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あなたの人生をきっと豊かにする手紙社リスト。今月の本部門のテーマは、「『3』が効いてる本」。その“読むべき10冊”を選ぶのは、ブックコンシェルジュや書店の店長として読書愛を注ぎつつ、私小説も人気を博している花田菜々子さん。「雰囲気こそ大事なのでは?」という花田さんが雰囲気で(いい意味で!)選ぶ、ジャンルに縛られない10冊をお届けします。
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1.『落下する夕方』
著・文/江國香織,発行/KADOKAWA
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江國香織さんのかなり初期の作品ですが、ずっと大好きな1冊。恋人を奪った憎き女のはずの華子、なぜか彼女と同居している主人公、そして元恋人の3人の不思議な三角関係。不思議ちゃん的な華子の魅力と江國さんにしか描けない透明感あるストーリーに魅了されます。
2.『おもろい以外いらんねん』
著・文/大前粟生,発行/河出書房新社
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こちらは男子3人の物語。お笑いコンビとして活動する2人と、その2人をそばで見守る高校時代の元同級生の関係性がよい。お笑いが好きな人はもちろん、ジェンダーや“ホモソ”、時代の変化に興味がある人にもことばで熱いシャワーをぶっかけてくれるような大胆不敵な青春小説。
3.『今日は誰にも愛されたかった』
著・文/谷川俊太郎、岡野大嗣、木下龍也,発行/ナナロク社
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同じ男子3人組でもこちらは80代&30代の実在する3人組。交換ノートのように詩と短歌をつないでいってどこへ転がるかわからないままひとつの作品を作り上げた1冊は感想戦まで収録されていて、「こんなこと考えながら描いてるんだ!」と知る楽しさはライブ感に溢れていて新鮮。
4.『月に3冊、読んでみる?』
著・文/酒井順子,発行/東京新聞出版(中日新聞東京本社)
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ブックガイドでブックガイドを紹介するというのはなんだかズルな気もしますが、テーマを選んで集中してまず3冊読んでみるというのは、ただなんとなく読むよりもぐっとそのテーマを吸収できそう。自分の読書をひろげたい人に酒井さんの方法、おすすめです! 読み方の勉強にぜひ。
5.『フランス人は、3つの調理法で野菜を食べる』
著・文/上田淳子,発行/誠文堂新光社
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このシリーズ、最近すごく売れているのですがみなさんご存じでしょうか。フランス人の、なぜか「3」のシリーズ。ちなみにネタバラシしておくと3つの調理法とはサラダ、エチュベ(蒸し煮)、オーブン焼きとのことです。あっそう、って開いてみたらセンスのかたまりで、まんまと買ってしまいました。
6.『マリコ、うまくいくよ』
著・文/益田ミリ,発行/新潮社
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20代、30代、40代。同じ会社に勤める3人のマリコは別に仲良しなわけでもない通りすがりのような存在。それぞれの立場でのお互いを見る目はときに厳しいけど、ときに連帯するし応援もする。自分が今、この年齢を生きるということの意味を改めて考えさせてくれるやわらかな漫画作品です。
7.『三つ編み』
著・文/レティシア・コロンバニ,発行/アンドエト
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カナダのエリート女性弁護士、イタリアのかつら工場の娘、インドの不可触民の少女。決して交わるはずのない3人の人生が次々に描かれる小説で、面白いけどどう繋がるの?と思いながら読みましたがラストですべてがつながり、途方もない感動に襲われます。生きることが苦しくても、私たちは見えない場所からでもきっと支え合える。そう信じさせてくれる1冊。
8.『バルト三国 愛しきエストニア、ラトビア、リトアニアへ』
著・文/Sanna,発行/書肆侃侃房
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紹介ももう8冊目ですのでややこじつけなこんな紹介もお許しを。バルト三国はロシアのちょっと左にあって、北欧と東欧のいいとこどりみたいなすてきな場所です。で、私が本好きのみなさんに声を大にして言いたいのは、行く予定がなくてもガイドブックを読むのは楽しいということ。特にこのKanKanTripは見てるだけで幸せ溢れるシリーズなのでぜひ。
9.『電話・睡眠・音楽』
イラスト/川勝徳重,発行/リイド社
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つげ義春の昔の漫画かと思うような絵と「ヌーベルヴァーグ」とも評されるアート感の強い作風で話題となった1冊。それはさておき、このタイトル、かっこよくないですか? つまりこう……それっぽい単語を3つつなげればだいたい何でもかっこよくなるんではないか、という仮説。ぜひいろいろくっつけて試してみてください。
10.『油揚げ、豆腐、こんにゃく』
著・文/有元葉子,発行/家の光協会
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そんな仮説を打ち立てた矢先に本棚で出会ったのがこの衝撃的なタイトルの1冊。油揚げ、豆腐、そのあとががんもどきとかじゃなくてこんにゃくってところがグッとそそりますよね。で、これがまた中身も最高なんですよ。黒バックに油揚げの甘辛く煮たやつの写真がじわじわ脳にしみてきます。というわけで電話チームと油揚げチームの団体戦は油揚げチームの勝利!! ではまた来月〜!!
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選者:花田菜々子
流浪の書店員。あちこちの書店を渡り歩き、現在は「HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE」で店長をつとめる。著書に『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』など。