あなたの人生をきっと豊かにする手紙社リスト。今月の映画部門のテーマは、「宇宙」です。その“観るべき10本”を選ぶのは、マニアじゃなくても「映画ってなんて素晴らしいんだ!」な世界に導いてくれるキノ・イグルーの有坂塁さん(以下・有坂)と渡辺順也さん(以下・渡辺)。今月も、お互い何を選んだか内緒にしたまま、5本ずつ交互に発表しました! 相手がどんな作品を選んでくるのかお互いに予想しつつ、それぞれテーマを持って作品を選んでくれたり、相手の選んだ映画を受けて紹介する作品を変えたりと、ライブ感も見どころのひとつです。


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お時間の許す方は、ぜひ、このYouTubeから今回の10選を発表したキノ・イグルーのライブ「ニューシネマ・ワンダーランド」をご視聴ください! このページは本編の内容から書き起こしています。




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−−−乾杯のあと、恒例のジャンケンで先攻・後攻が決定。今月は「今回、もう絶対取られたくない映画があるんで。じゃんけん、勝ててよかったです。」と、久しぶりに有坂さんが勝利し、先攻を選択。それでは、クラフトビールを片手に、大好きな映画について語り合う、幸せな1時間のスタートです。


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有坂セレクト1.『アポロ13』
監督/ロン・ハワード,1995年,アメリカ,140分

渡辺:なるほどね!
有坂:これは観た方も結構いるかな。トム・ハンクスが主演の、ほんとアポロ13、そのまんまです。アメリカのアポロ計画。唯一失敗してしまったっていうアポロ13号の裏側で起こっていたストーリーを、映画化したものになります。これ観ている人っているかな? もし「観てるよ」って人がいたら、ぜひちょっと教えてください。僕は、まあ順也もね、公開当時、映画館でこれは観た作品で、
渡辺:めちゃくちゃ話題作だったもんね、当時ね。
有坂:CMも結構やっていたよね。で、トム・ハンクスが主演ですけど、やっぱりトム・ハンクスがブレイクしたタイミングじゃない? これって。『フィラデルフィア』でアカデミー賞で主演男優賞を獲って、2年連続で『フォレスト・ガンプ/一期一会』で獲って、その後だったよね。たしか『アポロ13』って。
渡辺:『ユー・ガット・メール』もこの辺だった。
有坂:『ユー・ガット・メール』はそのあとかな、多分。2年連続アカデミー賞を獲った後の作品が、確か『アポロ13』。そういう意味で、すごく話題になっていたことは覚えてます。で、これ僕でいうと、映画が好きになったのは1994年なので、実は映画を好きになって間もない頃だから、こう順也みたいに、昔から映画を観ている人とは違って、まだSF映画もそんなに観たことがない。そういった宇宙が体験できる作品を劇場で観ること自体が、僕はこれが初めてだったので、やっぱり大スクリーンで、大音響で、宇宙ものを観ることの……なんだろう、やっぱり映画館ならではの楽しさもやっぱり感じたので、そういう意味でも特別な1本です。
渡辺:うんうん。
有坂:これは、ストーリーはさっき紹介したとおり、月面着陸でアポロを打ち上げたものの、たどり着けず、「どうやって地球に返すか」、「なんとか彼らの命を失わずに、地球に彼らを戻すか」っていうストーリーなんですけど、宇宙船の中だけではなくて、地球のNASAの司令室のほうと二つの物語が進んでいくんですけど、もちろん実際に宇宙に飛び立っているトム・ハンクスはじめ、あとあれだね、宇宙飛行士のビル・パクストンという俳優とか、ケヴィン・ベーコンとかのね。もう名優たちが、宇宙をさまようわけなんですけど、まあ、彼らもいいんですが、僕がこの映画で一番グッときたのは、地球のほうの管制官のリーダーをやっていたエド・ハリス。このジャケットの写真でいうと、一番下、5人目のちょっといかつい顔の彼なんですけど、彼が白いベストを着てね。なんかすごく男気があって、ほんとに頼れる人で、ほんとにこの人にすがるような思いで、「なんとか彼らを地球に返してください!」っていう思いで、ハラハラドキドキしながら観ていました。
それで、やっぱりこの映画が優れてるなと思ったのが、結果がわかっているじゃん。もう、これは本当にね、世界でもすごくニュースになったことなので、結果はもうみんながわかってるっていう前提で映画化されてるんですね。だから、最後は地球に戻ってくるってわかっているのに、ハラハラドキドキさせるような、やっぱりその作劇の素晴らしさ。結果がわかっているってことを忘れてしまいながら、映画に没入してる自分に気づいて、やっぱり、もうその時点で自分では気づかない映画の素晴らしい、いろんな要素が組み合わさって、この作品ができているんだなと思いました。それで、先ほどちょっと紹介したエド・ハリスって俳優とか、あとビル・パクストンっていう人とか、この映画はやっぱりね、助演の人たちがすごく輝いていて。
渡辺:そうだね。
有坂:で、これが1995年っていうと、映画界ではタランティーノ旋風が吹き荒れたとき、『レザボア・ドッグス』って映画とか、『パルプ・フィクション』とかでタランティーノの映画の洗礼を受けた人はみんな、映画の魅力って主演俳優だけではなくて、助演もやっぱり輝いていないとと思っていたときだったから、余計に主演のトム・ハンクスだけじゃない人たちにも目がいって、その流れで出会ったのがエド・ハリス。
渡辺:エド・ハリス、よかったもんね。本当に助演を意識させてくれる作品の一つかもしれないですね。
有坂:ぜひ、この『アポロ13』と一緒に、同じ年に公開された『理由』っていうサスペンス映画。この『理由』にもエド・ハリスが出ていて、そっちでは殺人鬼の役で、『羊たちの沈黙』のレクター博士みたいな役をやってるんですよ。すごく凄みのある殺人犯で、全く違うタイプで、「これだけの振り幅を見せられるんだ」っていうのを、同じ年に体感したので、ぜひ、まだ観てないよって人にはね、2本立てで。エド・ハリス2本立てを観ていただけたらと思います。
渡辺:なるほど!
有坂:ということで、僕の1本目は『アポロ13』でした。



