あなたの人生をきっと豊かにする手紙社リスト。今月の本部門のテーマは、「クリスマスに本好きの友人にプレゼントしたくなる本」。その“読むべき10冊”を選ぶのは、ブックコンシェルジュや書店の店長として読書愛を注ぎつつ、私小説も人気を博している花田菜々子さん。「雰囲気こそ大事なのでは?」という花田さんが雰囲気で(いい意味で!)選ぶ、ジャンルに縛られない10冊をお届けします。


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1.『ちいさな手のひら事典 クリスマス
著・文/ドミニク・フゥフェル,翻訳/いぶきけい,発行/グラフィック社




まずは「これこそまさにクリスマスプレゼントのためにある!」と言っても過言ではない1冊。海外の、古くて美しいクリスマスのイラストがいっぱいに詰め込まれていて、眺めているだけでワクワクします。文庫のようなサイズやふっくらした表紙、本の側面のゴールドなどの細部も手が込んでる!



2.『本の幽霊
著・文/西崎 憲,発行/ナナロク社




こちらも本好きの人にプレゼントしたくなる、謎の宝物のようなたたずまい。短編小説集なのですが、読書会や図書館など本にまつわるテーマの話が多く、内容もすっと心に入ってきて本好きの心がときめく物語ばかり。きっと本を贈った相手と「本の幽霊」を見たことがあるか、議論したくなると思いますよ。



3.『世界の家の窓から 77ヵ国201人の人生ストーリー
編/主婦の友社,発行/主婦の友社




個人的に、いわゆる絶景とはちょっと違う「微妙ないい景色」が好きです。この写真集はコロナ禍で世界的にロックダウンが始まった頃、それぞれの自宅の窓やベランダから撮った写真を集めたプロジェクトだそう。写真に添えられた撮影者のメッセージもさりげなくよくて、心にさわやかな余韻を残してくれます。



4.『ふたりたち
著・文/南 阿沙美,発行/左右社




しあわせな気持ちをくれる写真集をもう1冊。親子、ユニット、飼い主と飼い犬……写真家の南さんが「こんな関係っていいな」と思わせてくれる「2人組」を撮影し、そのふたりの関係性の素敵さをエッセイで綴った本。唯一無二のサイコーな関係になりたいと思っているスペシャルな相手に贈りたい本です。



5.『乙女の東京案内
著・文/甲斐みのり,発行/左右社




そんな大好きな相手といっしょに行きたい場所を考えるのもまた楽しいですよね。レトロでかわいくてロマンチックな場所ばかりを写真たっぷりで紹介しいるこの本は、ひとりで見るのもふたりで見るのもいい感じ。東京近郊にお住まいの方にはもちろん、遠くにいる方にも、こんな「東京」をぜひ知ってほしいなあ。



6.『ぞうのマメパオ
著・文/藤岡拓太郎,発行/ナナロク社




ふだんあまり児童書のコーナーには立ち寄らないという人にもおすすめしたい絵本。絵本なのですが、絵本というにはあまりにも長編(約200ページ)で、だけど3歳くらいの子も読める内容で、それなのに「こ、これは大人にこそ読んでほしい~」と身悶えしてしまうくらいにすべてがかわいくて幸せ。クリスマスの贈り物にぴったりです。もちろん小さな友達への贈り物にも。



7.『ミッケラーの「ビールのほん」
著・文/ミッケル・ボルグ・ビャーウス、ペニール・パン,監修・翻訳/長谷川小二郎,発行/ガイアブックス




同じ絵本でも、逆にこんな「完全大人向け」の本もまたいいかもしれません。クラフトビール好きなら気に入ってくれること間違いなしの本です。いかにも海外のおしゃれブック~! という感じのレイアウトやイラストもいちいちかわいく、ビール初心者でも楽しく読めるのに、最終的には「私もビール作れるかも!」とまで思わせてくれる。



8.『しないことリスト』だいわ文庫
著・文/pha,発行/大和書房




楽しいクリスマスが終わってお正月になると、人は立派な目標を立ててしまいがちなものです。「今年こそは○○をするぞ!」と。でもそれって、ほんとうにやらなきゃいけないことなのかな? 「睡眠を削らない」「予定を守らない」「長生きしない」(!)など、えっ、それって大丈夫なの、と思うような項目が並んだリストは、きっと「ねばならない」の呪縛から友達のことも救ってくれるはず。



9.『私の生活改善運動 THIS IS MY LIFE
著・文/安達茉莉子,発行/三輪舎




なんとなく買った気に入ってない仕事用の服。忙しいからと言い訳して食べるコンビニのパン。そういうものを少しずつやめてみたら……という体験記のようなこの本は、しかしこういう本にありがちなストイックさがなく、ずっとやさしくて幸せな気持ちになるので、プレゼントにもぴったりだと思います。「幸せなほうを選んでいく」という著者のことばが力強い。



10.『旅するインテリア Pieces of Travel
著・文/口尾麻美,発行/ケンエレブックス




シンプルな暮らしより、好きなものに囲まれた「むだ」のある暮らしが私にとっては理想。手紙社のファンのみなさんなら、きっとこの気持ちわかってくれますよね……? というわけで世界じゅうを旅して雑貨を集め、それを猥雑でおしゃれに部屋に活かしている口尾さんのこの本はまばゆすぎました。旅好き、雑貨好きの友達にぜひプレゼントしてあげてほしい本です。


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選者:花田菜々子
流浪の書店員。あちこちの書店を渡り歩き、現在は「HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE」で店長をつとめる。著書に『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』など。