あなたの人生をきっと豊かにする手紙社リスト。今月の本部門のテーマは、「ビールが飲みたくなる&ビールがもっとおいしくなるための本」。その“読むべき10冊”を選ぶのは、ブックコンシェルジュや書店の店長として読書愛を注ぎつつ、私小説も人気を博している花田菜々子さん。「雰囲気こそ大事なのでは?」という花田さんが雰囲気で(いい意味で!)選ぶ、ジャンルに縛られない10冊をお届けします。


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1.『おいしいアンソロジー ビール :今日もゴクゴク、喉がなる』だいわ文庫
著・文/阿川佐和子 ほか,発行/大和書房




まずはタイトルもそのままの、ザ・『ビール本』。ちょっとなつかしい時代の作家を中心に、ビールについての短いエッセイを厳選して集めた1冊です。時代が違うとビールはこんなふうに飲まれてたんだなあとか、ビールにもいろんな顔があるんだなあとか、発見がいっぱい。


2.『ほろよい読書』双葉文庫
著・文/織守きょうや、坂井希久子、額賀 澪、原田ひ香、柚木麻子,発行/双葉社




同じくアンソロジーですが、こちらは女性による女性のための、お酒にまつわる小説集。どの物語も異なる味わいながら、面白さは折り紙つき。ビールに限らず、お酒を飲むことが好きな人なら絶対に楽しめると思います。ひとり飲みのお供にもおすすめ。


3.『BOOKSのんべえ お酒で味わう日本文学32選
著・文/木村衣有子,発行/文藝春秋




酒と食文化だけでなく文学にも詳しい木村衣有子さんが、日本の《お酒文学》の歴史を紐解き、お酒文学を解説する……という、面白くないわけがない1冊。「お酒ってサイコー!」と盛り上がるのではなく、しっかりどっぷりお酒と向き合いたい(?)方はぜひ。


4.『風の歌を聴け』講談社文庫
著・文/村上春樹,発行/講談社




言わずもがな村上春樹の超有名なデビュー作ですが、実はこれ、とんでもなく大量のビールが出てくる小説でもあるんです。1970年の夏、「25メートルプール一杯分ばかりのビール」を飲みほすほど退屈な夏をすごした男子ふたりの物語。ひさびさ読み返してみるのも新鮮かも。


5.『ビール語辞典 ビールにまつわる言葉をイラストと豆知識でごくっと読み解く
著・文/リース恵実,監修/瀬尾裕樹子,発行/誠文堂新光社




何かを好きになればなるほどもっと知りたくなるものです。イラストがかわいいこちらの本でがっつり勉強してみるのもいいかもしれません。子ども向けの学習漫画のような読みやすさなのに内容がビールっていうのもよいですね。ビール好きの人にプレゼントしたくなる本。


6.『エンジョイ!クラフトビール 人生最高の一杯を求めて
著・文/スコット・マーフィー、岩田リョウコ,発行/KADOKAWA




もはやブームを超えて不動の人気となったクラフトビール。世界中のクラフトビールを飲み歩いたというアメリカのミュージシャンと、サウナやコーヒーなどでマニアック道を追求してきた最強のふたりがクラフトビール愛を語り、魅力を伝える1冊です。ちょっと洋書テイストなページの雰囲気も好き。


7.『23時のおつまみ研究所
著・文/小田真規子,絵・漫画/スケラッコ,発行/ポプラ社




ビールを楽しみたいならビールを知るだけでなく、おつまみについても理解を深めていかなければなりません。料理研究家と漫画家がタッグを組んだ、最高のおつまみ研究本。ほんとうに理科の実験をするようにかまぼこの最適な厚さを探したり、パリパリ食感の研究をしたりと、楽しさがいっぱいです。


8.『ツレヅレハナコの揚げもの天国
著・文/ツレヅレハナコ,発行/PHP研究所




おつまみの本をもう1冊。ビールにいちばん合うおつまみって……、結局……、揚げものなんじゃないんですか? いや、わかります。揚げものなんてめんどいし暑いし、買ってきた方が経済的よねえ、ってそれはそうなんですが、この本読んだら楽しそうすぎて価値観変わると思います。実際私もこの本を読んでから家で揚げものをする人になってしまいました。

9.『もう一杯だけ飲んで帰ろう。
著・文/角田光代、河野丈洋,発行/新潮社




もうタイトルからにじみ出るこの幸福感。作家とミュージシャン、ともにお酒が大好きなふたりの飲み歩きエッセイ。ふたりでいっしょに飲みに行った同じ日のことを、角田さんと河野さんそれぞれが別のエッセイにするというスタイルも新鮮。夫の目、妻の目、そんな『夫婦モノ』としても楽しめる1冊です。

 

10.『一人飲みで生きていく
著・文/稲垣えみ子,発行/朝日出版社

 

 

誰かと飲むのもいいですが、ひとりで飲むのもまた素敵。でもやっぱり常連さんでにぎわうようなお店にひとりで入るのは勇気がいる……? と、小心者で他人の目を気にしてしまう人におすすめなのがこちら。気弱な著者がおどおどと一人飲みデビューにチャレンジし、失敗から傾向と対策を考えて一人前になるまでの変化球エッセイ。一人飲みを身につければ老後も怖くない! のかな……?


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選者:花田菜々子

流浪の書店員。あちこちの書店を渡り歩き、2018年から2022年2月まで「HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE」で店長をつとめる。2022年9月1日に自身の書店「蟹ブックス」を東京・高円寺にオープン。著書に『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』など。