渡辺セレクト1.『ドリーム』
監督/セオドア・メルフィ,2016年,アメリカ,127分

有坂:おおー。
渡辺:『アポロ13』に引っ張られて。この『ドリーム』っていうのは、どういう映画かというと、まさに『アポロ13』だったりとか、あとこの話は確かマーキュリー計画だったかな? また別の打ち上げ計画があるんですけど、それに携わっているスタッフたちの話です。で、主演が黒人の女性3人なんですね。このジャケットですね。それで、やっぱりこの打ち上げ計画の当時っていうのが1960年代で、まだまだやっぱり黒人差別もあるし、女性っていうのは、もう一線にいられないっていうか、相手にしてもらえないみたいな、そういう性差別もまだまだ根強い時代だったんですね。で、NASAみたいなところは、もう男の研究者が第一線を張っているっていう、結構、マッチョな世界だったりもするので、そういうところで実は活躍していた人たちの話です。ただ、これ結構アップテンポな作品で、割といいダンスミュージックみたいなところから始まったりしてですね、映画としてめちゃくちゃ面白いです。フィルマークスのこのスコアも結構。
有坂:「4.1」ってすごいね。
渡辺:うん、高いんですけど、なんかこう観ていてすごいハッピーになれたり、モチベーションが高くなるタイプの作品です。ポジティブな気持ちになれる作品です。で、主人公たちはもう女性っていうことだけで、男性より同じ働きをしているのに下に見られるとか、さらに黒人なので、トイレが使えないとか。もう漏れそうなのに別の棟の建物まで行かなきゃいけないとかね、ちょっとそういうお笑いシーンでもあるんですけど、そういうちょっと風刺を効かせたりっていう表現の仕方もすごく上手だったり。それで、ほんとにもう彼女たちは、学校でも数学の天才みたいな人たちがスカウトされて、NASAで働いているんですけど、めちゃくちゃ活躍してるのに、黒人だし女性なので、まったく名前は載らない。影の存在として働いていたんですけど、実はこういった人たちが「影のスターとしていたんだよ」っていうことを描いた作品です。なんで、映画としてもすごく面白いですし、そういうアポロ計画ね。ああいう壮大な計画のところで、いろんなスタッフの人たちが、実は働いていて活躍しているんだという、そういうところのほうに焦点を当てたタイプの作品です。
有坂:うんうん。
渡辺:というわけで、ちょっとこれ何番目に入るか、入れようかどうかと思っていたんですけど、『アポロ13』がきたんで。
有坂:そうね。外せないね。ケヴィン・コスナーがいいんだよね。
渡辺:そうね。
有坂:正直、ケヴィン・コスナー、終わったかなって思ってたら。
渡辺:いい上司みたいなね。
有坂:ロバート・デ・ニーロもさ、上司じゃなかったけど、『マイ・インターン』で、ああいう、ちょっと枯れてきてからの魅力みたいな。あの時代の90年代とか活躍した俳優たちが、またちょっとね、そういう別のポジションで、新たな役を演じているって意味でも『ドリーム』は見どころがあるなと。
渡辺:これ、女性の人には特に、いいんじゃないかなと思います。ぜひ観てみてください。



渡辺セレクト2.『アイアン・スカイ』
監督/ティモ・ヴオレンソラ,2012年,フィンランド,93分

有坂:ほうほう。
渡辺:これは、本当にB級コメディです。めちゃくちゃB級なノリで、すごいチープで、ちょっとB級感のあるところが、くだらなすぎて面白いというタイプの作品です。一応、劇場公開もされているんですけど、僕がもう当時観に行ったときは、どこだっけな新宿武蔵野館かな? もうこういうの知っている人しか来てないみたいな感じだったんですけど、僕のもう目の前に座っていた男性2人が終わった後に、「今年1番面白かったわ」みたいな感じで、もうホクホク顔で帰っていったっていうですね。で、これ、あのフィルマークスのスコア、めっちゃ低いんですけど、もう合わない人は合わないっていう、くだらなすぎて合わないって人もいると思うんですけど、まあそこが面白いタイプの作品です。で、設定がもうめちゃくちゃで、ナチスが実は月に逃れていて、月の裏側で密かに過ごしていて、地球に逆襲をし始めるという話です。ただ、「ナチスだぜ」っていってくるんですけど、「そんなわけないじゃん」みたいな。誰にも相手にしてもらえないっていうところから始まっていたり、そういうなんかいろんなギャグが散りばめられている作品です。その辺が、いちいちくだらなすぎて面白かったりするんですね。ただ、とにかく攻めてきたので、迎撃しなきゃいけないということで、まあアメリカを中心にですね、国連が迎え撃つんですけど、そのときにも、なんていうんですかね、国と国のエゴがあったりとか、そういう騙し合いがあったりとかっていうので、無能な首脳陣たちとかですね、「こんな危機になっているのに、自分たちのことしか考えてない」とかですね、そういう風刺がめちゃくちゃ込められているタイプの作品です。これ上映時間もすごい短いですし、ほんとに何にも考えずに観られるタイプの映画なので、くだらないなと思いつつも、なんかちょっと、「こういうこと実際あるよね」とか、「なんか、世の中のちょっとこういうとこまずいんじゃないの」みたいのを、皮肉っているところはしっかりとある作品です。泣ける要素は1ミリもないです(笑)。
有坂:観てないこれ。
渡辺:そうなの? これくだらなすぎて、さっくり観られるので。
有坂:SF映画ってさ、特に宇宙とかが舞台になると、やっぱりある程度の予算をかけないと、宇宙のリアルな感じって出せなかったりすじゃん? で、このフィンランド映画ってさ、そこまでできなさそう。
渡辺:でもね、割とちゃんとやっている。宇宙で、宇宙船どうしで撃ち合ったりするんだけど、割とちゃんとやっている。なんで、そこがすごいしょぼ過ぎるっていうことはない。
有坂:そうか、アナログ感で面白いっていうのともまた違うんだね。
渡辺:とは違う。そこは割とちゃんとやっている。
有坂:余計気になる!
渡辺:フィンランドがそういうのをつくっているっていうのも意外だし。
有坂:そうだね、偏見だよね、フィンランド人にはつくれないと思っちゃっているところがね。 渡辺:しかも「2」まである。さっき2のスコアみたら、2.9だった。でも、やっぱり好きな人は好きな作品。
有坂:でも、2が作られたってことはだよね。
渡辺:そうそう。
有坂:1が興行的にも人気があった。
渡辺:これはなかなか知っている人はいないと思うんですけど、さっき見たら、Amazonプライムとかで、僕はU-NEXTとかで、見放題に入ってますので、その辺入られてる方は、ぜひ! もう、お酒とか飲みながら軽い気持ちで見ていただけるやつなので、ぜひ!
有坂:はい、わかりました。じゃあ、そんなマイナーな映画のあと、3本目。これは結構観ている人、多いと思います。



