あなたの人生をきっと豊かにする手紙社リスト。今月の本部門のテーマは、「テンション上がる! 元気が出る! 旅の本」。その“読むべき10冊”を選ぶのは、ブックコンシェルジュや書店の店長として読書愛を注ぎつつ、私小説も人気を博している花田菜々子さん。「雰囲気こそ大事なのでは?」という花田さんが選ぶ、ジャンルに縛られない10冊をお届けします。
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1.『一泊二日 観光ホテル旅案内』
著・文/甲斐みのり,発行/京阪神エルマガジン社
どことなく昭和の香りの残るレトロな観光ホテル。ダサい? 古臭い? いやいや、甲斐みのりさんの手にかかれば最高のワンダーランドに見えてしまうから不思議。海外にもなかなかいけないこのご時世、ここに載っているホテルでみんなで大人の修学旅行したい。
2.『世界の夢のショッピングモール&デパート』
編・著/パイ インターナショナル,発行/パイ インターナショナル
ちょっとしたブームとなった「世界の○○」系の写真集。その中でも特にニッチなこの1冊……。レトロな建物も好きだけど、世界のバブリーな商業施設の多様さを見比べるのも楽しい。館内を爆走するジェットコースターとか水上都市を再現した売場とか……やりすぎでうれしくなります。
3.『ジェットコースターにもほどがある』
著/宮田珠己,発行/集英社
そういえば最近ジェットコースターって乗ってません。みんなは乗ってるのかな(みんなって誰)。旅エッセイのゆるさでは右に出るものなし、の宮田珠己さんが最強のジェットコースターを求めて世界で乗りまくる1冊。そうだ、楽しいってこういうことだった。
4.『メトロタシケント』
著・文・写真/Yonagadou,著・文/Daifukushorin,発行/大福書林
神は細部に宿る、という言葉が好きです。旅も名所だけよければよいというわけではない。これはウズベキスタンの地下鉄のホームだけでまるごと1冊、のとびきり異色な写真集。でもこれが1冊の本にする価値があるくらい美しくて、見入ってしまいます。ちなみに第2弾でリスボン編も出ました。
5.『旅はゲストルーム : 測って描いたホテルの部屋たち』
著/浦 一也,発行/光文社
建築家による旅エッセイ、のようなものなんだけど、ちょっとちがうのはひたすらホテルの部屋を計測して間取りを書いて部屋の話ばっかりしてること。間取りマニアや建築好きにはたまらないのはもちろんのこと、専門家目線のちょっとインテリな話が聞けて二度おいしい本。
6. 『ほんとはかわいくないフィンランド』
著・文/芹澤 桂,発行/幻冬社
北欧にそんなに憧れはないのですが、これを読んだら一気に好き度が上がってしまった。フィンランドで結婚・出産を経た日本人の「異文化発見エッセイ」と言ってしまえばそれまでなんですが、なんかいいんですよ。まっすぐなワクワクが伝わるというか。北欧好きな人なら絶対読んで損なし。
7.『旅がなければ死んでいた』
著・文/坂田ミギー,発行/ベストセラーズ
失恋で身も心もボロボロになったアラサー女子が傷ついた心を癒す旅に出た……はずが、予想裏切りまくりのエピソードだらけの世界一周旅行記。なぜか全裸で自転車レースに参加したり、あぶなそうな薬を飲んでシャーマンの儀式に参加したり。ドタバタで大胆なのだけど心の芯が美しいから、読むと元気が出ます。
8.『恋するように旅をして』
著・文・写真/角田光代,発行/講談社
今や文学界を代表する作家のひとりである角田光代さんですが、若い頃はかなり自由に海外をひとりで飛び回っていた旅好きだったのですね。ワイルドな笑えるエピソードから心を突くようなせつなさまで、心の動きを綴らせたらそれはもうプロの技。旅好きの人ならマストな1冊。
9.『カフーを待ちわびて』
著/原田マハ,発行/宝島社
こちらも同じく大人気作家である原田マハさんのデビュー作。沖縄の小さな島を舞台に繰り広げられるピュアでちょっと不思議な恋愛のストーリーは日々の生活に疲れた心を洗い流してくれるようで、しかも沖縄の青い空と海を猛烈に感じさせてくれる。沖縄に!! 行きたくなります!!
10.『犬が星見た ロシア旅行』
著・文/武田百合子,発行/中央公論新社
もはや王道すぎる旅日記のド定番だけどやっぱり読み継がれてほしいから。まだ海外旅行が当たり前じゃなかった頃の、夫婦のロシア旅日記。きっとすごく貴重な経験のはずなのに、無理に感動を見出したりせず淡々とした態度に自由な心のあり方を感じてうれしくなる。読んだら日記を書きたくなるし、旅に出たくなるし、自分もちゃんとほんとうの心で生きよう、と思う。
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選者:花田菜々子
流浪の書店員。あちこちの書店を渡り歩き、現在は「HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE」で店長をつとめる。著書に『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』など。