
あなたの人生をきっと豊かにする手紙社リスト。今回からテーマを一新!「このヨーロッパの女優にフォーカスした映画」を切り口に、一人の女優をピックアップし、おすすめの映画を5本ずつ紹介します。その“観るべき10本”を選ぶのは、マニアじゃなくても「映画ってなんて素晴らしいんだ!」な世界に導いてくれるキノ・イグルーの有坂塁さん(以下・有坂)と渡辺順也さん(以下・渡辺)。今月もお互い何を選んだか内緒にしたまま、5本ずつ交互に発表しました!
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お時間の許す方は、ぜひ、このYouTubeから今回の10選を発表したキノ・イグルーのライブ「ニューシネマ・ワンダーランド」をご視聴ください! このページは本編の内容から書き起こしています。
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−−−乾杯のあと、恒例のジャンケンで先攻・後攻が決定。今月は有坂さんが勝利し、先攻を選択。それでは、クラフトビールを片手に、大好きな映画について語り合う、幸せな1時間のスタートです。
有坂:それでは、ジャンケンで勝ったので、僕から始めたいと思います。「このヨーロッパの女優にフォーカスした映画」ということで、僕がフォーカスするのは、フランス映画で活躍したアンナ・カリーナ。順也は?
渡辺:僕は、イギリス女優のケイト・ウィンスレットを紹介します。
有坂:それぞれ、おすすめの作品を5本ずつ、紹介していこうと思います。
有坂:では、早速、僕が紹介するアンナ・カリーナ。フランス映画を中心に活躍した、もう亡くなってしまいましたけども、伝説の女優さんの一人。彼女はフランス人だと思われがちなんですけども、実はデンマークの人です。コペンハーゲンに生まれて、14歳のときにデンマークで、ある短編映画に出演したら、それがカンヌ国際画祭でいきなり賞を獲ってしまう。それをきっかけに、彼女はより本格的に女優として活躍したいということで、フランスのパリに拠点を移すことになります。それが17歳のときなんですけども、その17歳でフランスでスカウトされてモデルとかもやって、いろんなファッション誌とかの仕事もしながら、だんだんいろんな人脈もできてきて、そんなときに、ある大物デザイナーから名前を改名した方がいい。長めの名前だったので、もっと分かりやすい名前がいいということで、アンナ・カリーナという名前をもらいました。その名前を命名してくれた人が、かのココ・シャネルなんです。なので、アンナ・カリーナは女優さんとしてキャリアを築く前に、すでにココ・シャネルから名前をつけてもらった女優という、運命を背負った人としてキャリアをスタートさせました。そんなアンナカリーナの映画でまず1本目、
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有坂セレクト1.『女は女である』
監督/ジャン=リュック・ゴダール,1961年,フランス、イタリア,84分
渡辺:うんうん。
有坂:ジャン=リュック・ゴダールの長編第3作目にあたるミュージカルコメディです。ゴダールというと難解な映画、意味が分からなすぎて、意味分からない映画が全然好きですっていう人も、後期のゴダールの映画を観たら怒り狂う(笑)、そういう人の想像さえも超えていく、本当にもうなんか人を不快にさせるために映画つくっているのかって誤解されがちな、そんな芸術家肌の人です。でも、この彼が、アンナ・カリーナと映画をつくり続けた初期の映画っていうのは、本当に可愛くて、
渡辺:そうなんだよね。
有坂:ポップで、おしゃれで、一応ストーリーラインがちゃんとあるんですよね。なので、わかりやすい作品で、その中でもとびきりキュートな一作が、この『女は女である』です。この映画はやっぱり“くせもの”ゴダールらしく、ミュージカルコメディという映画ながら、主人公が、登場人物が歌わないミュージカルコメディっていうのが売りでした。歌わないっていうのは、これ、実際は歌うシーンがあるんですけど、それまで流れていたメロディーが歌い始める瞬間にプツって切れる。赤ペラみたいな状態で歌う。そういうちょっと変わったつくりのミュージカルコメディなんですけれども、その中でアンナ・カリーナは、アンジェラという役を演じています。一緒に暮らしてる恋人、エミールって恋人がいて、そのエミールとの間に、すぐにでも子どもが欲しい。「なんで子ども、つくってくれないの?」っていうカップルの話なんですね。そこにもう一人、アンナ・カリーナ演じるアンジェラに思いを寄せるアルフレッドという青年が来て、三角関係の物語が始まっていくっていうミュージカルコメディとなってます。これ、今、フィルマークスの画面が映っていますけども、アンナ・カリーナ、可愛いね。これ、書店のシーンですね。この映画の特徴的なところっていうのは、まず色。これは、ゴダールが映画全体の色を赤・青・白っていう、いわゆるトリコロールを基調に画面全体をつくっていくっていうことで、すごく印象的に赤と青と白が使われている。そういうポップな映像が好きな人にとっては、そこも見どころの一つとなっています。特に、アンナ・カリーナ目線での見どころを紹介すると、なんといってもこれはファッションに尽きるかなと思います。例えば、ファーのついた青いドレス、白いステンカラーのコートを着たりとか、タイツは真っ赤な原色のタイツを履いたり、あとは、僕が好きなのは、アンナ・カリーナが赤い丸首のカーディガンを着て、チェックのスカートを履いて、赤いタイツっていう。自分が女子だったら、絶対に冬場、このファッションやりたいなって思う。その赤いセーターに、料理するときは緑のギンガムチェックのエプロンを合わせる。もう本当にファッションショーを観ているかのような、もうめくるめくポップでカラフルなファッションが楽しめるっていうのも、この映画のアンナ・カリーナの見どころの一つかなと思います。この映画は、その年のベルリン国際映画祭で主演女優賞を受賞した。アンナ・カリーナのキャリアでいうと、これは長編2作目で、すでにベルリン国際映画祭で主演女優賞を獲ってしまうということで、華々しくヨーロッパの舞台に踊り出た、きっかけになった1本です。1つだけ補足すると、ゴダールがアンナ・カリーナという女優さんを見つけて、1個前に『小さな兵隊』という映画を作って、その2作目がこの『女は女である』。この間に、2人は結婚をしました。2人の映画会社もつくって、その新しくつくったプロダクションの1作目がこの『女は女である』なので、2人にとってはラブラブ期につくった映画なので、そのもう幸せでしょうがないっていうエネルギーが、なんか映画にも詰まっているところが、なんかこう気難しいゴダールにしてはね、なんか青臭いエピソードでいいなと、個人的には思っている大好きな一本です。ぜひ観てください。
渡辺:初期の頃はね、そうだよね。これね、部屋のインテリアとかね。
有坂:そうインテリアもね。そういうところも素敵なので。
渡辺:なるほど、来ると思いましたね。じゃあ、僕の選んだのは、ケイト・ウィンスレットなんですけど、ケイト・ウィンスレットは、けっこうアメリカ映画中心に出ているので、アメリカ人というイメージがあるかもしれないんですけど、実はイギリス人。けっこう順調にキャリアを重ねてきている女優さんな感じはしますけど、割と大変な生い立ちから始まるという、実は人だったりするんですけど。そういうのは作品と絡めながら、おいおい紹介していければと思います。
そんなケイト・ウィンスレットの作品として一発目は、もちろんこれです。
渡辺セレクト1.『タイタニック』
監督/ジェームズ・キャメロン,1997年,アメリカ,189分
有坂:だよね!