有坂セレクト3.『ウォーリー』
監督/アンドリュー・スタントン,2008年,アメリカ,103分

渡辺:ああ! ディズニーですね。
有坂:2008年のディズニー・ピクサーのアニメ『ウォーリー』です。これは設定としては、地球からなんか人類が、ゴミだらけの地球を捨て去ってしまった。もう人間のいない地球、しかも29世紀っていう、だから700年も経った地球が舞台の作品です。それで、そこにゴミ処理ロボットのね、かわいいウォーリーが、ただひたすらゴミ集めをしているっていうシーンから始まって、可愛いなウォーリーと思っていたら、そのゴミ集めがもうどんどんどんどん、最初は30分くらい。僕この映画のもう前半、20分から30分ぐらいはほんとに完璧な映画だなと思っていて、よく映画の前半部分でおすすめの映画っていわれたら、この『ウォーリー』と、あと『イングロリアス・バスターズ』を挙げるんですけど、ほんとこの2本は完璧だなっていうぐらい、もうまったく無駄がない。そして、映画の世界をなんか無駄なく伝えてくれる。
渡辺:なんか、セリフなかったよね。
有坂:そうサイレント映画なの。喋れないので、しかも1人だから、1人でゴミ集めしていたり、あとゴミをこう集めて、いろんなものを拾ってきた中に、ビデオテープがあるんだよね。で、そのビデオテープがVHSじゃなくて、ベータなの。ベータに入っているのを観るのがウォーリーはすごい好きで、それがね往年のミュージカル。あの「ハロー・ドーリー!」っていうミュージカルで、ジーン・ケリーが監督した映画。本人は、出演していないんだけど、で、その『ハロー・ドーリー』を観るのがウォーリーは大好きで、何度も何度も観ている、と。で、そこに出てくるロマンスのシーンに憧れがある。その後に、物語がいろいろこう展開していった後に、ここにも映ってますけど、イヴっていうウォーリーが恋する相手が出てくるんですよね。だから、いろんなこの映画のいいところってあるんですけど、一本の映画が、こう時空を超えて繋がっていく。なんか映画ってやっぱり演劇と違って、記録できるメディアでもあるわけじゃない? その記録できるっていうのが映画のいいところで、だから、今、僕らが新作として観ているものを、100年後の人も普通に観ることができる。でも、その100年前の映画の影響を受けて、自分の人生が変わったりっていうのは、すごく映画のロマンチックなところだし、僕なんかすごい素敵なところだなと思ってるんだけど、それをなんかこのウォーリーでは、彼なのかな、彼が変わっていくきっかけとして描いている。しかも、もう今はなきビデオのベータを観て、しかも、往年のミュージカルで、ということで。なんかね、ディズニー・ピクサーの映画でありながら、往年のミュージカルのこともさらっと紹介しているところも、なんか作り手の思いを感じられて、個人的には大好きな1本になっています。で、その僕が完璧だって言ったその前半30分は、人によっては、「こんな退屈な映画観たことない」、「あの前半マジありえない」とか、結構批判的なコメントも多いんですよ。
渡辺:そうなんだね。
有坂:いろいろ調べていくと、やっぱり、例えばテレビみたいに「今こういう状況ですよ」っていうのをセリフとか、テロップとかでわかりやすく説明してくれるものが好きな人は耐えられないみたい。ようは状況説明とか何も出てこないから、ウォーリーの淡々とした日常を追っているものは、イコール退屈だって思っちゃう人もいるらしい。
渡辺:なるほど。
有坂:でもね、映画はそうやって説明台詞とか、テロップとかをなるべくなしで伝えることがね、映画の本来のいいところでもあるので、ぜひ、その前半30分に注目して、まだ観てない方は、観ていただけたらと思います。
渡辺:まあ、でもピクサーでも結構トップクラスにいい映画だなって思うけどね。
有坂:そうだね。ほんとにそう思う。
渡辺:なるほど、そうきましたか。じゃあ、ちょっとそれにまた乗っかってというか関連して、その設定的に地球が住めなくなってというのに近い設定でいうと、地球がもうこのままだと住めなくなるから、地球以外のところに住めるところを探しに行くっていう話なんですけど……



