
あなたの人生をきっと豊かにする手紙社リスト。今月の本部門のテーマは、「会話と対話をめぐる本」。その“読むべき10冊”を選ぶのは、ブックコンシェルジュや書店の店長として読書愛を注ぎつつ、私小説も人気を博している花田菜々子さん。「雰囲気こそ大事なのでは?」という花田さんが雰囲気で(いい意味で!)選ぶ、ジャンルに縛られない10冊をお届けします。
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1.『あなたはなぜ雑談が苦手なのか』新潮新書
著・文/桜林直子,発行/新潮社

「突然ですが、雑談って得意ですか?」と聞かれれば、ほとんどの人が「うーん、苦手かも」と答えるかもしれません。でも著者の桜林直子さんはなんと雑談のプロで、雑談を仕事にしているというから驚き。本書は雑談のネタ集ではなく、ひとりで考えることと相談(カウンセリングなども)のあいだにある雑談の大事さ、深さについて魅力いっぱいに紹介しています。
2.『かわいい中年』
著・文/久保ミツロウ、能町みね子、ヒャダイン、前田隆弘,発行/中央公論新社

こちらはまるで雑談のお手本のような鼎談集。漫画家、文筆家、音楽クリエイターで友人同士である3人がほんとうに何のテーマもなくおしゃべりする様子を収録。笑いを取ったり、シリアスになったり、話が飛んだり、つながったり、これぞ雑談というダイナミックさ。それでも中年の迷いや自分の面倒臭さを引き受けながら笑って話せる3人の姿に、ただただ脱帽です!
3.『わたしたち雑談するために生まれてきた、のかもしれない。 ゆとりっ娘たちのたわごとだけじゃない話』
著・文/ゆとたわ(かりん&ほのか),発行/KADOKAWA

最近は有名無名にかかわらず、ポッドキャストで発信する人が増えています。オープンとクローズのあいだのような場所でのおしゃべりって、すごく今っぽいのかも。こちらは都内の会社員のふたりがなんと8年も続けているという人気番組の書籍化。「スタバの隅の席の会話を盗み聞きできる」がコンセプトだそうですが、考え方や発想のセンスも楽しくて、ハッピーな気持ちになれます。
4.『そう来る? 僕の姉ちゃん』
著/益田ミリ,発行/マガジンハウス

益田ミリさんの人気シリーズ第5弾。場所はずっと家のリビング、姉と弟の軽快な会話だけが永遠に続きます。自身の恋愛哲学や人生の教訓を雄弁に語る姉と、それを呆れながら聞いたり、さらっといなしたり、でもときどき共感してあげる弟のバランスが絶妙で、ついつい読み耽ってしまう。友達じゃなく、なんでも話せるこんな「弟」がほしかった! と思うこと間違いなし。
5.『面白くない話辞典』
著/伊藤竣泰,発行/飛鳥新社

ちょっと怖い会話本もご紹介しましょう。カフェなどで隣の席の会話を「つまらない」と感じることは正直ありますが(性格悪いですね……)これはなんと、そんな実際の会話を10年以上採集し続けて本にしたとのこと。あまりのリアルさに「ううっ、耐えられない……」と呻きつつ、反面教師にするもよし、笑って楽しむもよし、話のつまらない上司のデスクに置いておくのもよし! な1冊。
6.『「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか? 認知科学が教えるコミュニケーションの本質と解決策』
著・文/今井むつみ,発行/日経BP

人と話すことはいつも楽しいわけではないかもしれません。特に仕事でうまく行っていない人とのやりとりや、家族とのいつもの言い合い……。「前にも言ったのに」「全然わかってもらえない」という不満は誰もが知っているもの。言葉遣いや言い方ではなく、認知科学の視点からコミュニケーション不全を捉え直して、解決へと導く実用書です。
7.『そいつはほんとに敵なのか』
著・文/碇雪恵,発行/hayaoki books

楽しく読めるのだけどハッとさせられるエッセイ集。昨今のSNSはすぐに誰かを「敵」か「味方」かに分け、気がつけば自分のまわりは同じ意見を持った心地いい「仲間」ばかり。違う考えの人と喧嘩してみたい、話してみたいという思いのもと、自分と相容れない政党に投票した人に話を聞きに行ったときの対話を収録もしています。心地よさの外側に出ることの大切さを教えてくれる本。
8.『動物たちは何をしゃべっているのか?』
著・文/山極寿一、鈴木俊貴,発行/集英社

大ベストセラー『僕には鳥の言葉がわかる』の著者、鳥の研究者と、ゴリラ研究の第一人者のふたりが動物の言語について、最新の知見をもとに語り合った、最高に知的好奇心が満たされる内容。動物の賢さや面白さにため息が出るとともに、人間の愚かさにうなだれてしまいそうですが、ここはひとつ、動物にコミュニケーションを学ばせてもらいましょう。
9.『専門家なしでやってみよう! オープンダイアローグ 安全な対話のための実践ガイド』
著・文/石田月美、頭木弘樹、鈴木大介、樋口直美,発行/晶文社

統合失調症などの精神医療のケアとして注目される「オープンダイアローグ」。患者をまじえたチームで問題について話すという対話の療法なのですが、なんと専門家がその場にいなくてもできる!? それぞれに障害や病気を抱えた4人のライターが挑戦。ふだんの会話と異なるルールで行われる対話の場はとても面白くて、会話・対話についての概念がひっくり返ります。
10.『刑務所で当事者研究をやってみた 対話実践とチーム処遇が扉をひらく』
著・文/向谷地生良、村上靖彦,発行/医学書院

これはもう究極の対話と言えるかもしれません。刑務所への出入りを繰り返し、人とのコミュニケーションに困難を抱える受刑者を中心に、更生や反省を促すためではなく、自分のことを話してもらうという取り組みをまとめた本。最初は得体の知れないモンスターに見えた犯罪者の姿がどんどん変わっていく……そして予想外の結末! 人と話すということはこんなにも強い力があるのかとただただ驚きです。
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選者:花田菜々子
流浪の書店員。あちこちの書店を渡り歩き、2018年から2022年2月まで「HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE」で店長をつとめる。2022年9月1日に自身の書店「蟹ブックス」を東京・高円寺にオープン。著書に『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』など。
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