前月の手紙社リスト“本”編で花田菜々子さんがセレクトした「散歩で世界を発見するための、よい本」を、手紙社の部員が選んだら? 色々な意味でお散歩しやすくなってきた今日この頃(私も地元調布をお散歩しながら、このページで紹介している本の撮影をしました。さあ、どこでしょう?)。ここで紹介した本を片手に、外に出かけてみてはいかがでしょう(脳内散歩も、いいね!)。


✳︎ここで紹介した10冊を、手紙舎つつじヶ丘本店の一角に準備しました。どなたでも読むことができますので、カフェタイムのお供にぜひ!



1.『江戸アルキ帖』
著/杉浦日向子,発行/新潮社





江戸と行き来ができる「免許」を持つ私は、週末、江戸に出かけます。特別なことは何も起こらない日の浅草や日本橋、両国そして今は地名が残っていない町にふらりと。

江戸には何も持ち込めず、持ち帰ることもできないから、右ページには文章を、左ページに心に残った一場面を日記のように描いてます。この本があれば、免許を持たない誰でも、どこから読んでも江戸への散歩気分です。

広い青空の下の日本橋の欄干にもたれて、にぎやかな町や川を行き交う舟をぼんやり眺めるのも良し。それとも春の大潮のこの時期なら、足を延ばして品川で潮干狩りでもしようか。いやいや、暮らしているみたいに長屋で三味線のお師匠さんなんてしてみたい。憧れちゃう(三味線できないけど)。


こんな気軽な感じで“東京にはない江戸”を探しに、旅ほど大げさではなくて日帰り散歩に出かけてみてはいかがでしょう。
(選者・コメント:のぶこ )



2.『ひみつのしつもん』
著/岸本佐知子,発行/筑摩書房

 



青葉がみずみずしい。夕方の散歩など良いかもしれない、が。散歩と聞けば小学生が大喜びでついてくるだろう。リップスティックというスケボーもどきを練習している5年生の息子は、見てて、と母にねだるだろう。すると1年生が母の注目を浴びたくて拗ねてキックボードで飛び出すだろう。それを上の子が追いかけて、夕陽の向こうにふたりは消えるだろう。間違いない。夕飯前に散歩とかあり得ない。だよねー、と岸本さんがうなずく(妄想)。


動かない言い訳を全力で展開する岸本さんは、ほぼ移動しない。そんなことしなくても世界の果ての風景が見えるのだ。その脳内風景の挿絵がクラフト・エヴィング商會さん。神業である。

一日一話。散歩に出たかのようなマイナスイオンが出るエッセイ。脳内だけど。
(選者・コメント:まっちゃん )



3.『ののはなめも』
著/,発行/とおん舎




手のひらサイズのちいさな豆本です。ポケットに入れて、足元のお花を愛でながらお散歩するのにぴったりです。

かわいい手描きの草花の絵に和み、キョーレツな名前のお花…! など、ぱらぱらめくってはふむふむ、とお散歩するのが楽しくなります。

知ってるようでちゃんと本名を知らない、身近な野の花の名前や由来、咲く時間や生息地を知ることができて、お花たちともっと仲良くなれそうです。

巻末に半透明のポケットつきで、気になった野の花を入れておけます。持って帰って押し花にして、手帳に彩りを添えるのも素敵です。
(選者・コメント:ちゅんちゅん )



4.『歩きながらはじまること』
著/西尾勝彦,発行/七月堂




奈良在住の詩人、西尾勝彦さんがこれまでに発表した5つの詩集をひとつにまとめた決定版です。


作中に登場する「カムパネルラベーカリー」が詩の世界を飛び出して、ショップカードのような栞として本にはさまっています。表紙はこんがり焼けた、焼きたてのパンの色、白い帯はパン屋さんの白い袋をイメージしているんだとか…!


奈良の春日大社へ向かう参道や高畑で鹿と一緒にお散歩するような、静かでのほほんとした空気感が感じられる一冊です。この本を片手にお散歩して、心に吹く心地よいそよ風に揺られてみるのはいかがでしょうか?
(選者・コメント:ひーちゃん )



5.『私は散歩とごはんが好き(犬かよ)。』
著/平野紗季子,発行/マガジンハウス




(犬かよ)とついている斬新なタイトルは、筆者が思ったことをそのままタイトルにしたそうです。
※表紙の見た目で判断されたのか、私がこの本を購入した時は「いぬ」のコーナーにありました(笑)


訪れた場所を一つずつ切り取って、zineにしたような、切れ味のある筆者独自の視点にも惹かれます。食への熱量と情報もギュギュッと詰まっていていて、ある意味挑戦的なデザインレイアウトも魅力的。


街歩き×街ご飯×散歩の良き組み合わせ。眺めるだけでも良し、読み込んでも良し。読み続けると、だんだん散歩したくなる参考書です(そしてお腹が空いてくるので、ご飯前に読むのが良いかも)。
(選者・コメント:ジャスコ )



6.『水上バス浅草行き』
著/岡本真帆,発行/ナナロク社




散歩で世界を発見するってつまり。何気ない日常の風景に輝きを見出すってこと。一瞬を切り取りほっこりと世界を紡ぐ、愛おしい短歌達!