渡辺セレクト3.『インターステラー』
監督/クリストファー・ノーラン,2014年,アメリカ,169分

有坂:出た!
渡辺:これは結構、SFのメジャー作だと思います。2014年なんで、割と新しめの作品ですけど、監督はクリストファー・ノーランっていうですね。 『TENET テネット』とか、『ダンケルク』とかをつくった人です。SF好きの人だと、割とベスト映画にあげるようなタイプの、評価もめちゃくちゃ高い作品なんですけど、これ家族がいて、そのお父さんが、宇宙飛行士として、「宇宙に住めるところはないか?」っていう、旅立っていくという話で、いろんな星に行って、その住環境みたいなものを調べてみたいなところではあるんですけど。そこで、いろいろ事故もあったりして「地球に帰れるのか」みたいな、そういうお話ではあるんですけど。実は、地球と宇宙だと時間の進み方が違ったりして、宇宙からすごい交信をするんだけど、地球にはもう届かないぐらい遠くに行ってしまっているんですけど、宇宙の方が時間の進みが遅いので、お父さんの方はそんなに歳をとってないんだけど、地球にいる子どもたちは、どんどん大人になっていってみたいな。それで、ようやく交信できて、コミュニケーションが取れるようになったときには、もうお父さんと同じぐらいの年齢に、子どもがなっているみたいな。そういう時空の差を交信したときの軌跡みたいな、そういったところも描かれていたりしてですね。割となんかこう壮大な一大叙事詩みたいな作品ではあるんですけど、すごく物語もよくできていて、面白い話です。
有坂:うんうん。
渡辺:宇宙の離れてるところで、どうやって交信するんだみたいな、なんか、すごいノーランって物理とか化学とか大好きなんだと思うんですけど、すごい、いろんなロジックですね、こういう方式でやればコンタクトが取れるみたいな方程式が、すごい出てくるんですけど、誰も理解できないんじゃないかみたいなのが出てくるんですけど、それで交信するっていうところも結構感動的なシーンがあったりとかですね。そういったところも面白い作品です。で、これ、実はあのティモシー・シャラメが子役で出ているんですね。みんな大好きな王子様のティモシー・シャラメが、まだ全然注目されてない頃に、この家族の息子役として出ています。で、大きくなったときが、ケイシー・アフレックがやっていて、女の子が大きくなったときが、ジェシカ・チャステインがやってます。ジェシカ・チャステインは、この前、アカデミー賞で主演女優賞を確か取ったのかな、もう大物女優になりましたけど、そんな結構今観ると、めちゃくちゃ豪華キャストっていう感じでやっていますし、監督のノーランも『テネット』で、またすごい話題になりましたし、作品としても、SF作品として結構ほんとにトップクラスにくる作品じゃないかなと思いますので、これは結構名作なので、まだ観てない方がいたら、ぜひチェックしてもらいたいなと思います。
有坂:もうもうね、理系の人が大好きなクリストファー・ノーラン。
渡辺:そうだね。
有坂:これ僕が、いろんな人に好きな映画を聞いて回るのが、僕は趣味なんですけど、結構挙がっているね、『インターステラー』。はい、わかりました。じゃあ、そんな順也のクリストファー・ノーランを受けて、それとは真逆の。
渡辺:真逆かい!
有坂:真逆まで振り切ろうという、ほんとにこれ真逆。



有坂セレクト4.『スターシップ・トゥルーパーズ』
監督/ポール・ヴァーホーヴェン,1997年,アメリカ,128分

渡辺:好きだね(笑)
有坂:好きだよね。『ギャラクシー・クエスト』と同じく、偏愛映画の1本です。
有坂:この『スターシップ・トゥルーパーズ』は、どんな内容かと言うと、一言で言うと、「人類vs昆虫」の戦いです。昆虫のなんかメカ昆虫みたいな、そういうちょっと設定的にはB級感のある……。これですね、このパッケージのビジュアルを観ると、割と本格的なSFかなって思うかもしれないんですけど、まあ、もちろんそのこれ結構お金かかってるので、監督が『ロボコップ』のポール・ヴァーホーヴェンなので、超大作としてつくられてるので、CGとかはすごいクオリティが抜群に高いです。ただ、内容がほんとに人類vs昆虫とか、ちょっとね内容は、あえてもうほんとに何にも考えないでも楽しめるような、すっからかんな感じの娯楽映画にしているんですよ。だから、割と全体的に癖は強いんですけど、笑えるし、あとアクションシーンとかは、結構でもね、そのアクションも振り切ったほうがいいってことで、結構グロいシーンとかも振り切って描いています。なので、そういうところで好き嫌いは分かれるんですけど、あくまで映画の中で起こっていることなので、勇気を出して観てみようかなと思えば、きっと今まで体験したことがない128分があなたを待ってます。
渡辺:(笑)
有坂:これさっき「中身がない、すっからかんな」って言ったんですけど、実は表向きはほんとにそういうおバカなSF映画、しかもSFっていう枠だけではなくて、実はこれ前半は学園コメディーみたいな作りになっているんです。で、後半になったら急に悪趣味全開なアクションシーンの連続みたいな、そこの作品の中でも振り幅がすごくあるんですけど、ただこれ、映画の設定としては未来の地球が舞台で、民主主義が崩壊した地球が舞台なんですね。で、地球は、地球連邦政府っていう、その支配下に置かれた人たちの話なんですよ。で、市民権をその地球連邦政府では、市民権を得るためには兵役を経ないといけないっていう、なんか、もういわゆる昔でナチとかみたいな、全体主義みたいな設定になってるんですね。なので、今ねこのウクライナのこととかで、なんか色々、地球が大変なことになってきてる中で、ぜひ、改めてこの映画の設定を踏まえて観てみると、なんか感じることがたくさんあるかなと思うので、僕も改めて観てみたいなと思うんですけど、そういった、昔のナチスとか、そういったものに対しての皮肉みたいな裏メッセージが、実はちゃんと込められているんですね。でも、それをストレートに表現するのが恥ずかしいっていうタイプの監督なんですよ。それをちょっとおバカな表現とか、そういうちょっとこう悪趣味なアクション表現とかで、オブラートで……変なオブラートで包んでしまう“クセすご監督”、オランダ人の監督なんですけど、でも、ほんとに映画としてのエネルギーは、すごいギュウギュウに詰まってる作品なので、ぜひ、これは自分の心のタイミングがあったときに観ていただきたいなと思います。 渡辺:これ、B級じゃないの?
有坂:これ、結果的に、だからB級じゃないんだよね。
渡辺:そうなんだ。
有坂:B級に見せているだけで、しかも、これ続編が出ているんだよね。
渡辺:そうだよね、3くらいまであるよね。
有坂:これ結局、2以降は監督とかが降りちゃって、もうその『スターシップ・トゥルーパーズ』がヒットしたから、プロデューサーが2作目、3作目をつくろうって言ってできたんだけど、1はやっぱり監督の思い。まあ原作もあるんだけど、原作を受けて監督が自分の表現としてつくったものだから、やっぱりもうバジェットも大きいし、監督のこだわりもギュウギュウに詰め込まれてるから、まったく別物として、1だけまず観ていただければなと思います。さっきの順也のね、もうインテリ、クリストファー・ノーランと、真逆なポール・ヴァーホーヴェンの『スターシップ・トゥルーパーズ』が、僕の4本目でした。
渡辺:なるほどね。
有坂:満足!
渡辺:じゃ僕はですね、次は結構正統派のSFをいきたいと思います。
有坂:まさか! 正統派といったら。
渡辺:いや、でもね違うと思います、わかんないけど。