渡辺:みんなご存知、ケイト・ウィンスレットといえば、『タイタニック』かなと思います。1997年の作品で、監督は、ジェームズ・キャメロン。あの大金を使うでおなじみのジェームズ・キャメロンですね。この作品で、ケイト・ウィンスレットはスターダムにのし上がった作品です。もともとイギリス人なんで、イギリス映画に出てきてたんですけど、ハリウッドに行って、それでこの大作のヒロインを勝ち取って、共演者はレオナルド・ディカプリオ。ディカプリオ、やっぱり今のおじさんの感じしか知らない人がもしいたら、90年代のレオ様はやっぱりすごい王子様。今でいうと、ティモシー・シャラメとかがそういうポジションだと思うんですけど。
有坂:そんなもんじゃないんじゃない。あの頃のディカプリオって!
渡辺:すごいよね! それを相手に、堂々たるヒロインとして。で、このタイタニックは当時のアカデミー賞を席巻して、作品賞から監督賞から、もうことごとく。で、この主演の2人は獲っていないんですけど、ことごとくアカデミー賞を獲ってですね。もうその年の一番の映画になったという感じです。賞もいろいろ獲ったし、興行成績も本当に日本でも、当時は記録だったのかな、たぶん。その後、『千と千尋の神隠し』とかが抜いたのかと思うんですけど、確か、それまで日本の記録で、世界記録も持っていた。そのぐらい興行成績を上げた作品でした。冒頭に言ったようにジェームズ・キャメロン監督が、めちゃくちゃお金を注ぎ込むで有名な人なんですね。この人は『ターミネーター』とかを当てているんで、作品は大ヒットさせるんですけど、とにかく制作費をめちゃくちゃ使う。この『タイタニック』のときも、『ターミネーター』の成功はありつつも、ものすごい大金を使うんで、20世紀フォックスっていう配給会社が当時あったんですけど、20世紀フォックスってハリウッドメジャーなんですけど、さすがの20世紀フォックスも、これを一社でやるのは危険かもってパラマウントを誘ったんです。パラマウントを誘って、リスクを分散するために2社でやりましょうって言って、普段そんなことないんですけど、異例のハリウッドメジャー2社で共同配給する。そしたら、なんと世界一番の興行成績を上げて、だからフォックスは1社でやっていたら、世界最高の興行成績を全部自分のものにできたという。2分割することになったというですね。まあまあでもね、そのぐらいリスクを感じさせるジェームズ・キャメロンの制作費。というのを、セリーヌ・ディオンの主題歌とともに、もう本当に、この時代を象徴する作品でした。何年か前にリバイバル上映をやっていたんですけど、それもね面白い。あと、Netflixの『First Love 初恋』という、宇多田ヒカルの曲をモチーフにした、満島ひかりと佐藤健のラブストーリードラマがあるんですけど、そこでも『タイタニック』について話すのがあって、『タイタニック』を知らないNetflixで初めて観た若者が、そこから『タイタニック』を知るような現象が起こった。いまだに何かと話題がある作品です。これが、やっぱりケイト・ウィンスレットの代表作であり、一番わかりやすい作品だと思います。まずは1本目、こちら『タイタニック』を紹介しました。
有坂:でも、あれだね、さっき順也が、ティモシー・シャラメって名前を出しましたけど、その『タイタニック』も主演男優賞にノミネートもされなかったんだよね、ディカプリオは。でも、ここでもし、この大ヒット作でオスカーも総なめした中でディカプリオが、主演男優賞を獲っていたなら、ティモシー・シャラメっていうと、『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』で、ボブ・ディラン役で、あれはノミネートされたけど、結局獲れなかった。もし獲れていたなら、本当にハリウッドを代表するスターが生まれたのに、残念っていうタイミングまで、ちょっと二人は共通するところがある。まあぜひ、本当にある時期しか輝けないんでね。そのもうキラキラしたレオ様。レオ様時代の代表作だよね。
渡辺:もし、まだ未見の方がいたら、もう鉄板だと思います。
有坂:今回は、ケイト・ウィンスレットを選んでいる時点でメジャーなものもあるし、僕は、アンナ・カリーナを選んでる時点で、もうフランス映画。もっと言えばゴダールの映画ばっかり。色がはっきり別れると思います。どっちが好きか、どっちもいいと思うので。
渡辺:作品がかぶらないことは確定だね。
有坂:安心! じゃあ、僕の2本目は、そのゴダールの長編第4作目です。
有坂セレクト2.『女と男のいる舗道』
監督/ジャン=リュック・ゴダール,1962年,フランス,84分
渡辺:うーん、なるほど。
有坂:これは、監督ゴダールだし、主演もアンナ・カリーナというところで、『女は女である』とかなり共通しているところがあるんですけど、実はルックから全然違います。向こうはトリコロールをベースにしたすごくポップでカラフルな映画。『女と男のいる舗道』は、モノクロ映画です。アンナ・カリーナも基本的に笑わないし、すごくクールビューティーなアンナ・カリーナ。
