう。一番、今まで僕が観てきた何千本の映画の中で、最も好きって言えるぐらいのラスト。そこからのエンドロールの音楽も含めて。
渡辺:全然覚えていない(笑)
有坂:ええ! うそー!! 一緒に観に行ったじゃん。何回か観に行っているうちの1回は、一緒に観に行っている。言いたい! 本当にカーチェイス映画としても、ガールズムービーとしても最強すぎる映画だと思うので、そんなタランティーノの伝説的名作をお楽しみください!
渡辺:なるほどね。好きですね。
有坂:大好き!
渡辺:じゃあ、最後に僕の5本目いきたいと思います。僕は、男友達でいきたいと思います。1986年のアメリカ映画です。
渡辺セレクト5.『スタンド・バイ・ミー』
監督/ロブ・ライナー,1986年,アメリカ,89分
有坂:おお! まさかと思ったけど(笑)。
渡辺:王道の中の王道で、これはもう本当に知らない人はいないという名作ですが、やっぱりこの80年代の少年たちが冒険する。この80年代映画、『グーニーズ』『E.T.』とかもそうですけど、本当にその辺が、The 80年代。その代表作かなと思います。これは原作のスティーヴン・キングの本当の幼少期のお話をベースにしているというもので、スティーヴン・キングってホラーの小説家で、『シャイニング』とかいろいろ傑作。
有坂:『ミザリー』とかね。
渡辺:映画化、めちゃくちゃされているんで、たくさんありますけど、たまにホラーじゃないやつがあるんですけど、それが超傑作。
有坂:『ショーシャンクの空に』とかね、『グリーンマイル』とかね。
渡辺:本当に。その一つが『スタンド・バイ・ミー』ですけど、主人公の少年がスティーヴン・キングで、体も弱くて、だけど、仲間と4人で「列車にはねられて行方不明になっている少年の死体を見つけに行こう」っていう、ひと夏の旅の話です。アメリカって、僕もこれで、この映画で知ったんですけど、アメリカって夏で期が変わるんだって。だから、日本の夏休みと違って、アメリカの学生の夏休みって、夏休みが明けると学年が変わっているとか、卒業とかねっていうタイミングなんですよね。だから、夏の旅っていうのは、本当に最後の旅だったりして。
有坂:切ないんだよね。
渡辺:だから、彼らはこの夏が終わると、それぞれ進路だったりとか別々でっていう、そういう4人が集まって。この旅する中で、やっぱりそれぞれの生い立ちが明らかになっていって、みんなそれぞれの過去とか、抱えてるものみたいなのがあって、だから、それゆえ、それぞれまた進路が違うっていうのがあったりするので、そういうのを背負いながら最後のここで思い出をみんなで残す。それが、そういう冒険心みたいなのも子どものときにも惹かれたし、大人になってからもいくらでも泣けるっていうのがね。本当にこの、これは男友達ですけど、そういうチームみたいなものもすごくいいなって。みんなで犬に追いかけられてダッシュで逃げるとか、ヒルに噛まれるとか、ヤンキーに絡まれるとか、それでもなんかこうバカ話しながらとか、タバコ吸ってみたりとかしながら、このなんか男、少年のチーム感みたいなのが本当にいい映画だなと思って、挙げてみました。
このリヴァー・フェニックスも、本当にねこの後のスターになりますけど、この『スタンド・バイ・ミー』のときのね、ちょっとなんかやっぱり悪びれた、大人っぽい不良っぽい感じのリヴァー・フェニックスの魅力ってすごいあって。あと、ちょうど新作映画でやっている『メイデン』というカナダの映画なんですけど、ものすごいミニシアターなので、メジャー映画ではないんですけど、それのキャラクターの一人が、明らかに『スタンド・バイ・ミー』のリヴァー・フェニックスを意識しているっていう。たぶん、監督がすごい好きなんだと思うんですけど、このボーイフットみたいな友情を描くのに、キャラクターとしてこのときのリヴァー・フェニックスっていうのは、たぶんすごい印象にあるんですけど、明らかにそれを意識しているというのは、現代の若手の映画作家にも影響している。そういうぐらい、少年チーム感を代表する作品じゃないかなと思いました。
有坂:間違いないよね。この時代、80年代の映画の特徴って、この映画といえば、この曲っていう主題歌だよね。主題歌とこのシーンっていう、みんながイメージできるようなシーン。『スタンド・バイ・ミー』だと線路をみんなで歩くとか、その一枚のビジュアルと曲だけで永遠に誰かの記憶に焼き付いていくっていうのは、もっと今の時代の映画もあっていいんじゃないかなと思うね。物語は複雑になっているけど、そこを軸につくるだけで、もっと映画って届くんじゃないかなって。『スタンド・バイ・ミー』は、本当に観るたびに思うね。最後、そう来たか。
渡辺:そうです。王道な名作で。
有坂:ここに来て。これからの季節、夏に向けて『スタンド・バイ・ミー』は観てほしいね。