渡辺セレクト4.『ゼロ・グラビティー』
監督/アルフォンソ・キュアロン,2013年,アメリカ,91分

有坂:ああ!
渡辺:『ゼロ・グラビティー』っていうのは、直接的には「無重力」みたいな意味なんですけど、これは、その年のアカデミー賞でノミネートされて監督賞とか撮影賞とか、割とその辺を獲っています。作品賞にはならなかったんですけど。で、主演はジョージ・クルーニーで、どういう話かというと、宇宙に宇宙飛行士が行って、船外作業みたいなことをしているんですけど、そこで事故に遭ってしまって、2人がこうロープでくっついた状態で宇宙に放り出されてしまう。と。で、それをどうにかして宇宙船に戻って、地球に戻らなければいけないというのが、果たしてできるのかみたいな、そういう話なんですけど。この宇宙空間の表現っていうのが、とにかく、めちゃくちゃすごい作品です。なんで、これはぜひ映画館で観てほしい作品なので、配信とかでもいろいろ観られるんですけど、なんかのタイミングで映画館でリバイバルするときに、ぜひ観てもらいたいなと思う作品です。で、その表現として、宇宙空間ってやっぱり真っ暗で無音なんですね。で、この無音の表現っていうのが演出としてあるんですけど、それができるのって、やっぱり映画館なんですよね。もうほんとに真っ暗になって無音状態っていうのを表現できるっていうのは、やっぱ映画館の空間じゃないとできないかなと思うので。そうだし、そのすごくなんて言うんでしょう、主人公の目線で宇宙空間でぐるぐる回転している映像表現とかをするんですけど、その映画館の中で真っ暗の中でこうぐるぐる回る映像とかを見せられると、本当に自分が回転しているんじゃないかみたいな、不思議な映像体験ができるのが、この『ゼロ・グラビティー』です。あと、船内で無重力で浮きながら移動するとかありますよね。そういうシーンがすごくナチュラルで、これ当時、スピルバーグが、あのスピルバーグがキュアロン監督のところにやってきて、「あれどうやって撮ったの?」って聞いてきたらしいんですよね。
有坂:映画少年に戻っちゃったね、スピルバーグが。
渡辺:そうなんですよね。あのスピルバーグが、どうやって撮ったのか教えてほしいって言ってくるぐらい、すごくうまくできてるんですね。この撮影監督っていうのがすごく有名な人で、このとき、アカデミー賞の撮影賞を獲ったんですけど、エマニュエル・ルベツキっていうメキシコ人なんですけど、この映画の監督もメキシコ出身の監督で、そこのコンビなんですけど、このルベツキっていう人は、ここでアカデミー賞を獲ってこの後ですね、実は3年連続でアカデミー賞の撮影賞を獲って、レジェンドになりました。で、翌年がですね、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』という作品で、これはアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥっていう、これもメキシコ出身の監督で、その次の年が『レヴェナント:蘇えりし者』っていう、レオナルド・ディカプリオがクマに食われるっていう映画なんですけど、その撮影もルベツキで、ほんとにこの『バードマン』、『レヴェナント』と、この『ゼロ・グラビティー』で3年連続アカデミー賞の撮影賞を獲るっていうですね、本当にそういう意味で映像の表現っていうところを注目して観ると、本当にすごい映画になってます、どれも。『バードマン』はね、全部ワンワンカット風に、ほんとは全部ワンカットじゃないんですけど、ワンカット風に全部撮ったりとかですね。『レヴェナント』は、馬に乗ってる人を横に見ながら、だんだん鳥のようにこう空に行ってみたいな、俯瞰で撮ってという、どういうふうにカメラを動かしたら、あんなふうに撮れるのかみたいな、もう観たことないような映像を観せてくれるっていうのがこのエマニュエル・ルベツキで、その人が宇宙を撮ったらこうなったっていうですね、本当にもう宇宙の表現ど真ん中だと思うんですけど、ど真ん中すぎて映画館で観てほしいので、ちょっと配信は我慢してでも、なんとか映画館でリバイバルやるときに観た方がいいんじゃないかなと思うような作品です。
有坂:ルベツキは、でも、ほんとに今、順也が紹介した3本は、ほんとに多分100年後にも語り継がれる、「この撮影監督のその技術で、この時代にこんなものを撮ったんだ」っていうのを語り継がれていくような、3本なのでね。ぜひ。撮影ってね、やっぱまず物語から観るので、なかなか目がいきづらいんですけど、やっぱりその物語をどういう角度から、どういう色で撮るかってことで、観る側の深層心理の深いところにまで伝えるかっていうのを、撮影監督はすごい考えてやってるので、ぜひ観てほしいなと思うんですけど……。さっきの順也のパワーワードにやっぱり反応した方が、「レオ様がクマに」(笑)。全部、それが持ってっちゃった。すごく『レヴェナント』が観たくなっちゃっている。
渡辺:宇宙の話していたのに、クマが強かった(笑)。そうなんです。それも衝撃の映画なんで、ぜひ観てもらいたいですけど。
有坂:あれは、まあそうだけどさ。
渡辺:一言で言えば、そういう感じ。
有坂:まあ、そうだね。どうやってね。
渡辺:そうなんですよ。リアルなんで結構。
有坂:このあと、紹介しづらいな。はい、じゃあ、僕の最後5本目は、これちょっとね、短編映画でいきたいと思います。
渡辺:短編?
有坂:挙がってなかったかな? 僕の5本目は1968年の映画です。