「水上バス浅草行き」このタイトルの妙!

イラストもデザインも相まって、読めば素敵な散歩に誘われます。晴れた日に。風に吹かれながらビール片手にパラパラとページをめくれば。きっと、キラキラと「世界があなたを発見」してくれるのです。
(選者・コメント: 田澤専務)



7.『百年の散歩』
著/多和田葉子,発行/新潮社




“わたしは、黒い奇異茶店で、その人を待っていた。カント通りにある店だった 。店の中は暗いけれども、その暗さは暗さと明るさを対比して暗いのではなく、泣く、泣く、泣く、暗さを追い出そうという糸など紡がれぬままに、たとえ照明はごく控えめであっても、どこかから明るさがにじみ出てくる。お天道様ではなく、舞台のスポットライトでもなく、脳から生まれる明るさは、暗い店内を好むのだ。”


 冒頭から少し・不思議な言葉の散歩へと導かれる短編小説集。カント通り / カ―ル・マルクス通り/  マルティン・ルター通り…と、ベルリンの街並みで待ち人に思いを馳せる彼女に(あるいは彼に)果たして待ち人は現れるのか。五月晴れの川辺で、涼やかな風に吹かれながら、見届けてほしい。
(選者・コメント: 多摩川より野川が好きな部員S)



8.『夜をあるく』
著/マリー・ドルレアン,訳: よしい かずみ,発行/ビーエル出版




夜のハイキングをしたことがありますか? 私は絶対しない側の人だと思っていましたが、そこには、不思議な未知の世界がひろがっていました。


この絵本を書店で手に取り、ページを開いた瞬間、ひんやりとするような、真夜中の山の空気感や、におい、しーんという静寂の音が、そこに蘇りました。


この絵本は、こどもたちが、おかあさんに真夜中におこされて、おとうさんと4人、夜の山へ冒険にでかけるお話です。全編をとおしてベースとなっている、おちついたトーンの藍色のページをめくっていくドキドキ感。


真夜中、という、なにか特別な魔法がかかっているような、ちょっとこわくて、でもなじんでいくと、いごこちのよい異空間。家族といっしょだから、こわくない! という幼い頃のノスタルジックなきもち。夜の森や動物たち、湖の姿。


そして、最後に、歩いてきたご褒美のような、朝日が山々を照らしはじめる瞬間の神々しい色彩。家族での達成感、雑多なことに埋もれる毎日の中での希望、そして、世界はこんなにすばらしかったんだよね・・! ということに、じわじわと心がほどけていきます。


絵本のページをめくる、数分間の心のおさんぽ。ぜひ、味わってみてください。
(選者・コメント:サンディエゴのともみ )



9.『文房具と旅をしよう』
著/寺村 栄次 , 浅井 良子, スコスステーショナリーズカフェ ,発行/スペースシャワーネットワーク




文房具屋さん2人の、5ヶ国買い付け旅日記。


行きの飛行機で飲み物を頼む時「緊張のあまり『I Cora(私はコーラです)』と言ってしまった」エピソード…フィンランドでの包装紙にまつわるエトセトラ…旅慣れない様子や、文房具への好き! の気持ちが飾らず綴られていて、「うんうん」と頷きました。

2人は心がけたことを4つあげていて、1つが「たくさん歩く」こと。この本に教わって以来、散歩でも、旅でも真似しています。あの道この道を歩いて、坂道をのぼってくだるほど、初めは他人の顔をしていた街と仲良くなれる気がします。

文房具・スーパーマーケットお土産の写真もたくさん載っています。お土産話を聞くように、文房具探しの旅を楽しんでください♪
※現在、スコスの本郷の店舗は閉店、オンラインのみです
(選者・コメント:mayuko )



10.『DOGS AND CHAIRS DESIGNER PAIRS』
著/Cristina Amodeo,発行/Thames & Hudson; Illustrated




こんなに風変わりな、いや、お洒落な犬や椅子に出会ったら散歩に出かけたくなる。

最初この本を手にしたのは、その色味が好みだったことと、その表紙に凹凸が感じられたから。そして、この本に出会った場所が特別な場所だったから。


この本を手にする度にその旅を思い出す。
そして、旅に、散歩に出かけたくなる。
あっ! あのコ あの本に載ってたコだ!
あっ! あのイス あの本に載ってたイスだ!!


ん? よく見比べてみると……あああああ!!!! そういうことか。むふっ。
(選者・コメント:坂野亜希子)