渡辺:ショートカットだよね。
有坂:そう、それが楽しめます。本当に見どころの一つはショートボブ。髪型も違うし、これですね。これはナナっていう役で、アンナ・カリーナは舞台女優を志しているという役を演じています。自分の夢を叶えるために、夫と子どもを置き去りにして家を出てしまって、レコード店でバイトしながらなんとか夢を追いかけるんだけども、もうやることなすことうまくいかず、だんだん人生が転落していく。で、娼婦になってしまう。という役をアンナ・カリーナが演じています。なので、あらすじだけ切り取ると結構シリアスなんですね。で、このモノクロっていうのもあるので、やっぱりミュージカルコメディだった前作とは、何から何まで違う。要は、でも、この『女と男のいる鋪道』でクールビューティーな演技もできる、前の作品ではすごくキュートな演技もできるということで、アンナ・カリーナの名刺代わりな2作だと思います。それくらい振り幅を持った女優さんだってことが、すごく理解できる2作が、この『女と男のいる鋪道』と『女は女である』かなと思います。この映画の中でのアンナ・カリーナの見どころは、さっき言ったショートボブの髪型。あと、横顔とかのシルエットの美しさ。そのシルエットを強調するようなカットとかも出てくるんですよ。あとはビリヤード場でジュークボックスで流した音楽に合わせて踊るシーンが、その踊っている姿は、割とシリアスで淡々と進んでいく映画の中で、いい意味の違和感を残してくれるシーン。あともう1個が、履歴書に自分の身長を書かなければいけないシーンがあって、身長、そう言えばわかんないなっていうときに、自分の手の幅をメジャー側にして、足元からつま先から頭まで手で測るっていう仕草が、すごくナチュラルに可愛いんですね。やっぱりそういうのって、物語に直接関係ないから、カットしてもいいシーンだと思うんですけど、やっぱりどういう人なのかっていうのを伝える意味では、その仕草とか、表情とかで伝わるものがいっぱいあって。アンナ・カリーナの、たぶんゴダールが想像した以上の魅力で応える。ゴダールは、さっき話したように、このときには主演女優であり、奥さんでもあるので。ゴダールが旦那さんだからこそわかるアンナ・カリーナの魅力を、映画の中に入れてきているということで、ぜひこれは『女は女である』とセットで観てほしい作品となっています。
渡辺:身長を測るシーンが、一番印象的だね。
有坂:そうだよね。
渡辺:この映画で思い浮かぶシーンが、まずそこが出るのかな。
有坂:これは、本当に観てほしいし、あとは、映画館で『裁かるるジャンヌ』っていう昔のサイレント映画を観るシーンがあって、アンナ・カリーナが涙を流すシーンが、どアップ。そのどアップの次に、ジャンヌもどアップっていう。そう、これは本当に映画史に残る名シーンでもあるので、ぜひ観てほしいね。
渡辺:カットがね。全シーン、カットがかっこいいんですよ。「ゴダール、天才!」っていう。
有坂:だから、インスタ時代に、すごくなんかね、観ると、本当に一個一個のシーンがすごく刺激的。写真を撮るときに真似したくなるような、かっこいいカットの連続なので、参考にさせてもらってます。配信では今やってないから、予告編だけでもかっこいいので、ぜひ観てみてください。
渡辺:じゃあ、僕のケイト・ウィンスレットの2本目は、『タイタニック』の後の作品です。
渡辺セレクト2.『エターナル・サンシャイン』
監督/ミシェル・ゴンドリー,2004年,アメリカ,107分
有坂:ああ、ああ、ああ、ああ。
渡辺:監督は、ミシェル・ゴンドリー。ミシェル・ゴンドリーはフランスの監督なんですけど、ハリウッドに出てきて、作品をつくり出していたときに、ケイト・ウィンスレットも、そこに参加している作品です。主演は、ジム・キャリーとケイト・ウィンスレット。この二人のラブストーリーです。観た方はわかると思うんですけど、本当にちょっと変わった内容のラブストーリーで、恋人同士なんですけど、もう別れちゃって、ミシェル・ゴンドリーの世界で、現代なんだけどちょっと不思議な世界で、記憶を消せるんですね。なので、別れちゃった元彼の記憶をケイト・ウィンスレットは消してしまった。でも、ジム・キャリーは、そんなこと知らないみたいな。そういう展開のラブストーリーです。これのヒロインがケイト・ウィンスレットなんですけど、『タイタニック』は王道のヒロインなので、割と真っ直ぐに魅力的な人っていう感じなんですけど、この『エターナル・サンシャイン』は、髪の毛も青色に染めたりして、ちょっとトリッキーな感じで、変わった女の子を演じているので、その辺がまた個性的な監督と組んで、ちょっとそういう個性的な役になっているので、作品的にも『エターナル・サンシャイン』、かなり面白いので、これユニバーサルっていうハリウッド大手がつくっている作品なんですけど、その中でもミシェル・ゴンドリーっていう作家性の強い人がつくっている、ちょっとアート寄りの作品になるので、ハリウッドメジャーを続けてやりながら、ちょっとこういう作家性の強い監督と、アート系寄りのラブストーリーもつくっているみたいなとこがあるので、『タイタニック』と同じラブストーリーでありながら、またちょっと異色の作品に出ているというのが、このケイト・ウィンスレットの、ちょっと女優としてキャリアとして面白いと感じたので、2本目で挙げてみました。
