前月の手紙社リスト“本”編で花田菜々子さんがセレクトした「甘いものが恋しくなる本10冊」を、手紙社の部員が選んだら? 甘い物案内、甘いレシピ、甘いお話‥‥‥。紅茶でも飲みながら、ゆっくりとお楽しみください。


✳︎ここで紹介した10冊を、手紙舎つつじヶ丘本店の一角に準備しました。どなたでも読むことができますので、カフェタイムのお供にぜひ!



1.『和菓子のアン』
著/坂木司,発行/光文社




ご贔屓の和菓子屋さんが、ご近所にありますか? 遠い昔、お茶のお稽古で練り切りを選ばせてもらうの、楽しみだったなあ。

こちらの小説の舞台はデパ地下、和菓子屋“みつ屋”。謎解き連作短編集です。デパ地下好きにはたまらない舞台裏。和菓子がもともと好きな方は物足りないかもしれませんが、初心者アンちゃんと一緒に和菓子の魅力を再確認できます。

アンちゃんは、ふくふくした外見を気にする女子です。高校を卒業して進学も就職もせず、何もない。とは言え、後ろ向きでもなく、明るいアンちゃんは何かしなきゃとバイトを決めます。デパート特有のフロアの動きを学んで、和菓子を学び接客を学び、アンちゃんは成長していきます。


昨年3巻目が出版されました。続編も楽しみなシリーズです。
(選者・コメント:まっちゃん )



2.『わくわく ほっこり和菓子図鑑』
著/君野倫子,発行/二見書房

 



とにかく餡子が好きな私ですが、海外生活も長くなると、ほんとうにおいしい和菓子をすぐに手に入れるのは、叶わぬ夢。日本に帰国したときに、出会いたい、おいしくてかわいい和菓子たちのことを考える時、いつもこの本がそばにいます。 


 このかわいらしい本をよんでいると、ふわふわと日本全国の和菓子をめぐる妄想の旅をしているような気分にひたれます。 子供の頃、何時間でも図鑑をながめていたころの「わくわく感」。まさに、そんな気持ちになれる、おとなの和菓子の図鑑なのです。 


 着物スタイリスト、売場や和物の企画プロデュース、日本文化のコラムニスト、そして松本幸四郎さんとの共著や「妄想歌舞伎」というトークショーなど、幅広い活動をされている、ロサンゼルス在住の君野倫子さんの和菓子への愛がこもった本です。
(選者・コメント:サンディエゴのともみさん)



3.『みんげいクッキー』
著/Trigo e cana,発行/誠文堂新光社




初めて見ても、どこか懐かしくほのぼのとしてしまう郷土玩具。 昔からほとんど変わらぬその姿……永遠の可愛さ、恐れ入ります!

そんな郷土玩具をアイシングクッキーで表現したこの本。 まずP8-9の見開きページの東西大集合で持っていかれます! アイシングのつるりとなめらかな質感、ちょっと怖めの表情の玩具たちもまーるく魅せることで愛嬌抜群です。 思わず自分にゆかりのある代表玩具を探したくなります 。私の“推し玩”(⁉︎)セワポロロや鳩笛、福獅子を発見し荒ぶり! 


 後半の作り方の技がまた面白い! こまやかな細工や、質感の再現などお見事です。 各説明を読み、ほうほう、と知れば知るほど、甘いものも郷土玩具も恋しくなる本です。 玩具は手のひらサイズが多いので、ぜひお側に招いてみて下さい。 見るたびにふふふ、と和みますよ。
(選者・コメント:あんぬぷり)



4.『お菓子読本』
発行/明治製菓




キャラメル、ヌガー、タフィ、ドロップ、飴菓子、錠菓、乾燥物、ゼリー、マシマロ、ボンボン、掛物…これはすべてキャンディーの種類。ハードカッティング、ソフトカッティング、ロータリーモールド法、ラウドプレス法、ワイヤーカット法、デポジット法、焙焼…これはすべてビスケットの焼き方。ビスケットに針穴があるのは何故?

チョコレートの舌触りと口溶けを科学的に解説。カールの原料の話から製造工程まで。お菓子の流通経路。江戸時代のおやつは何? お菓子にかかわる切手(!)。これらはこの本を読めばすべてわかります。なんと、昭和52年に明治製菓株式会社が出したお菓子について網羅された本なのです。自社製品についての情報を、企業秘密なんてそっちのけで惜しみなく披露してくれています。


昭和生まれには懐かしいお菓子のパッケージも胸熱ポイント。古本屋さんで見つけたらそれはもう運命。 ぜひ手に取ってみてください。
(選者・コメント:みやこ)



5.『ルルとララのガトーショコラ』
著/あんびるやすこ,発行/岩崎書店




かわいい2人の女の子『ルルとララ』が営んでいるのは、メープルストリートのつきあたり、森の入り口にある小さなおかしやさんです。そのお菓子屋さんに来るお客さんは、森の動物たちや妖精、ときどきオバケもいたような……。


