
あなたの人生をきっと豊かにする手紙社リスト。今月の本部門のテーマは、「休むのも、大事だよ! な本」。その“読むべき10冊”を選ぶのは、ブックコンシェルジュや書店の店長として読書愛を注ぎつつ、私小説も人気を博している花田菜々子さん。「雰囲気こそ大事なのでは?」という花田さんが雰囲気で(いい意味で!)選ぶ、ジャンルに縛られない10冊をお届けします。
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1.『休む技術 かしこくコスパを上げる大人のオン・オフ術』だいわ文庫
著・文/西多昌規,発行/大和書房

まず大事な前提。私たちってみんな「休む」のが下手なのかもしれません。休日の終わりに「は〜、今日もまた無駄にすごしてしまったな」という思いを抱えてしまう人も多いのでは。本書は「静的、動的、どっちのほうが疲れが取れる?」「新しいことをしすぎても疲れる」といった興味深いトピックを集め、さらには人間関係の休み方、仕事時間中の休み方まで解説! 休み上手になるヒントがいっぱいです。
2.『新幹線から見えたすき家へカレーを食べに行く』
著・文/スズキナオ,発行/太田出版

目的の決まりすぎた観光旅行は休みの気分じゃない。もっとふらふらと、無意味に旅を楽しんでみたい。そんなときにお手本にしたいのがこちらのエッセイ。特に行きたい観光地もないし、お金もないし……そんな人こそ、スズキナオさんの知らない場所と人とを巡る旅のスタイルがハマるはず。他にみんなで無目的に空っぽの段ボールを運んでみたりと、大人ならではの新たな遊び方がいっぱい。
3.『学校と日本社会と「休むこと」 「不登校問題」から「働き方改革」まで』
著・文/保坂 亨,発行/東京大学出版会

そもそもなぜ私たちが休むのが下手かということを真剣に考えてみると、当時の学校教育で「休みは悪」「皆勤賞は偉い」「土日も部活やれ」「特別な理由以外で休むことは許されない」という空気で育ち、その謎ルールを大人になっても適用してしまってるからでは。教育関係者の方はもちろん、なぜ日本の学校ってああだったのかを考えたい人におすすめの1冊。というか、悪癖は今も続いてますよね……。
4.『怠ける権利』平凡社ライブラリー
著・文/ポール・ラファルグ,訳/田淵晉也,発行/平凡社

えらい人も言ってます。著者は1842年生まれのフランスの社会主義者であり、カール・マルクスの婿という立場。もちろんふざけて書かれた内容ではありません。労働者が働けば働くほど一部の資本家たちがさらに儲かって豊かになり、労働者たちの暮らしは豊かにはならない。だから(?)働くのは1日3時間でいいとのこと。1世紀以上も前に書かれながら、今を生きる私たちの直面する問題とも重なるテーマです。
5.『おばけのおいしいひと休み』
著/のもとしゅうへい,発行/KADOKAWA

舞台を現代日本に戻しまして、本書の主人公は、働きすぎで心が壊れ、おばけの姿になってしまった元人間。会社を休むと決め、少しずつ外へ出かけ、生活を愛し、おいしいものを食べる。暗いけれどやさしいトーンのモノローグと、繊細ながらもいきいきとおいしそうな食べ物のイラストに心癒されるコミック・ストーリー。元気が出ない日の読書にぜひ。
6.『夜明けのすべて』文春文庫
著・文/瀬尾まいこ,発行/文藝春秋

PMS(月経前症候群)で感情の起伏に振り回される美紗と、パニック障害になり周囲にも心を閉ざしている山添。ふたりは衝突しながらもお互いの抱えているものに気づき、助け合おうとする……。私たちは調子がいいときばかりじゃないけれど、そんなときだって自分らしく生きることはできるし、つらさがわかるからこそ誰かを助けられることもあるはず。人生の休み時間をやさしく照らしてくれる名作小説。
7.『無職、川、ブックオフ』
著/マンスーン,発行/素粒社

とはいえ、いつ出られるのかわからないような長い「休み」に置かれている状況は、自分で選択しているとしても、つらい。こちらは大学卒業後、30歳まで無職を貫いていた著者の、当時の心模様をつづったエッセイです。家族に隠れて、冷蔵庫の中から「無職でも食べていいもの」を探す様子などはユーモラスで笑えつつ、「なぜか動けない」という、理解されづらい苦しみの風景がじわりと伝わります。
8.『喫茶店の水』
著/qp,発行/左右社

世の中にはマニアックな写真集がたくさんあると思いますが、なんとこちらは喫茶店で出される水だけを撮り集めた1冊。でも、それぞれの写真から静寂や柔らかい空気が伝わってくるようで、不思議な魅力があります。いずれテーブルにコーヒーやクリームソーダやナポリタンが運ばれてくれば脇に押しやられてしまう存在だからこそ、「水」と向き合う時間もいいものだよな、なんて思ったり。
9.『水車小屋のネネ』毎日文庫
著/津村記久子,発行/毎日新聞出版

さて……予定のない休みがあったとして、どんな本を読むのがいちばんふさわしいんだろう? と考えてみると、こんな小説かもって思います。身勝手な母親のもとを逃げ出し、新しい場所で暮らし始める18歳と8歳の姉妹。そばにあったのは水車小屋と、よくしゃべるヨウムのネネ。大きな事件や激しい感動はないかもしれないけど、人の親切さや善性を伝える物語に、気づけば心の重たい塊が少し小さくなっているはず。
10.『とんで やすんで かんがえて…』
著・文/五味太郎,発行/偕成社

レジェンド絵本作家、五味太郎さんの2023年の作品。鳥たちはずっと飛び続けているわけじゃなく、こまめに着地しながら移動を続けています。そこで行き詰まっても、じゃあどうしよう? と考えるだけのこと。でも考えることも苦しいことじゃなくて、「こんなふうに道があったら」「道じゃなくて島でもいいか」なんて想像を広げるのは楽しいこと。生き方に迷ったときこそ効きそうなシンプルな哲学が、休むことのポジティブな意味を改めて教えてくれます。
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選者:花田菜々子
流浪の書店員。あちこちの書店を渡り歩き、2018年から2022年2月まで「HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE」で店長をつとめる。2022年9月1日に自身の書店「蟹ブックス」を東京・高円寺にオープン。著書に『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』など。
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