有坂:これさ、アカデミー賞の主演女優賞にノミネートされてるんだよね。
渡辺:けっこうね、ノミネート、すごいされているね。
有坂:『タイタニック』でもノミネートされたし、だから、これだけなんか作風の違う、その中でしっかり女優として評価されてね、オスカーにノミネートされているというのは、もう実力がね。
渡辺:本当にそうですよね。まあ、現役バリバリの女優さんなので。
有坂:そうだね。ちょっと僕は、『エターナル・サンシャイン』は、もうオールタイムベストに入るくらい大好きで、大好きで、大好きな映画。
渡辺:いいよねー。
有坂:これはもう、映画でしか表現できないラブストーリーだね。じゃあ、続けて僕の3本目。これ、だんだんその年順、1年後の映画とかになるよね。また、アンナ・カリーナとゴダールの作品です。
有坂セレクト3.『はなればなれに』
監督/ジャン=リュック・ゴダール,1964年,フランス,96分
渡辺:はい、うんうん。
有坂:これは、さっき紹介した『女と男のいる舗道』と同じで、モノクロの映画です。ただ、同じモノクロでも映画のトーンはもっと自由な感じです。物語的には、これも三角関係の話で、フランツとアルチュールという男性2人と、アンナ・カリーナ演じる3人が、ノリで強盗計画を立てていて、そこからちょっといろんなことに巻き込まれていって物語は進んでいくんですけど、その物語の筋よりも、この3人の関係がとにかくこの映画は面白くて可愛いです。その強盗計画とか立てているんですけど、例えば、この映画の見どころでもあるんですけど、思いつきで、パリにルーブル美術館ってありますよね。ルーブル美術館を走って駆け抜けて、世界記録をつくろうって思いついて、それをやってみるとか、あと今、フィルマークスに出てますけど、この踊っているシーン、3人で。これはカフェで、3人で踊り始めるんですよ。マディソン・ダンスっていうダンスなんですけど、これも3分くらい確かあるのかな、フルで踊ってくれる。3人並んで同じダンス。これ、ダンスシーンっていうと、生まれながらのダンサーが、すごく綺麗に踊るみたいなイメージが映画ではありますけど、この映っているダンスシーンっていうのは、これ一夜漬けで3人が覚えたダンスなので、ヘタヘタな、すごいゆるいダンスシーンなんですよ。でも、そのゆるいダンスシーンに出てくる、そこからあふれ出るそれぞれのキャラクターとか、映画のトーン。だから、自由でのびやかで、みずみずしいっていう、映画のトーンにもすごくあっていて、観た人は絶対にこれ真似したくなる。実際にこの映画のこのシーンを真似ている映画っていうのが、いくつかあるんですよ。この映画の自由奔放なところに影響を受けた映画監督っていうのもいっぱいいて、その代表的な人が、クエンティン・タランティーノという。この映画の原題って、フランス語で「bande a part」って言うんですけど、その「bande a part」を、タランティーノは自分の制作会社の名前に付けたほど。後の『パルプ・フィクション』のトラヴォルタとユマ・サーマンのダンスシーンも、これへのオマージュなんじゃないかって言われるぐらい、タランティーノ自身も影響を受けた作品になっています。
渡辺:俺も、これが一番好きだね、ゴダールで。
有坂:ね、こんな映画つくれるんだなって、誰もが思ってしまう。
渡辺:あのルーブルのシーンのさ、影響を受けている映画あるよね。
有坂:あるある。
渡辺:ああいうシーンあるもんね。美術館を走り抜ける。
有坂:しかも、そのルーブルを走っているシーンって、あれゲリラ撮影でね。
渡辺:ゲリラでね。
有坂:無許可でやっているからこその、なんかちょっとドキドキした感じもよくて。まあ、これはもうなんかエモい青春映画です。あと、見どころの一つとしては、オープニング、最初、映画会社のロゴが出た後、映画が本編始まるところが、すごく軽快な音楽、ミシェル・ルグランの軽快な音楽に合わせて、すごくグラフィカルな映像でいきなり映画が始まるんですよ。これは観てもらわないと、この良さはわからないと思うので、明日、キノ・イグルーの毎日上げている今日の動画っていうコーナーがあって、そこで、このオープニングシーンは、紹介したいと思います。これ絶対観てほしい。明日、インスタのストーリーでも紹介するので、ぜひ明日チェックしてみてください。これは確か、配信で観られる? 確か観られるはずです。はい、ということで、僕の3本目は『はなればなれに』でした。
渡辺:はい、では続けて、巻いていかないと。僕の3本目、ケイト・ウィンスレットの3本目は、2008年の作品です。
渡辺セレクト3.『愛を読む人』
監督/スティーヴン・ダルドリー,2008年,アメリカ、ドイツ,124分
有坂:出た!