有坂セレクト5.『パワーズ・オブ・テン』
監督/チャールズ・イームズ,1968年,アメリカ,9分

渡辺:ああ! その切り口ですか。
有坂:えっと、この映画は、あの“イームズ”ってわかります? 家具デザイナーの、家具でおなじみのイームズ。イームズって実は、家具だけじゃなくて映像をいっぱいつくっているんです。
渡辺:そうなんだよね。
有坂:ものすごいつくっているんです。そのイームズがつくったこれですね、もう代表作がこの『パワーズ・オブ・テン』になります。
渡辺:実験的な、映像だよね。
有坂:で、これあのね、「教育映画」って言われていて、その教育映画を結構つくっていたらしいんですよ、イームズって。その中で『パワーズ・オブ・テン』っていうのは、今改めてこの時代になって脚光を浴びているんですけど、それはなんでかって言うと、もうこの50年近く前にGoogleアースをここでやっていたんです。
渡辺:ほんとだよね。ちょっと度肝を抜かれるよね。
有坂:これ時間でいうと、9分半の短編映画なので、あっという間なんですけど、まあどういう内容かっていうと、この今フィルマークスにあるこのジャケット、これはピクニックをしてる家族がいるんですけど、それを空から撮って、それで、10秒ごとにどんどんどんどん、そのなんていうんだろう、ピクニックしてる人を上から撮って、どんどんどんどん離れてくように、空の方に向かってカメラがどんどんどんどん離れていくんですね。で、どんどん離れていって、空の方からいってどんどんその人間もピクニックしてる人たちも、どんどん小さくなって点になって、もうどんどん見えなくなっていくぐらい、カメラがどんどん上がっていって、ついには宇宙まで行って、宇宙の果てまで行ってしまうんですよ。10秒ごとにどんどんどんどん上がっていって。そこで終わるかなと思ったら、今度は今来た道のりをどんどんカメラが戻ってくるんですね。で、戻ってきたら、さっきピクニックしてる人たちところに行きますよね。で、そこで終わるかなと思ったら、今度、カメラがその人間の体の中にどんどん入っていく。で、体の中に入っていって、もう細胞の、人間のなんていうんだろう、うまく言葉で説明できない。いわゆる素粒子って言われるような、もうその粒子の果ての果てまで行くっていうだけの映画。
渡辺:でも、そこがまた宇宙になっているっていうね。
有坂:そう! だから、もうその宇宙と宇宙で繋がっているっていう、すごい壮大なメッセージが込められた教育映画?
渡辺:教育なの?
有坂:教育映画だったらしいよ。
渡辺:そうなんだ。
有坂:そう思って、いろいろつくっていたらしいよ。
渡辺:すごいよね。今だったら、ほんとにGoogleアースがあるから「ズームして」とか、そういうので、誰もが見慣れている映像ではあるかもしれないんですけど。
有坂:多分すごいのが、この時代ってCGとかない中で、これどうやって撮ったんだろうっていう。しかも、イームズなんて家具もつくりながら、当然どういう手法でつくっているか、ちょっと僕もわからないんですけど、ある程度この9分半のものをつくるのに、結構な時間と労力をかけてつくっていることは間違いなくて。それが、今見てもちょっとそのつくり方がよくわからない。これって映像とか、建築とか、そういうのを大学とかで学んでいる人たちは、授業で教授から観せられたって人が結構多い。なのでね、観たことがある人も、もしかしたらいるかもしれないんですけど、これは、YouTubeで観られるので、もうぜひこの配信が終わったあとに、日本語ナレーションが入ってるのと、英語ナレーションのと両方上がってたので、ぜひ観てもらえれば。
渡辺:短いしね。
有坂:そう9分半なので。もう結構びっくりすると思います。「Googleアースここにあり」っていう内容になってるので、ぜひ観てみてください。
渡辺:なるほど。
有坂:まあ、いろんなSF映画がありますけど、宇宙の果てを見たのは僕はこれしかないので、もう究極の1本ということで、『パワーズ・オプ・テン』を挙げました。
渡辺:なるほど。はいそうきましたか。それを受けて。
有坂:それを受けて、じゃあ宇宙ものの短編?
渡辺:いや、僕は宇宙ものの王道の長編を(笑)、紹介していきたいと思います。