──
有坂:いうことで、5本ずつ出し終わりましたが、いかがだったでしょうか。他にもね、あげたかった映画はいろいろありますけども、今回はこの5本ずつで絞ったので、何をあげてたかなどは言いません(笑)。やめておきます。
有坂:じゃあ、最後に何かお知らせがあれば。。
渡辺:そうですね、僕はフィルマークスのほうでもリバイバル上映企画をやっているんですけど、今度ゴールデンウィーク明けから期間限定なんですけど、やるのが、実はさっき紹介した『新幹線大爆破』の1975年のほうをやります。高倉健主演の。これ1975年なので、50年前の作品なので、なのでCGのない時代に、爆発とかっていうのをやってる。当時の本気アクションです。今の時代だと、全部CGでやってしまうことを、CGのない時代にどうやったか。そういう嘘がないというか、本気アクションみたいなものを今観ると、またそれはそれで面白いんで。このポスタービジュアルがまた激しい。この習字で殴り書きみたいな。昔の東映っていう感じの。東映って、ヤクザ映画が一時期有名で、ヤクザ映画の次のアクション映画をつくるんだって、当時の製作費の破格の製作費でこれをつくったっていう。高倉健も、俺、ヤクザ飽きたって言って、違うのやりたいって言って初めてやったのが、この『新幹線大爆破』になります。これはなかなか、Netflix版のサスペンス重視よりも、ちょっとドラマ要素もけっこうある感じのつくりになっているので、こっちはこっちで面白いです。
有坂:でも、劇場でじっくり観るのはいいよね。
渡辺:家の小さいモニターよりも、劇場がめちゃくちゃ映えるタイプなので、ぜひ、なかなかこんな古い映画を。
有坂:いつから?
渡辺:5月9日ですね。なかなか、こんな古い映画を観ることないと思うので、ぜひこの機会に!
有坂:じゃあ、僕からはキノ・イグルーのイベントで、直近は5月5日、子どもの日に毎年やっている、町田にある薬師池公園四季彩の杜というところで、また今年も野外上映会をやります。今年の映画は、新作も公開間近の『パディントン』の1作目です。日本語吹き替え版で上映しますので、ぜひゴールデンウィークのファミリーで楽しんでもらえる、気持ちのいいイベントになると思います。
渡辺:『パディントン』面白いよね。
有坂:面白いし、可愛いし。これですね。ナイトピクニックシネマという企画になっています。これは予約なしで入場無料となっています。もう一個が、これはちょっとまだリリースしてないんですけど、フライングで発表しちゃうと、5月17日、金・土曜と何年ぶり? 久々に田町ビルの屋上で野外上映会をやります。これが金曜日と土曜日、参加できる人が違って、金曜日は田町ビル、または新田町ビルの入居者限定。こっちはねトム・クルーズの『トップガン マーヴェリック』を星空の下で見ると。これは字幕版で上映します。で、土曜日は誰でも参加ができる。これも予約なしの入場無料のイベントで、土曜日は『シングストリート 未来へのうた』を日本語吹き替え版で上映します。なので、子どもたち、本当に何か好きなものがあるんだけどそれを仕事にできるかなとか、夢を形にしたいって思っている子どもがもしいたら、絶対連れてきてください。そんなまっすぐな子どもたちを主人公にした作品を上映しますので、またこれはホームページ、インスタグラムで情報も出していきますので、そちらでフォローいただければと思います。
渡辺:東京タワーが間近に見えてね。
有坂:そうそう
渡辺:絶景だからね。
有坂:ほんと絶景! 東京のど真ん中みたいな。なかなか田町ってね、勤めていないと行く機会もないと思うので、新たな街を散策するっていう意味でも面白いと思うので、ぜひ遊びに来てください。
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有坂:では、4月のキノ・イグルーのニューシネマワンダーランドはこれをもって終了です。みなさん、遅い時間までどうもありがとうございました!
渡辺:ありがとうございました。おやすみなさい!
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選者:キノ・イグルー(Kino Iglu)
体験としての映画の楽しさを伝え続けている、有坂塁さんと渡辺順也さんによるユニット。東京を拠点に、もみじ市での「テントえいがかん」をはじめ全国各地のカフェ、雑貨屋、書店、パン屋、美術館など様々な空間で、世界各国の映画を上映。その活動で、新しい“映画”と“人”との出会いを量産中。
Instagram
キノ・イグルーイベント(@kinoiglu2003)
有坂 塁(@kinoiglu)/渡辺順也(@kinoiglu_junyawatanabe)