渡辺:これは今度は監督がスティーヴン・ダルドリーですね。『リトル・ダンサー』の監督ですね。スティーヴン・ダルドリーの監督で、どういう話かというと、ケイト・ウィンスレットが、このときがたぶん30何歳なんですけど、15歳ぐらいの少年と偶然出会って、その少年に読み聞かせをしてもらうことになるんですね。いろんな有名な小説を、読み聞かせを少年に依頼する。ケイト・ウィンスレットのほうが全然年上、20歳ぐらい年上の設定なんですけど、その少年はだんだん彼女に恋をしていってしまう。ところが、あるとき、忽然とケイト・ウィンスレットは姿を消して……っていう話なんですけど。その少年が大人になったときに、弁護士になるために、授業を受けているんですけど、その一環で実際の裁判に行ったときに、そのたまたま実習で見に行った裁判の被告人席に、ケイト・ウィンスレットが座っていた。どういう罪かというと、ナチスの戦争のときの話なんですけど、第二次大戦の、ナチスに加担したというか、その監視員として送られてくる人たちを、監獄に入れる、入れないみたいなものをやる係の事務の人なので、このままこの人たちは行ったらガス室送りになっちゃうっていうのを知っていて、作業をしていた。それはもう殺人ほう助みたいな罪だみたいな、そういう罪に問われている状況の彼女と、そんな関係で出会ってしまう。でも、そういう罪に問われている人を、知り合いですとか言ったらちょっと問題もあるかもしれないから、彼はそのままやり過ごしているみたいな。そういう話だったりするんですけど、というのもあって、ケイト・ウィンスレットは、その後、刑務所に行ってみたいなところがあるんですけど、割と長いです。少年と出会うとき、その少年が大人になって、また裁判官になって、というところも、少年のほうは役者が変わっているんですけど、ケイト・ウィンスレットは若い時から年を取るまで、ずっと本人一人が演じ続けるというところで、かなりその演技が評価され、そして、なんとこの作品でアカデミー賞主演女優賞を受賞するということになりました。なので、本当に演技にはずっと定評があって、『タイタニック』もそうですし、『エターナル・サンシャイン』もそうですし、ノミネートはされているんですけど、ここでついに受賞しました。なので、イギリスにいたときから、かなりイギリスの賞を獲ったりしていたんですけど、アメリカに来て、もう早速ノミネートされて、またここでついに獲りましたという感じなので、なんか側から見ていると、すごいエリート街道を来ている感じではあるんですけど、本当にこの辺が彼女のキャリアとしても、順調に来ているところの作品かなと思います。作品としても、やっぱり『リトル・ダンサー』の監督というのもあるので、作品としての評価もすごく高いですし、大人になった少年のレイフ・ファインズだったりとか、名優同士の共演だったりするので、かなり見応えのある作品かなと思います。
けっこうケイト・ウィンスレットの作品をポイント、ポイントで観ていくと、やっぱりいい作品がかなりあるなと思います。配信でも観られます。
有坂:今、オスカーノミネート、ノミネートからの受賞という流れの3本ですね。じゃあ、僕の4本目は、そのゴダールとアンナ・カリーナも、もうこれは集大成といってもいい一本です。
有坂セレクト4.『気狂いピエロ』
監督/ジャン=リュック・ゴダール,1965年,フランス、イタリア,109分
渡辺:うーん!
有坂:これは1965年の映画なので、アンナ・カリーナとゴダールが出会った4年後の映画です。
このときは、2人は実はもう仲違いして、離婚しているんです。今日ちょっと紹介しないんですけど、一個前にSF映画で『アルファヴィル』っていうのをつくっていて、それがもう泥沼のときにつくっている映画で、めちゃくちゃ暗い映画なんですよ。
渡辺:それでよくつくるよね。
有坂:それでもやっぱりつくっているってことが、プロフェッショナルだなって思うし、でも、やっぱり才能は認め合っている。自分たちの積み上げてきた、ゴダールでいうと10作目で、集大成のものをつくろうということで、つくった『気狂いピエロ』が、映画史が130年くらいありますけど、その中でも歴史的な一本と言われるほどの作品となりました。この映画は、一言で言うと、男女の逃避行を描いている作品です。フェルディナンという役のジャン=ポール・ベルモンドと、マリアンヌという役の、かつての恋人だったマリアンヌ役のアンナ・カリーナ、2人が殺しに手を染めてしまって、住んでたパリを飛び出してひたすら逃げるという物語です。逃げて逃げて行った先に何が待ってるか、っていうようなものが映画の大筋になっています。そういう逃避行を描いた映画って、車で逃げるから、車で疾走するシーンとか、気持ちのいい映像が出てきそうだなって気もするんですけど、ゴダールは、そういうありきたりな表現をとことん嫌う人なので、車の疾走シーンって全然ないんですよ。走ったと思ったら、海に飛び込んで止まっちゃったりとか、そういうことの連続。だから、自分が知っている映画の型みたいなものを、ことごとく裏切る。物語も逸脱に逸脱を重ねていって、出てくる映像もいろんな映画の引用とか、いろんなアートの引用とかが、映画にどんどん出てきて、情報の洪水みたいな映画なんです。なので、初めて僕観たとき、まったく何にも理解できなかった。
渡辺:いや、そうだよね(笑)。
有坂:けど、何にも理解できないんだけど、なんかすごいってことだけは、なんかやっぱり分かって。そのすごさをちゃんと理解したくて、その後、繰り返し何度も観たので、僕はたぶん、今まで観てきた映画史上、一番回数を観ているのは、この『気狂いピエロ』です。この中でアンナ・カリーナの見どころとしては、2曲、劇中でミュージカルシーンがあって、本人が歌います。1個は「私の運命線」っていう曲で、もう1個は、「一生愛するとは誓わなかったわ」っていう曲を、これはちゃんとミュージカルっぽい場面で本人が歌うところはものすごいので、見どころの一つです。あと、アンナ・カリーナっていうのは、すごくファッショナブルな人なので、この映画でも彼女が着ている赤いワンピースとか。これは、古着が中心なんだけど、この洋服に関しては、これはスタイリストとかを入れていなくて、実はね、監督のゴダールが古着屋に行って安いものを見繕ってきた。それを、アンナ・カリーナに着せたら、もうそれがファッション業界も含めたアイコンになってしまう。だから、もう才能のある人同士が、バッチバチの喧嘩している中でも、才能を認め合ってつくったものが、映画っていうのは形となって残るので、それが映画っていう枠を超えてファッション業界にまで影響を与えたり、アートの世界にまで影響を与えたという伝説的な一本です。で、ゴダールは、この『気狂いピエロ』を撮って、商業映画をつくることをやめますと宣言をします。
渡辺:そうだっけ?
