前月の手紙社リスト“本”編で花田菜々子さんがセレクトした「旅立ちの季節に。別れと出会いのための、よい本」を、手紙社の部員が選んだら? 紹介文を読んだだけで思わずほろっとしてしまうのは私だけ?


✳︎ここで紹介した10冊を、手紙舎つつじヶ丘本店の一角に準備しました。どなたでも読むことができますので、カフェタイムのお供にぜひ!



1.『もしあと1年で人生が終わるとしたら』
著/小澤竹俊,発行/アスコム




“これまでの人生に満足している人はたった30%”


必ずやってくる人生最後の旅立ちの季節。その時自分の人生に満足できているのでしょうか? 考えた事はありますか?

この本はあなたに問います。もしあなたの人生が1年後に終わるとしたら。何がしたいですか? 誰といたいですか?


自分の人生に締切を設けて終わりに向き合うこと。それは本当の自分と出会うことでもあるのです。夢、希望、家族、友人の大切さ、そしてこの世界の美しさにも気付きます。


大切な人とこの本をシェアしてみるのも良いのではないではないでしょうか。
(選者・コメント: 田澤正)



2.『西の魔女が死んだ』
著/梨木香歩,発行/新潮社

 



手に取るか……少しためらうタイトルですが、読み終えて悲しい、だけどあたたかな気持ちにもなります。

大好きな「西の魔女」のおばあちゃんとの別れは、孫娘まいにとって「失った音と色は、それからしばらくして徐々に戻ったけれど」「二度と再び、世界が元に戻ることはなかった」ほどの衝撃です。


でも、2年前、季節が初夏へと移り変わる1ヶ月余り、おばあちゃんの家で2人で暮らし、みずみずしい自然とおばあちゃんの愛情に包まれた思い出が甦ります。その時、おばあちゃんが約束してくれたことがありました。

どんな約束なのか、どんなふうにその約束が果たされるのか……おばあちゃんの愛情はいつも変わらなくて、深くて、確かなものなのです。
(選者・コメント: mayuko)



3.『長いお別れ』
著/中島京子,発行/文藝春秋




認知症を患った東昇平は元区立小学校の校長や公立図書館の館長をつとめていた。妻の曜子と二人暮らし。曜子を中心に娘三人、孫との10年間が描かれている。

一見重いテーマですが、前半は作者の中島さん特有のコミカルな表現で描かれています。妻の曜子さんの覚悟と、父の介護に右往左往しながらも成長していく娘たち。タイトルの『長いお別れ』に繋がる流れも良いのです。

誰にでもやってくる家族との別れ、お別れの迎え方、お別れしてからの自分の在り方も少し考えるきっかけになりました。妻であり、母である曜子さんの強さに惹かれます。
(選者・コメント: 伊万里のともこ)


4.『マイナス・ゼロ』
著/広瀬正,発行/集英社




旅立つには、準備が必要です。しかし、大抵のタイム・トラベルものは、準備もなく唐突にタイム・トラベルに出発してしまいますが、このタイム・トラベルは準備万端に、でも少々無理やり出発するのです。旅立つ先は過去。過去に行って、大切な人に出会い、未来で大切な人と別れます。

日本のSFのタイム・トラベルものの最高峰と言われるこの話を読んでいると、出逢いは偶然ではなく、必然なのかなと思えたりするのです。細かな描写は、まるで映画を観るように、読むことができます。
(選者・コメント:シミズミエ<ぬりゑ>)



5.『錦繍』
著/宮本輝,発行/新潮社




離婚した夫婦が10年後に偶然再会し、始まる手紙のやりとり。14通の往復書簡からなるこの小説を初めて読んだのは私が大学生の頃、宮本輝好きの父の影響でした。


まだ学生だった私には夫婦間のことなど分からないながらも、往復書簡を通して、2人の視点が次第に過去から現在、そして未来へと向けられているところに希望を感じ、魅力的だな〜と思いました。


今改めて読み返してみて……ジャンル的には恋愛小説ですが、人生にはこんな形での出会い(再会)や出発もあるのかもしれません。これを読んだらあなたも誰かにお手紙を書きたくなるかも?!
(選者・コメント:♪まちゃこ)



6.『パパの電話を待ちながら』
著/ジャンニ・ロダーリ,訳/内田洋子,発行/講談社




“「あのねパパ、毎晩お話をひとつ、してくれる?」”