渡辺セレクト5.『オデッセイ』
監督/リドリー・スコット,2016年,アメリカ,142分

有坂:ああ!
渡辺:『オデッセイ』は、リドリー・スコット監督の作品なんですけど、どういう映画かというと、宇宙飛行士の一団が火星に行くんですけど、ちょっとしたトラブルがあってマット・デイモンが置き去りになるっていう話なんですね。で、マット・デイモンが、「どうする俺?」みたいなところで、これほんとにすごいろんな、面白いっていうコメントがあるんですけど、そん中ですごい言われていたのが、“一人DASH村”って言われていて、あのTOKIOのDASH村ありますよね。あれってすごいいろんな昔ながらの知恵を使って、サバイバルするっていうのがあったりするんですけど、本当にこれはもう火星で、一人でしばらくサバイバルしなきゃいけないという環境に置かれた人間がですね、もう科学の知識をフル活用して、そこにあるものを使ってDIYをして、生きのびていく術を、どんどん編み出していくっていう話なんですね。それがめちゃくちゃリアルだし、でもすごくいいのが、この主人公がめちゃくちゃポジティブっていうですね、「俺は絶対に生きのびて、迎えが来るまで生き残ってみせる」みたいな、そういう強い信念と、ポジティブ精神で、何にもないところに畑をつくってですね、ジャガイモとかを植えて、「宇宙でそんなことできるのか」みたいなことを、「こういうふうにやれば水を循環させて、これを土の代わりにしてとかで、このレトルトの芋をこうやって増えたら、あの増えるんだ」みたいなことをですね、ほんとに、いろんな学問の知識をフル活用して、生きのびていくみたいなという話です。あとすごくいいのが、そこにカセットテープがあったのを、それを聴きながら生きていくみたいな感じなんです。
有坂:いいよね!
渡辺:それが80年代のダンスミュージック。
有坂:そうそう、もうディスコ。
渡辺:そう、すごいアゲアゲの音楽でこう踊りながら、そういう作業をしていくみたいな。このポジティブ精神と、すごくいい音楽みたいなところがあると、こんな最悪な環境なのにこんなにポジティブに生きていけるんだっていうことを表現してくれる作品でもあるので、これもですね、観終わった後、すごいポジティブになれるタイプの作品です。これ、役者もマット・デイモンが、こう置き去りにされているのに、すごいポジティブになれるっていう、そういうのをうまく表現できる役者だなと思いますし、あとその置いてっちゃったチームリーダーが、『インターステラー』にも出てたジェシカ・チャステインなんですね。ジェシカ、意外と宇宙ものに出ていて。
有坂:そうだね。
渡辺:で、割とこう強いリーダーの、女性のリーダーシップみたいな役なんですけど、そういうのもすごい似合っていてですね。キャストも結構良かったりとか。あと、やっぱりリドリー・スコット、「面白い映画、やっぱりつくるなぁ」って、そう思いますね。
有坂:あの『ブレードランナー』とか、『エイリアン』もそうだし。
渡辺:うん、そうSF強いし、最近だと、あの『ハウス・オブ・グッチ』っていうグッチ一族の血塗られた歴史みたいなものを描いていた。
有坂:レディー・ガガが主演ね。
渡辺:そうね。割と80何歳なのにコンスタントに撮っている。
有坂:いや、ほんとにすごいよね。
渡辺:今、一線のおじいちゃん監督。
有坂:一線の(笑)。いっぱいクリント・イーストウッドとか、ウッデ・アレンとかいますけど。
渡辺:いますけど、その一角のリドリー・スコットの傑作のSF映画ということで。
有坂:これ、結構笑えるんだよね。
渡辺:そうね。
有坂:それがびっくりで、さっき順也が紹介した『ゼロ・グラビティ』とかだと、やっぱり宇宙空間に取り残されるっていう、人間にとって子どものころ感じた一番恐怖なことをリアルに体験できる。そういうのが、『ゼロ・グラビティ』だとしたら、それを逆手にとって、そのユーモアはを交えてポジティブに描いたのが『オデッセイ』。やっぱり見比べてみてほしいなって思うし、どっちかっていうと、割とシリアスなものが続いていた中で、『オデッセイ』はね、そういうディスコミュージックとか、ポジティブなメッセージとか、ユーモアとか新しい要素を入れてきたことで、またちょっと違った立ち位置の作品になったなと。これもね、ディスコミュージックを散々やった後に、デヴィッド・ボウイですよ。
渡辺:ああ!
有坂:「スターマン」ですよ。
渡辺:そうそう! あれ、結構フルフルで。
有坂:フルで、あれフルでかかるんだよね。だから、やっぱり、それも含めてやっぱりこうリドリー・スコットが。映画に音楽がどれだけ大事かっていうのもすごく感じるし、今は亡きデヴィッド・ボウイも、喜んでるよ。あんな使われ方してもらえれば。
渡辺:そうだね。フルで使われていたね。
有坂:あとね、植物学者なんだよね、マット・デイモンが。
渡辺:そうだね。
有坂:そういう設定だから、なんか自然と、「いや、そんなアイデアは思いつかないでしょ」って思うけど、元々そういう学者が、そういう状況に置かれたから、生きのびる術を、もうすでに自分が知識として蓄えていたっていう、その辺の設定もうまいよね。
渡辺:そう、そうなんですよ。だからDASH村とかが好きな人は、間違いなく好きだと思います。そういう知識フル活用で、サバイブしていくんで。
有坂:うん、(コメントで)観ている人もいるよ。
渡辺:この辺はね、確かにメジャー作でもあるんで、観ている人もいるかもしれない。
有坂:これはね、僕も候補に入れてました。順也が『ゼロ・グラビティ』を挙げたときに、チェンジして『オデッセイ』いこうかなと思ったんだけど、やっぱ、『パワーズ・オブ・テン』だけは紹介したくて、よかったね。
渡辺:よかった、よかった。