有坂:そう、商業映画決別宣言というのを、この後発表して、その後、政治の時代に入って、ますます難しい映画に舵を切っていくんですね。なので、この『気狂いピエロ』とか、『中国女』ぐらいまでを、アンナ・カリーナ時代、初期のアンナ・カリーナ時代って言われてる時代。その本当に終焉となる一本が、この『気狂いピエロ』です。一回観てよくわかんなくても、繰り返し観れば観るほど、あと大スクリーンで観る機会があったら観てほしいと思う一本でもあるので、ぜひ観てください。配信では、U-NEXTで視聴可能だそうです。
渡辺:これはでも色もね、すごいカラフルで、海の青と洋服の白とか、爆破の赤とか。その辺のやっぱり色づかいは、さすがゴダールだなと。本当にさ、公私混同が甚だしいから(笑)、アンナ・カリーナとこう関係が悪くなってから、アンナ・カリーナが笑わないみたいな。そういうわかりやすい。
有坂:そこで無理して、笑わせる役をやっていたら、たぶんアンナ・カリーナもゴダールも後悔していたかも。すごく自然な、それは選択だよね。
渡辺:いや、それでよくつくっているよね。
有坂:いやー、「ありがとうございます」だよね、そんなものをさ、60年後、70年後に観られるわけだからね。
渡辺:はい、じゃあ、僕の4本目は、今、映画館で観られる作品。
有坂:あれね!
渡辺セレクト4.『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』
監督/エレン・クラス,2023年,イギリス,116分
有坂:うんうん。
渡辺:これ、今ちょうど映画館でやっています。このリー・ミラーという実在する写真家を、ケイト・ウィンスレットが演じているんですけど、このモデルとなったリー・ミラーという人がすごい面白い人で、もともとファッションモデルとしてキャリアをスタートしているんですけど、撮られる側より撮る側がいいということに気づいて、自分がフォトグラファーとしてカメラマンになっていくという人です。時代が、1940年ぐらいのイギリスが舞台です。やっぱりその時代なので、戦争が徐々に迫ってきて、リー・ミラーも年を重ねて、もうモデルではなく、モデルの年齢ではなくなっているので、撮る側として写真家として活躍しだしているんですけど、やっぱりトップモデルだったので、交友関係のある人たちは結構セレブの人たちなんですけど、そういう人たちと交流を重ねながら、別荘でおいしそうなご飯を食べて、ワイン飲んでいるみたいな生活をしている。徐々に世の中は戦争ムードになって、そこから写真家として自分が撮るべきものは何かみたいなところで、戦場カメラマンになっていくんですね。なので、本当にトップモデルから戦場カメラマンになるっていう、この振り幅! こんな人は、歴史上でもいないと思うんですけど、本当にドイツ軍と戦う戦場の最前線にいて、爆弾に吹き飛ばされながら、カメラを離さないみたいな。そうやってユダヤ人の収容所であるとか、当時そんなことが行われていたなんてみたいなことが、分からなかったところを、報道カメラマンとして写真を撮ってメディアに送って、スクープを取っていくというところが描かれる作品です。「こんな人いたんだ」とか、「そんな世界あったんだ」みたいな面白さもあるし、カメラとか写真とか興味ある人は、「こんな写真家がいたんだ」というところでも面白いと思います。やっぱり、このすごい面白いなと思ったのが、この報道写真を送っているメディアっていう、送り先のメディアが新聞社じゃなくて、なんと雑誌の『VOGUE』っていうね、ファッション誌じゃないのっていう。でも、さすがモデルだっただけあって、なんかその報道写真、報道記事を掲載している先が『VOGUE』だったっていうね。『VOGUE』がそんな記事を載せてたんだっていうのも、「そうだったんだ」と思ったし、『VOGUE』が写真を載せる載せないみたいな話を、実際にやり取りがあって、実話ベースなんで実際にそういうことがあったので、載せらていたりするんですけど、そういう逸話とかも含めてすごい面白いなと思います。やっぱり、ケイト・ウィンスレット、今のケイト・ウィンスレット。アラフィフのケイト・ウィンスレットが演じているので、完全におばさんだし、おばさん体型になっているケイト・ウィンスレットではあるんですけど、その等身大の彼女が、あの時代の等身大だったリー・ミラーを演じているところも、本当に現役バリバリの女優として、すごいちゃんと活躍しているなというのが感じられる。やっぱり若くて綺麗な女優みたいなところから始まって、女優さんってその後、けっこう仕事が限られてしまう、そういうところがあるんですけど、それでもやっぱりケイト・ウィンスレットは、賞を獲ってこれからのキャリアがどうなるのか、伸び悩む女優さんがいる中で、そういう等身大の役にちゃんと挑戦するというところで、いまだにいいキャリアを歩んでいるな、というのを感じさせられる。これはマリオン・コティヤールとかもフランス人女優で出ていたりするんですけど、マリオン・コティヤールとかも同世代、本当に同世代の女優さんでも、ちゃんとキャリアを重ねている人たちが集まった良い作品だと思っているので、今、映画館で絶賛公開中なので、近くの映画館でやっている方は、ぜひ! いい映画だと思います。
有坂:これ監督も女性だよね。
渡辺:そうなんですよね。