仕事で七日間のうち六日間は、薬を売るためにイタリア中を旅するセールスマンの父。女の子は、お話を聞かないことには眠れなかった。約束の時間に、毎晩、どこにいようが必ず家に電話をかけて、娘にひとつお話をきかせた。

この本は、父が娘に電話で聞かせた、いろいろなお話を集めたもの。


『宇宙の料理のメニュー』
の内容は、思わずクスリと笑ってしまう。


想像することは豊かでしあわせなこと。
この本に出会えてそんな風に思う。
(選者・コメント: 坂野 亜希子)



7.『わすれられないおくりもの』
著/スーザン・バーレイ,訳/小川仁央,発行/評論社




たいへん年をとっていたアナグマは、自分の死がそう遠くない事を知っていました。ただ、あとに残していく友だちのことが気がかりでした。そして、別れの時がやってきます。


アナグマとの別れに仲間たちは深い悲しみに包まれます。この絵本は、大切な人との別れの時をスーザン・バーレイがやさしく描いています。


アナグマは私にとっての祖父のようだなぁと思います。姿は見えなくなってしまっても、数々の思い出がよみがえり、たくさんのおくりものをもらっていたのだという事に心がじーんと温かくなります。


悲しみを乗り越えた仲間のモグラが、「ありがとう、アナグマさん」と伝えたように、心の奥から「ありがとう」という思いが湧きあがり、涙が溢れます。何度読んでも、心がじんとする絵本です。
(選者・コメント:hidemi )



8.『50歳になりまして』
著/光浦靖子,発行/文藝春秋




年齢を重ねると、いつの間にか色々なものとの別れがやってくる。体力、知力、記憶力、そしてもしかしたら仕事も……。なんだか希望がない様に見えるが、著者は「はじめに」でこんな風に述べている。


“1つのことを追い、極めることが世間では素晴らしいとされています。でも私にはできそうもない。じゃ、どうする? 深さじゃなくて、広く浅く、数で勝負するのは? 「逃げ」と「新しい挑戦」の線引きなんて曖昧なもんだ。これは「挑戦」だ。私は文房具屋になりたかった。手芸屋にも、花屋にもなりたかった。留学したかった。海外に住んでみたかった。広く浅く全部に手を出そう。今から全部叶えよう。(中略)仕事も友人も住む場所も「世界はここだけじゃない」を知ったら、どれだけ強くなれるんだろう。私はそれを知りたいのです。”


希望が見えないなら、見える場所まで行ってみる。そこで自分がどんな風に感じるか、確かめてみるのも一つの手だ。新しい出会いや挑戦には、いつだって不安がつきまとうが、そんな不安にそっと寄り添って解きほぐしてくれる一冊。
(選者・コメント:部員S )



9.『にっぽんツバメ便り』
写真/宮本桂 ,編/ ポンプラボ ,発行/カンゼン




表紙の顔がなんとも凛々しく、ツバメってこんな顔してるんだなあと、惹きつけられます。春に東アジアから何千キロも飛んでくる渡り鳥。知っているようで知らない生態。美しい写真とツバメ研究者のマニアックな解説や豆知識もあり、ただの写真集ではなく読み物としても楽しめます。

私の友達は、家の中にツバメが巣を作るそう。開けっ放しの家は(平和ですね)、ツバメの子育てが始まったら、かなり賑やかになるとか! 春はツバメの到来が待ち遠しい季節です。
(選者・コメント:三重のtomomi )



10.『いつでも会える』
著/菊田まりこ,発行/学研プラス




シンプルな温かさに包まれた名作です。皆さんは「別れ」と聞くと、どういう印象を持ちますか? 寂しい、悲しい、つらい……ネガティブな言葉が浮かぶ方も多いと思います。

出会いがあれば、別れは必然と訪れます。私がこの本に教えてもらったことは、別れの先にある「繋がり」の形です。別れは寂しいことではありますが、目をつぶって心の中で大事な人を思い浮かべてみましょう。大事な人と、温かい思い出は、あなたの心の中で共に生きています。

身近な人を失った時、「どこにいったのかな?」「あなたならここにいたらどう話していたかな?」と感じてる時、是非読んでみてください。姿・形は失っても、離れていても、自分と大事な人の心の繋がりを感じられるでしょう。
(選者・コメント:ジャスコ )