今回訪れてきたのは、ハリネズミのローラ。チョコレートのケーキを食べたいということですが、2人はどんなお菓子を作るのでしょうか……。

『ルルとララ』が、訪れてくるお客さんたちを想う気持ちから生まれる心のこもったお菓子は、恋しくなり、愛おしさを感じさせてくれます。そのレシピもイラストで紹介されており、とても素敵です。

選書にあたって、北島家ラジオを聴いている時に、娘に、甘いもの食べたくなる本って何かある? と聞くと、『ルルとララ』でしょと。……という経緯がありご紹介させていただきました。こんな甘いエピソードが生まれるのは、あとどれくらい続くのか……父はビターになってしまうよ笑
(選者・コメント:宮村直弘<自称:マステ王子>)



6.『旅とデザート、ときどきおやつ』
著/平澤まりこ,発行/河出書房新社




世界16か国で出会ったスイーツって? と食いしん坊にはたまらんエッセイ本です。

旅する平澤さんが甘いものに出会うのは、友人宅だったり、お勧めされたお店だったり、山小屋だったり、通りすがりの屋台だったり、様々なシチュエーション。そして現地の様子やお店の人、ドライバーとのやりとりなど、くすっと笑える臨場感。サウナに行ってから食べるデザートや、のびるアイスを受け取るまでなど、食べるまでの時間も楽しみのうち♪


本の半分を占めるイラストページには、パッケージやレシートも登場し、お店のおじさんやおばさんの姿からは、ほのぼのとした異国感が漂います。私の愛するスペインのチュロス、ポルトガルのパステルデナタ、トルコのバクラヴァ、途中のコラムに出てくるスイーツも、なるほど~とうなづくものばかり(笑)。旅先での甘いものが恋しくなります!
(選者・コメント:はたの@館長)



7.『魔法使いとお菓子たち』
著/森村桂,発行/KADOKAWA



 

とっておきのナポレオンをひそませた桂さんの手作りお菓子は「フックラ、ザックリ、シットリ」。香ばしくふっくら、湯気のしっとりとした、それでいて触ると心もとないようなカステラが焼きあがったら、

「そのカステラの間にナイフを入れて、ソオッとソオッと切りはなす。少しのこっていた香りのよい湯気がすっと上ってどこかに消え、一粒一粒のキメが、顔を出す。黄金色のザックリとしたキメだ」


彼女のお菓子作りに大きな影響を与えたのは、パリのマダムが作ったカトル・カーというシンプルな焼き菓子。ある家の前を通りかかったとき、キッチンにあるそのケーキが目に入り、どうしても一切れ食べさせて欲しいとマダムに頼み込んだそうです。それ以来、彼女が愛し、生涯焼き続けたのはクリームやフルーツで飾った豪華なケーキではなく、じんわり美味しさを噛み締められるような素朴な焼き菓子でした。


お菓子を食べることにも、作ることにも情熱を注いだ桂さんと一緒に世界各地を巡る旅。芳しい香りと豊かな風味に想像をふくらませて、桂節にクスッと笑いつつお楽しみください。
(選者・コメント:Annie)



8.『純喫茶パオーン』
著/椰月美智子,発行/角川春樹事務所




創業おおよそ50年の喫茶店を営むのは老夫婦。主人公「ぼく」はその孫。
おじいちゃんの「特製ミルクセーキ」とおばあちゃんのどんなに満腹でも食べられちゃう「魔法のナポリタン」が看板メニュー。

「ぼく」の小学生・中学生・大学生と成長していく過程で周りの登場人物も面白くて、ちょっとした事件もあったりしてハラハラする場面も。


おじいちゃんの特製ミルクセーキを飲みたくなるのは私だけではないはず!! 本の装丁もメチャメチャ可愛いのです。
(選者・コメント:伊万里のバタ子)



9.『スイート・ホーム』
著/原田マハ,発行/ポプラ社




街の小さな洋菓子屋さんを舞台にした家族の物語。美味しそうな洋菓子とキンモクセイの甘い香りが、ページを開く度に漂います。いつの間にか自分も物語の住人になっていて、この洋菓子屋さんにたまに立ち寄る常連の気分になります。

嬉しい日もあれば、切ない日もある。何気ない幸せでいい。何気ない幸せがいい。

読むと心がスッと穏やかになります。帰る場所がある事に感謝しながら。それぞれの心にある帰る場所。明日は記念日じゃないけど、いちごのショートケーキでも買って帰ろうかなぁ。
(選者・コメント:田澤専務)



10.『つぶさにミルフィーユ』
著/森博嗣,発行/講談社




“「ぞっとしない」が通じないみたいで、ぞっとした。
「乾電池十九本、耳を揃えて持ってきておくれ」と奥様に言われたこと。
ここへ来て良かった、という肯定こそ、幸せの手法である。”


ミステリィ作家の紡ぐエッセイはタイトルからもう、ひと味もふた味も違う面白さがある。全て見開き2ページで読み終えることができるので、通勤や寝る前のちょっとした隙間時間のお供に最適。甘いようで甘くない、でもちょっぴり甘い言葉の数々をご賞味あれ。
(選者・コメント:部員S)