有坂:その女性、さっき順也が言ったように、キャリアを重ねた女性の俳優さんが、女優さんが、やっぱりだんだんその役が、演じられる役が少なくなってきてってことにも違和感があって、だったら自分たちでちゃんとそういう映画をつくろうって言って、そういうパワーを持った人たちが集まって、そういう女性の表現者を作品にするっていう、すごくいい流れだよね。パワーのある映画でした。では、最後、僕の5本目にいきたいと思います。僕の最後の映画は1961年発表の映画です。
有坂セレクト5.『マクドナルド橋の恋人たち』
監督/アニエス・ヴァルダ,1961年,フランス,5分
渡辺:短編ですか。
有坂:これは、5分の短編を、最後に紹介したいと思います。散々ですね、僕が4本紹介してきたものは、ゴダールとアンナ・カリーナのコラボレーション作を紹介してきました。最後の5本目は、監督はアニエス・ヴァルダという女性です。なんですが、その主演が、ゴダールとアンナ・カリーナです。劇中劇なんですね。『5時から7時までのクレオ』という映画の中で、主人公のクレオが映画館に入って映画を観る。そこで流れている映画が、『マクドナルド橋の恋人たち』。つまり、そのクレオの映画のために、5分間の短編映画をわざわざつくったんです。なんか、かつての既存の映画とかじゃなくて、オリジナルで短編つくっちゃおうぜって言って、アニエス・ヴァルダの仲間であるとか、アンナ・カリーナとか、プロデューサーとかその友達を集めて、かなりのハイクオリティなサイレント映画風なコメディをつくりました。それが『マクドナルド橋の恋人たち』です。これは、いわゆるサイレント時代のコメディ映画をイメージしてつくっているので、ゴダールが気難しいイメージがあるんですけど、ゴダールがかけているサングラスをモチーフに、ちょっと笑いに満ちた作品で、その恋人役として隣にアンナ・カリーナがいる。これは、もういわゆる、さっき話したラブラブ期絶頂のゴダールとアンナ・カリーナが視覚的に楽しめる。
渡辺:絶頂だよね、本当に(笑)。
有坂:たぶん、もうゴダールもね、後に、これは見返せないと思う。恥ずかしすぎて。元カノと一緒に映画に出たっていう。でも、本当に人間としても惹かれ合った二人、クリエイターとしても惹かれ合った二人が、こういう形でヴァルダの映画のフィルムに記録されているっていうのは、すごく歴史的な価値もあるなって思うし、やっぱりミューズっていう言葉って、よく聞くじゃない。本当にあると思うんだよね。この人と出会ってしまって、この人と接していると、本当に自分のクリエイティブをすごい引き出される。多分、それはミューズとかクリエイティブっていう言葉を使うと、いわゆる表現者の人たち限定に聞こえちゃうけど、でもさ、誰かを好きになるとか、誰かと結婚するとかって、同じことだなって思う。なんで好きなのかっていう理由の一番大きいところって、相手のいいところだけじゃなくて、自分の良さを引き出してくれる人だなってことだと思う。それはもう、その人にとって彼女であり、奥さんはミューズだし、それが、多分クリエイティブな人は、もっとそれが作品になるから分かりやすくなるけど、そういうミューズを探して生きてるのが人間なんだなって思うと、ある意味、その象徴がこの『マクドナルド橋のフィアンセ』っていうタイトルになっていますけど、アンナ・カリーナとゴダールが演じているというか、そのもう象徴的な人が主演の5分の短編映画になってますので、ぜひこの紹介した4本のゴダール・カリーナのコラボ作と合わせて、『マクドナルド橋のフィアンセ』も観てほしいし、これに関しては、今画面に映ってる『マクドナルド橋のフィアンセ』っていう日本語の下に、フランス語のタイトルが入ってますね。原題。これをコピペしてYouTubeで検索すると今すぐ観られます。サイレント映画だから、セリフもないのですぐ観られるので、この配信が終わったら、すぐに観てください。よろしくお願いします。
渡辺:気難しいゴダールしか知らないから、もう衝撃だよね。こんなところがあったんだってね。
有坂:こんなことやっちゃうんだ。
渡辺:若いしね。やっぱり若いと違うなぁと。
有坂:考えること、みんな一緒なんだよね。
渡辺:ちょっと安心するよね。ゴダールも、そうなんだというね。……なるほど、じゃあ、僕の最後5本目いきたいと思います。ケイト・ウィンスレットのさっき紹介した新作のパンフレットに、町山智浩さんが書いてあったのがすごい印象的で、なんか僕も知らなかったんですけど、ケイト・ウィンスレットって結構生い立ちが大変だったみたいで、すごい貧しい家の労働者階級に生まれているんですけど、お父さんがケガをしちゃって、働けなくなっちゃったので、お母さんが一家を支えていかなきゃいけないというので、かなり極貧の生活で生活保護をもらっていて、そんな中で慈善団体の援助でケイト・ウィンスレットは11歳のときに、演劇学校に入ることになったそうです。そこから仕事をしていたんですけど、もう微々たる収入で、それでも賄えない。そんな中、バイトをしながら17歳のときにようやく映画のオーディションに受かった。それで主役を射止めたという、その作品が彼女のデビュー作品である1994年のイギリス映画なんですけど。
渡辺セレクト5.『乙女の祈り』
監督/ピーター・ジャクソン,1994年,ニュージーランド、アメリカ,100分
有坂:うーん!