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有坂:素晴らしい! はい、という10本。
渡辺:そうですね。
有坂:この10本、まだ一本も観たことがないっていう人がいたら、羨ましいね。
渡辺:うん!
有坂:ほんと羨ましい。いやだって。これ他にもさ、今日挙げなかった作品、結構あると思うけど、例えば『2001年宇宙の旅​​』とかも挙げていないし、まだまだ挙げたいものもあるけど、この10本だけでも十分、楽しめる。結構が幅広いね。宇宙をテーマにしているけど、アニメもあるし、コメディーもあるし、幅広く楽しめると思うので、ぜひ前澤さんが宇宙に行ったりね。どんどんここ数年で宇宙がどんどん身近になってる中で、でも現実が、映画の世界に追い付いたり追い越したりすると、また改めてね、「じゃあ50年前の映画を観る」っていう面白さも出てきたり。でも、これだけなんか、こう時間が経ってもなお『2001年宇宙の旅』を超える、こうSF感は出てきてないよな、とか。だから、スタンリー・キューブリックって人はすごいよねとか、いろんな楽しみ方もできると思うので、ぜひ。なかなかSF映画も苦手な人もいるかなと思うんですけど、そんな方はぜひ今日の10本の中から、ぜひ1本選んで観ていただけたらと思います。


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有坂:じゃあ、最後に何かお知らせがあれば。
渡辺:はい、お知らせというか、まあ、僕のお知らせじゃないんですけど、手紙社の「東京蚤の市」、2年半ぶりですかね。もう普通に、お客さんとして楽しみにちょっと行きたいなと思ってるので。ほんとに、だいぶ久しぶりだなっていう感じで。「昭和記念公園」でしたっけ、立川のね。めちゃめちゃ広いじゃないですか。あそこの真ん中のあの芝生エリアでやるんですか?
有坂:駅に近い無料のエリアね。
渡辺:結構規模も大きいし、すごい楽しみにしております!
有坂:あれ、「コジコジ万博」って終わっちゃったのかな?
渡辺:ああ、立川のね。
有坂:まだやってる。ああじゃあね。「東京蚤の市」に行った後に、もうそこから歩いて5分もかからないとこで、「コジコジ万博」やっているので、セットで行くといいと思います。じゃあ、僕は、キノ・イグルーのイベントの前に、あれなんですよ、僕、まだちょっと発表できていないんですけど、実は初めて映画祭の審査員をやっていて、というのも、映画祭っていっても、「フットボール映画祭」っていうサッカーに振り切った映画祭が、実はもう年に1回毎年開催されていて、今年、その審査員に選んでいただきました。で、映画祭の会期自体はこれからなんですけど、その始まる前に、グランプリを審査員3人で決めるってことで、サッカー映画をここ1週間で怒涛のように観て、毎日ですね、ほんとにドキュメンタリーでは涙をし、メキシコのコメディではもう声を上げて笑いっていう、まあ、そんな生活を続けてたんですけど、数日以内にその映画祭の発表もできると思うので、ぜひInstagramをチェックしていただけたらと思います。

キノ・イグルーのイベントでいうと、6月11日(土)、12日(日)の2日間、代々木上原の「hako」というギャラリーでイベントをやります。パフェと映画のコラボイベントです。これ、実は映画イベントと言いながら、映画の上映はしません。パフェを食べて、パフェの要素。そうえっとね、映画は、パフェって、ゼリー、クランブル、フルーツ、アイス、クリームっていう大きくいうと5つの要素でパフェっていうのができていて、で、この5つの要素、それぞれイメージした映画をキノ・イグルーで挙げます。ゼリーっぽい映画、フルーツっぽい映画、フルーツだったら、ちょっとフレッシュに新鮮でとか、そういう選んだ映画をカードに書くんですね。お客さんは5つの要素を、こう自分の直感で5枚引きます。ゼリー、クランブル、フルーツ、アイス、クリーム。引くことで映画のパフェを完成させるんですけど、引いた映画、紙に映画タイトルが、ひとタイトル書いてあるんですね。なので、新たな映画との出会いをつくりたいなということで、パフェと映画のコラボレーションの企画をやります。で、その引いたカードに書いてある映画のタイトルというのは、2日間で全部で各パーツ90枚ずつ、90本全部違う映画のタイトルを書きますので、ほんとに偶然、セレンディピティじゃないですけど、偶然自分が引いた映画を、なんだろう、例えば興味のないジャンルだから観ないっていうのは簡単なんですけど、でも、偶然引いたものに、きっと何か意味があるに違いないと思えば、もしかしたら自分の世界を広げるきっかけにもなるかもしれないので、そんな形のちょっと変わったパフェと映画のコラボレーションイベントもやります。これは、instagramとホームページの方にも情報を上げて、予約も受け付けていますので、ぜひよろしくお願いします。パフェを担当するのは、松陰神社前の大人気店「agari」のパフェが食べられますんで、ぜひ、そのパフェを食べながら、みんなで引いたカードをもとにこう楽しくね、僕らも含めて映画の話ができたらなと思っていますので、ぜひ予約をお待ちしております。ということで。
渡辺:あっという間でしたね。
有坂:10本の映画を、ぜひ観ていただけたらと思います。では、今月のキノ・イグルーの「ニューシネマ・ワンダーランド」はこれにて終了です。みなさん、今日もどうもありがありがとうございました! また来月!
渡辺:ありがとうございました。おやすみなさい! 映画、観てくださいね。
有坂:『レヴェナント』だけじゃなく、宇宙ものも観てください!!


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選者:キノ・イグルー(Kino Iglu)
体験としての映画の楽しさを伝え続けている、有坂塁さんと渡辺順也さんによるユニット。東京を拠点に、もみじ市での「テントえいがかん」をはじめ全国各地のカフェ、雑貨屋、書店、パン屋、美術館など様々な空間で、世界各国の映画を上映。その活動で、新しい“映画”と“人”との出会いを量産中。

Instagram
キノ・イグルーイベント(@kinoiglu2003
有坂 塁(@kinoiglu)/渡辺順也(@kinoiglu_junyawatanabe