渡辺:これは、監督がピーター・ジャクソンなんですね。『ロード・オブ・ザ・リング』のピーター・ジャクソンが、その前につくった作品なんです。なので、この作品自体はけっこうシリアスなやつで、女の子、友達同士が、お母さんがうるさくて引き離されそうになってしまったので、母親を殺してしまったというので話題になった、実際の事件をモチーフにしてつくったというシリアスな作品なんですけど。これを、いきなり主役としてセンセーショナルにデビューというのが、ケイト・ウィンスレットですね。なので、彼女は、たぶん女優としてのセンスはすごくあったんですね。もともと生い立ちは、すごく過酷な状況から生まれて、慈善団体の援助とかを得ながら演技を学んで、それで若くして主役を勝ち取って。そこからは本当にアカデミー賞ノミネート、それから受賞するまでのキャリアを築き上げていっている。『タイタニック』の撮影とかって、すごい大変だったらしいんですね。実際に、海に溺れてみたいなシーンからで、本当に肺炎になったりとか、けっこう死にそうになったりしているらしい、そんな過酷な撮影に耐えられるだけのメンタルが彼女にあった。それは、やっぱりそういう生まれで、大変なことを経験してきて、乗り越えてきているからできている、というふうに町山さんは言っていて、なるほどと、なので、そういうところがこの大女優をつくり上げていったんだという。なので、並の女優だとできなかったようなこととか、耐えられなかったようなこととかも、こなせてしまうメンタルもあり、あとは技術力もあって、それがいろんな要素が重なってこのキャリアを築けてきているのかなっていうのを、改めて感じられると。さらに、今もさっき塁がが言ったみたいな、なかなか役がなくなってくる年齢でも、そういう役を得られているところっていうのは、その先も繋がっていくんじゃないかなというのも感じられるので、すごい今後も、この人のキャリアが楽しみだなと思える女優さんだなと、今回いろいろ振り返ってみて、その辺が繋がってきたのが面白いなと思って、改めて思った感じでした。
有坂:『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』を、この前劇場で観て、改めてね、ケイト・ウィンスレットってキャリアが切れないじゃん。わりと地味に助演女優賞にノミネートされているとか、ずっと安定してるようなキャリアだけど、やっぱり本人の中でブレない芯みたいなのがあって、リー・ミラーっていう人に出会って、それを演じるために何年もかけて演じるだけではない関わり方をしていったとか。本当にそうやって、本気で作品に関わる人しか、多分生き残っていけない時代じゃない。出るだけじゃなくて、制作側にも関わってとか、そういうのが当たり前になってくる。でも、本気を出せば、自分の居場所をつくれるかもしれない時代だから、分かりやすくていいなって思うし、ある意味その象徴の一人がケイト・ウィンスレットのような気もします。ちなみに、『乙女の祈り』ってニュージーランドなんだよね。
渡辺:あ、そうか。
有坂:そこがけっこう不思議で、ピーター・ジャクソンがニュージーランドの人で、ニュージーランドとアメリカの合作かな。で、ケイト・ウィンスレットが、確かイギリスからの転校生の役なんだよね。
渡辺:なるほど。
有坂:それがもともとそうだったのか、ケイト・ウィンスレットが決まったから、その設定になったのか、その辺、全然俺も知らないから、ちょっと気になった。調べたくなった。ますますそこに、ケイト・ウィンスレットの謎があるような気にします。
──
有坂:はい、ということで10本で揃いましたが、いかがでしたか? 今回ね、こういうテーマでお送りして、また来月どうなるかは、これからまた決めて、また来月お会いできればと思います。
有坂:最後に何かお知らせあれば。
渡辺:はい、僕はフィルマークスでリバイバル上映企画をやっているんですけども、ちょうど5月30日からですね。今度リバイバルするのが『赤毛のアン~グリーンゲーブルズへの道~』っていう、昔のテレビアニメシリーズの劇場版で、監督が高畑勲監督です。当時、アニメ版を高畑監督自ら、劇場版に再編集したんですけど、ずっとお蔵入りになっていて、その後ようやく劇場に公開されることになって、そのとき配給したのが、スタジオジブリだったんですね。でも、それでも本当に小規模な公開しかしなかったので、それ以来の劇場公開となります。なので、かなり配信もないので観られる機会はあんまりない作品です。ブルーレイとかは出ているんですけど、なので、それを今回5月30日から、もう期間限定で劇場上映するので、この機会にぜひ観てもらえたらなと思います。
有坂:やるね!
渡辺:そうなんです。
有坂:全国?
渡辺:全国で70館ぐらいかな。2週間限定でやります。
有坂:僕からは、キノ・イグルーのイベントで、来週、二子玉川の河川敷でイベントをやります。これが、『アット・ザ・ベンチ』という映画の実際に撮影の舞台になったベンチのある場所で、野外上映会をやります。
渡辺:聖地で。
有坂:聖地で。これは『アット・ザ・ベンチ』は奥山由之監督、写真家としても活躍してる彼の自主制作映画といいながら、広瀬すず、仲野太賀、岸井ゆきの、岡山天音、荒川良々、今田美桜などなど、超豪華キャストでつくった自主映画っていう、異例中の異例。もうずーっとね、復活上映で、劇場でも話題が続いてる映画の、ついに聖地で野外上映会をやります。
渡辺:一周して帰ってきて。
有坂:これは、5月31日(土)と6月1日(日)、共に19時半からやります。両日とも、上映後に奥山監督と僕たちキノ・イグルーでのトークショーがついています。雨天の場合は中止。予約の必要なく無料で観られます。
渡辺:無料だもんね。
有坂:どれくらいの人が来るのか、誰も想像できない。
渡辺:まあ、でもすごい広い空間なんで、割と人数は入れそうだし、遠目からも観ることができるし、土手だからね。
有坂:そういうロケーションの面白さもあるし、ベンチと一緒にみんなで映画を観るっていうね。そんな環境、なかなかないと思うので、ぜひ観てください。翌週からは、恵比寿ガーデンプレイスの「ピクニックシネマ」。
渡辺:始まりますね。
有坂:はい。今回は、15日間15作品やりますので、こちらも予約なしの無料上映でやります。ぜひ、この辺はキノ・イグルーのホームページ、あと僕らのインスタグラムをチェックしていただければと思います。
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有坂:はい、よかった! 最後までできたね。配信にはトラブルがつきものです(笑)。ということで、また来月お会いしましょう。ありがとうございました!
渡辺:ありがとうございました!!
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選者:キノ・イグルー(Kino Iglu)
体験としての映画の楽しさを伝え続けている、有坂塁さんと渡辺順也さんによるユニット。東京を拠点に、もみじ市での「テントえいがかん」をはじめ全国各地のカフェ、雑貨屋、書店、パン屋、美術館など様々な空間で、世界各国の映画を上映。その活動で、新しい“映画”と“人”との出会いを量産中。
Instagram
キノ・イグルーイベント(@kinoiglu2003)
有坂 塁(@kinoiglu)/渡辺順也(@kinoiglu_junyawatanabe)